「ねえ、ねえ、どう?」  
まっすぐな瞳でそう尋ねてくる少女リリィに対し、天使であるルエルは返答に詰まっていた。  
2人が出会ったのは今から1時間ほど前のことだ。  
夕暮れ時、一日の仕事を終え天界への門に向かっていたルエルは、その途中で森から聞こえるかすかな泣き声に気がついた。  
そして声を頼りに降り立った場所で、この少女リリィを発見したのだ。  
当初は彼女のことをただの迷子だと思い、家まで送っていけばそれで済むと考えていたルエルだったが、すぐにその考えを捨てざるを得なくなった。  
リリィは父親からお使いを頼まれており、その帰り道でそのお使いの品である祖母の作った果実酒をなくしてしまったというのだ。  
結局ルエルも手伝って探し回った挙句、ようやく発見することができた頃にはすでに日はすっかりと落ちてしまっていた。  
 
※  
 
リリィがお礼にと分けてくれたワイン。  
それは確かに悪くない出来ではあった。  
(でも……何か一つ足りない気がするのよね)  
それがルエルが抱いた正直な感想だ。  
けれど感想を求めてくる少女の瞳からは、祖母が作ったその果実酒に対する絶対ともいえる自信がうかがえる。  
それだけに、それを否定するようなことを口にするのはルエルにとって、いや誰にとっても胸の痛むことだった。  
かといってルエルは神に仕え、人々に誠実であることを説く天使の1人。  
嘘をつくことにも極めて強い抵抗がある。  
結果、ルエルは少女の問いに対して返答に窮しているというわけだった。  
とはいえ、あまり沈黙が長く続くのもまずい。  
どちらにするにせよ、早く選択しなければ少女に怪しまれてしまう。  
「……おいしくない?」  
それでも決断できずに迷っている内にルエルの危惧は的中してしまったらしい。  
出会った時は涙に濡れていた、けれど失せ物を発見してから今まではせいぜい10歳を越えたばかりだろうその年齢に相応しく無邪気な喜びを湛えていた鳶色の瞳が再び曇り始める。  
それを見て、ついにルエルは決心することができた。  
(この子を悲しませないための嘘だったら、きっと主もお許しくださる)  
「ううん、そんなことないよ。  
 すごく美味しかった」  
小さな罪悪感を胸の奥に隠しつつ、リリィに告げる。  
その答えに、少女はきっと喜んでくれる。  
そう信じての偽りの言葉だ。  
だが、実際の少女の反応は、ルエルが予想とはかけ離れたものだった。  
 
「ふぅん、おいしかったんだ?」  
「――え?」  
一瞬、目の前にいた少女が別の何かに入れ替わったかのような錯覚に陥る。  
それぐらい、劇的な変化だった。  
出会ってから今まで、ずっと纏っていた純真無垢な少女の雰囲気が一瞬で取り払われ、全く逆のものへと塗り替えられる。  
すっきりと通った鼻筋の下、小さく咲いていた桜色の唇がにぃっと横に長く伸びる。  
それは同じ笑顔ではあっても、果実酒を発見した時の見ている者の心まで一緒に明るくしてくれるものとは正反対のものだった。  
ルエルの背筋を、ぶるりと震えが走り抜けていく。  
「うふふ、天使様でも嘘ってつくんだね」  
ルエルの心の奥底まで見透かしているような真っ赤な瞳。  
(――目の色が!? まさか悪魔!?)  
その身体的変化に、ようやくルエルは目の前にいる少女の正体を悟る。  
(私としたことが、見抜けなかったなんて)  
けれどそれを後悔している暇はなかった。  
今この瞬間にも目の前に悪魔がいるのだ。  
反射的に背後に飛び退き距離を取る。  
「――くっ!?」  
だが着地した瞬間、意思とは無関係に膝が折れ地面に片膝を付いてしまう。  
同時に、胃の中が燃えるように熱くなっていることに気がついた。  
正体を隠した悪魔に勧められるがまま口にした果実酒。  
考えられる原因など、他にありはしなかった。  
 
「ひ、卑怯な……」  
「あはは、騙される方が悪いんだよ……って、この台詞も何度目だろ。  
 ホーント、天使って馬鹿ばっかなんだから」  
にやにやと嫌味な笑みを浮かべながら近づいてくるリリィ。  
それに対してルエルの側は、立ち上がるどころか一瞬でも気を抜けばそのまま地面に倒れこむのを避けられないほど体が言うことを聞かなくなっていた。  
それを悟っているのか、リリィの足取りに警戒心はない。  
そのことがルエルのプライドをより一層傷つけていく。  
「正面から戦いさえすれば、とか思ってるんでしょ、天使様?」  
天使様。  
それはリリィが正体を隠していた頃から何度も向けられている呼び方だ。  
けれど以前そこに込められていた尊敬や憧れの感情は完全に失われ、今そこに込められているのは嘲りだけ。  
そしてその言葉は確かにルエルの図星を突いたものだった。  
正体を現した今になっても、少女からそれほど強い力は感じられない。  
というより、元の力が弱いからこそ、あれだけ完璧に悪魔の気配を隠し通せていたと言ったほうがいいだろう。  
(と、とにかく、今は毒を浄化しないと……)  
屈辱にきつく唇を噛み締めながら、全身に天使の力を循環させていく。  
先ほど飲まされたのは、少なくとも即効性の致死毒ではない。  
それが今のこの、敵の目の前で体の自由を奪われるという最悪の状況にあって唯一の希望だった。  
本来、殺すだけなら彼女が油断しきっていた先ほどの段階でもっと強い毒を飲ませてやればそれで済む。  
(それをしなかったのは、どうせ動けなくなった私をいたぶるつもりだったんだろうけど、そうはいかない)  
体は動かせなくとも、彼女の体を常に守っている神の加護は有効なのだ。  
それは悪魔としては大して強くないリリィがむりやり破ることなどできるはずがない強さのもの。  
それ故、幼い悪魔がその手を伸ばしてきても、ルエルの心に恐怖の感情は生まれたりしなかった。  
「ひぅっ!?」  
けれどそのことが油断に繋がってしまったのか、不意打ち気味に敏感な首筋を撫でられて、思わず情けない声を漏らしてしまう。  
リリィの手が自分の首に伸ばされてくるのは、もちろんわかっていた。  
とはいえ、まさか優しく撫でられるとは思っていなかったのだ。  
「ご自慢の神の加護も、こうして触れるだけなら反応しないのよね」  
またしてもルエルの心を見透かしたようなその言葉に、不覚にも驚きを顔に出してしまう。  
「何驚いてるの? あなたみたいな天使を今までに何人も相手にしたって言ってなかったっけ?」  
そしてそれを見て取ったリリィにまたしても馬鹿にしたような笑みを向けられて、ルエルは慌ててそれを抑え込んだのだった。  
 
「く、うぅ……」  
悪魔の力に操られた蔓が頭上から伸びてきて、ルエルの両腕に巻きついていく。  
為す術もなく、地面に膝を付いたまま万歳をするような体勢を取らされた囚われの天使。  
せめてもの抵抗にと目の前の悪魔に鋭い視線を投げかけるが、そんなものはそよ風程度にも感じていないのか、リリィが余裕の笑みを崩すことはなかった。  
加護が反応しないようにだろう、両腕の蔓は締め付けるというよりもあくまでルエルが倒れこまないよう支える程度に巻きついている。  
腕さえ自由に動けば造作もなく振りほどけるほど。  
そのことに、今の自分の無力さをより一層強く思い知らされた。  
「ねぇ、もう1回聞くけど、本当にこれ、おいしかった?」  
リリィが左手に持ったワインの瓶をかざしながら、先ほどの問いを繰り返す。  
「いつまでも反抗的な態度だと、ひどいことしたくなっちゃうんだけどなぁ」  
自分の質問にルエルが答えないことを確認すると、その笑みをさらに残忍なものへと変えてあからさまな脅しの言葉を口にする。  
けれど――、  
「あ、でも加護があるからひどいことはできないんだっけ? 殺そうとしたら、あたしの方が焼き殺されちゃうんだった」  
すぐにそんな風に無邪気に笑い始めるリリィ。  
いくら悪魔には気まぐれなものが多いとはいえ、その態度にはさすがにルエルも面食らってしまう。  
そんな彼女の口元に、リリィはワインの瓶を突きつけてくる。  
今ルエルの体を蝕んでいる悪魔の毒。  
瓶が傾けられあふれ出したそれをこれ以上飲み込まないよう、彼女は必死に口を閉じて抵抗した。  
結果彼女の口の中へと流れ込めなかった深紫の液体は胸元へと零れ落ち、周囲に鼻腔を刺激するアルコールの香りを振りまいていく。  
「あーあ、もったいない。  
 いくら未完成でも、ここまでするのにも結構苦労するのになぁ」  
言葉の内容とは裏腹に、リリィの口ぶりに気を悪くしたような様子はない。  
だがその悪魔の言葉には、その態度以上に気になる単語が含まれていた。  
 
「……未完成?」  
一旦瓶が口から離されたことによる安堵もあって、ついその単語を繰り返してしまう。  
「そうだよ、だから味はいまいちだったでしょ?」  
そう言ってリリィはワインの瓶を今度は自分の口にあて、ラッパ飲みの要領でその内容物を口に含む。  
そこからの展開は、ルエルには予想はできても抵抗ができるものではいそれだった。  
リスのように頬を膨らませたリリィが顔を近づけてきて、そのまま唇を重ねられる。  
2人の身長差は、ルエルが膝を付いていることで逆転し、むしろ彼女の方は上を向く形になってしまう。  
(駄目……これ以上飲まされたら……)  
前に飲んまされた分もまだ浄化できていないのに、そこからさらに追加されたら浄化にいつまでかかるかわからない。  
加護があるだけにすぐさま命に関わることはないだろうが、攻撃的な行為でなければ反応しないという加護の弱点も熟知されている。  
動けない間に悪魔の巣窟へと連れて行かれたりした場合、その後の脱出は極めて困難になるだろう。  
けれど、手足のように全く意思に反応しないというほどではないが、口のあたりにも毒は回りつつある。  
まるで一個の生命のように蠢くリリィの舌に、ルエルの懸命の抵抗はそれほど長くは持たなかった。  
閉ざされていた門を巧みに破った悪魔の舌に先導されて、ワインが口の中に流れ込んでくる。  
(駄目……駄目なのに……喉も……)  
心の中では拒んでいるのに、ルエルの喉は意思に反して流し込まれた液体を素直に飲み込んでしまう。  
再び湧き上がる胃の中の灼熱感。  
天使と悪魔のディープキス。  
その淫靡な行為は、瓶が完全に空になるまで続けられた。  
 
「どう、気分は? それこそ天にも昇る気持ちよさでしょ?」  
「ほ、ほんなころぉ……」  
血に染まった満月のように真円を描く深紅の瞳が目の前にある。  
それが憎むべき悪魔のものだと理性ではわかっている。  
わかっているのだが――、  
(駄目、頭がぼうっとして……)  
滲む視界は落ち着きなくぐらぐらと揺れ、胃の中の灼熱感は全身に拡散して火照りが治まらなくなっている。  
自然と荒くなった息は、自分でもはっきりわかるほど濃いアルコール臭を含んでいた。  
「あは、さすがに瓶1本分は飲ませ過ぎだったかな。  
 でもね、本当に気持ちいいのはこれからなんだよ」  
直後に聞こえた耳障りな音。  
それが下着ごと服の前面部を引き裂かれた音だと理解するまでに、今のルエルには数秒が必要だった。  
(あ、気持ちいい……って、私は何を……)  
悪魔の前で肌を晒す羞恥よりも先に、外気に火照った肌を冷やされる心地よさを感じてしまったことに自己嫌悪の念が湧いてくる。  
とはいえ、体を隠そうにも両腕は万歳状態で拘束されたままだ。  
そんな彼女にできることと言えば、せめて見える範囲を減らそうと身を捩ることぐらいだった。  
けれどその仕草は悪魔にとっては別のものに見えたらしい。  
「あっははは、そんなに誘わなくてもちゃんと触ってあげる」  
「ひ、ひが……ひぃん!?」  
違う、と全く呂律の回らなくなった口で必死に否定しようとした言葉が、途中で情けない悲鳴に取って代わられる。  
その原因は、唐突に胸から生まれた激感だった。  
驚きに見下ろしてみれば、リリィの小さな手がいつの間にかルエルの乳房にあてがわれていた。  
その手のひらが、加護に反応されないよう優しく胸を揉み解してくる。  
「ひぃ……あはっ……れめ、そこ、そんなにひちゃらめぇ!」  
年相応に細く短いリリィの指が蠢く度、雷に打たれたような喜悦の波が全身を駆け抜けていく。  
「どうして、触っちゃいけないの? 感じすぎちゃうから?」  
「ひ、ひが……感じてなんか……ないぃ……」  
「ふふ、やっぱり天使様って嘘つきなんだ。  
 ここをこんなにしておいて」  
「はひぃぃ!?」  
それまで重くどっしりとした快感とは異なる、鋭くそして強すぎる刺激に喉が引き絞られる。  
「乳首、こんなに硬くしておいて感じてないって言われてもなぁ」  
「あひぃ!? いやぁ!? それだめぇ!?」  
混濁する意識の中、それでもリリィの言葉でその強すぎる快感を生み出しているのが乳首だと理解する。  
だが、それは理解したからといって耐えられるような類の刺激では到底なかった。  
 
指の隙間で潰される度、全身が痙攣するのが止められない。  
閉じられなくなった口からは、唾液と共に悲鳴とも喘ぎともつかない情けない声が際限なく飛び出していき、嗜虐心をその瞳に湛えた悪魔を喜ばせてしまう。  
「どう、胸感じすぎちゃうでしょ? でも天使様が悪いんだよ? あんなにワインこぼしちゃうから」  
「わ、わいん……?」  
「あれって、もちろん飲むのが本来の使い方だけど、皮膚からでも吸収されるんだよね。  
 ていうか、胸なんかはそうやってすり込むと効果が倍増するんだ」  
「ほ、ほんなぁ……ひあぁ!」  
抵抗したつもりが、むしろ自分の首を絞めることになっていた。  
その事実に心が侵食されていく。  
「ほら、まずは1回イッちゃってよ。  
 そっからが本番なんだからさ」  
「あひぃぃぃぃ!?」  
それまで放置されていた側の胸の頂を、指ではなくリリィの口に啄ばまれる。  
マシュマロのように柔らかな唇に挟み込まれ、ちゅうちゅうと音がするくらい吸引されると、指では実現できないその刺激に、乳首が限界まで勃起させられた。  
「れめ、それほんろにらめぇ!!」  
そこを尖らせた舌で舐められ捏ねられ突かれると、頭の中があっという間に快感一色に塗りつぶされていく。  
自分というものが消えていく恐怖と、その肉悦に全てを委ねたいという欲求がせめぎ合う。  
(駄目……耐えないと……でも、こんな……)  
「ふあああ!」  
ルエルの内心を読み取ったかのように、一旦止まっていたリリィの指が動き出す。  
乳房を揉みしだき、その頂点を指で挟んで摩擦する。  
時に交互に、時に同時に、右と左、それぞれ異なる刺激の前にルエルの抵抗は嵐の海の板切れ1枚よりも儚いものだった。  
全てが肉悦に飲み込まれ、視界が白く染まっていく。  
「ふふ、じゃあ、これで止め」  
一度口を離してそう宣言したリリィが再び乳首を口に含み、前歯で敏感すぎる突起を挟んでくる。  
「ら、らめぇぇぇ!!!」  
「きゃっ!?」  
ルエルの絶叫、リリィの小さな悲鳴。  
その2つに重なるようにして、ゴムを弾いたような音が響き渡る。  
噛むという行為が薄皮一枚で加護を発動させたのだ。  
今のルエルにとってどう感じられるかはともかくとして、噛むといってもその力はそれほど強いものではなかった。  
それ故規模としては極めて小さいものではあるが、それは紛れもなく悪魔を退ける神の力。  
それは確かにリリィを弾き飛ばしたが、ルエルに対しても痛烈な一撃となっていた。  
リリィの矮躯を弾き飛ばした反動が、極限まで性感を高められた乳房を中心に破裂する。  
それは、本当に胸が爆発したかとルエルに錯覚させるほどの衝撃だった。  
「んああああああ!!」  
これまでにないほどの絶叫で周囲の木々を震わせて、皮肉にもルエルは神の力で最後の一線を越えたのだった。  
 
「いたたたたたた……つい調子に乗っちゃった。  
 でも、ま、結果オーライ?」  
絶頂による痙攣を終え、ぐったりとうなだれているルエルに歩みよるリリィ。  
その口元は赤くなっているが、それでも規模が小さかっただけにそこまでのダメージを受けている様子はない。  
「ほら、起きて起きて」  
項垂れるルエルの頬をぴたぴたと叩き、激しすぎる絶頂による忘我の境地から彼女を引き戻す。  
「は、はぇ……?」  
「おはよ、天使様。  
 でも、まだお寝んねするには早すぎだよ」  
そう言って足元に置いてあったワインの瓶を持ち上げる。  
「ぃ、いや……」  
それを見て、半ば本能的に口を閉ざすルエル。  
その反応を満足げに観察し、リリィはその瓶の口を宛がってくる。  
けれどそこは、前回のような口ではなく全く別の場所だった。  
(そ、そんなとこ……)  
ガラス製の瓶の口。  
その冷たく硬い感触を、よりによって股間で感じさせられてルエルは極度の混乱に陥ってしまう。  
直接は触れられてもいないのに、既に彼女自身が分泌した体液によって濡れそぼっている秘唇。  
(は、入ってくる、入ってきちゃう!?)  
細くなっているとはいえ、それでも指数本分はある瓶の先端が、まだ何も受け入れたことのない肉洞を力任せに割り開いてくる。  
けれど、そこから生まれた感覚は、痛みとは全く異なるものだった。  
意思とは無関係に膣襞が瓶にしゃぶりつき、下半身が溶けそうなほどの得も言われぬ肉悦を吐き出していく。  
「ひあああ、なんれ、なんれぇぇ!?」  
わずかなインターバルで多少治まっていた性感が、またしても、そして急速に高められていく。  
「あぐっ!?」  
ほとんど抵抗もないまま最奥まで差し込まれ子宮口を抉られる。  
それすらも快感として受け入れてしまうことに本人が惑乱しているのもお構いなしで、今度はずるずると引き抜かれていくワインの瓶。  
(な、中、擦られてぇ……)  
 
本来滑らかなはずの瓶の表面。  
けれど今のルエルにはそこにあるかすかな凹凸すらも感じ取れていた。  
それは敏感な場所にやすりでもかけられているような錯覚を催させる感覚だ。  
「とめ、とめてぇ、おかしくなるぅ!」  
繰り返される往復運動に、恥も外聞もなく悪魔に懇願した。  
けれど、それだけしても悪魔の手を止まるどころか、わずかに減速することすらなく動き続ける。  
「ダーメ。  
 天使様には、この瓶が恥ずかしいお汁でいっぱいになるまでがんばってもらうんだから」  
(び、瓶をいっぱいって……)  
思わず自らの秘所を貫く瓶に視線を落とす。  
ぐちゅぐちゅと卑猥な水音を立てながら、大切な場所を我が物顔で出入りする悪魔の責め具。  
ルエルのそこが本来ありえないほどに濡れそぼっているとはいえ、それだけで瓶を満たすのにどれほどの時間が必要なのか全く見当が付かなかった。  
「このお酒、一度天使の体を通して初めて完成するんだよね。  
 だ・か・ら、早く終わらせたかったら、どんどん感じていっぱい出さないと。  
 んー、この辺が一番感じるかなぁ?」  
「ほ、ほんなぁ……」  
あまりに遠すぎる道程に絶望しかけたルエルの心。  
それを鼓舞するようにわずかに挿入の角度を変えた瓶の口が、膣内のある一点を抉りこんできた。  
「あぎぃ、そこ、そこぉ」!  
そこから生まれた快感電流は、それまでのどの責めよりも強烈だった。  
そこをゴリゴリと抉られる、その1回ごとに心を粉々に砕かれそうなほどの圧倒的な快美感。  
ルエルが2度目の、そしてそこから連続しての終わりない絶頂地獄に落ちるまでにそれほどの時間は必要なかった。  
 
 
「ほら、手伝ってくれたお礼に一口あげる」  
深い霧がかかったように白濁する意識の中、そんな声が聞こえてくる。  
続いて口のあたりに硬い何かが触れ、そこから溢れ出した生暖かい液体が口内に流れ込んでくる。  
「どう、今度こそおいしいでしょ?」  
口の中いっぱいに広がる芳醇な甘酸っぱさと、再び聞こえてくる誰かの声。  
(おいしい……)  
薄れていく意識の中、ルエルは素直にそう思い、小さく首を縦に振ったのだった。  
 

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