こんな私でも反抗期と言うものは確かにありました。  
 まあ、言葉通り親の言う事に逆らって、自分のやりたい事をやりまくって、自由に言いたい放題を過ごした日々もありました。  
 しかし、反抗期も過ぎ、改めて省みてみると、瞬時に赤面するほど、すごく恥ずかしい思い出だったと自分でも思います。  
 もう、その内のたった一つだけ挙げられるのも、泣き喚いて制止の許しを請うほどに。多分、この時に私は小心者だと言う自覚が芽生えたに違いありません。  
 そして、私が物心ついた時からの少し理解できなかった親の言葉をよく思い出します。  
「雪。あなたはいずれ、この厳しい世の中を生き抜いて行くのよ。その為には、一つの物事を狭い視野で見てはダメよ。それでは、すぐに足元掬われて挫折してしまうわ。  
だから、一つの物事を多方面から、最大限に広い視野で見るのよ。そうすれば、あなたはどれだけ厳しい世の中でも生き残って行けるわ」  
 随分と長ったらしかったが、不思議と頭には残っていました。  
 そう教える時の、普段のありふれた笑顔が印象的だった母親の、意外にも真剣な眼差しに圧倒された為かもしれない。  
 何かこれは自分に科せられた命題のような感じがして、ならなかった。  
 これは人生の攻略法なのか。それともどっかの宗教の考え方なのか。はたまたどっかの偉人の名言なのか。  
 幼少期で、反抗することを覚える前までは、それで、友達たくさんできる?好きな人できる?お嫁さんになれる?とか、訊いた覚えがあった気がします。  
 それに対し、母親の「ええ、あなたの夢が叶うわよ」と、にっこり笑った顔も忘れられませんでした。  
 それでも、その頃の私は自分の中で何一つ不確定のままでした。  
 物事をあらゆる角度から、最大限に視野を広めて、多方面から見る。  
 仮に私がこの言葉を母親のせめてものの愛だと受け止めたとしても、いろいろ疑問符がポコポコと湧いて出てきます。  
 いくら真剣な眼差しが印象的だろうと、不明確な教えに素直に従順できるほど、私はそこまで未熟じゃないです。  
 最大限に視野を広めると言う事は、人間ができるあらゆる行動をたくさん考えなければなりません。  
 お母さん。私は一つの行動をやっとのこと考えられる、どこにでもいる人間です。  
 そんな私がしかも物心ついたばっかりで、たくさんの行動を考えられるような器用な人間になれるのですか?  
「大丈夫よ」  
 ・・・・・この一言で片付けられてしまい、私にはもう、これしかないように思えました。  
 
 彼女の名前は瀬奈川雪(せながわ ゆき)。陽民(ひ たみ)高校2年生。至って普通の女の子であり、このラヴストーリーの主役でもある。  
 外見は小学生と言っても、納得できるほどの体格と童顔。髪は川のように流れるほどに整い、腰のところまである。  
 チャームポイントはチワワのようにクリクリとした潤いに満ちた輝かしき目に、泣きボクロ。まあ、第三者からの最初の印象は『美少女』と表せる風貌である。  
 彼女はさっき述べた通りの成り立ちで、性格も前述通り。  
 親からの教えにより、物事を多方面に捉える事だけ覚えた彼女はこれから訪れる恋をどう受け止めるのか・・・。  
 
 
 親からの教えは私にとってやはり困難を極めていました。  
 一つの物事に対し、私はあらゆる限りの行動全てを頭の中の風呂敷を一度全部広げて、その中からその物事に合う行動を選ぶ。  
 まるでRPGの世界のようだった。いや、RPGでもまだ著せていない選択肢さえも実はあるんじゃないのか。それは何なのか。まるで宝探しのようでした。  
 成功したものと言えば、片手の指数程度のものであり、失敗したものを数えたらキリがなく当然のように途中で諦めるでしょう。  
 その中には、それだけしかない選択肢に、無理矢理視野を広くして、また別の行動要素を選択してしまう、灯台下暗し的な失敗も多々してきました。  
 その位私は失敗を犯し、周りの目は徐々に優しくないものに変化していきました。それは私にとって、一人RPGに没頭している異世界の住人と同じくらいの立場でした。  
 私だって人間だから、そういった偏見は嫌だったし苦しかった。特に、人間として見てもらえなくなった事とか。  
 母親だってそんな私を見て、無関係みたいに黙っているわけはなく、  
「あなたはまだ不器用だから、そんな失敗なんていっぱいして当然なの。いっぱいしなさい。そして苦しくなったら、泣いてもいいの。  
私に文句を言ってもいいわ。いくらでも文句を言いなさい。いつか報われるまで、それまでいくらでも失敗してね」  
 と、さっきまで泣き喚いてありったけの文句をぶちまけていた私に、ありがたい言葉を授けたのです。  
 どうして?私がそう言うと、「私はあなたに教えた言葉に自信を持っているからよ。あなたに嘘を教えても、あなたの為にはならないからよ。だから、雪も自信を持ちなさい」  
 と、私は母親のたった一つの愛娘である私に対する愛情を感じ、その日は晩御飯まで泣き続けていた覚えはありました。  
 そうだ、私には母親がいる。お母さんがいる。お母さんがいる限り、私はいくらでも失敗しようと。その晩の就寝時に堅く胸に刻み込みました。  
 
 親からの愛は雪にとって、最初はただ頭の淵にあったもの。次に雪の生活の習慣として。現在では、雪自身のスタイルと化していた。  
 国語の時間では、中学生ほどの背丈ぐらいしかない女教師の有川先生に、「この文面、瀬奈川さん。あなたはどう思いますか?」  
 との問いかけに雪は教科書とにらめっこしながら起立し、「有川先生。もう少しヒントを下さい。それさえあれば答えられるはずです」と素で返してきたのだ。  
 教師人生の中で、生徒からだんまりか、「いや、ちょっと分かりません・・・」ぐらいしか返答を聞かなかった有川先生は、少し面食らった後に、  
冷静に文面の意味を読み取り、雪に答えてくれる期待を持ち、助言を与えてようやく雪自身も納得できる答えを出したのだ。  
 昼食では、食堂にてカレーを食べるつもりの雪は、先日ににんじんいっぱいのカレーを食べて、しばらく口の中に甘さが残っていた。  
 たまたま雪の後ろを通り、覗いてきた友人たちは「こんなににんじんいっぱいで、馬かよ!」と雪をからかっていたところ、  
 大抵は「もう、そんなんじゃないってば。冗談よしてよ」と返すだろうけど、雪の場合は「ねえ、カレー食べる馬っているのかな?」だった。  
 友人はそう言った彼女の奇想天外な発言にもう慣れてしまったのか、「あはははは、雪って相変わらず面白ーい!」と雪のいる席の辺り一辺が、笑いの渦に包まれていた。  
 雪もつられて笑っていたが、物事を多方面から見た結果なのか、満更本気の質問だったようだ。  
 今度はじゃがいものでんぷんを口いっぱいにしたいと言う衝動から、「カレーください。じゃがいもいっぱいで」とおばちゃんに頼んだのだ。  
 少し苦笑いしながら「カレー。じゃがいもいっぱいでね」と厨房に向かった。  
 そして、いつもより水をおかわりしたのだった。雪のスタイルは時折危なっかしいものでもあった。  
 こうして他諸々とそんな調子が続いて、雪の染み付いてしまったスタイルにより、周りは思わず「おお〜」と呟くほど驚かされ、雪は陽民高校の一躍有名人となった。  
 しかし雪はいつも通りのどこか飄々とした印象を漂わせていた。  
 周りの空気に流されない。雪は広大な風呂敷の中のこの選択を選んでいたに違いない。  
 
 何でもない、洗濯日和の快晴である、いつも通りの日常。ちょっと騒ぎがあって、次の日くらいには思い出の一枚となっている、そんな日でした。  
 先週、友人たちが何気ない話題の中に、自分たちの学校の側にある、自動車専門学校の向かい側に、ゲームセンターができたのことでしたので、  
下校中で、久しぶりの道草程度にそこに寄ってみる事にしました。  
 私が歩いている右隣の柵に囲まれた、専門学校の建築構造上、強風が右隣からいたずらに吹いてくる。この程度なら気にはなりません。  
 しかし、意識していなかったからか、その自動車の必要以上にうるさいエンジン音の連続と大量に排出される二酸化炭素や光化学スモッグやらの煙が次第に癇に障っていき、  
やがて私はゲームセンターはこれ一回きりにしようと決意しました。  
 そして、やはり開業して一週間である、色鮮やかな塗装が施された少し派手なゲームセンター、『カンケリ』に足を運びました。  
 店内は開業記念の余韻が輝かしく残っていました。  
 それっぽい垂れ幕やら、無料おやつサービスやら、入り口に待ち構えていた店員たちの笑顔の歓迎やら。  
 私は無意識にその余韻の波に流されていきました。風呂敷を広げる暇を作らせないように。空笑いするしかありませんでした。  
 ちなみに、ここでは各種ゲームから出される音が混じっててプレイに支障が出るとの不満を避ける為、いくつかの人達がヘッドホンを装着している。  
 ヘッドホンはレンタルできますが料金が発生するそうです。  
 そして、色々なアーケードゲームを覗いてきまして、私はこの後の展開として自分もプレイしようと決めました。  
 しかも、特に私と同世代みたいな人たちが集中しているアーケードゲームに、何気なく目が釘付けになっていました。  
 他の人もやるんだろうなあと、ぼんやり眺めていると、人だかりが解散したように集中してた所を離れ始めていきました。  
 はて?と思いつつも、とにかく1P用の隣にある2P用の席が空いたので、そこに向かいました。  
 1P用の席に人がいましたが、赤の他人だけど対戦してみようと決めたのです。  
 
 赤、赤、緑、緑、黄、赤、青、緑、白、白、緑、赤、黄、青、青・・・ちっ、くそ!ううう〜〜、うっ、くっ・・・あああ!!  
 この五種類の軽快のいいリズムの大雨が、俺の集中力を次第に削っていく。  
 おかしい。  
 俺は確か進路希望の三者面談で先公や親からの冷たい視線を浴びて、10分間退場してーと思いながら椅子に座ると言うストレスが溜まって、その解消にとパッドを叩いているんだよ。  
 なのに、更にイライラが募るばかりだ。たかがゲームなのは分かってんだよ。なのにただ見てるだけの後ろのギャラリーの何か期待外れみたいな視線を感じるんだよ。  
 文句を言いたい衝動に駆られるのだが、もしそうなったとして「あんた何言ってんの?俺らはただ見てただけだよ。変な被害妄想するな、ボケ」と言われるのがオチに過ぎない。  
 ああくそ、ああくそ、ああくそ、ああくそ・・・・・。  
 などと一人頭の中で愚痴をぶつぶつ呟き、気付いた時には目の前の画面が『ゲームオーバー』とかっこよく表示されている。  
 後ろががやがや騒がしい。気配で俺から遠のいていくのが分かる。画面のゲームオーバーも「ヘタクソ、とっとと立ち去れ。おととい来やがれ」と言ってるようで。  
 やかましい。言われなくても、立ち去ってやるよ!!  
 ・・・とぶつけるように画面を誰しもがビビるように睨み付け、席を外した時に、街角でぶつかりそうになるシチュエイションのように、一人の少女と出会ってしまった。  
 ふん。別にこんな女一人にどうと言うわけじゃない。俺は構わず身をかわして帰ろうとするが、突然彼女から声をかけてきたのだ。  
「あの、一緒にやりませんか?」  
「・・・は?」  
 見知らない少女が俺に誘いをかける事は、俺が今まで生きてきた人生の中で、初めての経験だったので、反射的にツッコんだ。  
「この、えーと、『アールビー・メゾフォルテ』を」  
 パッドのリズムゲームとは思っていたが、そんな名前だったとは知らんかったわ・・・じゃなくて。  
「何言ってんだよ。やるなら、一人でやってろ。俺は帰る」  
「そうですか。ごめんなさい・・・」  
 やめろ。お互い名前も知らないくせに、そんな残念そうな顔するな。俺が悪者みてえじゃねえか。  
 もうこれ以上関わろうと言う気などないので、考えるのはやめて、少女に目を背けた。  
 しかし、赤の他人とは言え、こんな必要以上にこの少女をよくよく眺めていると結構可愛い・・・しかも声もこの少女と釣り合うほどに癒される・・・。  
 て!アホか!別にその気ねえのにバカか俺は!こんな事口にしたら、周りから何気なく「うわ、あいつロリコンだよ〜」という冷ややかな視線に突き刺される展開じゃねえか!  
 とは言ったものの、まさかストレスのはけ口として選んだこのゲーセンで少女に声をかけられる事は、この一日で三者面談よりもかなり印象的な出来事だった。  
 しばらく距離をとって振り返ると、一人背を向けたまま少女はリズムゲームに浸っていた。  
 ・・・にしても下手だなあ、この女。合わさった時に叩くんだよ。落ちてもいないところばっか叩いたって意味ないじゃん。  
 時々「ふえ〜ん」なんて涙声が聞こえて来るんだが、似合いすぎてついつい口元が緩んじまうじゃん。  
 ・・・あ、ゲームオーバー。ハッ、ザマァねえな。あ、100円入れてる。まだやんのかよ、リズム感ないんだから諦めろって。バカだなあ。  
 ・・・目の前でせかせかと興奮しながら動いて、モグラ叩きじゃねえのに手当たり次第にパッドを叩き付けまくる、一人の小柄な少女を眺めて、ニヤケている自分。  
 ・・・泣きたくなった。恥ずかしさで。自分でイライラを募らせていってる事が分かる。  
 誰でもいいからすれ違いざまに「このロリコンが」と蔑んでくれ。て言うかもう殺してくれ。殺せええーーー!!それでもニヤケている顔を思わず両手で覆い隠した。  
 帰るには、あまりにもイライラが募って爆発しそうなくらい、出来心だと理由をつけて、この場で暴れ回りたい気分だったので、  
少しでも緩和しようと2Fにあるビデオゲームコーナーへと続く階段を上り、引き戸が大して音もなく開いて、中に入った。  
 
 う〜ん、さっき鋭い眼光を放ったような?男の人、ちょっと虫の居所が悪かったのかな?  
 見ず知らずの他人と対戦なんて普通だと思ったんだけど、ついつい自分から誘うようなマネはやっぱりマズかったかな。また失敗しちゃった。  
 それにしても、この『アールビー・メゾフォルテ』は奥が深いですね。これはリズムゲームだと最初から意識してなければ秒殺される類の物と見ました。  
 思えばさっき、難易度が選べたんだよ。最初から普通が選択されていて、弾みで選んでしまったから、つい、ふえ〜んなんて嗚咽を漏らす結果になってしまいました。  
 その事に気付くまで、私はこれをモグラ叩きをしているみたいに興奮していたので、少し硬貨を無駄遣いしてしまった事で凹んでしまいました。後悔先に立たず。  
 でもただでは起きない。何回かのプレイでこのゲームの概要は把握できました。  
 上枠から一定のスピードで降って来る光るチップのようなものの色に応じて、チップが下端に引かれているラインに合わさる時間を計算し、即座に隙なくパッドを叩く。  
 パソコンのキーボードと同じ要領で、この五色のチップとパッドの位置は、丁度私の頭の中に会得しました。  
 あとは、プレイしてパッドを叩くタイミングの計算を調整する。これで下隅にあるスコアは少しは回復するでしょう。  
 結果としてはあと一歩という所でした。やっぱり私のスタイルをもってしても、単なる付け焼刃だったという事でしょう。  
 でも大体それなりにはなったと満足している自分もいました。自分のスタイルで進歩している嬉しさは誰に言われなくても、よく分かっているから。  
 ・・・いい初体験をした私は、このままここからオサラバするのもよかったのだが、もう一つだけ、初めて見るけど、気になった格闘ゲームの事を思い出しました。  
 いそいそと、手際よく2Fへの階段を登り、ビデオゲームコーナーに入ったのです。  
 
 ここのビデオゲームコーナーも同様、いくつかの人達がヘッドホンを装着している。  
 お、私の気になった格闘ゲームに、先客がいるようです。対戦用席は空いていましたので、早速硬貨を投入した。『挑戦者現る!』の表示演出が何気にかっこいい。  
 私が画面を通して出会ったエントリーキャラは、誰も彼も個性的をこれでもかというぐらいに爆発させていました。  
 主人公らしい男性キャラは思わず溜息を漏らすほど。女性キャラも私くらいの世代に似ている少女がいて好感触でした。  
 さて、どのキャラを使おうか。よし、私と同世代っぽいこの元気いっぱいな少女を使おう。  
 画面の隅に貼られているキャラクター技表を見て、そんなに難しい操作ではないみたいですね。  
 思ったより早く始まった試合に、私のキャラがかなり隙だらけだった。相手の体つきの良い男性がその隙を逃さず、飛び蹴りを食らい、軽々と吹っ飛ばされてしまったのです。  
「きゃあ!」と可愛らしい悲鳴を上げながらも、私が慌てて受け身を取る操作を記したステッカーをちらちら見ながら操作を行うと、平気で軽い身のこなしで受け身を取り、立ち上がります。  
 さすがエントリーキャラと言った所ですか。私は少女のあまりの見事な受け身の取り方に、自分がそう操作してた事を忘れそうでした。  
 それでも、相手の男は攻めを止めず、少女に向かって突進してきたのだ。男が攻撃を仕掛けようとする寸前に、私は緊急回避の操作を行いました。  
「おっと!」と少女は体を丸めながら、男の出す衝撃波みたいなものをするりとかわした。そして、ここから反射的に攻撃態勢に入ります。  
 少女はしゃがみこんだまま「やあっ!」とキックを繰り出し、男のふくらはぎ部分に当たり、足元をすくわれたらしく、無様にその場で転倒したのです。  
 その時の私は自然とにんまり微笑んでいました。これが、ビギナーズ・ラックというものでしょうか。  
 どうやらこの第一試合は、私のちらちら技表を見ながらの操作で、勢いでの超必発動まで繰り出した少女の意外な活躍に、相手が面食らった事で、少女・ユキに軍配が上がりました。  
 ユキは勝利シーンにて、「サービスカットはお預けだよ〜」とここぞとばかりに、私と同世代ながらも、規制寸前の色気をアピールして、第二試合を迎えました・・・・・。  
 結果としては言わずもがな、相手が見事な起死回生を果たし、私の操作が相手の動きに追い付いて行けずに、負けたと言う訳です。さらばユキ、せめて安らかに眠ってね。  
「・・・ったくよ、誰だよ。最初のやつ、面食らっちま・・・」  
 私の向こうから鼻声が聞こえてきまして、その主がにょっきりと顔を出したのです。  
 
「て、お前・・・!!」  
 それは1Fで『アールビー・メゾフォルテ』をやっていて、私が対戦を誘った人でした。  
「あれ?ああ、あなただったんですか。帰ったのかと」  
 何となく再会を果たした私は鞄を取り出し、学生証をずいっと彼に見せたのです。  
「俺の勝手・・・て、お前何やって!」  
 出会い頭の先手攻撃で怯んだ彼の顔は非常にマヌケでした。  
「これ、私の名前です」  
「何だよ・・・ん?せな、かわゆき・・・?」  
 あれ?何か変な区切りをしてる気がする、この人・・・。  
「ゆき、です」  
 「陽民高校って、あそこのかよ・・・」  
 彼は、私の通う学校を知ってるらしく、参ったなぁと言う風に頭を掻いている。  
「はい。あなたは?」  
「俺ぁ、鹿暮(か ぐれ)高校の林澄(はやしずみ)けん、うわっ!」  
「へえ、林澄ケンさんて言うんですね」  
「て、てめえ逆ナンかよ!いい度胸してるなあ・・・」  
 あれ?そう言われてみれば、これ逆ナンだなあとポカーンと納得していました。  
「いえ、ここに来るのも最初で最後なもので、ふと対戦してみたいなあと思っただけです」  
「・・・謙太郎(けんたろう)だ」  
 去り際にそう呟くと、そそくさと出口に向かっていった。私は頭を掻く彼の背中を無意味に目で追っていました。  
 そして、財布の中身を確かめてみようと思いましたが、一瞬思い直し、ただのうろ覚えで800円ぐらいは遣ったと一人納得していました。  
 ・・・多分、これがファースト・インプレッションに違いありませんでした。そして、私の中に眠っていた未知なる感情が目を覚ますのは、それから後になってからの話なのです。  
 
 
 第2話に続く。  
 

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