薄暗い部屋に人影が二つ。
一つはいすに座っていて、もう一つは地面に伏せているようだ。
雲の切れ目から窓へ差し込んだ月の光が、その人影達を照らした。
すると、そこには真っ白な獣毛で覆われた女性型の生き物と
それを見る男がいるではないか。
窓の風景を眺めつつ、皮肉混じりの、柔らかな声音で男はいう。
「どうしたんだよ、息を荒げちゃって」
「かえ……して」
「薬のことかい?あれはちゃんと渡したはずだ。君がなくすのが悪い」
「おねがい……私が悪かったから……薬を」
「僕はそのままの君の方が好きだけどね」
男は喉を慣らすように笑い、『女』の方へ顔を向けた。
瞳をあわせた『女』の方は身を震わせ怯えて。
男は外見は特に目立ったところはなく、
どこにでもいそうな体型の男であるのに……なぜなのか……。
「そうだなぁ、目の前で、恥ずかしいこと、してよ」
「恥ずかしいこと……?」
「オナニー。とかね」
『女』はさらに目を歪ませる。
「ほら、今君ってさ……気分が立ってるっていうか
盛り?いや、違うか。でも、そんな気分なんだろう?」
「……」
「僕はその姿の君が好きだけど……でも、君のような女がこの部屋にいると、とっても困るんだ……このままなにもしないまま、誰かに見つかって」
「それはいやっ!」
「だよね。そうだよねぇ。ふふっ」
嬉しそうに男はそういって、足と腕を組み、『女』にいう。
「じゃあ、君の獣化病を直す薬あげるからさぁ……。早くやってよ。オナニー
見せてくれなきゃ、あげられないなぁ……」
『女』はその前へ突き出た鼻を股の方に向け、おそるおそる手を、
己の視線の先に向かわせた。そのとき
「ああ、だめだよ、まずは胸じゃなきゃ」
男の指示を聞き、胸の方へ手を向ける。
服は着ていない……裸。
「ゆっくりと揉むんだ……柔らかいんだろう?君の胸は」
「そしたら、今度は親指を乳首のてっぺんに当てて……そうだ。
親指で刺激しつつ揉んで見ろ……」
柔らかいボールについた泥を洗うように、『女』は自分の胸をもみ上げている。
視線の先にある男を見て……舌を出し、激しい呼吸をしながら……。
「なんか頭の上の耳がピクピクしてるね……感じちゃってるの?
君って本当になにもの?姿も人間じゃないし、サイテーだな」
「そっ……そ、れは」
「口答えするな」
男から、床の底から響くような声でいわれ、『女』は再び自分の胸をもみ上げる作業に戻る。
その行為は単調な物であったが、それでも『女』の動きは徐々に大げさなっているようにもおもえた
「よし、胸はいいよ。君ももうつらいだろう?」
「ぇ、私……ゎ……ぁ」
「い い か ら。そこは もう いい、次は性器に軽く触れてみろ」
再び男は低い声で『女』にいう。
その声をきくと、躊躇いもせず性器へ手をのばし、性器割れ目の上を、ゆっくりとなぞってみせる。
『女』はその瞬間、身震いを2度、3度して、犬の鳴き声のような声を上げた。