誰か、助けてください。  
今の私の危機的状況、――目の前の信じられない光景から、私を救ってください。  
 
* * *  
 
今日は日曜日。もちろん学校はお休みでした。  
だけど午後から特別に部活動があるため、私は1時すぎに家を出ました。  
少し曇っているけれど、決して暗くはない昼さがり。  
学校へ向かう道を、私はいつものように歩いていました。  
 
15分ほど歩き、私は大きな国道が東西にまっすぐのびている、その高架下の少し暗い道に差し掛かり  
ました。  
その場所は人通りが少なく、草花が覆い茂っていてうっそうとしています。  
近道というか、抜け道です。  
通学路には指定されていないのですが、ここを通るのと通らないのでは、10分以上のタイムラグが  
生まれます。  
だから私も他の皆も、いつもこの道を通っていました。  
 
けれど、今日は日曜日。  
普段だったら常に生徒が通っている道も、この日は違っていました。  
 
私は美術部に所属しています。あまり厳しくない部活として有名です。  
時間ギリギリに到着しても、全く叱られることはありません。  
他の部の子たちのように、早めに学校へ行って自主練習をしなければならない、ということも  
ありません。  
 
だから今日私が登校する時間は、一人きりでした。  
初めてでした。  
しかしさほど気にとめることもなく、いつも通り学校へ向かいました。  
 
死ぬほど後悔することになろうとは、露ほどにも思わないまま。  
 
* * *  
 
“ソレ”は突然草むらから現れました。  
 
「……?!」  
 
信じられないかもしれませんが――実際私も未だに夢ではないかと疑っていますが――目の前に、  
化け物がいます。  
頭がおかしいと思いますか?  
でも、目の前の生物を他に何と形容したらいいのか分かりません。  
草木に同化してしまうほどあざやかな緑色、ナメクジが巨大化したような質感。  
その不気味な巨体から無数の手が伸び、私を囲んでいます。  
長いもの、短いもの、太いもの、細いもの……さまざまな触手がにょろにょろと動いています。  
 
「ひっ……」  
 
恐怖のあまり声が出ません。  
叫ぶなんてとんでもない、口をぱくぱく動かすのが精一杯。  
どっと汗が吹き出しました。足がすくんで逃げられません。  
そうこうしている内にも、ソレはもう私の鼻の先に迫っています。  
 
「!!!!」  
 
突如後ろから腕を捕まれました。いつの間に背後へ?  
細長い触手が、あっという間に私の両腕の自由を奪いました。  
両手を後ろで組まされた状態です。  
痛いほどに力強く、私の力では外せそうにありません。  
 
そしてそれを皮切りに、無数の触手は一斉に襲い掛かってきました。  
 
「きゃぁぁぁ…っっ!!」  
 
数え切れないほどの触手、触手、触手。  
ソレらは私の全身に絡みつき、あっという間に私を押し倒しました。  
ザザザッと草むらに大の字に転がされ、ソレらが体中を這い回り始めます。  
ぬめぬめとした感触に、背筋がぞっとします。  
 
とうとう服の中にまで進入を許してしまい、涙がこぼれました。  
 
「…や…いやぁっ!」  
 
まず、一本の細い触手が首筋からブラウスの中へ入りました。  
ぬるり、ぬるり。  
ブラジャーの端をつたい、背中へ向かっています。  
程なくして後ろのホックへ辿り着くと、器用にそれを外しました。  
私は…その、成長過程なので胸はあまり大きくありません。  
けれど申し訳程度にはふくらみがあり、それがブラジャーを外されたことによりたわん、と  
こぼれました。  
 
「やだぁ…やだよぉ……」  
 
すぐに別の触手が、ふくらみの先端にまとわりつきました。  
小さな突起部をこねるように撫でまわします。  
こぼれた胸をきゅっと締め上げられ、パンをこねるように揉みほぐしています。  
ぞくぞくっと、おかしな感覚がこみあげてきます。  
意に反して背中が震えてきました。  
 
そして更に別の触手が。  
私の――下方へ。  
 
「ふあ?!」  
 
驚いて足元を見ると、いつの間にか捲りあげられたスカートが目に飛び込みました。  
かぁっと、顔が熱くなります。きっとゆでだこ状態でしょう。  
 
露になったふとももをつたって、何本もの触手がにょろにょろと這っています。  
無理やり開かされた両足の、間。  
大小さまざまな触手がそこへ向かって――ほどなく、到着しました。  
そして一切躊躇することなく、下着の中へ入り込みました。  
 
「はぅ…あぁ?!」  
 
今まで誰一人、私自身さえ触れたことのない未知の領域。  
排泄を行うだけの器官。  
もちろん知識として「生殖器」の役割は知っていますが、それこそ雲を掴むような話で、  
私にとってのその部分は「汚い」という認識しかありません。  
 
そこにいるのです。触手が。  
じくじくと動き続け、ヒルのように吸い付き、ソコを弄んでいます。  
下着は完全に脱がされました。  
草むらに倒され、ひざを立てた状態で開かされ、私を守るものは何もありません。  
今、私を支配するのは、言い表せぬほどの嫌悪感。恐怖感。  
そして。  
胸の先端に触れられた時に感じた「ぞくぞく感」が、もっともっと大きくなって――。  
 
「あ、んっ……」  
 
思わず変な声が漏れました。  
びりびりと、体中を電気が駆け巡るのです。  
 
頭の芯がしびれ、ぶるぶると全身が震えます。  
触手は絶えず動き続けています。  
 
「ん…ぁああっ?!」  
 
―― 一瞬、自分でも驚くほど大きく身体が跳ねました。  
触手が群がるその部分の、一箇所。やけに敏感な部分があることに、私は気付きました。  
ソコをかすかに触れられるだけで、今までとは比較にならないほどの電流が走るのです。  
びくん、びくんっ。  
まるで腹筋が持ち上げられるように、勝手に浮いてしまいます。  
 
「そこっ……んっ、やめ、てぇ…っ!!」  
 
やがて触手も私の様子に気付いたのか、執拗にソコばかり攻めてくるようになりました。  
触手は携帯のバイブレーションのように細かく振動し、ソコへぴったりと吸い付いてかき回します。  
胸との同時の刺激に、もう何が何だか分かりません。  
ヌメヌメヌメ、にょろにょろにょろ。  
電流の渦が、私を飲み込みます。  
くちゅくちゅという水音が、やけに遠くに聞こえます。  
 
「はぁ、はぁ、あうっ!」  
 
ん、ん……。  
……ああ、意識がもう……もう、ダメです……。  
 
そして。  
 
「……ん゛、ん゛ぁああああああああああああーーーーーー!!!!」  
 
頭の中で、何かが弾けました。  
心地よい浮遊感に、私は身を任せました。  
 
* * *  
 
その後私は、たびたびその場所を訪れるようになりました。  
日曜はもちろん、誰もいない時間を見計らっては触手と過ごします。  
あの時味わった感覚に、病み付きになってしまったのです。  
 
だけど今日訪れてみると、触手たちはぐったりとして元気がありません。  
ぬるりとした質感は、乾きかけて容積が小さくなっています。  
どうしよう。どうしたらいい。  
この子がいなきゃ、私は。  
 
誰か、助けてください。  
今の私の危機的状況、――目の前の信じられない光景から、私を救ってください。  
 
 
*END*  
 
 

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