「ええ〜? じゃあ敏則さん、今日は帰ってこないんですかあ?」  
「ああ、まあ仕方ないよ。順番なんだし」  
朝、食卓を挟んで向かい合わせに座る夕那が、くりっとした目を真ん丸に見開いて、  
タコさんウィンナーを口から落としながら、すっとんきょんな声をあげる。  
そんな夕那の表情がとてもおかしくて、思わず吹き出しそうになりながら答えた。  
「まあそうなんでしょうけども、今どき珍しいですねえ。宿直なんて」  
「そうだね。………それはそうと、今晩はちゃんと一人で過ごせるよね?」  
確かにそれは言える。もっとも、田舎の学校ならそれが当たり前なのかもしれないが。  
そんなことを考えながら、夕那に返事をした。  
「もうっ敏則さんたら。夕那、そんな子どもじゃないですよお」  
「あはは、そりゃそうだ。さて、そろそろ時間、か」  
俺の言葉を受けて、夕那は頬っぺたをぷくりと膨らませて抗議する。  
確かに夕那なら、何も心配することは無いやな。……色々な意味で。  
そう思いながら苦笑いを浮かべた俺は、腕時計を見てゆっくりと席を立った。  
「はあい。これ、お弁当です。気をつけてくださいね」  
食後のお茶をすすっていた夕那は、にっこりと笑みを浮かべ、俺に弁当箱を差し出してきた。  
……俺のために弁当を作ってくれるのはすごく嬉しいし、美味しいことは美味しいのだが、  
毎度ハートマークとか描かれているから、正直言って皆の前で開くには少々勇気がいる弁当だ。  
 
「ん。いつもありがと。それじゃ、行ってくるね」  
「あ、ちょ、ちょっと待ってください」  
弁当箱を鞄にしまい玄関へ向かおうとする俺を、夕那が慌てて引き止める。  
どうしたんだ、いったい……?   
「ネクタイが曲がってますよお。まったく、ちゃんとしてくださいねえ」  
夕那は目の前まで歩み寄ってきたかと思うと、両手をにゅっと伸ばして俺のネクタイを締め直す。  
小首を傾げ、まるで年下の子に言い聞かせるみたいにつぶやきながら。  
「さっ、これでいいですよお」  
「ど、どうもありがと………ん…んんっ……」  
ネクタイを締め直し、満足そうな笑みを浮かべる夕那に礼を言おうとしたが、  
夕那がいきなり俺のくちびるを奪ってきたため、言葉が中断される。  
「……んっ……。行ってらっしゃいのキスです。気をつけて行ってきて下さいね、敏則さんっ」  
「ああ、それじゃあなっ」  
はにかみながら手を振る夕那に、手を振り返して車に乗り込んだ。  
……何だか、絵に描いたような新婚家庭だな、これじゃ。  
そんなことを考えながら、俺は妙に気分を高揚させたまま、車を発進させた――  
 
「じゃ、福山先生。お先です。当直、気をつけてくださいね」  
「あ、ありがとうございます。先生こそ、どうぞお気をつけて」  
授業も終わり、職員室でテストの採点をしている俺に、別の教師が話しかけてきた。  
ふと窓を見ると夕焼けはおろか、すでに星が幾つか見え始めている。……もうそんな時間か……。  
「ふあ〜あ。さってと…それじゃ、とりあえず見回りするとすっか……」  
軽く伸びをしながら席を立つ。ま、肩が凝りはじめたから、丁度いいか。  
 
コツ…コツ…コツ…  
 
誰もいない廊下を、俺の靴音だけが鳴り響く。もうこの時間は人っ子ひとりいやしない。  
何せこの学校、小高い山の上に建っていて、麓の最も近い民家にですら、車で5分くらい掛かるのだ。  
俺たち教師は、マイカー通勤だから大して問題は無いが、生徒たちはそうもいかない。  
実は校則で日が暮れてからは、生徒だけで山道を通るのを禁止しているのだ。  
まあ、生徒たちに何かあっては大変だから、それはそれで間違っているとは思えない。  
むしろ最近の世の中の動向を見ると、当然の措置とも言えるだろう。  
一応生徒たちのために、朝と放課後にバスが2、3本ずつ学校の前まで来るが、  
乗り遅れてしまう生徒も当然出てくる。おかげで何回か、生徒を自宅まで送り届けたこともあった。  
もっとも、それが元で生徒の親とも、それなりに親交を持てるようになったのだから、  
それはそれでいいのかもしれない。  
だがやはり、生徒の親からは苦情が出ているようで、学校の移転話も持ち上がっているようだ。  
……利便性を考慮すれば、当然の話だ。俺もそれには異存は無い。  
ただ、最初に赴任した校舎が、いきなり廃止になるのは、正直言って少し寂しいとも思っていたが。  
 
「そういや、四不思議がどうのとか言ってたな…まったく、あいつらときたら………」  
不意に昼間の生徒との会話を思い出し、独り言が漏れる。  
何せ連中、俺が宿直だと分かると、ここぞとばかりに怪談を始めたのだ。  
まったく……それくらいで驚くはずがないだろって……。そんなことを考え、廊下の角を曲がり  
「うわあああああっ!!」  
暗がりに女の子が立っているのを見て、思い切り大きな悲鳴をあげていた。  
 
「ちょっとちょっと、そんなに驚かないでくださいよお」  
「ゆ、夕那!?」  
女の子は尻餅をついてる俺に、手を伸ばしながらつぶやいた。……え? その声は、まさか……?   
首を傾げながら、女の子に懐中電灯を向けた俺は、再び叫び声をあげた。  
懐中電灯に映し出されたのは、憮然とした表情でこちらを見ている夕那だったからだ。  
 
「もうっ、敏則さんったら。そんな幽霊を見るような目で見なくても、いいじゃないですかあ」  
「…………あ、ゴ、ゴメン。…って、何でこんなトコにいるの?」  
夕那は頬をぷくりと膨らませたまま、俺に向かってなじるように言った。  
いや、あの状況なら普通は驚く。驚かないほうがおかしい。  
………というか『幽霊を見るような』って、よく考えたら夕那はそもそも幽霊だろうが。  
どうにか気を取り直した俺は、夕那に謝りながら問いかけた。  
「え〜っと、バス乗って来たんですけれど、バス停からここまで結構歩くんですねえ。  
山道が結構暗かったので、夕那ちょっと怖かったです」  
俺に腕を絡め、人差し指を手に添えながら夕那は答える。  
そうだよな。この時間だとバスは学校には入ってこないで、麓のバス停を通り過ぎるだけ、だ。  
それにしても、本当に幽霊らしくない幽霊だな。暗いのが怖いって………って、そうじゃなくてよ。  
「いや、俺が聞きたいのはそこじゃなくて、何をしにここへ来たの、と聞いているんだけど?」  
「ああそうだったですか。……やっぱり一人じゃ寂しいんで、やって来ちゃいましたあ。  
それに、敏則さんの職場も見たかったですし。はい、これお弁当です」  
再度の問いに、夕那は舌をペロリと出してあっけらかんと答えたかと思うと、  
俺を上目遣いに見つめ、弁当箱を差し出してきた。  
「そ、そりゃどうもありがと…って………ううん…まあ、いいか」  
弁当を受け取り夕那に礼を言いながら考える。  
……何か違うような気がするが、今さら送り返す訳にもいかないしな……。  
「さ、それじゃ早速見回りしましょう!」  
夕那は妙に張り切った声で、投げやりにつぶやく俺の手を引っ張りだした――  
 
「へ〜え、ここが教室ですかあ。………よいしょっと。………ううん、随分小さな椅子ですねえ。  
夕那も、このサイズがピッタリだったときがあったんだなあ………」  
教室に入った夕那は、真ん中辺りの席に駆け寄り、腰掛けたかと思うと遠い目でつぶやいた。  
うーん……本人があっけらかんとしている分、何だかこちらがせつなくなってしまうな……。  
「ね、先生! 授業を始めてもらっていいですか?」  
「ええっ!?」  
椅子に座ったまま、右手をピシッと上げながら夕那は微笑んだ。いきなり何を言い出すんだ、まったく。  
「もうっ、授業ですよ、じゅ・ぎょ・う! 早く始めてくださいっ!」  
「う…う〜んと……。それじゃこの問題、分かる人?」  
呆然としている俺を見て、手足をパタパタさせながら催促する夕那。  
しばし考えた末、俺は黒板に数式を書き出した。………まあ、たまにはいい、かな?   
その代わり、どうせなら本気で答えてもらうぞ。  
「ええ〜。先生ズルイですう。それ、小学生の問題じゃないですよお」  
「はいはい口答えしない。……夕那クン、前に出て答えを書き込んで」  
夕那はくちびるを尖らせて抗議する。……今さら夕那に小学生の問題を出してどうする。  
俺は夕那を指差し、黒板に答えを書き込むように促した。…そりゃ、生徒が一人しかいなけりゃ、な。  
 
「う〜んっとお……えっとお…先生、わからないですう」  
夕那はしばらくの間、黒板に数式を書いたり消したりを繰り返していたが、  
とうとう諦めたようにチョークを握り締めながら、こちらを振り向いてお手上げのポーズを取った。  
ええい、根を上げるのが早すぎるぞ。というかこの問題、いつだか教えたろうが。  
「わかんない、じゃないっ。ここは…こうして……こうなって……で、こうなる。………わかったかな?」  
「は〜い、わっかりましたあ」  
「それじゃ、次の問題。さ、考えて」  
俺が黒板に解答を書くと、夕那はコクコク頷きながら返事をした。……本当に解ってるんだろうな?   
そう思った俺は、違う問題を書き込みながら、夕那に解くように促した。  
こちらは今の応用だから、内容を理解出来てれば当然解答が導き出せるわけで。  
 
「う……う〜んと…あれが……こうして…えっと…う〜ん………」  
頭を抱えながら黒板と睨めっこをしている夕那。……やれやれ、全然解ってないな、こりゃ。  
腕組みしながら机に腰掛け、夕那が悪戦苦闘している様子を見ていたが、  
悩ましげに全身をくねらせる姿を目にしたとき、俺の頭の中に悪巧みが浮かび上がった。  
「え……え〜っとお………わ、わからな……きゃっ!?」  
「まったく…夕那クンは、授業で一体何を聞いていたのかな? これは、お仕置きが必要かな?」  
降参しようとする夕那を、背後からそっと抱きしめると、夕那は突然のことに目を丸くさせる。  
俺はそのまま、夕那のスカートの中に手を潜り込ませた。  
「あ…ちょ、こ…これ……お、お仕置きな………て、あ、ああんっ。あは…あっ……」  
夕那は抗議の声をあげようとするが、下着越しに割れ目を撫であげると、たちまち甘い声を漏らす。  
さらに服の上から胸を揉み始めると、面白いくらいに悶え始める。俺は夢中で両手を動かし続けた。  
……そういえば、ここんとこ忙しかったから、とんと御無沙汰だったしな。  
最近の夕那は、一人で風呂に入れるようになってたから、  
体を洗いながら肌を触れ合わすことも出来なかったし、久々に楽しむとするか……。  
 
「んは…あ……ああっ……」  
久々のせいか、揉み始めてさほど経たないうちに、夕那は艶っぽい声であえぎ始める。  
いつの間にやら、すっかり敏感になってしまって……果たして、嬉しいと言っていいのか悪いのか?   
「んん? 夕那クン、何だかこの辺が湿ってきたが、どうしたのかな?」  
「ああっ……そ…それ……は…あ…あはあっ………あんっ!」  
下着の上からでも、夕那の割れ目からは恥ずかしい液体が、溢れているのが分かる。  
それをあからさまに指摘され、夕那の顔は真っ赤に染まっていた。  
「はあ……あっ………と、敏則さん? …………ん…んんっ……んっ…」  
もう片方の手を服の裾から潜り込ませ、夕那の肌に直接触れてみた。  
ピクンと体を震わせ、必死に俺のほうを仰ぎ見る夕那。その目は心なしか潤んでいる。  
そのくりっとした目に吸い込まれるように、俺はそのまま夕那のくちびるを奪っていた。  
 
「ぷは……あ…っ………と…敏則さん………」  
くちびるを離すと、蕩けるような声で俺の名を呼ぶ夕那。  
俺が支えてないと倒れこんでしまいようなくらい、腰はガクガク震えている。  
だがそれでも、俺の手は止まることが無く、夕那の胸に軽く触れた。  
「んあ……あ! ……あんっ!」  
もはや全身が、性感帯にでもなっているかのごとく、どこに触れても夕那はあえぎ続けていた。  
そのまま胸を揉んでみると…………あ、あれ? 何だか…大きくなってないか?  
「あ…あはあっ! と、敏則さん! 敏則さあんっ!!」  
うん、確かに大きくなっている。前までは平らな胸の真ん中に、可愛らしい乳首があるという感じで、  
いまいち揉み応えがなかったのに、今でははっきりと起伏を感じ取ることが出来る。  
「な、なあ夕那。何だか…胸、大きくなってきてないか?」  
「あ……当たり前ですようっ……ゆ、夕那だって、まだまだ成長期なんですからあ……あんっ」  
俺の質問に、夕那はあえぎながらも振り絞るような声で、如何にも当然とばかりに答える。  
………ううむ……幽霊が成長ねえ……まさかそんなこと、あるのかねえ?  
ま、いいか。それならそれで、楽しみが増えるだけ、さ。  
 
「ふうむ…何だか、この辺も硬くなってきたね。何故だろう?」  
「んあ……あ…ああっ…そ…それ…は…ああっ!!」  
胸が成長したおかげで、簡単に探り当てることが出来た乳首を、軽く摘まんでみた。  
勃起していた乳首は、コリコリとした手応えが心地よくて、つい絞り上げるように力が篭ってしまう。  
さすがに、母乳など出るはずはないのだが――いや、出たら出たでそれは大変なのだが――  
その度に夕那は悲鳴をあげながら、身をよじらせていた。  
「ああんっ! あは! あああっ!!」  
 
カツーン  
 
夕那が大きく身をよじらせた弾みで、黒板にぶつかり、チョークが教壇の上に落ちた。  
チョークは、当然のことながら粉々に砕け、飛び散った破片が教壇を汚している。  
「あ……落とし…ちゃった………」  
「ん。夕那クン、教室を汚しちゃいけないな」  
はっと我に返り、夕那はぽそりとつぶやく。この瞬間、俺はいきなり教師に戻っていた。  
ただ、普通の教師ではありえない、どころか教師にあるまじき悪巧みを思い浮かべながら、だけどな。  
「す…すみません、敏則さん……」  
「敏則さんじゃない、先生だろ? これは…罰掃除しなければ、ね」  
「え………? ?? 縄跳び…?」  
すっかり畏まる夕那を見て、俺は掃除用具箱から箒とチリトリ、それと近くの棚から縄跳びを取り出した。  
箒とチリトリはともかく、縄跳びを手にする俺を見て、夕那はきょとんとしている。  
……そりゃもっともだ。どこの世界に掃除をするときに、縄跳びを使うヤツがいるというのだ。  
だがこっちは別に、掃除で使うというわけではないからねえ……。  
「さて……俺も手伝うから、これで掃除してもらおうか」  
「は…はい、わかりまし……えっ?」  
右手に箒と左手にチリトリをかざして、顔をしかめながら夕那に向かって言った。  
うつむきながら、夕那は箒とチリトリに向かって手を伸ばすが、俺はぱっと引っ込めた。  
夕那は意表を突かれたようで、怪訝そうに顔をあげ、俺をじっと見つめている。  
「何をしているの? そのままじゃ、罰にならないだろ?」  
「と、敏則さん! い、いやあっ!」  
言いながら俺は夕那の背中に回り込み、縛ってあった縄跳びを解く。  
次の瞬間、夜の学校に夕那の悲鳴が響き渡っていた――  
 
「あ…う……あう…っ……」  
「ほらほら夕那、チリトリは先生が構えてるんだから、ちゃんとこっちに運んでこないと」  
下半身裸の夕那は、縄跳びで後ろ手に縛られ、割れ目に箒を差し込まれた状態で、  
ポロポロと涙をこぼしながら、嗚咽の声を漏らしている。  
俺は教壇と床の段差でチリトリを構え、大袈裟に肩をすくめながら夕那に声を掛けた。  
「そ……そう言われても……あ、ああっ……」  
「おいおい、プルプル震えてるよ。そんなんじゃ、いつまで経っても片づかないじゃない」  
震える声で、夕那は俺に向かって返事をする。箒でチョークの粉を払おうと、  
少し動くたびに割れ目を刺激され、夕那は声を漏らし続けていたのだ。  
そんな夕那の姿に妙に興奮していた俺は、容赦なく夕那をなじるように声を掛け続けた。  
「く…は……あ…ああ…っ………」  
「そらそら、もう一息だ。がんばれがんばれ」  
それでも夕那は、喘ぎとも嗚咽ともいえる声を漏らし続けながら、こちらのほうへと近づいてくる。  
ふと見ると、夕那の割れ目から太ももにかけて、透明な液体がつつっと伝っていた。  
「ん……くう…っ……んっ…んふっ……」  
「ようしっ、うまいぞ夕那。これで終わり、だ」  
「は…あ……あああっ!!」  
顔はおろか、耳まで真っ赤に染めあげながら、夕那はチリトリにチョークの破片を落としこむ。  
教壇が綺麗になったのを確認した俺は、夕那にねぎらいの言葉をかけ、箒を夕那から引き抜いた。  
その途端、夕那は絶叫をあげるとともに、そのまま床にへたりこんでしまった――  
 
「はあ…はあ…はあ…はあ……と、敏則さん……」  
「な、なんだい、夕那?」  
夕那は肩で息をしながら首だけを背中に向け、縄跳びを解いている俺を見据えてつぶやいた。  
その目に非難の色が入っているのを見て、さすがに声がうわずってしまう。……そりゃ、怒るよなあ。  
「まさかとは思いますが……普段から、生徒さん相手にこんなことしてるんじゃ、ないですよねえ?」  
「そ、そんなはずないだろ! 何言ってるんだ!?」  
首をこちらに向けたまま口調はいつもの通りで、それでも凄く低い声で夕那は言った。  
あまりの迫力と質問の内容に驚き、俺は慌てて声をうわずらせたまま答える。  
……俺は無実だ。いや、夕那にはしてしまったから、  
「ホントですかあ?」  
「ホ、ホントだってば! 信じてくれよっ!」  
それでもジト目で俺を見つめ、夕那はさらに問いかけてきた。  
うう……ホント、俺は夕那のこの目に弱い。というか、信じるほうが無理があるかも知れないが。  
「ふうん………わっかりました。夕那、敏則さんを信じますよっ!?」  
鼻を鳴らしたかと思うと、夕那は俺の鼻の頭をちょんと突っつきながら、明るい声で言った。  
「ゆ、夕那……ん…んんっ……」  
「……っ…。でも……その、き…気持ちよかったです……」  
俺の返事を遮るように、夕那がいきなり俺のくちびるを奪ってきた。  
突然のことに頭が混乱している俺を見て、もじもじしながら夕那がポツリとつぶやく。  
「え?」  
「た…たまには……本当にたまには、こういうのもイイかも…しれませんねっ」  
俺から視線を逸らし、指をせわしなく動かしながら、ポソポソとつぶやき続ける夕那。そ、それって……。  
「その代わり、夕那以外にはヘンなこと、間違ってもしないでくださいねっ!?」  
「あ、ああ分かった夕那。約束するよ」  
言葉の意味を反芻しながら呆然としている俺に向かって、  
夕那は指をピシリと突きつけ、ウィンクしながら白い歯を見せて、笑いかけてくる。  
「んっ、それでよろしいっ。さ、それじゃ見回り、続けましょうっ!」  
俺の返事に夕那はにっこりと微笑み、俺の手を取って再び歩き始めた。  
 

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