「姉ちゃん。ここは?」
「ここはね…」
今、俺は姉に教わりながら勉強をしている。
別に頭が悪い訳では無いと思う。大学への進学を目指しているために少々難しい問題集をやっているのだ。
姉とは先日、とあることがあった訳だが、あの事については純粋無垢な姉が俺の言葉を真に受けすぎた。
つまりあんなことを言った俺が悪い。と自分のなかで自己解決させている。
あの後何もしなかった俺を、姉が何か物足りないような、うるんだ目で見ていたのは気のせいだろう。
「…というわけ、この説明で大丈夫かな?」
「んー、うん、これを利用して次も解けるか」
「うんそう。これはテストとかにもよく出るから覚えておいた方が良いよ」
「ん……よし、これで今日のノルマクリアっと」
「ご苦労様。すぐご飯が良い?」
「いや、ゆっくりでいいよ。にしても教えるの上手いよね」
「誰が?」
「姉ちゃんが。授業よりも数段分かりやすいよ」
「そんな事言われたら教えがいがあるなぁ」
嬉しそうに語る姉。
「でも、だからこそ思うんだけどさ」
「何?」
「なんで大学に行かなかったの?」
そう、姉は大学に行かなかった。落ちた訳じゃない。受験すらしなかったのだ。
校内順位だって上位三人から落ちることはなかったはずだ。資金面も親は『まかせとけ』と言っていた。
「やっぱり俺一人にすんのは頼りなかった?」
だとしたら申し訳無い。俺は姉に迷惑をかけている。
「違う違う!」
慌てた様に否定する。
「私は私なりに考えがあるの!来年は受験するつもりだよ」
「来年?」
そうなると俺と同じ受験時期だ。
「なぜ来年?」
「それは…」
「それは…」
──それは一緒に大学に行けて…弟と……弟だけど……あなたと一緒にいれるから──
「一緒に……いれるから…」
「…緒…………れる………」
いきなり顔を伏せて、真っ赤になって絞り出すように姉は声をだすがほとんど聞こえない。
「何?」
「なっ!なんでもない!ほら、ご飯ご飯!!」