「ふう……なかなか上手くならないなあ……」
リフトに乗り、思わず漏れる溜め息。スノボを始めてはや数年。普通に滑ることくらいはどうにか出来る。
だが、それ以上のこととなると、なかなか出来なかった。
『まったく……上手い人がそばにいなかったら、上達なんてしないよなあ』
リフトに乗るたびに、そうぼやく友人の言葉が頭に浮かぶ。…それもそう、だよな。
普段は、その友人と一緒に雪山へ来るのだが、忙しいとのことで、今日は一人で来ていた。
「それにしても…今年は雪が少なければ人も少ないな……まったく、どうしたものか…」
一人だと分かっていても、ついつい独り言が漏れ出してしまう。
そう。このスキー場、今年は雪が少なくて、ところどころ地面が顔を出している場所があるんだ。
おかげで、営業していないコースもあったりするくらい。
しかもそのせいか、客が凄く少なかったりして。
ま、僕としては家からはそこそこ近いし、リフトの待ち時間も少ないからいいんだけど、
ここまで人が少ないと、ゲレンデ閉鎖とかになりそうで、心配になってしまう。
…かと言って、僕がどうこう出来るわけでもないんだけどね。
「うわ、何だありゃ?」
下を見て、思わず声が漏れる。
どうやら、二人で競争をしているみたいなのだが、片方が突然空中で一回転して、見事着地したのだ。
「………やれやれ。あんな人間離れした技、教えてもらわなければ、出来るはずないって」
首を振りながらリフトから降りる。……さて、人も少ないしのんびり滑るか………。
「ねえ、キミさ。上達したいとか言ってるけど、なんならアタシが教えてあげようか?」
突然甲高い声が聞こえる。何だ何処だ誰だ? ……辺りを見渡すが誰もいない。
「ここだよ、ここ」
「なあっ!?」
すぐそばで響き渡る声に、思わず仰け反ってしまう。
何故なら、そこには上から下まで真っ白の格好の、女の子が立っていたから、だった。
まるで…雪をそのまま切り取ったような、そんな感じ……だが、それ以上に僕が驚いたのは、
見た目からは想像も出来ないくらいの、大人びた仕草だった。
「キミ、結構この山に頻繁に来てるよね。いつもの友達はいないんだ?
今日は特別に、晩ご飯をご馳走してくれるって約束してくれたら、コーチしてあげてもいいよ」
「え? あ、えっと……」
ぽかんとしている僕に、女の子が話しかけてくる。口調も、どこか大人びている。
……それにしても、そんなに顔を覚えられるくらい来てるのか、僕たちは。
「ちょっとちょっと、せっかく教えてあげるって言ってるんだから、もう少し嬉しそうな返事しなさいよっ」
「へ……そ、そうも言うけれど……」
腕を組み、頬っぺたをぷくりと膨らませながら女の子は言った。…何だか、本当に年上みたい。
「何? 男ならはっきりとしゃべる!」
「い、いや…突然『教えてくれる』とか言われて、『わあ嬉しい』なんて言えないよ」
ピシリと指を突きつけながら、さらに問い詰めてくる女の子に、僕はしどろもどろに答える。
「ふうん、どうせ『こんな小さい子に何が出来る』とか、そんなこと考えてるんでしょ。
……ま、いいけどね。だったら、この滑りを見てから判断してもらいましょうか!」
「あ。ちょ、ちょっと!」
言うや否や、女の子は突然滑り出した。僕は彼女を追うように、慌てて滑り始めた――
「す……凄い…」
下に着いて、思わず漏れる一言。
何せ遥か前方で、段差も無い斜面で軽々と空中に飛び上がって回転したり、
板の片方を浮かせたまま滑り続けたりと、信じられない滑り方を繰り広げていたのだから。
真っ白い服装と相まって、まるで雪の妖精がダンスを踊っているかのような、
女の子の華麗な姿にすっかり心を奪われた僕は、ただただ見惚れるしかなかった。
おかげで、ひとつ間違えればゲレンデと同化しそうな真っ白い姿を、見失わずに済んだわけだけど…
信じられないことに、そこまで妙技を披露していても、全力で滑走する僕が追いつけなかったのだ。
……いや、見惚れていた上に僕の滑走スピード自体が遅い、って話もあるかもしれないけれど、
まともに滑ったときの女の子のスピードは、先程競争してた女性にも決して引けをとらないほどだ。
いや、むしろ女の子のほうが早いくらいかもしれない。
「どう? 少しはまともに教わろうって気になった?」
「は、はい。よ、ヨロシクお願いいたしマス」
不意に声がして顔をあげると、そこには腕を組んで胸を張る女の子がいた。
僕は声を裏返しながら、そう答えるのがやっとだった。
「そっか…よしっ。キミ、普通に滑ろうとしたら滑れるんだよね。
とりあえずは方向転換の基本から、かな? ……よしっ、早速行こっ」
突然僕の手を取りながら、女の子は満足そうに微笑みかける。
何故かドキリとしてしまったが、それを否定しようと必死に頭をブンブン振っている僕の姿があった。
「ちょっとちょっと、ここで練習するの?」
「そ。まずは基本を覚えてから。…それとも、アタシの教え方に不満でもある?」
女の子に手を引かれてついてきた先は、子供用に仕切られた場所のすぐ隣。
確かに傾斜は緩やかで、距離もそんなに長くはないから、初心者にはうってつけだけど……。
「不満というか…その……」
よく考えたら、いい年した男が小さい女の子に教えられている、んだものね。
逆ならともかく、正直言ってこちらをじっと見つめてる、親子連れの視線が痛いです。
「まったく〜……いい? 目標があるのなら、他人の視線なんて気にすることは無いの!
大体どんなことでも、最初から上手い人なんているはずないでしょ?
そもそも他人の視線とか気にして、上手くなる保証なんてないじゃない!」
「そう…だよね。僕が悪かったよ、練習よろしくお願いします、先生」
僕の視線の先を見た女の子は、肩をすくめて大きな溜め息を吐きながら言う。
その言葉に気を取り直した僕は、改めて女の子に頭を下げた。
「よしよし、やっと分かったようだね。とりあえず、方向転換するときの力の入れ方だけど……」
僕が頭を下げると、女の子は満足したように笑みを見せ、説明を始めだした――
「さって。そろそろ夕方だし、キミも上手く出来かけてるようだから、引き上げよっか?」
「え? もう少し練習したほうが……」
スノボを外し、肩に掛けながら女の子が言う。
確かに日は暮れかけているけれど、せっかく教えてくれたことが実践出来かけているのに……。
「あのね、怪我ってのは最初の最初よりも、上手く出来かけてるときのほうがしやすいんだよ?
それに、今は頭で考えながら滑る段階で十分。体で覚えるのはその先の話♪」
僕が戸惑いながら口ごもると、指をちっちっと振りながらウィンクしてみせる女の子。
う〜ん、そんなものなのか。そう言われると、そんな気もしてくる単純な僕だった。
「それよりさ、約束……忘れてるわけじゃないよね? 早速行こうよっ」
と、女の子は僕の手をしっかと握り締めながら言葉を続ける。
その視線に再びドキリとしながらも、僕はどうにか返事をしながら体を起こした。
「おいしい! おいしいよ、このパン! それにこのコーヒーと、とってもよく合うし!」
「はは、そこまで喜んでもらえるなんて、光栄ですね」
女の子はこぼれんばかりの満面の笑みを浮かべながら、喜びの声をあげる。
それを聞いたマスターは、目を細めて女の子を見つめかえした。
「でも、珍しいですね。お客さんが、もう一人のお友達以外の方と来るなんて。デートですか?」
「え? い、いや……あはは」
マスターの奥さんが、僕に問い掛けてくる。
多分、奥さんにとっては何の気なしなのだろうけど、
何故かそれだけで僕の心臓は高鳴り、引き攣った笑いで誤魔化そうとする。
ちなみに、ここは雪山にほど近い場所にある、列車を廃物利用した喫茶店。
ある日、雪山に近道しようとして、道を間違えたら偶然発見したんだけど、
セット料理の美味さと値段に惹かれ、それ以来スノボ帰りは、ほぼ毎回ここに立ち寄っている。
おかげでマスターたちと、すっかり顔馴染みになっちゃって、こんな会話も自然に出てくるわけで。
………と言うか、ここでも僕は友人とセット扱いなのか。…なんともかんとも。
「どうも、ご馳走様でした。それではまた」
「ええ、いつでもいらしてください。お待ちしてますよ」
喫茶店を後にしようとすると、マスター夫婦がわざわざ見送りに来てくれた。ほんと、いい人だ。
初めて来店したときは、いきなりここの喫茶店と夫婦にまつわる法螺話を聞かされたっけか。
……それを聞いたときは正直引いたけど、今ではそんなことは気にならない。
「ごちそうさまでした! また来るね!」
「はいはい、待ってますよ。…だいぶ暗くなってきたし、お気をつけてお帰りくださいね」
女の子が、おみやげ用にと買った(お金は僕が出したけど)パンが入った袋をかざしながら手を振る。
そんな女の子を見つめ、奥さんは微笑みを浮かべたかと思うと、僕に向かって心配そうな声で言った。
「ああ、ありがとうございます。無理しないで、ゆっくり帰りますから」
車に乗り込んだ僕は、奥さんにそう答えながらエンジンを掛けた――
「さて、と……今日はどうもありがとう。また今度ね」
女の子の部屋の前で別れの挨拶をする。
彼女は、ゲレンデのすぐ向かいにあるホテルに泊まっているとのことなので、送ることになったわけで。
少々、名残惜しいところがあるけれど……とか思ってたら、
「……ね。今日はこれだけで、おしまいにするつもり?」
「え………?」
両手で僕の手をぎゅっと握り締め、女の子がひとこと。思わず僕は固まってしまった。
「アタシさ……ここに、ひとりで泊まっているの。……意味、分かるでしょ?」
そのまま僕の手を自らの頬にあて、頬擦りしてくる。
これは…誘われてるのか? いやでもしかしちょっと待て僕。
そう…だよ、何を考えてるんだ僕は。相手はこんなに小さい……
「………?? どうしたのかな?」
ゆっくりと顔をあげ、僕を見つめる女の子。その目はとろんとして、心なしか潤んでいる。
小さい……その…えっと……何だっけ?
女の子の目を見たとき、僕の思考回路はそこで途切れ、
まるで何かに操られるかのように、ゆっくりと部屋に入って扉を閉めた――
「うふふ…こんなに体を硬くしちゃって……ね、こういうことって、初めてなの?」
「え…あ……」
部屋に入ってから、じっと立ち尽くす僕に軽く抱きつきながら、女の子がぽつりとひとこと。
どう答えればいいものか分からず、思わず口ごもる。
「ふうん? ま、いいや。アタシ、シャワー浴びてくるから、ゆっくり待っててね♪」
一瞬、眉を潜めたかと思うと、ぱっと表情を変えた女の子は、僕から離れて服を脱ぎだした。
真っ白いウェアを脱ぎ捨て、グレーのジャージが姿を現す。
ジーーーー……
僕が見ているのに気づいているのかいないのか、女の子はジャージのファスナーをゆっくりと下ろしていく。
そう…まるで僕を挑発しているかのように……。
脱いだジャージをウェアの上に、そっと投げつける。カサッという、擦れ合う音が聞こえた。
別にどうってことない普通の衣擦れの音が、何だか現実に聞こえた音ではないような気がする。
いや……もしかしたら、目の前の光景自体が夢まぼろしなのか……。
「よいしょっと」
不意に声がして、現実に戻ってくる。
そこには、ベッドに腰掛けながらジャージの下を脱ごうとしている、女の子の姿があった。
ああ…やっぱり、夢とかまぼろしでは無かったか…。
「ん? 何ぼうっと突っ立ったまま、こっち見てるかなあ? まったく、エッチなんだから。
ささ、あとでじっくり見せてあげるから、とりあえずジュースでも飲んでおとなしくしてなさいな」
僕の視線に気がついた女の子は、それでもその裸体を隠そうともせずに、
そのまま真っ白な下着を脱ぎ捨てて、バスルームへと向かった。
僕は、女の子の言葉が何かの呪文だったかのように、フラフラと部屋の中央へと歩き出す。
と、足元には女の子が脱ぎ散らかした下着が転がっている。
ひとまとめにしたほうがいいのかな? そう思って手を伸ばそうとした瞬間、
「こらっ、アタシの下着に手を出すんじゃないぞ、この変態」
「し、しないよそんなこと」
振り向くと、女の子がバスルームから上半身だけを見せて、こちらをじっと見ていた。
そう、まるでそのタイミングを見計らっていたかのように。
顔が熱くなるのを感じた僕は、どもりながら女の子に言葉を返すのがやっとだった。
「ふ〜う、お待たせ〜。あ〜気持ちよかった〜。って、何だ。ウェアも脱いでなかったんだ。
楽にしててって言ったのに……。で、キミもシャワー浴びる?」
「え? シャ、シャワー!?」
バスタオルを身に纏いながら、女の子が部屋に入ってくる。
僕は女の子がシャワーを浴びている間、心ここにあらずという感じで椅子にもたれていたが、
彼女の声に、ビクンと身をすくめて反応していた。
「ん〜? シャワーよりもお楽しみが先、なのかな? それはそれでオッケーだけどねっ」
「い、いやそんな……む…ぐううっ…」
手を口に沿え、ふふっと笑う女の子。僕は否定の言葉を出そうとするが、出来なかった。
突然、女の子が僕の膝に飛び乗り、くちびるを重ねてきたのだ。
同時に僕は、口の中に潜り込んでくる、柔らかいものの存在を感じ取っていた。
それは女の子の舌だった。彼女の舌は、僕の舌を絡めとったかと思うと、口腔内を舐めすさる。
初めてのディープキスに、僕の脳は完全にマヒしてしまい、ただただ彼女に身を委ねていた。
「キミ、プルプル震えているよ? やっぱりこういうこと、初めてなのかな?」
長い長いくちづけが終わり、女の子が微笑みを浮かべながらひとこと。
その笑みは今までみせていた、無邪気な笑みとはまるで違って艶やかさを見せていた。
「んん? 照れてるのかな? ま、いいや。とりあえず、脱ぎ脱ぎしましょうね〜」
質問に答えない僕を見て、まるで子どもを相手にするように口調が変わり、僕のウェアに手を掛ける。
「きゃっ、……見たわね?」
「そ…そりゃあ、胸に引っ掛かりがなきゃ、ずり落ちるだろうさ」
バスタオルがはらりとほどけ、女の子の裸体が露わになる。
……正直、胸はつるぺただ。思ったことが、思い切り口に出てしまった。しまったと思う余裕も無く、
「ほっほう。女のコが気にしていることを平気で言うんだね、この口は。で? そういうキミは、どうなのかな?」
「わ! ちょ、ちょっと!」
眉を潜め、軽く僕の頬を摘まんだかと思うと、ウェアの下に手を伸ばしてきた。
僕が叫び声をあげる間もなく、ウェアとズボンをずりさげる。
そこでは、トランクス越しでもはっきりと分かるくらい、僕のモノが存在を主張していた。
「へ〜え。こっちは随分張り切ってるみたいだね。……さ、こっちにも………きて…」
「う…うん……」
人差し指でモノの先端を撫で回したかと思うと、バスタオルを床に下ろした女の子は、
ベッドに腰掛けながら、軽く両足を開いてみせる。
ヘアも生えていない割れ目を目にしたとき、僕はまるで操られているかのように、
うつろな声で返事をしたかと思うと、フラフラと女の子の前に跪いていた。
「ああんっ」
女の子の割れ目に手を伸ばす。同時に、軽くピクンと震えて甘えた声を出す彼女。
両手でそっと割れ目を押し広げてみると、中はピンク色の肉壁がピクピク震えていた。
「あは……んっ!」
思い切って、割れ目に舌を這わせてみる。女の子の声がさっきよりも少し甲高くなった。
「くふ…ん……ん…。あ、ああんっ!」
僕が舌を這わせるたびに、段々喘ぎ声が大きくなっていく。
ちらりと顔を見上げると、顔は真っ赤に染まり、恍惚とした表情で天井を見上げている。
まるで、彼女の喘ぎ声と艶やかな表情が、何かの魔法だったかのように、
僕は夢中になって、女の子の割れ目に一心不乱に舌を這わせ続けていた。
「ん…んふ……ん? んんん……ごく…ん……んっ…んん…」
「あ……ああっ! いやあんっ! 音立てちゃいやあっ!」
ひたすらに舌を這わせ続けていると、熱いものが僕の咽喉に流れ込んできた。
明らかに僕の唾液とは違うその熱い液体を、僕はじゅるじゅると音を立てて飲み下した。
途端に女の子は真っ赤な顔をあげ、僕に向かって叫んできた。
僕は女の子の声に構わず、いや、正確には夢中で気がつかなかった、のだ。
ただもっと熱い液体を飲みたい一心で、舌をさらに奥へと潜り込ませようとしていた。
「あ! はあんっ! ああっ! くううっ!!」
女の子は、口に手を当てて喘ぎ声を必死にこらえようとしている。
だが、僕はそんなことにも気づかず、熱い液体を指でかきだそうとして、割れ目に指を挿しいれた。
「ああんっ!!」
すると女の子がひときわ大きな叫び声をあげ、上半身をビクンと大きく跳ねあがらせる。
「も…ダメ……もうダメェッ…! イッちゃう…イッちゃううっ!!」
僕が潜り込ませた指を3本に増やした直後、女の子は狂ったような叫び声をあげたかと思うと、
全身をビクビクと震わせていた。
「はあ…はあ……あっ…ああっ……ちょ、ちょっと…ま……まだ……」
女の子が肩で息をしながら、上半身を起こして抗議の声をあげる。
僕は依然として、女の子の割れ目に舌を這わせ続けていた。
「んぐ…んぐ…ぐっ………あっ!」
夢中なあまり、声など聞こえてはいなかった。ひたすら、割れ目から湧き出す熱い液体を飲み下す。
と、突然股間に痺れるような刺激が走り、ぱっと顔をあげた。
「ん? ……どうしたの? すっかりおとなしくなったけど、こうされるのが気持ちイイの?」
「あ…ああ……あ…」
顔をあげたと同時に、女の子と目が合った。
軽く涙を流しながらも、悪戯っぽい笑みを浮かべ、舌なめずりをしながら僕に語りかけてきた。
下腹部に目をやると、女の子の白い足が僕のモノをそろそろと撫で回している。
微妙な刺激に上半身が崩れ落ちそうになった僕は、思わず目の前にあった女の子の足にしがみつく。
「ふふっ。おちんちん、カチカチになってきたよ……。感じてきたかな?」
「く…くううっ……!」
足の親指と人差し指の間でモノをしごきあげながら、女の子は言葉を続ける。
僕は声にならない声を漏らし、腰を思わず引かせてしまった。
「はあああっ!!」
今度はモノだけではなく、袋にも同じような刺激が走った。
思わず上半身を仰け反らし、女の子みたいな悲鳴をあげる僕。
そう、女の子は片方の足でモノをしごきながら、残った足で袋を撫で回してきたのだ。
「ふふん、わざわざ自分から撫でられやすくするなんて、そんなに気持ちよかった?」
「あ…が……ぐ…ぐううっ……ああんっ!!」
女の子は笑みを浮かべたかと思うと、片方の足でモノを押さえながら、
もう片方の足の親指を、モノの先端とそこから伸びる筋の隙間に潜り込ませようとしてきた。
ゾクゾクするような刺激に耐えられず、僕はひたすら叫び続けていた。
「ねえ、こうされるのが初めてなの? それとも……女の子に触れられるのが、初めてなのかな?」
「そ……それ…は…あはあっ!!」
足で僕のモノをしごき続けながら、女の子は僕に問い掛けてきた。
口ごもる僕に、さらなる刺激が襲いかかる。袋を撫で回していた足が、突然モノの先端を突つき始めたのだ。
「さて。どっちなのか、な?」
「あが! ぐ! は…初めて! 初めてですっ!」
親指を鈴口にグリグリと潜り込ませようとしながら、女の子はもう一度問い掛けてくる。
痛さと快感とが絶妙に交じり合う刺激に、僕は涙を流しながらそう叫んでいた。
「そうっかあ……そうなんだ」
「……あ!?」
僕がそう答えると、あっさりと女の子はモノから足を離した。
思わず僕は間抜けな声をあげてしまう。
「うふふっ、そんな情けない顔しないの。さ……こっちに…キテ……」
顔を多少赤らめながら、女の子がベッドにゆっくりと横たわり、大きく両足を広げる。
何かに取り憑かれたかのように、僕はのそのそとベッドに這い上がり、女の子の上にのしかかった。
「あんっ……あったかい…あったかいよ………」
女の子は僕の背中に両手を回しながら、ぽつりとつぶやいた。
その体は、想像以上に冷たく冷え切っている。
「お願い……アタシの体…ずっと熱くさせて………んっ…んんっ……」
女の子の言葉に反応した僕は、彼女の体を抱きしめ返しながら、そのままくちびるを奪った。
無意識のうちに、腰が動き始める。
「ん…んっ……いいよ…焦らさないで……」
くちびるを離すと、女の子が僕の頬に手を添えながら微笑みかける。と、
「あ…あのさ。キミ…名前なんて言うの?」
我ながら、間抜けなことを口走ったものだ。おたがいそのまましばらく見つめあい、奇妙な沈黙が生まれた。と、
ぺしっ
「バカもの。そういうことは今聞くことじゃないでしょ。……もっと早く聞きなさいよ」
「ご…ごめん……つ、つい……」
軽く僕の頬を叩きながら、女の子が顔を真っ赤に染め上げながら言った。
…う、確かにそりゃそうだ。指摘されて、僕自身も顔が熱くなるのを感じる。
「うふふっ、まあいいよ。名乗ってなかったのも確かだし。アタシはね、雪沙って言うの。よろしくねっ」
「雪沙…か……」
僕が謝る姿を見て、僕の頬に手を当てたままの雪沙は、コロコロと笑いながら名乗ってきた。
あ、そういえば、僕も名乗ってないや。
そう思った僕も名乗ろうとしたが、雪沙はそっと僕のくちびるに人差し指を当てる。
「ね…それよりも、さ……早く…早くキテ……アタシ…アタシもう、我慢できない……」
「う…うん………」
目を潤ませ、腰を僕に押しつけながら、雪沙はささやく。
僕は軽く返事をして、モノを雪沙の割れ目にあてがい、一気に突き立てた。
「あ! ああんっ!!」
「く…ううっ……」
雪沙が艶っぽい悲鳴をあげた。雪沙の中の、あまりの心地よさに僕もまた、うめき声を漏らす。
…まずい、もうイッちゃうかも……。そう思った僕は、腰を動かすことが出来なかった。
「う……動いて…もっと……もっとアタシに尚幸クンを感じさせて………」
「え……っと………」
暴発を抑えようと動きを止めている僕に、雪沙は耳元でささやいてきた。
あれ…? 僕、名乗ったっけ?
「お願い………これ以上、意地悪しないで………」
「……………!」
戸惑っている僕を見て、なおも懇願してくる雪沙。その目からしずくが一滴、こぼれ落ちた。
そんな雪沙の顔を目にしたとき、僕は全身に寒気が走った。心臓の鼓動が痛いくらいに大きく鳴り響く。
次の瞬間、僕は腰を大きく動かしていた。まるで、雪沙に今までの思いの丈を叩きつけるかのように。
「あんっ! あっ! ああんっ! イイッ! イイようっ!!」
僕の腰の動きに合わせ、雪沙が嬌声をあげる。思い切って、僕は雪沙を抱きしめた。
雪沙もまた、僕をぎゅっと抱きしめ返してきた。僕は何かに憑かれたかのように、腰の動きを早めた。
「くうっ! ううっ! イッちゃう! 僕もうイッちゃううっ!!」
だが、やはり限界は近かったようで、腰を動きを早めた途端、モノに刺激が集中する。
思わず僕は叫んでいた。
「いいよ、キテ! アタシの中でイッちゃってっ!」
「あ、ああっ!!」
雪沙が慈愛に満ちた笑みを浮かべ、僕の頭を優しく撫でまわしながら耳元でささやく。
心の底から安心感を覚えた僕は、その直後、雪沙の中に射精していた。
「ああんっ、入ってくる…尚幸クンの熱いのが……流れ込んでくる…っ……」
「あ…ああ……雪沙…雪沙……」
足を僕の腰に絡ませながら、雪沙がうわごとのように叫ぶ。
雪沙と肌を触れ合わせることによって、安堵感を覚えていた僕は、しっかりと雪沙を抱きしめていた。
その一方で、一回果てたというのにも関わらず、腰の動きが止まらなかった。いや、止められなかった。
まるで下半身だけが、別の生き物にでもなってしまったかのように、ただひたすら。
――それでも、モノから伝わる快感はしっかりと全身に伝わり、次の絶頂が早くも近づきかけていた――
「ん……。あ、あれ…?」
「うふふっ、おはよう。よく眠れた?」
ふと気がつくと、僕は仰向けに横たわっていた。と、誰かが僕に話しかけてくる。
「あ…えっと……え、ええっ!?」
声がした方向を見て、思わず飛び起きてしまう。
そこには、僕と同じくらいの年頃の女性が、一糸纏わぬ姿で佇んでいたからだ。いったい…誰?
「ん〜? 分からないかな〜? さっきまで、あんなに激しく燃えていたのに?」
くちびるを尖らせ、寂しそうに笑う彼女を見て、言葉の意味を考える。
……………激しく燃えていた? それってもしかして…………
「雪沙!?」
5秒後、僕は声を限りに叫んでいた。
「こ〜らっ、何時だと思っている。周りに迷惑だろっ」
僕のくちびるに人差し指を当てながら、彼女は言った。この口調、この仕草……間違い無い、かも。
「ご名答。アタシが雪沙だよ」
なおも疑問の表情を浮かべる僕を見て、彼女は――雪沙はにっこりと微笑んだ。……でも、何で?
「……信じてくれないかもしれないけれど、アタシは実は人間ではないの。アタシは…………」
混乱のあまり、何を喋っていいのか分からない僕を見て、寂しそうに笑いながら雪沙は言った。
「実は、この山に住んでいる雪女なんだ」
……雪沙の告白に、僕自身言葉が出なかった。だって、そりゃそうでしょう?
いきなり目の前の女性に、『アタシは雪女です』なんて言われて、
『ふうん、そうなんだ』なんて答えられる人、どれだけいる?
……いや、たまには『子どもの頃からずっと信じていたから、そういうのがいるんだな』
ってあっさり納得してしまう人も、いるかもしれないけど。
「……怒ってる? 正体隠して尚幸クンに近づいたこと?」
「え? …いや……別に。でも……何故、こんなことを……?」
沈黙している僕の顔を覗き込みながら、雪沙は言った。その表情は、不安げに少々曇っている。
正直、何が何だか分からない僕は、とりあえずそれだけ聞いた。
「その……雪女って、山に雪を降らせるのが役目なんだけど、
それには、人や色々な生き物から、力を分けてもらう必要があったんだ。
でも……今年は山に人が全然来なくて、生き物たちも少なくなっちゃって、力が足りなかったから、
降らせた雪も少なくて、そのせいでまた人が来なくて…って、それの繰り返しだったんだ………」
力を分けてもらう…か。まさか僕だけでなく、色々な動物とあんなことを……?
「こら。何を考えている? ……普段からあんなことしてるとか思ったか?」
「え!? い、いや!?」
心を読んだのか、今思っていたことをそのまま答えられ、僕は慌てて取り繕う。
「……まったく、思い切り顔に出ているよ。……人間に限らず、全ての生きとし生けるものは、
精気を放出して生きているんだ。多分、目には見えてないと思うけど。
アタシたちは、それを分けてもらうだけで、そばにいるだけで十分だったの。でも……」
「でも?」
雪沙は呆れ顔で、つぶやくように説明するが、突然口ごもる。僕は思わず、雪沙の顔を覗き込んで尋ねていた。
「………でも、今年みたいに力を使いすぎて、小さくなっちゃった場合は…その……どうしても、
あんなことをして、……半ば強制的に………精気を、分けてもらう必要があったんだ。今度が、その…」
「今度が…何?」
そこまで言って、再び口ごもって顔を俯かせる。続きが気になった僕は、身を乗り出して聞いた。
「は…母様に教えられて、ア…アタシ……そ…そうするの、今度が初めてだったんだから!
だ、だからその…えっと……だ、誰でもよかった、ってわけじゃ、ないんだからねっ」
顔が見る見るうちに、真っ赤に染まったかと思うと、堰を切ったように一気にまくしたてる雪沙。
え……? でも、それって………え?
「な…尚幸クン、こ…ここに結構頻繁に来るし、今回はいつものお友達がいないで、
一人みたいだったから、丁度よかったかなーって、思ってたの!
さ、さって! そ、そろそろ、雪を降らせなきゃならないから、アタシ行くね!」
「ちょ、ちょっと待――!」
僕が雪沙を引きとめようと思った瞬間、部屋の窓が突然開き、そこから雪と風が入り込んできた。
雪と風は、雪沙の体にまとわりついたかと思うと、見る見るうちに青白い着物となっていった。
「それじゃあね、尚幸クン。……スノボ、頑張ってね。…………ありがとう……」
幻想的な光景を目の当たりにして、呆気に取られる僕の頬に、そっとくちづけをした雪沙は、
ぱっと身を翻したかと思うと、夜の闇へと飛び出していった。
我に返った僕は、窓から身を乗り出して辺りを見渡したが、雪沙の姿は、もうどこにも見えなかった――
翌日目が覚めた僕は、胸にぽっかり穴が開いたような気分のまま、スノボをかついでゲレンデへ直行する。
チェックアウトはどうしようか考えたが、よく考えたらこの部屋は雪沙が借りたものだから、黙って出てきた。
ゲレンデを見渡すと、雪沙の活躍で大雪が降ったために、絶好のコンディションだ。
「あ〜いい天気だな〜。……あれ?」
昨日、あれほど降ったのに、見違えるような青空が広がっていた。これも雪沙の計らいかな?
そう思いながら、大きく伸びをした僕の視界に、ある一行の姿が映った。
あのウェアは……確か、昨日競争していた2人だけど……そのうちの片方がヨレヨレになっている。
スノボでどうにか自分を支えているような……あんなんで、ちゃんと滑れるのかな?
まったく…たまにしか来れないだろうから、躍起になる気持ちは分からなくもないけれど、
万全じゃない状態で滑って、事故にでもあったらどうする気なんだろ?
「ま、いいや。彼らがどうなろうと関係無いし」
肩をすくめ、独り言をつぶやきながらリフトに乗り込んだ。……昨日教わったこと、覚えてるかな?
「……痛い」
ゲレンデにキスをしながらぽつりとひとこと。やっぱ、そう簡単には出来ないよねえ。
と、いうか、昨日の出来事って…やっぱり夢だったのかなあ?
「ま〜ったくう、昨日教えたことが全然抜けてるじゃないの。また、教えなおしが必要かな?」
などと考えていると、不意に聞き覚えのある声がして、僕はぱっと顔をあげた。
そこには、昨日と同じく真っ白いウェアを着た雪沙が、
優しい笑みを浮かべながら、こちらに向かって手を伸ばしていた。
「……っと、ありがと」
雪沙の手を取り、どうにか立ち上がった。
「ね……張り切りすぎて全部出し切ったから、元に戻っちゃった。今日もまた…お願いね?」
「え? あ……う、うん!」
と、立ち上がった直後、雪沙が耳元でささやく。
僕は顔だけでなく、全身が熱くなる感触を覚え、気がつくと反射的に頷いていた。
おしまい