「フラレた・・・」
私の目の前で幼馴染の健太がうなだれている。
「残念だったね」
告白と同時にふられたのが5回。つき合って1週間で別れたのが3回。一番長くて1ヶ月だったかな。
私の知る限りでは、今回で通算10回目の玉砕。
まぁ、健太は告白する時も、別れた時も逐一私に報告するから、回数は間違って無いはず。
「まぁ、次があるわよ。次が」
「真由ぅ」
はぁ。高校2年にもなって情け無い顔しないでよね。全く。
告白する前に元気付けて、玉砕して慰めて。疲れるなぁ、もう。
「なぁ。俺ってそんなに子供っぽいか?」
「うん」
「・・・正直な意見ありがとう」
健太はルックスは悪くは無い。サッカーをやってるから運動神経だっていい。頭もそこらのスポーツバカよりはまし。
けど、性格がその利点で補えないほどまずい。
無邪気、素直、明るいと言えば聞こえがいいけど、それは自分で言った通りただの子供。
落ち着きは無いし、言動に知性のかけらも感じられない。
特撮のテレビが好きで、未だにおもちゃを買っているくらいだし。
しかも、同じサッカー部の先輩でものすごく大人な人がいるからさらにその子供っぷりが目立ってしまうのよね。
「子供っぽいって言うか。まんま子供」
「がふ」
健太がテーブルにつっぷす。
私はシェイクを飲み干して、はいごちそうさま。
「もっと大人っぽくなりてぇなぁ」
「けどさ。いい所だっていっぱいあるよ。運動神経は1年のころからレギュラーやってるからいいでしょ。それにね、優しいもん」
優しさは触れてみないとわからない。大体の人は健太の優しさを知らずにごめんなさいだもんなぁ。
「いきなり告白じゃなくてさ。少しずつ自分を教えていけばいいんだよ」
「そうかなぁ」
「そうだよ。それに、段々と自然と大人っぽくなるんだし、今はそのままでいいと思うな。私は、そんな健太が好きだよ」
これは正直な気持ち。
健太は友達としてだと思ってるんだろうけど、私は本当に健太が好き。叶わぬ恋だと思うけどね。
「・・・ありがと」
「うん。さ、反省会は終わり。明日からはまた元気な健太に戻ってね」
「・・・う・・・はぁ・・・ま、いっか・・・おうよ!」
なによ。そのため息は。つきたいのはこっちなのに。もうケアしてやらないぞ。
健太が10回目の玉砕から2週間後。
廊下で健太が誰かと話しをしている。あれは、隣りのクラスの北野さんだったかな。
楽しそうに話してるよ。
健太が私以外の女子と普通に話ししてるなんてすっごい珍しい。驚きね。
少しは進歩したってことかな?
けど、私が本当に驚いたことは翌日だった。
昨日、健太と話をしていた北野さん。彼女が私に話しかけてきたのだ。
「あの。佐野さん」
「はい?・・・あ。北野さん。どうしたの?」
「あの・・・えっと・・・その・・・三浦くんのこと・・・なんだけど」
「あぁ。健太?どうしたの?あ、ひょっとして、付きまとわれてウザイからどうにかしてくれってこと?」
「いえ!・・・あの・・・三浦くんの好きなものって・・・なんでしょうか?」
顔を真っ赤にして私に聞く北野さん。
え?あれ。まさか、ひょっとして。
「健太のこと好き?」
「す、す、す、好きだなんて・・・私は・・・あの・・・」
今時珍しい天然記念物ものだよ。この子。
はぁ。健太も昨日を見る限りではまんざらでもなさそうだし。やっと本当の恋人ゲットみたいね。
「健太が好きなのは」
・・・ここでテレビでやってる子供向け番組のおもちゃ。なんて言ったら北野さん、どんな反応するかな?
あ〜。いやいや、それはダメだよね。
「カレーとかハンバーグとか。美味しい手料理を食べさせてあげればいいと思うよ」
「あ。ありがとうございます!はい。頑張ります」
ホント素直な子だ。
私は、その日一日何も手に付かなかった。
授業も適当に受けて、夕食もほどほどで。今もベッドにうつ伏せになって寝ている。
今までだって告白するだのデートに行くだのといっぱいあったがこんな気持ちにはならなかった。
絶対に失敗するだろうなと女の勘が告げていたから。
けど今回は違う。上手くいってしまう。
健太だって高校生なんだし、彼女が手料理を食べさせると言って自宅に呼んだら・・・あぁ、彼女まで食べちゃう気だ。
「・・・そんなこと・・・無いとは言えないわよね」
はぁ。自己嫌悪。
こんなことなら私から告白するべきだったかなぁ。
卒業式に、一人身の健太に向かって『しょうがないから私が彼女になってあげる』そう言うつもりだったのに。
というか、こんなこと考えてる時点で負けよね。すんごく健太を見下してる感じだし。
北野さんみたく献身の心、みたいなのが全くないよね。
はぁ・・・ホント・・・何してるんだろう私。
「晩御飯に呼ばれた」
「ふぅん」
私は健太の部屋で漫画を読んでいる。
健太が買った新しい漫画を読ませてもらうのは、昔からの通例になっている。
私が漫画読んで健太がゲームして。小学校のころから変わらない光景。
けど、今日は少し違っていた。二人とも心ここにあらず。私も漫画の内容は全然頭に入ってこない。
「そういや、真由の飯食った事無い」
「私料理下手だもん」
「そっか」
そんなの知ってるくせに・・・けど、小学生の頃、調理実習で私が作った焦げたクッキー全部食べてくれたっけ。
「ねぇ」
「ん?」
「・・・健太って童貞だよね」
「おう」
何でも気兼ねなく言えるのはいいけど。もう少し恥じらいってものをね。ま、聞いてる私も私か。
「北野さん・・・多分初めてだから・・・練習しておいたほうがいいよ?」
「・・・練習って、エロDVDでも見るのかよ」
私は服を脱ぎ捨てる。
健太は私に背中を向けているからわからないだろうけど。
「・・・練習。させてあげるから」
抱きつく。健太が誰のモノになってしまっても、初めては・・・健太の初めては欲しい。
「真由。冗談は」
「冗談じゃないよ。ほら、寝て。女の体を教えてあげるから」
私は健太に抱きついたまま体を横にする。
抵抗する健太にそのままキス。ファーストキス・・・ムードないけど・・・すごく嬉しい。
「んっ・・・はぁ・・・ん!?」
健太の舌が私の中に入ってくる。
や・・・あ・・・だめ・・・頭の中が痺れて。ん・・・あぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・
「健太・・・ダメだよ・・・いきなりそんなことしちゃ」
「ごめん」
「・・・北野さんの時は普通にするんだよ」
北野さんの名前を出すたびに胸がチクリと痛くなる。
でも。これが最初で最後。もう・・・健太とは・・・最後だから。
「そのまま動かないでね」
健太をベッドに座らせて、パンツを脱がせる。
うわ。知識では知ってたけど・・・生で見るとけっこうグロイかも。
なんか、これを舐めるのは抵抗が。
「真由」
えぇい。女は度胸。
んっ・・・なんか、しょっぱい。
「ぅぁ。ま。真由・・・ちょ、そこ・・・ダメだって」
健太。女の子みたいに喘いで・・・可愛いかも。
もっともっと気持ちよくなって。可愛い健太を私に見せて。
「くぅ。ぁぁ・・・真由。ごめん」
「きゃっ」
健太の先っぽから白いものが勢いよく飛び出て・・・私の髪と顔にかかって。これって。精液だよね。
ちゃんと気持ちよくなってくれたんだ。
「真由。ごめん」
健太が私の顔と髪の毛を拭いて綺麗にしてくれる。
今度はちゃんと・・・飲んで・・・あげないと。
あ・・・でも、今度は無いんだ。じゃあ、飲んであげればよかったかな。
「健太」
私はパンツを脱いで健太の上に乗っかる。
「いくよ」
「・・・あ、ちょ、待って。それは・・・うぁぁぁ」
抱き合ったまま私の中に健太のが。
くぅ、なに・・・これ・・・漫画とかのは大げさだろうと思ったけど・・・本当に痛い。
「あ、あぁ・・・んっっ」
「真由・・・無理しないで」
「大丈夫・・・だから・・・ね。私に任せて」
そう。大丈夫。大丈夫なんだから。
痛い・・けど・・・もう少し・・・んっ・・・あぁぁぁ・・・はぁっ。
「はぁ・・・はぁ・・・全部・・・入ったね」
「真由・・・なんで」
答えたいけど、答えられない。
その代わりにゆっくりと腰を上下させる。
「うあ。真由・・・痛くないのか?」
痛いけど。でも・・・健太に気持ちよくなって欲しいから。
だから私は健太が気持ちよくなるように。我慢して動く。
「くぅ・・・あ・・・っ・・・真由・・・どけ・・・もう」
あ。でも、今日は・・・多分大丈夫。
だから。私は。
「真由。ダメだって・・・早く。うあ・・・あぁ」
んっ。
中で健太のが一瞬大きくなって、温かいものが。あぁ、これが中出しの感覚なんだ。
なんか、おしっこが逆流したみたい。
でも・・・お腹が温かくって気持ちいいかも。
「はぁ・・・はぁ・・・ごめんな」
「んっ。いいよ」
抜き取ると私の脚を伝って、健太の精液と私の血が流れてくる。
私たちはお互いに顔を合わせないように体を拭いて服を着た。
最初に口を開いたのは先に着替え終わった健太だった。
「なんでこんなことしたんだ?」
「・・・北野さんが心配だから・・・それだけよ」
「本当に?本当にそれだけなのか?」
健太が私の目を真剣に見てくる。
そんな風に見られたら私。
「俺は・・・いや、俺が悪かったような気がするんだけど・・・あのさ。俺が好きなのは北野さんじゃなくて・・・真由だから」
「うん。わかってる・・・・・・・・え?」
ちょっと待って。今、何て言ったの?
「私が好き?」
健太はうなずく。
「あ〜。えっと・・・その・・・・あれ?」
「ずっと、真由が好きだったけど、自分から思いを伝えるの怖くて・・・んで、色々考えて、そういう場を設ければと思ってさ」
「そういう場?」
「真由が・・・俺の事好きだって実感出来るような・・・・・・あぁもう。嫉妬して欲しかったんだよ」
え〜っと。つまり、今までのコイツの行動は私に嫉妬して欲しくて?
「ほとんどの女の子にはわざとふられるようにしてさ。前に一回長くつき合ったことあったろ。あれも、実は相手の女子に手伝ってもらってた」
「狂言?ウソ?偽り?ぜ〜んぶ私を騙してたの?」
「ごめん!けど、真由が全然そういうそぶり見せないから俺の事なんとも思って無いんだと」
私は一気に体の力が抜けた。
そりゃそうよ。なんか、真面目にいい子を演じてた自分がバカみたいじゃない。
「真由」
「・・・知らない・・・健太なんて知らない!」
「ごめん」
「っ」
健太に抱きしめられる。
「健太」
「好きだ。愛してる」
「・・・私も・・・私も好き・・・大好き・・・ずっとずっと前から好き」
涙があふれてきた。前が見えない。
大好きな健太の笑顔も見えない。でも、なんとなく・・・健太の笑顔がわかる。
もうこのまま時間が止まってしまえばいいと、初めてそう思った。
けど、そういうことが起こるわけはない。健太の部屋の時計が5時を告げた。
「ねぇ、ひょっとして・・・北野さんとのこともウソ?」
「あ。いや。北野は別。本当に飯食いに来てくれって。でも、行かないぞ」
そっか。北野さんも健太のいい所を見つけて惹かれたんだね。
「いいよ。行っても。せっかくご馳走してくれるって言うんだしさ」
「でも」
「そこで行くのが私の知ってる優しい健太。あ、でも調子にのって北野さんに手を出しちゃダメだからね!」
「わかってるよ。もし告白されても断るから」
「うん。よろしい」
顔を見合わせる私たちの唇が自然と触れ合う。
「・・・行ってくるな」
「うん。じゃあ、私は夫の帰りを待つ妻の役でも演じてようかな」
「家に帰らないのか?」
「泊まっちゃダメ?」
「俺はいいけど。今日は誰も家に居ないぞ?」
「わかってて言ってるんだから。それくらい察しなさいよ。もう。じゃあ、行ってらっしゃい」
「・・・うん。行ってきます」
健太が部屋を出て行く。
さぁ、私は部屋の片付けとお風呂の準備でもしよっと。
遅くなって私をヤキモキさせたらただじゃおかないんだから。
けど、ちゃんと早く帰ってきたら・・・いっぱい、いっぱいサービスしてあげようっと。