「それにしても、暑いですねえ。この学校、プールって無いんですかあ?」  
「ああ……プールねえ。ちゃんとあることはあるぞ」  
俺に腕を絡ませていた夕那が、額を手で拭いながら俺に問い掛けてきた。……幽霊が汗をかくのか。  
まあ、それはさておき、確かに溶けてしまいそうなほどに暑い。  
ここって一応、小高い山の上にあるから、夜は涼しくなるはずなのだが、  
数日前の雨の影響なのか、全然気温も湿度も下がってなかった。  
「ホ、ホントですか!? じゃあ、先にそっちを見回るってのはどうですか?  
多分、涼しくなれると思いますよお」  
「そうだな……それもひとつの方法だよな」  
………夕那の言うとおり、順番を変えるのなら、見回りをサボったことにはならないな。  
などと、サラリーマン時代のサボリ症が出てきた俺は、夕那の提案に二つ返事で乗っかっていた。  
それにしても…夕那って、段々幽霊から人間に近づいてる気がするのだが、気のせいだろうか?  
かつては大量の水が苦手で、風呂にも一人で入れなかったくらいなのに……。  
一緒に入れなくて寂しい、という考えも無くは無かったりするのだが。  
と言うか、たまには一緒に入って欲しい………。そして、久々にあんなことや、こんなことを………。  
「あれえ? どうしたんですかあ? 早く、プールに案内してくださいよお」  
「え!? あ、ああ。……わかったわかった」  
俺が違う世界に出掛けているうちに、夕那はかなり前方に進んでいた。  
下心を悟られないように、俺は出来るだけ平静を装いながら、慌てて夕那の後を追った――  
 
「さて、ここがプールで……あれ? 夕那?」  
プールについた俺は、隣の夕那に声を掛けた。  
が、ずっと隣にいると思っていた夕那の姿は、どこにも無かった。いったい、どこへ……?  
 
ドンッ   バシャーンッ!  
 
「う、うわあっ!?」  
不意に何者かに背中を押され、プールへダイブしてしまう。  
水に浸けないように、懐中電灯を持った右手だけは高く掲げながら。  
「あははっ、さっきのお返しです。涼しいですかあ? 敏則さん」  
「ゆ…夕那!? な、何てこと……を………」  
はしゃぎ声がしたほうを懐中電灯で照らすと、夕那が手を叩いて喜んでいた。  
俺は文句を言おうとしたが、夕那の姿を目にして思わず固まっていた。  
いつの間に着替えたのか、黄色の水泳帽を被り、紺色のスクール水着を着ていたのだ。  
しかも、お腹のゼッケンには”5-B・星崎”としっかり書かれている。  
「ん~? 敏則さん、どうしたんですかあ? ぼうっとしちゃってえ」  
「い、いや……その水着…夕那って……そんなトシだったっけか……?」  
夕那の質問に、どぎまぎしながら答える。………だとすると、あんなことやこんなことをするのは……。  
 
「ああ、これですかあ? やだなあ、昔の水着ですよお。ただ、やっぱり小さいですねえ。  
ほら、お尻なんかピッチピチですう」  
言うや否や、夕那はお尻をこちらに向け、水着の裾を手で引っ張った。  
……確かに小さい。というか、半分股間に食い込んでないか?  
それはそれでイイ、のだが……。というか、これはまさか、夕那から誘っているのか?  
「さって。久々に、泳ぎますよお」  
俺の葛藤を他所に、飛び込み台に乗った夕那は、舌なめずりをしながら、構えた。  
どうやら……他意は無く、無邪気にはしゃいでいるだけ……か。それはそれで寂しい。  
 
バシャーン  
 
水しぶきを立てながら、夕那がプールに飛び込んだ。  
そのままスイスイと、プールの反対側の壁へと泳いでいく。……結構上手いじゃないの。  
 
「ふ~うっ。やっぱりプールは気持ちいいですねえ………っと」  
反対側のカベでターンして、戻ってきた夕那がひとことつぶやいたかと思うと、  
そのままチャプンと音を立てて、水の中へ潜った。……まったく…元気なものだ………。  
 
「………あ、あれ? ゆ、夕那? どこ行ったんだ!?」  
夕那が水の中へ姿を消し、5分が経過した。だが、浮かび上がる気配がまったくない。  
さすがに心配してきた俺は、夕那が姿を消した辺りの場所へと歩いていった。  
「ゆ……夕那…」  
プールのほぼ中央にたどり着いたが、やはり夕那の姿は見えない。  
水の中は真っ暗で、そこにいるのかどうかも分からなかった。まさか…溺れてしまったのか?  
いや、その場合でも水音ひとつしないのが解せない。  
「夕那! 隠れんぼはいいから、出て……う、うわあっ!?」  
辺りを見回しながら叫ぼうとしたが、突然何者かに両足を引っ張られ、水の中に引き込まれた。  
鼻の中に水が入り込み、ツーンとした痛みに涙がこみあげてくる。  
「ゲボ! ゴホ! ゴホゴホッ! ……あ…はあ…な…何だ!?」  
必死にもがき、どうにか顔だけは水面から出すことが出来た。水を飲んだ苦しさに、何度もむせ返る。  
自由が利かない両足が不意に、意思に反して大きく開いた。  
「な…何がどうな……う、ううっ!」  
戸惑う暇もなく、下腹部から伝わる刺激。……まるで、誰かに優しく撫でられてるような……。  
「あ……ああっ………」  
真っ暗で何も見えないうえに、両腕は体が沈んでしまわないように、もがくのが精一杯で、  
下腹部を確かめる余裕などあろうはずが無く、ただあえぎ声を漏らしていた。  
だが悲しいかな、刺激を与える相手の正体が、よく分からないのにも関わらず、いや、  
分からないからこそ、俺のモノは刺激に正直に反応し、隆々と勃ちあがっていた。  
また、手足の自由が利かず、水の中でふわふわ浮いているという状況も、  
俺を興奮させる材料になっているのかもしれない。ううむ、俺もまだ若いな。……って、そうでなくてよ。  
 
「く…う……ううっ……」  
モノの先端に、何か柔らかい細いものが、ツンツンと当たってくる。  
特に敏感な場所に絶妙な刺激を受け、思わず上体が仰け反ってしまう。  
「うあ! あっ! ああっ!」  
モノの先端をつつき回していたものが、今度は裏筋周辺をなぞり始めた。  
同時に柔らかいものがモノを包み込んだかと思うと、モノに沿って前後に動きだす。  
腰を揺り動かして、刺激から逃れようとするが、水中で、しかも足もついていない状態で、  
自由に動けるはずも無く、むしろモノにさらなる刺激を与えることになっていた。  
「くう……うっ……」  
相変わらず、裏筋周辺を柔らかいものがなぞり続ける中、  
今度はモノ全体に伝わる刺激が、温かくて柔らかいものに包まれるような感触に変わった。  
時折何か硬いものがモノに当たるのが、また違う刺激となって快感を与えてくれる。  
やばい……これは……もう、持たないかも………。  
「う! ううっ!」  
ほどなくして、俺は悲鳴をあげると同時に、あっけなく絶頂に達してしまった。  
 
 
「はあ…はあ……はあ…はあ………」  
射精後の脱力感と同時に、下半身が自由に動けるようになる。  
俺はようやくプールの床に足をつけ、肩で息をしていた。と、  
 
チャポン  
 
「んぐ…ん……んんっ……。敏則さん、いっぱい…いっぱい出ましたね……んっ……」  
「ゆ……夕那!?」  
夕那が口元を手の甲で押さえながら、水面から顔を出したかと思うと、俺に向かって微笑みかける。  
驚きのあまり、俺は目を点にして、夕那をじっと見つめていた。  
「?? 敏則さん、どうしましたかあ? 夕那の顔に、何かついてますかあ?」  
「え……あ…いやその……い、今の……ゆ、夕那だったの……か?」  
小首を傾げながら、いつもの上目遣いで俺を見つめる夕那。  
俺は混乱する頭の中、しどろもどろになりながらも、どうにか疑問を口にした。  
……というか、いつの間にあんなに上手くなってたんだ?  
「そおですよお。って、当たり前じゃないですかあ。このプール、私たち以外は誰もいないですよお」  
「いやその……それにしても、息継ぎって………」  
水の中に姿を消してから、今までずっと潜っていたというのか? それって、世界記録ものだぞ。  
「別に私、普段から息してませんからあ。確かに目を開けたりすると、すっごく痛いですけどお」  
「あ………そだっけ…………」  
肩をすくめ、あっけらかんと答える夕那。……息はしないけど、痛みは感じるっていったい……。  
「さ、敏則さん。涼しくなったところで、そろそろあがりましょうかあ?」  
「……そ…そだね。そうしようか」  
……こう見えても、やっぱり夕那って人間じゃなかったんだな。  
まあ、だからと言って、今さら離れようとは思わないけれど、な。  
俺の手を引っ張り、にっこり微笑む夕那を見て、俺はそんなことを考えていた。  
 

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