ピチョン…ピチョン…  
 
「…うっ…」  
 
体に走った痛みと水の音で俺は目が覚めた。「………?」  
顔をあげて辺りを見回す。薄暗く殺風景な部屋だった。  
「……………」  
頭が朦朧とする…。俺は自分がどういう経緯でここに居るのか一つ一つ思い出すことにした。  
 
 
そうだ…。  
 
俺はあの日ボスのためにいつもの様に天使を探していた。ボスは天使の羽をコレクションするのが趣味だった。そして俺は一匹の天使を見つけた。  
 
「…ボス、天使を一匹見つけました」俺はボスにすかさず連絡した。  
「どんな様子だ」  
「…下級の天使です。羽は…まだ新しいですね」  
「そうか…よし、狩れ」  
「…了解」  
ボスとの通信を終えると、俺は改めて天使の様子を伺った。  
まだ小さい子供の様だった。長い銀髪には軽くウェーブがかかっており、白衣に包まれた肌は透き通って光っているようだった。そして、背中に真白な羽、頭には光の輪。典型的な下級天使の姿だ。  
「…」  
俺は音を立てない様にして奴の背後に忍び寄った。天使は少しも気付く様子はなく、呑気に蝶と戯れている。  
(余裕だな…)  
俺は瞬時に奴に襲いかかった。  
「!!!」  
奴も驚いて振り向いた。  
 
だが、その表情は――何故か不敵な笑みだった。  
 
 
 
俺の記憶はそこで途切れている。だが、一つ分かった事がある。  
…俺はあの天使にはめられたのだ。  
 
…そうだ、できればあの時点でおかしいと気付くべきだった。いくら下級天使とはいえ、あんな至近距離に悪魔が近付いて気付かない訳がない。  
あれは、演技だったのだ。そして、俺はあの演技にまんまと騙された。…そういう訳か。  
 
大分意識がはっきりしてきた。そこで俺はまた新たな体の異変に気が付いた。  
「…?……なっ!!」両手と両翼が光の縄で縛られている。そして更に、首には光の首輪まで。ここに拘束する気か。俺は光の縄を解こうと手に力を込めた。が、その時  
 
「ああ、気が付いた?」と女の声がした。  
俺がその声のした方を見ると、そこにはあの天使が立っていた。  
 
「あたしの光束具、どんな感じかしら?」言いながら俺の方へ歩み寄って来たその天使の顔を見て、俺は思わず声をあげた。顔は確かに先程の天使だが、明らかに年齢や体つきが違う。先程までのあどけない顔つきが、今や完全に大人の女の顔だ。  
「…何?さっきまでの方が良かった?このロリコン」  
「は!?」  
…ロ、ロリ!?  
「ふふふっ、うまく騙されちゃって、気付いてないとでも思った?あんたあの気持ち悪い視線なんかバレバレなのよ」  
その天使は吐き捨てる様にそう言った。俺はもちろんそんな目で見た覚えはない。  
「ねぇ…取引をしない?」  
「あ?」  
「あんた、はやく帰りたいでしょう?その光束具を解いてあげる代わりに…あんたの、ボスの居場所を教えてちょうだい」  
「…はぁ?」  
「簡単な事よ。あなたはあなたのボスの居場所を教える、そしたらあたしはその代わりに光束具を解いてあんたを自由にしてあげる…ね?簡単でしょう?」…何を言ってるのだろう。それは、つまり、俺に、  
 
ボスを裏切れと?  
 
「ふざけんな!!なんでお前にそんな事を教えなくちゃならない!?」  
俺は怒鳴って天使を睨み付けた。  
天使は一瞬鳩が豆鉄砲を食らった様な顔をしていたが、  
「そう…それなら仕方ないわね」  
 
ドゴッ!!  
 
「がっ!!」  
 
何だ!?  
 
は…腹を蹴られた?  
「それはそれで仕方のない事だけど、でも」  
「ぐっ…ぅ…」  
「あなたは一生、ここから出られるなんて夢を見ないことね」  
天使はそう冷たく言い放って、奥へと消えて行った。  
 
-------------------  
 
 
ドカッ!!  
 
「ぐぁっ!」  
 
腹に激痛が走り、まどろみの中から一気に引きずり出された。気付くと朝になっていた。いつの間にか眠っていたらしい。  
「グッモーニン」  
目の前には満面の笑みを浮かべた天使がいた。  
「…」  
俺は無言で天使を睨み付ける。  
「どう?一晩経ったけど、考えは改まった?」  
「…」  
俺は何も答えなかった。つまり、そういう事だ。  
 
 
バキィッ!!  
 
「!?」  
今度は顔を殴られた。  
「…何とか言いなさいよ」  
仕方なく答えた。  
「…一晩で変わると思うか」  
俺がそう答えると、天使は肩を竦めた。  
「そうよねぇ、悪魔って頑固だもんねぇ」  
 
バキィッ!!  
 
「…ッ!」  
 
「だから、こうしてるんだもんねぇ」  
あはは、と天使は甲高い笑い声をあげた。  
「私はこれから出かけるから、せいぜい飢え死にしない様に頑張って」  
そう言うと天使はどこかへ飛んで行った。  
 
 
…畜生。  
 
 
「……くっ…くそ…」  
天使の監視から一時的に逃れた俺は、光の縄を解きにかかってみたが…少しも成果は上がらない。羽が自由ならまだ分からなかったかも知れないが、羽も縄で縛られている。  
…だめだ。結局俺は縄を解くのを諦めた。  
だが、まだ全て諦めた訳ではない。俺にはボスとの通信手段がある。それはこの角だ。この角がアンテナの役割を果たし、ある種の超音波の様なものを出す事によって、情報のやりとりができる。  
早速ボスとの連絡を試みる為、耳を澄ます。  
………つかまえた!僅かだがボスの声が聞こえる。  
 
「……は……こに…」  
確かにボスの声だ。俺は声のする方へ語りかけてみた。  
 
…ボス…ボス、聞こえますか?  
 
……その声!!…無事だったか?  
 
…いや…ちょっとしくじりまして…体の方は無事なんですが、ちょっと…あ、相手方に捕まっちまいまして…  
 
…そうか…それで、お前は今どこに…?…  
 
…はぁ…何分窓が無ぇんで詳しい場所までは分かりませんが…多分…いやきっと、天使側の領地です。廃屋みたいなとこで…あ…あと…近くに海がある…かも知れません…  
 
これはさっき耳を澄ました時に気付いた事だ。  
 
…分かった…いま助けを寄越す…  
 
…はい…ありがとうございます…  
 
通信はそこで終わった。俺は安堵と喜びで叫びそうになった。あの天使はしばらく帰って来ないだろう。あとは助けが来るのを待つだけだ。  
俺はその間を寝て待つことにした。  
 
果報は寝て待て、だ。  
 
 
 
ゴキィッ!  
 
「!!?」  
突然の痛みで目が覚めた。  
 
目の前には天使が立っていた。  
俺は訳が分からず呆然とする。段々顎が痛み始めた。顎を蹴りあげられたらしい。  
 
「気持ち良く寝てた所を申し訳ないけど」  
天使が明らかに怒りを含ませた声で言う。  
「今日、この辺の上空を悪魔が飛んでいたわ。ここらじゃ普段滅多に見掛けない悪魔がよ。これについて何か心当たりは?答えなさい」  
 
「……」  
 
ドフッ!  
 
「がはっ…!!」  
「答えろっつってんのよ」  
 
「………無い」  
 
俺がそう言うと、何故か天使はニヤリと笑った。…何かまずかったか…?  
「…ふぅん。おかしいわね。向こうが言ってた事と違ってるわ」  
「…向こう?…まさか…」  
…そんな…嘘だろ…?  
天使はニッと笑う。  
「その悪魔よ。ちょっとばかし叩いたら、すぐ喋ってくれたんだけどねぇ…あんたの名前も、あんたのやったことも」  
天使はあはははは、と高笑いをあげた。  
俺は絶望で目の前が真っ暗になりそうだった。  
「あんた、この角が通信手段になってるんだってねぇ?」  
天使は忌々しそうな視線を俺の角に落とした。  
そして…頭を鷲掴みにした。  
 
……まさか。  
そう思っ  
 
 
ガキンッ!!  
「ギャッ!!」  
 
…つっ角を、壁に叩き付けっ  
 
ガキンッ!  
「がぁっ!」  
 
…角をっ…折る気か!?  
 
ガキンッ!  
「ぐぅっ!」  
 
ガキンッ!  
「…っうっ!」  
 
打ち付けられて何回目かした時、  
 
バキンッ!  
 
「…ぎっ…ぎぁああああぁあああぁっ!!!」  
 
頭に激痛が走った。たまらず俺は叫び声をあげた。  
 
カラン…  
 
折れた角の先が、空しく俺の前に転がった。  
「…あーあ、折れちゃった」  
 
天使が折れた角を拾いあげた。  
 
「もう片方は…明日にしてあげる。そうねぇ…次は鋸で切ってあげる。根元から、ザックリと、ね」  
天使はそう言うと楽しそうに笑った。  
 
…もう…だめだ…。最後の望みだったボスからの救援も失敗し、通信手段であり悪魔の誇りでもあった角まで折られた。  
その上、明日は残ったもう片方の角を鋸で切るという。  
そんな事をされて俺は…ボスの居場所を漏らさない自信がない。  
 
だが…俺にはボスを裏切ることはできない…。こうなったら…いっそ死んでしまおう…。  
 
俺は舌を奥歯で噛んだ。これを思いっ切り噛み千切ればいい。  
 
俺がいきなり死んだら、この天使はどうするかな。きっとかなり悔しがるだろう。  
その様を見られないのが残念だ。  
俺は、死ぬ前だというのに笑っていた。  
 
「…?」  
天使が俺の様子がおかしいことに気が付いた。  
だがもう遅い。  
 
「だめっ!!!」  
俺は目を閉じて思いっ切り噛んだ。  
 
ガリッ  
 
……?おかしい。死んでいない…。  
 
俺は目を開けた。それもそうだ。俺が噛んでいたのは俺の舌ではなく天使の指だった。  
 
「…よくもそう賢しい真似が幾つもできるもんね…流石は悪魔…とでも言った所かしら」天使は恐ろしい形相で俺を睨んでいた。  
「それとも口も塞いで欲しいのかしら?もう…マゾなんだから」  
天使はそう言うと噛まれていない方の手で光の輪を作り出した。  
 
俺は天使の指を必死に噛み続けたが、天使は表情一つ変えない。  
 
天使は今度は両手で口をこじあけると光の輪を俺の口にはめて猿轡にした。  
 
万事休す…か…。  
これで俺は自害することもできなくなった。  
「ふふっ…可愛い…すっごくおしゃれな口飾りだわ…似合ってるわよ、それ」  
天使はそう言いながら愛しそうに俺の頬を撫でた。  
俺は悔しさで泣きそうだった。  
 
「あぁ、そうそう」  
天使はそう言うと、脇にある水道に向かって歩き出した。  
 
そして、水を大量に汲んで来ると、  
 
バシャッ  
「!!」  
 
俺にその水をぶっかけた。  
「…あなたが暑いだろうと思って」  
 
暑いだって?冗談じゃない。今までだって只でさえ肌寒さを感じていたものを…。  
 
「じゃあね、また明日」  
と言って天使は帰ろうとした。  
 
「…はい、もしもし」  
天使が耳を押さえて喋り始めた。誰かと連絡を取っているんだろう。  
「…ええ、なかなかうまくいかなくて。…ええ。あんまりむかついたもんだから角を折ってやったわ。……そう、しぶといのよ。まるで…まるでゴキブリみたい」  
天使はそう嘲るとあはは、と笑った。笑いながら廃屋を後にしていった。  
 
 
誰もいなくなった廃屋で、俺は声も出さずに泣いた。  
 
 
朝になった。  
昨日の夜から一睡もできなかった。昨日、水をかぶせられたせいで寒くて寝られず、終いには震えまでしてきた。  
頭がぼんやりしてきた。風邪を引いたらしい…。  
 
「おはよう!良く眠れた?」  
えらく機嫌のいい声が入って来た。  
「今日はご飯を持って来たの!じゃん!これ!栄養チュ〜ブ〜!」天使は何か白い物が入った細い管を見せつけた。  
「あなたが餓死しちゃうといけないと思って」  
天使は猿轡のはめられた俺の口をこじあけて僅かな隙間を作ると、その隙間から俺の口に管を差し込んだ。  
「う…」  
 
口の中に苦い物が流れ込んでくる。飲みたくは無かったが、喉の奥まで流れ込んできたので飲まざるを得なかった。  
「………よし、全部飲んだわね」  
俺がチューブの中身を全て飲んだことを確認すると、チューブを捨てた。  
「じゃあ、今度はおトイレにつれてってあげるわ!逃げちゃ駄目よ」  
天使がそう言った時、天使の手から俺の首輪へと光の紐が伸びてきた。  
「さぁ、行きましょ」  
 
グィッ  
 
「う!」  
首を引っ張られた。俺はそのまま前に倒れた。  
 
「ちゃんと歩いて、ホラ」  
 
グィッ  
 
また紐を引っ張られる。俺は何とか立ち上がり、天使についていった。  
 
用を足し終えると、俺はまたもとの場所に連れて来られた。  
 
「…〜♪」  
天使は得意そうに鼻歌を歌っていた。さっきからのテンションの高さといい、何か良い事でもあったのだろう。  
俺はそう思いながら天使の様子を見ていた。  
また水を用意している。昼間位は寝させて欲しかったが、なかなかそうも行かない様だ。  
 
バシャッ  
 
 
俺は大人しく水をかぶった。  
「こっちの角は帰ってからやってあげるね。大人しく待ってるのよ?」  
天使は軽く角にキスをすると、また急いで廃屋を出ていった。  
 
 
 
 
 
また水をかけられ、震えている俺の中では、ある一つの考えが纏まりつつあった。  
このまま無抵抗で居続ける若しくは奴を挑発することによって、いつか度が過ぎてうっかり殺してくれるのでは無いだろうか。  
このまま嬲られ続けられるよりかは、そっちの方がずっと良い。  
 
俺はずっとそのことを考えた。いつの間にか夜になっていた。  
 
 
バサッ…バサッ…  
 
しばらくすると、何かが飛んで来る音が聞こえてきた。あの天使がきたのだ。案の定、その羽音は廃屋の前で止まった。  
 
 
「……」  
朝とは打って変わって機嫌の悪そうな天使が入って来た。  
 
 
…さぁ今日も俺を嬲ってくれ。嬲って嬲って嬲りまくって殺してくれ。  
 
天使が俺の前に立った。  
俺は目を閉じて待った。  
 
……?何もして来ない…?  
 
俺は不審に思って目を開けた。  
 
 
………なっ!!!?何だこれは!!!?  
 
俺の体が光っている!!?俺は咄嗟に天使の方を見た。  
 
 
………なんて事だ。天使は俺の前で祈りの姿勢を取っている。  
そして…俺の体にあった傷が全て癒えていく。  
 
……嘘だ…やめてくれ……そんな……  
 
みるみるうちに傷は塞がり、寒気はあっという間に吹っ飛んでいく。  
 
 
このアマ……俺の体力を回復しやがった!!!  
 
 
俺の傷が完治すると、天使は目を開けて微笑んだ。  
 
どこまで俺の事を踏みにじれば気がすむんだ。  
 
「…ふふ…ありえないって顔してる。でもこれもあなたがさっさと白状すれば無かった事なのよ。そしてこれからも白状しないつもりならずっとこの繰り返しよ」  
 
ふふふ…あっははははは…  
 
天使の高笑いが鳴り響く。もう何が何だか分からない…。俺は頭を垂れてうなだれた。  
 
「これは精神的にかなり応えたんじゃない?さぁ?どうする?白状しちゃう?」  
 
…  
 
 
…  
 
「…ふーん。ホントしぶといのね。しょうがないわね。…あ、角のことは無しにしたわ。いたぶるのにもそろそろ飽きてきちゃったから。これからは痛みじゃなく…快感で拷問してあげる」  
 
…?  
 
…痛みじゃなく…  
 
…快感で拷問…?  
 
俺がその言葉の意味を反芻していると、奴はいきなり何を思ったか  
「!?」  
 
俺の股間に手を添えた。  
「そんなに驚かなくても良いんじゃない?」  
奴の手が優しく俺の股間を愛撫して来る。  
 
…なんだこの痴女!!?  
 
「…うぅ」  
俺はたまらず逃げたくなった。しかし俺の足は押さえられているためそれもかなわない。そうこうしているうちに奴は俺のジーンズのジッパーを下げ、中をまさぐってくる。  
「…う…!」  
冷たい指がまとわりついてくる。  
 
「ホラ、もうこんなカチカチじゃない。我慢は体に良くないわ」  
天使はからかう様にそう言う。  
 
そう言いながらも手の方は休めない。  
 
そうして奴はとうとう中から俺の…一物を取り出し、手で扱き始めた。  
「うっ…」  
その瞬間、体中に快感が走る。  
ふと天使の顔を見やる。狼狽した俺の表情を見て嬉しそうだ。  
 
その時、天使は更ににっこりと笑うと、頭を下げた。  
 
「…?うっ、うぁ!」天使がいきなり俺の一物を口に含んだ。  
 
天使の舌が俺の一物に絡まる。その度に俺の体は痺れにも似た感覚に支配される。  
「はっ…あっ…!」  
 
根元から先端まで一気に這い上がり、亀頭部分を弄る様に舐められる。  
 
「はぁ…はぁ…ぅ…」  
…ヤ…ヤバい…も…もう…  
 
俺がそう思った時、  
 
不意に、俺の一物に走る感覚が消えた。  
「…?」  
俺は不思議に思っていると、  
「言ったでしょ?拷問だって」  
頬に手が当てられた。  
「不必要に気持ち良くさせちゃ拷問にならないでしょ?」  
頬を優しく撫でる。  
 
「苦しいわよねぇ…イキたいのにイけないなんて。あなたは何回で音をあげるかしら」  
 
…くそっ、そういうことか…  
 
 
それから俺は何度も中途半端な快楽を与えられ続け、気付くと空が白み始めていた。  
 
 
「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」  
 
中途半端な快楽はもうこれで何度目だろうか…。  
「ねぇ…そろそろ言って楽になっちゃわない?これだけ溜まってるなら…きっとかなり気持ち良いだろうし…」  
…脳内がふやけている様な感覚に陥っている…  
 
…このまま耐え続けたら、発狂してしまいそうだ…  
 
…もう…もうだめだ…  
 
…ボス……すみません…  
 
「…ぃぅ…」  
 
「え…え?なんて?」  
「ひう…ひうはあ…」  
「言うの!?言うのね!?」  
 
俺は頷いた。  
 
その途端、天使がパチッと指をならした。その音と同時に猿轡が解けた。  
 
「…はぁ…はぁ」  
「どこ!?どこにいるの!?」  
「ここから…南に何キロか行った所に…蓋がある…そこから…地下に入れる…そこだ」  
 
俺は途切れ途切れにそう言った。  
 
「…良く言ったわ…溜まって苦しかったでしょう。思う存分吐き出しなさい」  
天使は優しくそう言うと、俺の一物を手で扱いた。  
 
たった少し扱かれただけですぐに達してしまった。  
 
「…うっ!!」  
 
俺は…今まで溜め込んできた物を一気に放った。  
 
ビュビュッ!ビュルルッ…ピュッ…  
 
自分でも驚く程の量の精液を放った俺は、全身の力が抜けてしまった。  
 
ふと天使を見ると、頭からどっぷり俺の精液をかぶっていた。  
 
「あ…」  
 
俺は何だか急に気まずくなってしまった。もちろん俺が気まずくなる道理なんか一つもないのだが。  
 
「…もういいわ、あんた用無し」  
そう言うと天使は再び指を鳴らした。その瞬間今まで俺を縛っていたくそ忌々しい光の輪や首輪が解かれた。  
 
「もう好きな所行っていいわよ。じゃあね」  
そう言って天使はスタスタとでて行ってしまった。  
 
「……」  
 
俺は正直呆気にとられていた。いくら何でもあっさりすぎやしないか。それとも天使は皆ああなのか。  
 
…良いのか?  
 
 
 
俺は乱れた着衣を直し、思いっ切り伸びをした。ずっと座りっ放しだったから体があちこち痛い。  
 
あの天使は「好きな所に行け」と言ったが、俺は未だに廃屋にいた。  
 
もう俺はボスを裏切ってしまった。どこにも行ける場所なんて無い。  
そうぼんやりしていると、急に眠くなってきた。  
 
俺は床に寝転んで眠りこけた。  
 
 
気付くと真っ暗になっていた。  
 
 
「ふぁ…」  
俺はでかい欠伸を一つした。  
 
「誰!!?」  
 
ビクッ  
 
俺は驚いて振り向いた。  
 
すると、そこにはあの天使がいた。良く見ると…泣いている?  
 
「あなた…まだ居たの?」  
どこか安心した口振りでそう言った。  
 
「…勝手だろうが」  
 
「あ…そうよね…ごめんなさい…」  
そう言って天使は俯いた。何故だか急にしおらしくなっている。俺は…天使のこの変化っぷりに興味を持ち、何があったか聞いてみることにした。  
 
「……うっ…」  
また泣き始めてしまった。  
 
喋りたくないのか…俺は諦めてここを去ることにした。もちろん、行き先は未定。  
 
「ま…待って!!」  
 
「?」  
俺は開きかけた羽を閉じた。  
 
「堕天…させて…」  
 
「…は?」  
 
「…私を…堕として」  
 
天使の話はこうだ。彼女には、ある上司の天使が一人いたが、俺のボスの居場所を暴露させるという件で、成功させれば昇進を約束されていた。  
実は、彼女がそこまでこぎ着けたのも、彼女が上司に体を売っていたことが大きいらしい。  
そんなことをしておいてよくもまぁ天使なんか名乗れたもんだ。  
…そして、今朝俺からボスの居場所を暴いた彼女は喜び勇んで上司の所へ行ったが、そこで上司に捨てられたらしい。  
まぁその上司だって自分の立場を危うくはしたくなかったのだろう。  
今まで自分がいい様に利用されていたことを知って逆上。気付くと上司を殺してしまっていた。  
 
…と言う訳らしい。  
「…それで?なんで堕天したいんだ?」  
 
「私は…私にはもう綺麗でいられる資格なんてないもの…あの人を殺めてしまって…まだ…天使でなんていられない…」  
 
随分と自分勝手な女だとは思ったが、不思議と怒りは湧いてこなかった。それよりも先に哀れみがきているからか…。  
 
「…そこまで堕天したいか?」  
 
天使はコックリ頷く。  
「…じゃあ…」  
 
俺は天使のうでを掴んで引き寄せた。  
罠の可能性もあるので、少し警戒したが…杞憂だったらしい。  
 
俺は天使を押し倒して服に手をかけた。天使は目を閉じてじっとしていた。長い睫毛に涙が絡んでいた。  
 
胸元をはだけさせ、大きな胸をきつく揉んだ。  
 
「ん…」  
 
ピクッ  
 
体を強張らせる。  
俺は天使の首筋に軽く口付けた。  
 
「はッ…」  
息が荒く胸がゆっくり上下している。  
 
胸が徐々に熱くなってきた。  
 
俺は立ち上がった小さな乳首を軽くつついた。  
「はうっ!」  
ビクンと天使の体が跳ね上がる。  
…感じやすい体質なのか?  
 
俺はそう思いながらもう片方の乳首を口に含んだ。  
「あぁっ…!」  
またも跳ね上がる。プルンと乳房が揺れた。ちゅう…  
俺は軽く乳首を吸った。  
「あんっ…や、やだ…そんな…吸っちゃ…」  
じゃあ噛んでみる。  
 
「あぅっ…!」  
 
すっかりしおらしくなってしまったな…さっきまでとは大違いだ。  
俺は乳首から口を離し、使っていない方の手で服を更に剥いでいく。  
俺は天使の服を全て脱がして足を開かせ、奥まで見える様にした。  
ピンク色の膣が見えた。濡れててらてらと光っている。  
 
俺はそこに触れた。  
「ああっ…」  
クチュ…チュプ…  
指を滑り込ませた。濡れた音を立てて指が飲み込まれて行く。  
「はっ…あ、あんっ」  
更にクチュクチュと中でで指を動かす。動かす度に膣から愛液が溢れ出てくる。  
 
「はんっ…あっだめぇっ…!!」  
 
「おい」  
 
「?」  
 
俺は手を動かすのを一旦止めた。  
 
「ぇ…?どうして?」天使は困惑の表情を浮かべた。  
 
 
「…嘘だよ、今朝の仕返しだ」  
 
「!…」  
天使はちょっとバツの悪そうな表情をした。  
 
その表情を見て満足した俺は、ジーンズのジッパーを下ろした。  
 
「…いくぞ」  
 
「えぇ…はやく…」  
 
俺は一気に奥まで挿入した。  
 
「ああああっ!」  
天使の体が大きくのけ反った。  
腰を激しく動かす。  
 
パンッパンッパンッ  
 
腰と尻がぶつかる音、それから…  
 
「あんっあんっあんっ!」  
 
天使の喘ぐ声が廃屋に木霊する。  
 
ジュプッ…ジュポッ…  
濡れた蜜壷から愛液がとめどなく溢れる。  
 
羽がパタパタと小さく羽ばたいた。  
 
…?  
悦んでるのか?  
 
「ああっああっあっ…?」  
 
悦んでるらしい。  
 
「…おいっ…出すぞっ…!」  
 
「うんっ…出してぇっ…中にっ…いっぱいっ…!!」  
 
「…ああ…うっ!!」  
俺はそう呻くと、天使の肉壁に叩き付ける様に精をまた放った。  
「あっああああああああっ…!!」  
 
 
 
「……はぁ…はぁ…はぁ…これで…良いのか…?」  
 
「ええ…」  
天使がそう頷いたので、俺は膣から自分の一物を引き抜いた。  
 
まだ彼女のそれはひくひくと痙攣していて、名残惜しそうにまとわりついた。  
 
ドロリと混合液が溢れ返った。  
 
「はぁ…はぁ……は…」  
しばらく天使は放心状態になっていたが  
 
「うっ…!!」  
 
突然様子が一変した。  
 
「あっ…あああっ…!」  
 
まず変化が起きたのは髪の毛だった。先程までの輝かしい銀髪が嘘の様な黒に変わっていく。  
 
真白だった綺麗な羽は焼け焦げる様に黒くなっていった。  
 
「ああああ…いっ…あっ…!!」  
 
天使は苦悶の表情を浮かべて頭を抱え込んだ。  
 
「?お…おい…?」  
 
と俺が声をかけたその時、  
 
 
バキンッ!  
 
光の輪が見事に割れて飛び散った。  
 
「はあっ…はっ…はっ…」  
 
どうやら終わったらしい…。  
 
 
 
 
 
 
「ねぇ…これからどうするの…?」  
「さあな…誰かさんのせいで帰る所を無くしたからな」  
「ごめんなさい…今までのことは謝ります…。でも…その今までの過ちは言葉でいくら謝っても謝りきれるものじゃないわ…だから…何かの形で罪償いをさせて…」  
 
もうそろそろか…。  
 
「…逃げる」  
「え?」  
「もうそろそろボス…いや、あの人の追っ手がくる頃だ…。…おい」  
「はっ…はい!」  
「今までのことは全て水に流してやる。だからお前は俺が逃げる手伝いをしろ」  
「はっ……はい!」  
 
 
 
 
 
 
 
 
―そして、二人の消息は、そこで途絶えている。  
 

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