4月某日朝8時、某メトロ某線某駅。  
 
あーなんでこんなに電車混んでるんだろ。  
今がもう8時だからだよ。  
そうか、あたしが寝坊しちゃっていつもより時間が遅いからだね。  
うんその通り。どう見ても説明句調な独り言をわざわざありがとう。  
と言うわけで満員電車に乗るハメになった。空いてる電車を待ってもいいけど遅刻するといろいろ面倒なので観念した。  
 
毎駅毎駅同じ側のドアが開いてたくさん降りてたくさん乗ってくるものだから、気付いた時には開かないドアの方に押し込まれてった。  
もしこれがエ○ゲだったらチカンされた上に周り全員からリンカーンされちゃうんだろうなー。あははっあるあるwww現実にはないよwwwwwとか考えていると、本当ににおいでなすった。  
今気付いただけで、もしかしたらずっとされてたのかも知れない。ズボンの上から、手を押し付けてきてる。自意識過剰かなとも思ったけど、腰を引いても追っかけてくる。  
これって上手く立ち回れば口止め料ふんだくれるのかなと皮算用。でもすぐ、押し付けてるのは手の甲だと気付く。これは言い逃れされるに違いない。  
仕方が無いのでガマンすることにした。別に大したことされてるわけでもないし、こんな変態のせいで面倒なことになって遅刻してもばかばかしい。それに降りる駅まであと4駅だった。たったの7〜8分くらい、なんの苦痛でもない。  
と1人で大風呂敷を広げてる間に次の駅に着いた。またたくさん降りてたくさん乗ってくる。一瞬おしくら饅頭から解放されて、また押し込まれる。待ってましたと言わんばかりの変態の胸板に正面からぶつかりそうになり、すんでのところで体半分ずらした。  
でも、裏目なことにちょうどあたしの×××の前に右手があった。その状態から、さらに体が人の流れによって奥に押し込まれる。  
ひっ…今最後に乗ったヤツ…末代まで祟ってやるっ   
電車が動き出すと同時に無骨な手の甲が動きを再開した。ただ股先を撫で回すだけ。ホントならなんでもないような刺激だけど、知らない人にされてるからか公衆の面前だからか、それだけでカラダが下の方からとろけてそうだった。  
だんだん足に力が入らなくなってって、いよいよ立ってられないってなった時、電車が止まった。ちょうど開かない方のドアの前が空いたので、背中を預ける。これで、まだなんとか耐えられる。端に追い込まれたとか考える余裕は、もう無かった。  
彼は何もしてないよとばかりにあたしから離れて、入ってくる人に押されたかのようにあたしの正面に陣取ってきた。これでのぞき込みっでもしない限りあたしの下半身は見えない。これでもう何をしても周りに気付かれることは無い。  
それに加えてあたしが抵抗しないと確信したんだろう、今度は露骨に、手の平で触ってきた。もちろん、両手で手首を捕まえる。でもその段になってはたと考える。  
これをどうすればいい?「この人チカンです」とか「やめてください」とか言う?そしたら、周りの知らないオジさん達がみんないっぺんにこっち見るよ?その…そういう目で。だめっ…そんなの、このまま触られてるより恥ずかしい…。どうしよう。  
その時、『どうするか考える』選択肢さえもふっとぶ出来事が起こった。  
 
がたんっ  
「〜〜〜っ!?」  
イマ…あたし…なに、されて…??電車がゆれると同時に、急に何か…キて…声出る余裕もなく…イカされ…っ!  
だ、大丈夫。多分周りは気付いてないハズ。誰もこっち見てない。だいじょうぶ。  
好き放題されてるのに不自然に前向きな思考。さすがに自覚はあるけど、こうでも考えないとココロが状況に耐えられないと思った。  
がたんっ  
びくんっっ  
指の動きに呼応するように、あたしの意思と関係なく体がハネる。  
また、さっきの…。今度はわかった。下から、×××でもお尻でもなくその間の割れてないとこを指で奥まで、ぎゅって…。  
だんだん、体がずり落ちてきた。ほとんど平面のドアに寄りかかってるんだからしょうがない。仕方がないので『たまたま目の前にいた人』に体重を預けた。もちろん痴漢魔に密着するなんて吐き気がするけど、周りの注目さえ浴びなければもうなんでもよかった。  
彼の胴体は大きくて、硬くて、卑猥だった。触れてる部分がいっぺんに蹂躙されてるように感じた。そして、気を良くした彼の責めは激化していった。  
どどどどどっ  
ひぁぁっ!?だめぇっ、こんなの…まるでっ…  
さっきのの、連続。立て続けに、異物が下からめりこむ。もう、愛撫というより圧迫、言うなれば電気あんまだった。  
どどどどどどどっj  
「んぁぁっ…いぃっ…くしゅん」  
危ないところだった。声が出たけどくしゃみのフリでなんとかごまかした。まだ誰も気付いてない。だいじょうぶだから、もっと…  
だだだだだだっ  
あひぃぃいぃんっ!?しょんなきゅうにはやくぅぅっ!!  
あたしのささやかな想いが通じたわけでもないだろうが、責めがより速く、より深くなった。粗暴に見えて同じところだけ執拗に責めてくる、ねっとりとした責め。  
だだだっだだだだだっ  
も、もう…声…ムリ…  
だんだんお花畑が見えてきて、体が股間を残して全部飛んでって、もっとよくしてほしい、それだけしか考えられなくなっていった。そしていよいよ声をガマンするのを放棄した瞬間、彼の手が離れた。電車は止まり、彼は降りていってしまった。  
ふぇっ?あと1駅なんだからもっともっとしてよぉっ!  
 
気付くとあたしは周りから変な目を向けられたいた。年端もいかない少女が発情したかのように顔を紅潮させて、足を震わせながら手すりの金属棒にしがみついて立ってるのだから一種の自然な反応。  
ただその時の平常心を失ったあたしはそれを視姦としか受け取れなかった。  
あぅぅっ、見られちゃってるっ…ズボンのシミなんてじろじろ見ないでよぉっ…!!  
そう、あたしは既に濡れていた。外から見てもはっきり分かるくらい。今思えば実際のところそれに気付いた人間がいたかどうかは定かでないけれど。  
それからあと1駅、自分の降りる駅に着くまでは何倍にも感じられた。結局足の震えはそのさらに後、駅を出るまで収まらず、気付いたら流れ出ていた汗も、予備校の始業チャイムまで止まらなかった。  
この年にして痴漢の怖さを必要以上に知ってしまったあたしは、  
 
明日も寝坊することにした。  
 

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