「どうした2? 頬が赤いぞ?」
「べ、別に。どうもしないわよ!」
「そんな事無いだろう。この寒空の中、一人でスレ建てしたんだ。もしかしたら風邪を引いているのかもしれない」
あいつの手が私のおでこに触れる。
ずっと外で一人スレの建立を行った結果、体中が冷え切っている為、随分と暖かく感じられた。
その熱は物理的にも心理的にも作用し、あたしを文字通り心底暖めた。
「――と、熱は無いな。むしろ、冷たいぐらいだ。早く家に帰った方がいいぞ」
「あ」
「じゃあ、またな」
心地よさを感じていたあいつの手が離れると同時に、心細さが胸の内に生じた。
あいつは生来の鈍感さを如何なく発揮し、あたしから遠ざかろうとする。
「ま……」
素直になりたかった。
髪型を変えたのも、スレ建てしたのも、自分を変える為――。
あたしは――
「待って!」
ゆっくりとした仕草であいつは振り返る。
いつもの鈍感そうなとぼけた顔を――
あたしの、大好きなその表情を向けて――
(せっかくだから、家に来ない?)
誘われるまま俺は2の部屋へと上がりこんでいた。
同い年の少女の部屋に居るという事実が、俺の胸を否応無く高鳴らせた。
何も疾しい事はしていないにも関わらず、目のやり場に困り、挙動不審に右往左往してしまう。
平常心を保つ為に、何か別の事を考えようと、必死に頭の中を巡らせた。
――そう言えばつい額に手を当ててしまったが、今日の2は随分としおらしかった。
いつもは口やかましく俺に対し騒ぎ立てる癖に、どうしたんだろうか。
……無理も無いか。
皆が嫌がって他人任せにしていたスレ建てを、2一人が押し付けられた形なのだ。
額に触れた時、凍えるような冷たさを感じた。
あいつはそんな環境の下、誰の助けも借りず、体を震わせながらも、一人でスレを建てたんだ。
本当にすごい女だよ。
今更ながら、俺は尊敬の念が胸の奥底から沸き立つのが分かった。
戻ってきたら労いの言葉を掛けてやろう。
しかし、2がコーヒーを入れてくる、と告げて部屋から出た後、すでに二十分は経過している。
一体何をやっているんだ、あいつは。
そう思っていた矢先、俺の念が通じたのか、ドアがゆっくりと開き始めた。
「ああ、遅かったな。お前何してた――――ってッ!?」
俺の視界に、タオル一つを体に巻いただけの格好の2が、お盆にコーヒー二つを乗せて立っていた。
「おまッ、おまッ、お前――――ッ」
「…………何よ」
勢いよく何度も何度も深く息を吸っては吐いて気分を落ち着かせると、
「お、お前ッ!! 年頃の女子が何たる格好を――――――ッッッ!!!!!」
「…………魅力無い?」
「いや、すげえある」
思わず本音が漏れてしまった。