─姉が俺を好き?家族ではなく男女として?  
「…どうすりゃ………」  
 ……とりあえず、シャワーでも浴びて、着替えて、それからでも良い、落ち着こう。  
   
─やっちゃった……  
 あんな事、しちゃうなんて…しかも勢いで告白まで……  
 でも、言ったことは全部本当だし、いつかは言おうと思ってたけど…  
「うぅ………」  
 あんな事したお陰か、その……濡れてるし……体もなんか、熱っぽいし…  
 ………冷たいシャワーでも浴びて頭冷やそう……  
   
 着替を持ち脱衣所に。棚の上に置かれた時計を見る。  
 8:21  
─起きてからまだ20分もたってない?  
 なんてこったよ。その間に俺は一週間分、いや、一月分程の驚きを味わってるってのに。  
 にじみ出た汗で肌にへばりついた服を脱いで洗濯物入れに。  
 トランクスは……捨てるか。丁度古くもなり始めていたし。  
 ゴミ箱へ放る。入らずゴミ箱の側に落ちたが、まぁいい。今はシャワーが先だ。後で入れなおせば良い。  
   
 脱衣所に来たけど、扉の向こうからシャワーの音がする。先に入られちゃってたみたいだ。  
─………この扉一枚向こうに裸の弟が……  
 一緒に入ったら……  
 火でもついた様に顔が赤くなるのが自分でも分かる。  
 ……っ!ダメダメ!そんなことまでしちゃったら………と、止まれなくなっちゃう………  
 ……で、出直そう。うん、今はそれが一番いい。  
 水の音が扉の向こう側を意識させる。思いとは裏腹に、足は動かない。  
─……うぅ……そ、掃除しよう、掃除。うん、掃除しなきゃ駄目。ゴミを集めよう、ゴミ……  
 ゴミ箱の側に何かをあるのが目に入る。  
─彼の…トランクス?……  
 
─そりゃ確かに姉の事は好きだ。自分に少々シスコンっ気があることも自覚している。  
 しかしその「好き」は、家族としての事だし、尊敬に近いものもあるだろう。  
 男女、として考えた事は……たぶん無い。  
 ただ…それはあくまで、考えた事が無いだけだ。考えた事が無いなら、今それを考えれば良い。  
 どうなんだ?俺は、姉が「好き」なのか?  
   
「え……と…」  
 弟の……だよね?…うん。  
 捨てるのかな?  
 まだ履けない事は無さそうだけど…  
 無意識に手に取っていた。  
 それはいつもより少し重かった(毎日洗濯し、畳んでいるから分かる。それ意外の理由で持ったことも…少なからずあるけど…)  
 まるで洗濯後の水分を含んだ状態の様だ。ただ、触れた感じでは乾いて……  
「あっ………」  
 裏返すと分かった。一部……あの部分が濡れてる……  
 そっ…か……さ、さっき履いてた……  
 ………………  
 ピチャ……  
 気付けば、舐めていた。舌先から甘いしびれが広がる。自分が更に濡れていくのが分かる。  
 これは…簡単には止まれそうにない。  
 
─姉は……本気だろう。あの人はこんなことで嘘なんかつかない。  
 しかし…ずるい。あんな風に言われたら否定的なことなんか、言えるわけ無いじゃないか。  
 それに、さっきの姉は…可愛くて、妖しく、綺麗だった。姉弟ということを忘れるくらい……  
 てか…ファーストキスが姉……でも、嫌じゃ無かった…ってそれは問題があるんじゃないか自分自身よ!?  
 深く考えろ。嘘は無し、家族だからとかいうのも無し、誠実に答えるのが姉への誠意になるってもんだろ。  
 
 熱っぽい頭を何とか動かして、部屋まで戻り、ベットに倒れた。  
「あっ……ん」  
 指が薄い白い布地の上から秘部をなぞる。  
「はぁっ、うぅん…」  
 目は、ただ虚空を見るばかり。  
 体をくねらせ、スカートを脱ぐ。  
「あっ、いいっ、あっ」  
 頭に浮かんでくるのは、弟の姿。  
 彼の笑顔。弟の寝顔。彼の声。  
 弟の暖かさ。彼の唇の感触。弟の──  
 彼に抱かれたい。愛したい、愛してもらいたい。  
 パンツをずらして直に秘部を擦る。  
「っん、欲しい、欲しいよぉ」  
 私の妄想の中の弟はイジワルだ。なかなか挿入してくれない。  
 指の動きが速くなる。秘部からは汁が漏れ、口からも涎が垂れているが、気にならない。  
「はっ、あっ、あぁっ」  
 さっき触れた、彼のアソコを思い出す。  
 大きくて、熱くて、触れるだけなのに、少し怖かった。だけど、弟のだ、って思うと一気にいとおしく思えて─  
「き、来てぇ、来てよぉ」  
 
─浴び過ぎだ。そろそろ出よう。  
 シャワーを止めて、浴室を出る。  
 結局答えは出なかった。もちろん嫌いな訳は無い。好きだ、好きなんだ。が、分からない。  
 その「好き」は姉と同じ意味なのか?家族としての「好き」から抜け切っていないんじゃ無いか?  
 分からない。分からないんだ。  
 おそらく、今頭にあるのは、告白(?)の返事としては最低に近いと思う。  
 だけど、今の俺には、これしか答えが出ない。  
「はぁ……」  
 とりあえず、服着て飯……?なんだ、なんか忘れてる気がする。  
 ゴミがどうこう、だった気がするが、ゴミ箱の周辺に特に気にとめる様な物は無い。  
 まぁいい。忘れるくらいなら大した事じゃ無いんだろう。  
 そう思いながらTシャツを着る。  
   
 つぷっ……  
「ひっ…ん」  
 中指の先が秘部に入り込む。  
 気持ち良い……だけど…まだ……彼のは…もっと…  
 薬指を中指に沿わせ、徐々に伸ばす。入口に触れ、全身が震える。  
「もっと…もっとぉ」  
 二本目の指が入る。頭が痺れ、更に汁が溢れる。  
「あぁっ、あぁぁ」  
 深く、深く、もっとぉ…  
 中指、薬指が更に深く、秘部に入り込んでいく。  
「いい、ぁ、いぃ…」  
 汁が止まらずにどんどんと溢れているのが分かる。口を閉じることも出来ない。  
結構奥まで押し込んだ。下手に動かしたら、たぶん、すぐにイっちゃう…  
 
 やはり姉の料理は旨い。さすがに少しばかり冷めてはいたが、それで味が損なわれる様な物ではないということだろう。  
 ただ、旨さに没頭する訳にもいかない。  
─食べ終わったら、話そう。  
 さっき考えたこと。それは、姉をがっかりさせるかも知れない。怒らせるかも知れない。  
 だが、話さなくては。そうしなきゃいけない。  
   
 奥まで入った指を、今度は慎重に抜いていく。快感の大波に耐えながら。  
「んっ…んうっ」  
 なんとか抜けた。秘所がヒクヒクと痙攣しているのが分かる。  
 自分の指ですらこうなのだ。弟に挿入されたらどうなるのか。少し怖い。だけど、して欲しい。  
─うん。  
 今度は躊躇なく指を入れる。速度も落とさない。  
「んぅぅぅっ!」  
 快感に全身が歓喜する。  
 大声を出したくなるが、そういう訳にもいかない。だから、片手に持っていた物を口に押し込んだ。  
 それは、彼のトランクス─  
「ん、んっ、んぅっ、んむっ!」  
 彼の匂いが口一杯に広がり、鼻孔を襲う。  
 それは甘美であり、痺れをももたらした。  
 トランクスが唾液で濡れ、呼吸を阻害する。だが、私はそれにすら興奮していた。  
 指を出し入れする、そのたびに快感の波が押し寄せてくる。  
─イっちゃうっ!いい、いいよぉ!もっと、もっと来て!私、私をっ、突いてぇ!  
「んんぅぅぅっ!」  
 何かが、弾けた。  
 体が無意識の内に反り、下半身がベットから跳ね上がる。歓喜の痺れに体が震える。  
 体がベットの上に戻っても、全身の痙攣は止まらない。  
 秘所からは汁がトロトロと溢れ、口はトランクスが入っていて閉じれず、涎が止まらない。  
 
「……ごちそうさんっと」  
 食べ終わってしまった。思えばいつもよりかなりゆっくり食べていた気がする。  
「…はっ……情けない…」  
 自分で自分を笑ってしまう。  
 覚悟を決めたつもりだったのに、姉がどういう反応をするか、怖いんだろう。  
「…チキン野郎が…」  
 椅子から、立ち上がる。  
   
「はぁ…はぁ…はぁ…」  
─してしまった。  
「ん……」  
 半分程が口に入っているトランクスを手で掴み引きずり出す。私の唾液ですっかりドロドロになってしまっている。  
 こんなに激しいのは、初めてだったかも…いや、初めてだった。  
 やっぱり、朝みたいなことがあったから……  
 彼……エッチなお姉ちゃんは…嫌いかな?……嫌われたく無いな…せめて、一緒にいたいな……  
 全身の感覚がゆっくりと戻って来ているのが分かる。  
「シャワー……浴びよう…」  
 部屋に入ったとき無意識に投げ出してしまっていた着替えを拾い集める。  
 着替えは放り出したのに、弟のトランクスだけは握っていたことに今更気付く。  
「うぅ……」  
 これじゃまるで盛った変態ではないか……  
「………はぁ…」  
 やっぱり、世間一般からみたら、こういうのってよくないのかな……  
 さすがに…彼からの答えは私にとって芳しくないものになるだろう。「姉弟」なのだから。  
 好きな人の近くにいれるのは嬉しい。だけど、近すぎた。  
 せめて、近所のお姉さん、ぐらいなら良かったのに……  
 コン、  
 
 姉の部屋のドアの前まで来た。姉がいるとしたら、ここしかないだろう。  
 自らに怖じ気付く間を与えないよう、即断即決でドアをノック。  
 コン、  
「……姉ちゃん…ちょっと、いいかな?」  
 少しの間─  
「……なぁに?」  
「あのさ…さっきの答え……早い方良いかな?……と思ったから………」  
「………」  
「…えと……」  
「………」  
「その……ごめん…」  
「……っ!…」  
 ドアの向こうの姉が息を詰めたのがのが伝わってくる。  
「……あ、いや、んと……そ、そういう意味じゃ、無くて……」  
「……どういう……意味?………」  
 姉の声が震えているのが分かる。  
「…分から……ないんだ」  
「………」  
「…姉ちゃんのことは、もちろん……うん、好き、だよ……でも」  
「でも………何?………」  
「その好き、が…家族、姉に対してなのか……最も身近な女性に対してなのか……がさ………分からない」  
「………」  
「分からないのに、答えられないから……えと、その………」  
「……続…けて…」  
「……ほ、保留させて……もらえない……かな……」  
 我ながら馬鹿だと思う。こんな答えしか思い浮かばなかった。  
「姉ちゃんが本気なら、俺もよく考えて答えたい」  
「……」  
「だから、こんな何も分からないような状態で、答えを出したくない」  
 言葉を止めてしまえば、もう同じことは言えない気がする。今しか言えないことは、今言うしかない。  
 
「姉ちゃんが本気なら、俺は家族だから、とか姉弟だから、なんて誤魔化す様なことはしたくない」  
「……ぇ…」  
「そんな言葉で誤魔化すのは、ずるいと思うんだ。それは、好きだって言ってくれた人に対して失礼だと思うから」  
「……」  
「俺はそういうの、嫌だから。まぁ、道徳感とか?そういうのはどうでも良いと思うのもあるけどね」  
 自分で言っていて笑ってしまう。  
「ふっ…おかしいよね?でもね、俺は、問題はさ、好き合ってるかどうか。だと思う」  
 一言一句、全て姉に伝えたい。だから、言う。  
「好き合ってるなら、他人に口挟む権利は、ないと思う」  
「………」  
「だけど、俺は姉ちゃんを、家族としてしか見てこなかった。好き、の意味合いが違うんだよね」  
 最低な話だろう。女として見なかった、なんて。  
「だから、姉ちゃんを、もう一回、見直したいんだ、一人の、女性として…」  
 今更な話だ…  
「それで…もうちょっと、考えたい…待って、くれないかな?」  
「……」  
「……」  
「……」  
「……やっぱ、駄目─  
「ごめんって、言ったのは?」  
「……はぃ?」  
「なんで……ごめんって、言ったの?」  
「それは……半端だな…って思ったから……こんな答えしか出なくて……情けないな、とか思ったから……」  
「情けなくなんかない」  
「え?……」  
「君はそうやって、よく考えてくれる。お姉ちゃんからあんなこと言われてもそうやって悩んでくれる」  
「………」  
「それは情けなくなんかない……優しいの」  
「………」  
「だから、私はね」  
 
 ドアがいきなり開いて姉が跳び出してぇっ!?  
「ぅおっ!」  
 抱きつかれた。  
 全く予期していないことだったから二人分の重さに堪えられず尻餅をついてしまう。  
「私は君が大好きなの!誰よりも君が好き!!誰よりも君を好き!!」  
 俺の腰に手を回し、胸に頬擦りしながら上目使いで言ってくる。  
 さっきも同じ様なことは聞いたが、改めて聞き、更にこの状態だと顔から火がでそうなくらい恥ずかしい。  
「さっきの答え、私にもチャンスがあるってことでしょ?」  
「う、うん……」  
「それで充分。つまりは君を私に振り向かせれば良いんでしょ?」  
「そういう……こと、なのかな…」  
「分かった。うん、分かった。でも、その結果がどうあれど、あんまり私に答え、待たせるようだと……」  
「待たせる……ようだと?……」  
 俺の顔を見上げ、楽しそうに微笑む  
「襲っちゃうから」  
「なぁっ!?」  
 クスクスと姉が笑ってる。どう反応すれば良いのか分からな…い………てか……どういうことだよ…  
 姉の体は熱っぽく、汗もにじんでいる…呼吸も荒くて…俺の顔を見上げる顔は上気していて…かなり……色っぽい。  
 俺の顎の下に姉の頭。見下ろし、視線を前に向けていくと、首筋から背中までが見える。  
 問題はその先だ。  
 ……なぜスカートをはいていない?  
 
 なんで純白の薄布が見えるんだろう?馬鹿には見えないスカートをはいているのですか?  
 しかも、それがずれて、その……形の良い尻がそのまま見えそうになっている。  
 直視なんかできやしない。が、直視せずとも、姉の体は熱と柔らかさを伝えてくる。  
 ……い、意識したら…反応してきてしまった……  
   
 弟がドギマギしているのが分かる。  
 ─可愛い  
 もっと困らせてくなっちゃうじゃない。  
 彼の鼓動を少しでも身近に感じたい。少しでも長い時間触れていたい。  
 その想いを込めて、更に力強く抱き締める。  
 弟の体温が心地良く私を暖めてくれる。  
「ね……姉ちゃん」  
 私の「女」を意識してほしい。  
 胸だって、凄い大きい、とまではいかないが、それなりにあると思う。  
 スタイルだって、そこらのモデルには負けないくらいは良いと思う。  
 その……秘部だって、君のことを考えると、うずいちゃうし………  
─あ……  
 スカート……はいて、ない………でも……良いや。君に見られるなら……  
 ぎゅうぎゅうと胸を、腰を、体全体を押し付ける。  
 ─……!?…  
 私の胸に何かが触れた。彼の手は両方体を支えるために塞がっている。  
 私が胸を押し付けているのは下腹部。  
 それじゃあ……  
 
「……おっきく………なっちゃった?」  
 言われた。かなり恥ずかしい。なんとか、反論を……  
「だ、だって、その……姉ちゃんが……こんな」  
「……お姉ちゃんで………おっきくなっちゃったの?」  
─俺、墓穴掘った!?  
「あ、ぅあ…」  
「私は…い、良いよ……」  
 何が!?  
「君がしたいなら……良いよ…」  
 な、何を言って─!?  
「………する?」  
 何を?と聞くのはやぼなんだろうか?  
 姉の頬は赤い。が、俺も大差ないだろう。  
 潤んだ瞳が徐々に近付いてくる………  
「……ぇ…」  
 気付けば、姉の肩に手を乗せ……姉を押しとどめていた。  
─拒否  
「……やっぱり…私じゃ……嫌?…」  
 不安そうに声を震わせているのが分かる。  
「そうじゃ……なくて…その……」  
 姉の肩から手を離す。  
「…さっき、言ったでしょ…保留……って………答えは……絶対、出すから……」  
「…………分かった…」  
 腰に回されていた手が緩んでいくのが分かる。  
 口に……柔らかい感触………離れる……  
 触れていたのは、姉の唇。  
「……ぁ…」  
「…これで我慢してあげる………待ってるから……ガッカリさせたら…ひどいから、ね?」  
「…う……ん」  
 姉の、優しい笑顔。  
「私は弟が、君が、大好きだから」  
 

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