こちとら天使。雇い主は神。偉そう。命令とか理不尽な上に問答無用でテラウザス。
てめー女のコをコキ使って何様のつもりだと反論したら、
男女平等とか持ち出してキレ始める独身貴族板とか男性論女性論板とかに居そうな奴。
そりゃこんなのが神やってちゃ人間も堕落するってーの。
このクソ神のせーでストレスの溜まる毎日にイライラしてきたので、悪魔でも張り飛ばして鬱憤晴らしてきます。
実際はこんなストレス解消に軽く使えるほど、その辺うろうろしてる生き物でもないんだけど、
鬱でヒッキー気味なツレのタレコミによって悪魔情報(顔写真付)ゲッツ。
写真見た限りではつーんとした感じの女のコ、どことなく駆け出しの悪魔っぽ。
これはかなりの好条件、この上ない娯楽の予感。
ワクワクしながら出かける準備をしませう。今日は何を着ていこうかしらん。
悩むこと24秒。
やっぱりクロ×シロレースのふしぎの国のアリスワンピをベースに適当にコーディネイトしましょ。
「天使のくせに黒基調の服着て出かけるんじゃねー! 天使なら天使らしい服にしやがれ!」
突然神の声がッ! なんなんだよコイツ、もー、うぜー。
神だからってプライベートにまで干渉してくんな。
そもそも「男らしさ」「女らしさ」を否定する平等論者のくせに、天使らしさを押し付んのかよ。
といいつつ、逆らうと反逆罪で羞恥プレーとかさせられて、
ノーマルでバージンな私には非常に困る展開になってしまいます。
仕方がないので真っ白なリボン切替カットソーに、適当なスカートを合わせて出かけることにしました。
もちろん、悪魔を苛めるためのオモチャを引っさげて。
「うわー服のセンスわっるー」
悪魔を発見した瞬間、思わず感想を口にしてしまう正直な私でありました。
なんたって全身ヴィヴィアン。なんて分かりやすいのかしら。
「そっちこそ妙な浮ついた格好してんじゃん。漫画みたいな格好して、チンドン屋かと思ったよ。
しかもコーディネートがなんか適当だし」
「んだとこら! この私のどこが適当なんじゃい!」
「やりたい事はわかるんだけどさ、なんていうか根底のところでセンスないよ」
「あんたに言われたくないよ! っていうか悪魔の分際で天使様に向かって何様のつもり」
着てる服を侮辱するとゆー、女のコに対する最低の行動をとったこのクソ悪魔には、
みっちりお仕置きしなくてはいけません。それも神の使いとしての使命なのです。
「とりあえずくたばれ!」
天罰を下すべく、クソ悪魔にビームを撃つ! 撃つ! 撃つゥ!
「崇高なる神の奇跡をビームと呼ぶとは何事だ! 改めろ!」
また神の声がッ! しかも果てしなくどうでもいい啓示だし。
これ以上分かりやすい表現も無いかと思うんですが…やっぱダメ?
「ダメ」
うーん…。
崇高なる神の裁きが今、悪魔を焼き尽くさんとしていた。
嗚呼…突然の不意打ちに、悪魔は成すすべもなく倒れるであろう。
私は勝利の確信に薄笑いを浮かべずにはいられなかった。
しかし、神の裁きが通り過ぎたその軌道には悪魔の姿は無かった。
それはまるで幼子が生まれて初めて、手品によって姿を消す魔術師を見たような、
理解を超えた出来事にただ呆然たる情動を与える出来事であった。
うーん…。やっぱダメだ、お堅い表現は私にゃ疲れるわ。
って、アレ? クソ悪魔マジでどこ行った?
「残念でしたー、あべし!」
「きゃあああ!」
後ろから蹴られたのか殴られたのか、とりあえず後ろから打撃を受けて私は吹っ飛ばされました。
「あら奥さんお聞きになられました? きゃあ、だよ。きゃあ。いまどきなんて古典的な悲鳴」
く、くそー。なんたる屈辱。戦いでの失態を遥かに上回る勢いで恥ずかしさマックス。
「本格的にムカついた。受けた屈辱、3.14倍にして返したるわッ!」
3.14という言葉に忠実に、私は分身してクソ悪魔を包囲しました。
どれが本物の私か悩み狼狽している間に剣でぐっさり。倒れたところにムフフのフ。
ゴス。
「きゃぁー!」
悪魔の槍がまともに私に直撃し、私は倒れました。文字通り直撃、HPまとめてゴッソリ全部。
「な、なぜ私の奥義をこうも簡単に…」
立ち上がれない私は悔しさに呻くぐらいしか出来ませんでした。
「ヒント:足元の影」
「そ、そんな細かい所を瞬時に見切るなんて、一体何者…?」
「古典的すぎだよ。天使ってなんでこうも時代に取り残されてるんだろ」
クソ悪魔は嫌味ったらしく余裕しゃくしゃくな挙動で、私の可愛らしいお腹を踏みやがり、槍を構えました。
テラヤバス。このままでは普通にとどめ刺される!
「ああ、神よ、お助けを!」
「今それどころじゃねーんだよ! 話し掛けんな!」
神の声がッ! って人には文句つけるくせに、いざ頼ろうとしたらそれかい…。
「あーあ、見捨てられてやんの。惨めなお嬢さん」
悪魔が悪魔的な笑みを浮かべた。これは自力で何とかしなきゃ確実にヤられる。
「犯られる」のも非常にイヤだけど、相手が悪魔だけにかなりの確率で「殺られる」。
這い蹲ってでも逃げようとしたけど、いかんせん踏まれてるので逃げられるはずもなく。
「残念だったねぇ」
追い詰めて楽しもうといったありがちな隙を見せる事もなく、悪魔はあっさりと槍を振り上げました。
「ひ、ひぃっ」
この肝心な時にも私は情けない声を上げ腰を抜かすだけ。もうだめぽい。私は諦め気味に目を閉じました。
「キタコレ!」
何を思ったか。クソ悪魔は構えた槍を戻して、私の姿をフラッシュ撮影し始めました。
もともと悪魔は奇行の目立つ生き物だけどこれは特に理解不能。
だと思った時、私は自分の状況に気付いたのです。
私は恐怖のあまり、自分でも気付かないうちに地面に尿を垂れ流し、要するに失禁をしていました。
可愛い大切なスカートも生温かく濡れ。そんな私の姿をクソ悪魔が嬉々として撮影していたのです。
「や、やめなさい!」
「うん、いいよ。もう撮り終わったし」
やめろと言われてやめるその余裕が、逆に嫌味ったらしくて非常にムカつきます。
「さてどうしようかな。どうして欲しい?」
どうもして欲しくないから助けてください。とは思うものの、悪魔相手にそんな懇願は口が裂けても御免なわけで。
「とりあえず身包み剥ごっと」
クソ悪魔は私の背中に座り、悠々と私の鞄を漁り始めた。女のコの鞄を勝手に漁るとかほんとに悪魔ってやつは。
「汚い椅子だなーもう。座布団ひいて座ろ」
「清らかな天使に向かって汚いとは何事よ」
「ションベンタレ汚いじゃん。普通に」
うっ。気付くと生温かかった失禁の跡が冷たくなってきております。
「とりあえず財布は貰っとこ。センスの欠片もない化粧品はゴミだけど、あ、何か面白いものいっぱいあるじゃん」
クソ悪魔は目敏く前用バイブと後用バイブを取り出しやがりました。
いや、今だから正直に告白しますが、実は持ってるだけで使った事はないのです。
だからこそ悪魔で実験をし、どのようなものなのかを勉強しようと…
「いつまでブリっ子してんだこのションベン娘」
クソ悪魔は超人的な技巧なのか、スカートを捲ったり下着を脱がせたりといった手間を0.1秒で済ませ、
0.2秒で私のあそこにバイブを突き刺しました。
「痛い、痛いって!」
デスファイル。
【可愛く清らかなる天使ちゃん。通行中に、自分で持ち歩いていたバイブに貫かれバージン喪失。】
笑えねー…。
ブスリ。
「ひきゃあああ!」
後ろの穴もあっさりとバイブに貫かれてしまいました。
「おおー、このバイブ凄いじゃん。魔法で動くだけに永遠に稼動とわっ。さすがは天使の持ち物だね」
クソ悪魔は脈絡もなくアンジェリークの男キャラみたいな甘い笑顔で白い歯を光らせました。
やっぱり悪魔の行動はワケ分からん。
般若ーローかーむーはろらきあーひゅーむーのぱじゃー…。
い、いや今のは違いますよ。ショックで気が触れたワケじゃないですよ。クソ悪魔の携帯の着うたの歌詞です。
「はいもしもし、りりです」
そんな愛くるしい名前だったんかコイツ。
何にせよチャンス到来。電話してる間に逃げろという神のお助けに違いないでしょう。
「えー。天使を返り討ちにしたから殺す前に遊んでるところなんだよ。勘弁してよ」
こっちこそ勘弁してくださいって感じですが、今のうちにとりあえず私は立ち上がろうとしました。
「んーそういわれても」
「あうっ」
クソ悪魔は電話しながら片手間に、立ち上がろうとした私を背中から蹴り倒し、またしても足蹴にしやがりました。
「あー、じゃー今から行くからちょい待っててー」
この可愛い私がこのようなクソに、足蹴にされぐりぐりと背中をえぐられております。いっぺん死ねこの悪魔。
「彼氏の呼び出しなんで帰るわ。バイブが抜けなくなる魔法だけかけとくし、
魔法解いて欲しかったら泣きながら私の所に来てねー。じゃ」
私より彼氏のほうが重要らしく、クソ悪魔はさっさと魔法だけかけてすたすたと歩いていきました。
なんとか一命は取り留めたようです。ありがとう彼氏さん。
と安心したのも束の間。突き刺さったままの二本のバイブが突然振動を始めました。
立ち上がろうとしただけでも、バイブの絶妙な振動がそれを許してくれません。
自分で失禁して作った水溜りの中で、ただバイブに翻弄されます。
よくよく考えるとここはどこなのでしょう。もうよく分かりません。
分かりませんが、人の姿はなく、助けを呼ぶ声も、喘ぐ声も、誰かに届くことは多分ありません。
だけど、誰かが見ているのです。
悪魔に敗れ去り、無様に尿を漏らし、神に打ち捨てられ、一人で助けを求めながら喘ぎ続ける惨めな天使の姿を、
誰かが見ているのです。
それはあなたです。
お願いです。これ以上、こんな私の姿を見ないで下さい。