暗闇。  
 なんだこれは……  
 感覚がはっきりしない。まるで他人の体を借りてるんじゃないかと思う。  
『はっ……ふあっ…』  
 誰かが俺の上で腰を振っている。俺のモノがその誰かの股に入りこんでいる。  
 女性…近しい人…  
 見覚えがある……いや…毎日会ってる、一緒にいる………  
 はっきりとしない意識の中でそれは妙に冷静に分かった。  
『いいっ、よぉ……もっと…もっとぉ……』  
 乱れる髪。揺れる乳房。快感を俺に伝える甘い声。  
 その人からにじみ出た汗が激しい運動で跳ねて、俺の体に降ってくる。  
『あぁぁ……奥…奥まで、来てるぅ………』  
 女の腰のストロークが大きくなってきた。  
『はっ、ふっ、うぅ、うぅっ!』  
 女の口の端から涎が垂れる。頬は紅潮し、瞳は淫らな輝きを持っている。  
『私だけじゃいや!き、みも、気持ち良くなって!一緒に、イこぅ!』  
 気付けば、俺も腰を跳ね上げ、突き上げている。手は女の腰を掴み、はなさない。はなせない。  
 結合部からの淫らな水音は、大きくなっていく。  
『ふぁっ…あ、あっ!イク!イクっ!イっちゃう!イっちゃうよぉ!』  
「ぐぅっ……」  
 果てた。  
『あっ!あぁー!出てるっ!出て!いっぱい出てるよぉ!』  
 俺は女の中に白濁を吐き出し、女はそれを向かえ入れようと深く深く俺のモノを沈め込む。  
 女は力が抜けたのか、俺の体にしなだれかかってくる。  
『あっ…あっ………まだ……出てる…こんないっぱいじゃ、妊娠、しちゃうかも……』  
 嬉しそうにそう言い、俺にディープキスをしてくる女の顔は─  
「姉、ちゃ─  
 
「んぁぁ!?」  
 飛び起きた。目の前には姉の顔。  
「なっ!?」  
「ひゃっ!?」  
 ぶつかる寸前でストップ。目前に姉の唇。  
「だっ!?」  
 さっきの情景が思い浮かぶ。甘美な口づけ。唇を割り入ってくる舌の甘さ、感触─  
「あぁぁ!?」  
 恥ずかしさを誤魔化すため再びベットの毛布に潜り込む。  
「ど、どうしたの?そんなに朝から賑やかに」  
「んと……夢…を見てさ……」  
 そうだ。さっきのは夢。姉と俺がシた様な雰囲気は無いし、シーツもあんなに乱れてない。  
「あ…確かに、なんか体がガクガクって揺れてたし、なんか、『うっ……ぐっ…』って、うめいてたし……」  
 前者はおそらく突き上げてたときで、後者は射精を我慢していたときだと思います。  
 恥ずかしい情報本当にありがとうございました。  
「その……大丈夫?…」  
 覆い被さる様に姉が顔を覗き込んでくる。  
「だっ、大丈夫。大丈夫だから」  
 いちいちさっきの情景が思い浮かび、まともに姉の顔を見ることが出来ない。意識してしまう。  
「なら、いいけど……じゃあ、ご飯出来てるから、起きてきてね」  
「……うん」  
 部屋から出ていく姉。その尻をつい目で追ってしまった。  
 あぁ、意識してる。  
 あんな夢を見たけど、嫌な気分ではない。むしろ─  
 いや、考えるのは止めよう。変な気分になりそうだ。  
 ただ一つ言えるのは、俺は確実に、今までとは違う点で、姉を意識した。  
 それは喜ばしいことだと、そう思えた。  
 

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