かつて、テニスは格闘技であると言ったプレイヤーがいた。コートの中で  
互いの力を出し尽くし、死闘を繰り広げるテニスの試合は、精神的にも  
肉体的にもタフでなければならない・・・と、言っているのだろう。しかし、  
麗華はそれを言葉通りに受け止めてしまった。  
「よいしょ」  
合金製のラケットと鉄球を背負って、麗華は空手部に囚われた冴子を救出  
すべく、骸学院内を歩いていく。彼女は、テニス部に籍を置いてはいるが、  
試合の類には出して貰えない。テニスを格闘技と勘違いした麗華は、ラケット  
で相手を殴り、ノックアウトしてしまうからだ。それはまるで、バレーボールの  
試合にチュチュ(踊る方のバレーの服)を着て、臨むようなもの。だから、  
テニス部の厄介者と言われていた。だが、勘違いをしながらも、テニスを人  
一倍愛していた麗華は、試合はおろか練習にさえ参加させて貰えなくなっても、  
テニス部をやめなかった。試合が駄目なら、せめて雑用でも、とコートの草  
むしりをしていた時、風紀委員会顧問だった冴子から、誘いを受けたのである。  
「あれが空手部の道場か」  
合金製のラケットを手に持ち、鉄球を取り出した麗華。ガットもケプラーで編ま  
れた特注の物である。  
「先生、待っててね。今すぐ助けてあげるから・・・」  
麗華は、風紀委員会に誘われた事が嬉しかった。だから、冴子には憧憬にも  
似た気持ちを持っている。その冴子が、空手部員たちから辱めを受けている  
と聞けば、黙ってはいられない。命をかけても、救い出さねばならない。そう  
思っている。  
 
麗華が道場の入り口へ張り付いた。テニスから遠ざかってはいるが、  
彼女は普段からテニスウェアを身につけている。今も、短いスカートの  
裾をひらつかせ、むっちりと張り詰めた太ももを晒していた。だが、  
アンダースコートは穿いていない。ウェアが風に掬われると、普通の  
パンティがちらり。何故ならば、  
(いつか、生パンツで、ウィンブルドンのセンターコートへ立つ!)  
という野望を、胸に秘めていたから。そんな事が実現すれば、国辱もの  
ではあるが、今のところ実現は不可能に感じる。それは、置いといて・・・  
(先生はいるのかしら・・・?)  
扉に耳を当て、中の様子を盗み聞く麗華。すると、道場の中からすすり  
泣く女の声が聞こえてくる。冴子の声だ。  
「うう・・・もう、やめて・・ぐすっ」  
涙混じりに懇願する冴子の声が聞こえると、麗華の頭がのぼせ上がった。  
男ばかりの道場内で、女がすすり泣く。それは、どう考えても尋常な状況  
としか考えられない。敬愛する冴子が、辱めを受けている、そう思った  
麗華は、ラケットのグリップをぎゅうっと握り締めた。  
「滅殺!」  
そう言うや否や、麗華はラケットで道場の扉を粉砕する。べきべきと木製  
の扉は音を立て、合金製の撲殺具の前に屈した。  
「先生!」  
粉砕された扉が埃を浮き上がらせ、麗華の視界を曇らせる。が、しかし、  
彼女は見た。自分を風紀委員会へ導いてくれた恩人である冴子が、空手  
部員たちの醜い欲望の前に、傅いている様を。  
 
「麗華・・・?」  
半ば呆然となった冴子が呟いた。見れば、冴子は後ろ手を胴着の帯で  
戒められ、男の上に跨らされているではないか!しかも、全裸である。  
よく実った乳房や、悩ましい腰のライン、更には女の恥部までもが、  
二十余人の男子生徒たちの前で晒されているのだ。真下から女穴を、  
後ろからは尻穴へ男根を捻じ込まれている。それも、強制された事に  
間違いはない。冴子が、涙で頬を濡らしているからだ。  
「よくも、先生を!貴様ら、黄泉へ送ってやる!」  
ぎりぎりとラケットを握りこむ麗華。思わず口にした言葉も荒い。しかし、  
「メスがもう一匹増えたぜ」  
「猪口才!返り討ちだ!」  
と、空手部員たちは、全く臆する様子も無く、麗華の全身を舐めるように  
見回した。彼らの腹は、冴子に続き麗華までをも、己らの欲望の餌食に  
しようと決まったらしい。  
「麗華、逃げなさい!あたしの事はいいから!」  
冴子が叫んだ。逃げてくれ、と必死の形相になっている。ここで麗華まで  
囚われの身になってしまったら・・・身の毛がよだつ輪姦劇が待ち受ける  
羽目となってしまう。それだけは、避けたかった。  
「剥いちまえ!」  
空手部員の数人が麗華に襲い掛かる。目を血走らせ、獲物を食らう獣の  
如くあさましい姿だ。目標は、テニスウェアが愛らしい美少女。  
「・・・・・」  
麗華は無言だった。瞳に怒りの炎を宿し、自分へ向かってくる獣たちを  
正面切って待ち受けている。その刹那、空手部員たちの体が跳ねた。  
 
「キエエーッ!」  
部員の一人が、飛び足刀蹴りを麗華に向けて放つ。女を力ずくで犯すと  
いう快楽を知った獣たちは、まず獲物を倒しにかかったのだ。牙を立て、  
組み伏せた後、犯せばいい。そう思っている。だが、飛び掛った部員の  
蹴り足は、麗華には届かなかった。  
ひゅん─  
と、風切り音が道場内に響いた瞬間、部員の体は吹っ飛んだ。ぐうと  
うめき声を上げ、そのまま奥の壁へ叩きつけられる。  
「死ね!」  
と、声を上げたのは麗華。彼女は、鉄球をラケットで打ち、飛び掛って来た  
部員を葬ったのである。更に、  
「どいつもこいつも死ねえッ!死んで詫びろおッ!」  
五キロはありそうな鉄球を次々とラケットで打ち、居並ぶ空手部員たちへ  
食らわせた。鉄球が命中する度、  
「ぐわあッ!」  
「ひいッ!」  
と、部員たちの叫びが上がる。彼らは、狩る側から狩られる側へ身を  
落としたのだ。ものの二十秒もしない内に、冴子へ男根を捻じ込んでいる  
部員以外が倒された。  
「先生から、離れろッ!この、畜生ども!」  
合金製のラケットを振り回しながら、麗華が冴子へ近づいていく。狙いは、  
女教師の股間を弄ぶ二人の部員。  
「ひいい!助けてくれッ!」  
「死にたくない!」  
冴子を突き飛ばし、最後の獣が逃亡しようとした。が、麗華の方が早い。  
 
「死ねーッ!」  
まさに、一閃。ラケットがぶんぶんと風を切ると、二匹の獣が卒倒した。  
それを見届けた後、麗華は冴子の傍らへ寄り添う。  
「先生、大丈夫?」  
「あなたに助けられるとは思わなかったわ。麗華」  
冴子は気丈にも微笑んだが、笑顔が歪んでいた。この両日で彼女が  
受けた陵辱は、筆舌し難い物だったに違い無い。だが、冴子は麗華に  
弱い所を見せまいと、つとめてにこやかに振舞っているのだ。  
「立てますか?肩を貸しましょう」  
「ありがとう。大丈夫よ」  
麗華が冴子の体を抱き起こす。風紀委員会顧問の女教師の体は、  
腐臭にも似た男液を全身に浴びせられ、汚辱されきっていた。それ  
でも、麗華は気に止めず冴子の肩を抱く。  
「服が汚れるわ、麗華。あたし、精液まみれだから」  
「いいんです。それより、帰りましょう。風紀委員会へ」  
麗華に気遣われた冴子の眦が震える。一言でも口をきけば、涙を零し  
そうだった。だから、無言のままで頷く。  
 
道場を出た所で、冴子が何かを思い出したような素振りを見せた。  
しきりに空手部の部室を見て、そわそわとしている。冴子は、自分が  
陵辱されている写真がそこにある事を、思い出したのである。  
「・・・麗華、ごめんなさい。あ・・・あたし、犯されている所を・・・写真に  
撮られちゃったの・・・ちょっと、戻って探してくるわ」  
途切れ途切れに冴子が呟く。その顔に悔しさが表れていた。無理矢理  
犯され、女性器をあけすけにされた写真を撮られた事が、思い出されて  
いるようだ。  
 
そうと聞いた麗華は、冴子の心情を思い涙ぐむ。忌まわしい記憶の  
残る場所へ足を運ぶのは辛かろう、と。だが、行かねば写真が残る。  
そこで、麗華は言った。  
「燃しちゃいましょう。何もかも」  
 
数分後、空手部の道場と部室は煙火に包まれ、茜色に染まっていた。  
麗華が火を放ったのである。  
「燃えろ!燃えろ!」  
いささかやりすぎでは・・・という感が無いでもないが、麗華は気勢を  
上げ、燃え盛る炎を煽るように叫んだ。冴子に背を向け、おどけ混じり  
に体を躍らせた。その姿はまるで、冴子の体に刻まれた傷を癒して  
欲しいとでも言うように。  
「麗華・・・」  
冴子が不意に麗華の背中へ頬を寄せた。震えている肩が、泣いている  
事を示している。  
「なあに?先生」  
出来るだけ素っ気無く麗華は尋ねた。冴子が泣いている。その心情を  
察し、敢えてそうしたのだ。  
「背中貸して・・・ちょっと、泣くから・・・」  
テニスウェアの肩口をぎゅうと握り締め、冴子が嗚咽を漏らす。二十匹  
を越す獣たちに、三日間犯され続けた。たとえ、身を解放されても傷が  
消える訳ではないのだ。それでも、彼女は風紀委員会顧問として、弱い  
部分を見せてはいけないのである。だから、声を殺して泣いた。  
(切ない─)  
背中で泣いている冴子を思って、麗華も泣く。敬愛する女性が、獣たち  
から蹂躙されたという事実が許せなかった。  
 
「・・・はい、先生は救出しました。空手部員たちは今ごろ、あの世で  
悔やんでいる事でしょう。全員、地獄行きでしょうが」  
麗華は、骸学院教師寮内にある冴子の自室から、風紀委員会へ  
報告の電話をかけていた。冴子は、激しい汚辱の痕を拭おうと、  
シャワーを浴びている。  
「・・・先生、大丈夫かな」  
麗華がそっと浴室へ足を運び、冴子の様子を伺う。すると・・・  
「うッ・・・うッ・・・ううッ・・」  
水音にまぎれ、冴子のすすり泣く声が聞こえて来た。湯煙で曇る  
浴室の扉向こうで、冴子が股間に指を入れながら泣いている。  
恐らく、女穴にたまった精液を掻き出しているのだろう。温いシャワー  
を下半身へ当て、懸命に肩を揺すっていた。  
(先生─)  
汚された股間を清める冴子の姿を、見ていられなくなった麗華は、  
慌ててリビングへ戻り、ソファへ身を沈めた。  
(先生は、立ち直れるだろうか─)  
その思いが、麗華の脳裏を過ぎる。冴子は、自室に戻るまで、  
己の身に起こった忌まわしい出来事を、麗華にだけは教えていた。  
風紀委員会の顧問である自分が、空手部員たちの姦計に堕ち、  
口にするのもおぞましい辱めを受けたのだと。そして、一度は隷従  
を誓い、性奴となった事も。  
(ちくしょう!もっと早く気が付いていれば!)  
麗華はうなだれた。空手部員たちは、嫌がる冴子の尻穴までも  
犯したという。無理矢理押さえつけ、思いを遂げたのだと・・・  
 
「ごめんね、お茶も出してなかったわね」  
シャワーを浴び終えた冴子がバスタオルを体に巻き、リビングへ  
現れた。泣きたいのを無理に抑え、笑っているように見える。どこ  
までも気丈な女教師だった。  
「先生、気を使わないで」  
「ううん。何と言っても、あなたは命の恩人だし・・・ね」  
そう言って、麗華にウインクをする冴子。やはり、無理をしている、  
と麗華は思う。  
「ジュースでいい?」  
「はい」  
冴子が、冷えたジュースをグラスに注ぐ。その時、ジュースの瓶が  
カチカチとグラスを鳴かせた。手が震えている。  
「先生、大丈夫?」  
「何でもないわ。・・・ちょっと、疲れている・・・だ・・・け・・・」  
麗華に気遣われた冴子の語尾が濁った。そして、くくっと声をくぐも  
らせた後・・・  
「ううッ・・・ひくッ・・・」  
ぐすんと鼻を鳴らしながら、冴子は涙を流す。もう、どれだけ泣いた  
のか。いや、いくら泣いても、陵辱された女教師の涙は枯れないのだ。  
「ごめんなさい・・・麗華・・みっともない所・・・見せて・・」  
「先生・・・」  
ぽろぽろと溢れる冴子の涙。それを見た麗華はたまらなかった。  
そして、何もしてあげられない自分の無力さを痛感する。ならば、  
せめて励ましたい─そう思って、冴子の手を取った。  
 
「いけない。麗華・・・こんな、二十人以上の男に犯されたあたしに触れたら、  
あなたまで汚れてしまうわ」  
重ねられた麗華の手を解こうとする冴子。声が涙がかっている。しかし、  
「先生は汚れてなんかいない!」  
麗華は逃げる冴子の手をぎゅっと握り締め、頬を寄せていった。  
「あっ・・・」  
そう声を漏らしたのは、冴子。この時、麗華の唇は冴子の唇へ重ねられて  
いた。突然の口付けに戸惑ったが、冴子は拒もうとはしない。  
「ごめんね、先生・・・」  
唇を離した後、麗華は詫びた。自分でも、どうしてこんな事をしたのかが  
分からないようで、伏し目がちのまま、冴子を見遣っている。  
「いいのよ、麗華」  
教え子に握られた手が暖かい・・・と、冴子は思った。それと同時に、  
(この子は、自分へ愛情にも似た憧憬を、持ってくれている)  
と確信する。それが分かって、感激した。嬉しくて思わず涙を零した。  
「先生・・・?」  
慌てた麗華が冴子の顔を覗き込む。自分の行動が、冴子の涙を誘ったと  
思っているらしい。  
「大丈夫、嬉し泣きよ」  
麗華の真摯な表情に答える冴子。そして、涙を指で拭いながら、寄せて貰っ  
た愛に応えるべく、体に巻いていたバスタオルをそっと床へ落とした。  
 
深夜になった頃、骸学院は雨に包まれていた。それが、女教師と女生徒が  
紡ぐ禁忌の愛を隠してくれている。二人は、ベッドの上だった。  
「先生・・・」  
「ああ、麗華・・・」  
麗華が冴子の股間へ顔を埋め、舌と指を使った愛撫に夢中となっている。  
恥丘に鼻を擦りつけ、はあはあと息を荒げながら、冴子の女肉を指で探り、  
開いた女の裂け目から顔を出す肉芽を、ちゅうちゅうと吸っていた。  
「先生のここ、美味しい」  
「バカ・・・変な事を言わないで・・・」  
二十五歳の女教師は、教え子の少女に女肉の味を評され、頬を染める。  
少女の方は、敬愛していた気高い風紀委員会顧問の女教師が、自分の  
愛撫で気もそぞろ・・・といった様子に満足げだった。  
「先生の事、お姉さまって呼んでいい?」  
ちゅっと肉芽へ口付けながら、麗華が問う。包皮を丁寧に剥き、女の弱点を  
優しく責める様が、いかがわしくも美しい。  
「いいわよ、麗華。ああ・・・あたしの可愛い子猫ちゃん・・・」  
冴子が身悶えつつ同意すると、麗華は微笑をたたえながら指を使い出した。  
「先生─ううん、お姉さま、いかせてあげるね」  
子猫ちゃんと呼ばれた事が嬉しく、つい張り切ってしまう麗華。冴子を大股開き  
にさせ、細い指を束ねて女穴をぐいぐいと穿つ。  
「ああッ!」  
自分の中で、教え子の指が蠢いている─それだけで、あの忌まわしい獣たち  
から受けた輪姦を忘れそうだった。なにより、麗華との間には愛がある。それと、  
決して壊れることのない信頼も。  
 
「汚い男の事なんか、忘れさせてあげる・・・ううん、あたしがお姉さまの  
体に新しい記憶を刻むわ。永遠に失われる事の無い絆よ・・・」  
麗華が冴子に圧し掛かった。股間と股間を合わせ、互いの性器をぶつけ  
合うつもりらしい。肉づきの良い恥丘同士が接すると、ぴちゃりと鳴く。  
「ああん!嬉しいわ、麗華。あたしをめちゃくちゃにしてッ!」  
冴子が叫ぶと、麗華は腰を使って、性器と性器を擦り合わせていく。生の  
肉音がぴちゃっぴちゃっと悲鳴を上げ、互いの淫欲を高ぶらせる。  
「ああ・・・お姉さまを犯してるみたい・・・」  
陰裂が割れ、半剥けとなった肉芽同士が擦れ合う。その、最も敏感な性感  
帯が刺激を受けると、女教師と女生徒の理性を粉砕した。教師は被って  
いた理知の仮面を剥がされ、生徒は初めて知る同性との甘い蜜戯に酔う。  
「麗華・・・顔を見せて・・・キスしましょう」  
「お姉さま・・・ああ、愛してるって言って・・・」  
「愛してるわ、麗華」  
そうして二人は唇を重ね、飽く事無く互いを貪ったのである・・・  
 
同日同刻─骸学院風紀委員会室で、風紀委員長である加奈子は机に  
向かっていた。眉間に険を浮かべ、何やら思案している様子だ。  
「・・・・・」  
加奈子が顔の前で手を組む。そして、ほうっとため息を一つついた後、  
「出番が無かった・・・」  
そう言って、机に突っ伏した。あれだけ、意味ありげに登場して、何の活躍  
も出来なかった事が悔しいらしい。更には、  
「やっぱり、トレンドはやられキャラかな・・・責めか受けかは別として」  
と、訳の分からない独り言を呟きつつ、  
「萌えとはなんぞや!」  
そう叫んだのであった・・・・・  
 
おちまい。  
 

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