日本の某所に、
『私立セントブリーフ丸見え学院』(略してブリ学)
という、私立中学があるようなないような。その中に、美術部と称しては
いるが、その実、漫画研究会だったりするクラブがあったりなかったり。
「こんな部活・・・入るんじゃなかった」
と、セントブリーフ丸見え学院中等部二年ペソ組。出席番号三十四番の
船迫理沙(ふなさこ・りさ)は、放課後の美術部で、愚痴をこぼすのを日課
としている。まだあどけない顔立ちに、控えめなバスト(貧乳とも言う)。
それに、今時珍しい黒縁メガネが愛らしい少女。それが、理沙の大まかな
人間像である。そんな彼女が、幼少の頃より愛する美術の造詣を深めようと、
ブリ学美術部の門を叩いたのは一年前。同好の士を求め、互いに美術論を
語りたい・・・そう思っていたのだが・・・
「理沙!ぼーっとしてないで、トーン削りなさい!」
毎度のごとく、美術部に入った事を悔やみ、ぼんやりとしていた理沙へ檄が
飛んだ。声の主は、白いケント紙の上でGペンを軋ませ、鬼のような形相で理沙
を睨み付けている。それは、表情こそ険しいが、長い髪をパレッタ代わりの雲形
定規にひっつめ、スクリーントーンかすの化粧を施した美少女である。
「うちは美術部なのに・・・ぶつぶつ」
怒鳴られた理沙が、文句を垂れつつもデザインナイフを滑らせた。ケント紙には
枠線が引かれ、コマ割りがされている。どうやら、二人は漫画を描いているようだ。
「あたしたちは、漫画界の星になるのよ、理沙」
ガリガリとペンを軋ませている美少女が言うと、
「・・・どうせ、流れ星」
と、理沙が口を尖らせる。すると、
「何か言った?」
美少女が目を血走らせた。今、理沙を睨み付けているこの美少女は、ブリ学
中等部三年、蒲郡春雨(がまごおり・はるさめ)。一応、ブリ学美術部の部長
という肩書きはあるが、根っからの漫画好きで、寝ても覚めても考えるのは
漫画の事ばかり。それも、年端もいかない美少年たちが睦み合う話が大好き!
という、困った性癖を持っている。しかも、それらをビジュアル化してはコミケット
なる催しで売りさばくのを、至福の喜びとしているから困りもの。更には、真っ当な
美術部と信じて入部した理沙を、アシスタントよろしくこき使うので、たちが悪い。
「部長・・・たまには、美術部らしいコト・・・やりませんか?」
スクリーントーンをコツコツと削りながら、理沙は言う。が、
「今、やってるじゃない」
ケント紙に突っ伏したまま、春雨は顔を上げようともしない。理沙の提案など、
まともに取り上げようと思ってはいないのだ。
(はあ・・・また、トーン貼りとベタ塗りに時間を費やすのか・・・)
ふう、とため息をつく理沙。静まった部室内で、漫画をただ描きに描く。これが、
二人にとっての部活動だった。
(しかも・・・こんないかがわしい漫画の・・・手伝いなんて)
春雨から送られてくるケント紙には、すべからく少年たちが絡み合うシーンが
描かれていた。それらは濃密で、見るからにいかがわしく、とても中学生が描く
漫画とは思えない代物であった。
「うがーッ!」
そんな叫びと共に、春雨が席を立つ。その刹那、ペンを放り投げたかと
思うと、頭を抱えて床を転げ始めた。
「チンポが描けーん!」
ごろごろと部室内をのた打ち回る春雨。漫画描きに共通する事だが、ネタ
や展開に詰まると、大抵のものは狂乱状態となる。叫ぶ者もいれば、踊る
者、果ては真冬のプールへダイブする者と、様式は数あれど共通するのは
その動乱ぶり。傍目には、狂人としか思えない。
「部長!しっかりして!」
相変わらず転げまわっている春雨を、理沙が清掃具箱に入っていたモップ
で取り押さえた。内心では、何がチンポだ!とか思いながら。
「チンポ持ってこーい!」
モップで押さえられた春雨は叫ぶ。先ほどまで彼女が向かっていたケント紙
には、美少年が男根を目の前にしてうっとりと頬を緩めるシーンが描かれて
いる。ご丁寧にも、吹き出しには『兄さん・・・』などという台詞も刻まれて・・・
だが、男根にはペンが入っていない。描けないのである。
「変な事を言うな!この、エロ女」
モップで春雨の頭をぐいぐいと押さえつつ、理沙が叫ぶ。まだ、異性との経験
が無い理沙は、男性器の俗称を平気で口にする春雨の性格に辟易している
のだ。だから、モップを持つ手にも力が入る。
「むぐぐ・・・チ、チンポ・・・」
春雨はまだ狂乱状態だ。このままでは、埒があかないと思う理沙。
「分かりました。誰か、男子を呼んできますから、大人しくしてて下さいね」
そう言うと、理沙はモップを春雨の脳天へ振り下ろす。ガツン!とけたたましい
音が部室内に鳴り響いた後、春雨は卒倒した。
「誰か気の弱そうな男の子を・・・」
部室を出た理沙は、どこかに大人しそうな男子はいないか、と校内を
走り回る。そうして、男子トイレの前を通り過ぎようとした時・・・
「あそこに、愛らしい男の子が!しかも、オチンチン丸出しで!」
トイレ内で小用を足す少年の姿を発見する理沙。都合の良い事に、
春雨が望む物もお出しになっている。格好の標的と言えた。
「ふう・・・」
放尿を終え、腰を振って男根についた雫を払っている少年が、人心地
ついている。その背後に、理沙は匍匐前進で迫る。立って迫ればいい
ものを、敢えて這いつくばっている所が奇妙である。そして、
「御免!」
そう言うや否や、理沙は少年の首筋へ空手チョップをくらわした。少年が
きゅうと音を上げ膝を崩すと、理沙は彼の体を担ぎ上げ、そそくさと男子
トイレから逃げていった。
「うがーッ!チ、チンポォ!」
「部長、落ち着いて」
部室に戻った理沙は、強奪してきた下半身丸出しの少年を春雨の前へ
置く。上記の叫びは、歓喜した春雨の声。
「なんなんですか!あなたたち!」
これは、少年の声だ。彼は、女二人の前に性器を晒すという恥辱と、
今にも食いつかれそうな恐怖で気もそぞろ。そこへ、
「ごめんね、ちょっと協力して欲しいの」
両手をぱん、と合わせ頭を下げる理沙。ちなみに春雨は、小躍りして
再び部室内を転げ回り始めた。本当に落ち着きが無い女だ。
「あのね・・・お、おちんちんを・・・ちょっとだけデッサンさせて欲しいの」
頬を真っ赤に染め、理沙が言う。そこへ、
「無理にでもやるがな」
と、春雨が少年に凄んだ。正気と狂気がバランスしている。これも、漫画
描きの特徴。
「あんたら、狂ってる!」
少年が叫んで逃げようとすると、春雨が飛ぶ。恐ろしく素早い。
「逃がすか!理沙、ロープ持ってきて、イーゼルに縛り付けろ!」
春雨は少年を羽交い絞めにすると、理沙に命じた。これ、犯罪じゃないの?
と思ったが、理沙は言うとおりに動く。狂人となった春雨に、論理など通じる
訳が無いことを、彼女自身良く知っているからだ。
「放してくれ!」
「ならーん!」
イーゼルに戒められた少年の前で、春雨が仁王立ちになっている。モロ出し
になった男根の前で、ステップを踏みながら、だ。
「部長、早くスケッチを」
「うむ」
理沙が木炭とスケッチブックを持ってきた。春雨はそれらを受け取り、仰々しく
デッサンを始めたのだが・・・
「ぐわーッ!チンポが勃っとらん!」
木炭をへし折って、スケッチブックを床に叩きつける狂人。どうやら、彼女は
少年の男根が竦んでいる事がご不満らしい。
「こんな状況で、勃起するか!」
少年が毒づくと、理沙はうんうんと頷いた。さも、ありなんと。自分も、春雨の
犯罪に等しい行為の片棒を担いでいる事など、知らん顔で。
「理沙、勃たせろ」
春雨が男根を指差しつつ言うと、
「ええッ!あ、あたしがですか?」
「お前以外に誰がやるんだ?」
「い、嫌です!部長がやってください!」
「あたしは、描かなきゃいかんだろーが!」
・・・と、醜い争いが始まった。ちなみに少年は、いい加減にせんかい!
とでも言いたげな表情である。
「スカートめくって、パンツをチラッとでも見せてやりゃ、いいんだよ」
春雨が理沙の頭を小突く。まるで、娼婦を扱う女衒のようだ。
「嫌だなあ・・・」
理沙はすごすごと少年の前に立ち、制服のスカートをたくし上げる。
裾が持ち上がると、愛らしいフリルのついたパンティがお目見えした。
「は、恥ずかしいから・・・あまり見ないで」
「は・・・はい」
理沙と少年の間に、淫猥な空気が張り詰める。下着を見られる恥ずか
しさに理沙は戸惑い、また、少年は艶かしい女性の下半身を目にした
事で昂ぶっている。そこに、
「色気づきやがって」
と、春雨の水を差した発言が割り込んだ。本当に、自侭な人間である。
「ああ・・・」
少年がため息を漏らす。彼の男根は理沙の色香に当てられ、むくむくと
鎌首をもたげ始めていた。僅かに包皮が余っているが、少年が興奮状態
にある事は間違いが無い。
「皮余ってんじゃないか。理沙、剥いてやれよ」
包皮を余らせた男根を見つめつつ、春雨が言うと、
「い、いやですよ!さ、触れません!こんなもの」
と、理沙が目をつりあがらせた。すると・・・
「うッ・・・うッ・・」
イーゼルに戒められた少年が泣く。滴り落ちる涙に、何故自分がこの
ような辱めを受けなければならないのか、という悲しみが漂う。
「ご、ごめんなさい。別に汚いとか、そういう意味で言ったんじゃないの」
理沙が少年に歩み寄る。ポケットからハンカチを取り出して拭いてやるが、
涙は溢れるばかり。
「いいから、剥け!理沙」
春雨が怒鳴りつけた。少年は泣きやまないし、狂人は激昂するしで、理沙
は逃げ場を失う。
「ごめんね、本当に・・・」
こうなれば仕方が無い、と理沙は少年の前に跪いた。そして、
「優しくするから」
と言いながら、少年の男根へそうっと手を這わせていく。
「いい絵だ」
理沙が男根を擦り始めると、春雨は満足げに頷いた。男根に絡みつく細い
指が、少年の純情を犯していくように見える。耽美だった。
「やだ・・・お汁が」
男根から粘液が垂れ、理沙の指をべとつかせている。饐えた性臭が無垢な
少女の鼻をついた。
「む、剥きますよお・・・」
雁首と男根の根元にそれぞれ指を這わせ、理沙が包皮を剥きつけよう
とした。が、しかし、
「いてて!」
少年は眉間に皺を寄せ、理沙の指から逃れようと腰を振る。男根はまだ
成長の過程にあり、本身を覗かせるには早かったらしい。
「剥けません・・・部長」
理沙が春雨に向かって呟いた。すると・・・
「おしめりが足らないからだ。しゃぶれ、理沙」
と、春雨は事も無げに言う。己の目的のためには手段を選ばない狂人。
それが、この無垢な少女に男根を舐めろ、と言っているのだ。
「出来ません!」
頭をぶるぶると振って、理沙は拒否した。当然である。彼女はまだ異性との
経験はおろか、唇だって誰にも許してはいないのだ。だが、
「しゃぶれって言ってるだろ!」
ぐい、と理沙の頭を足蹴にする春雨。目に狂気が疾っていた。どうやっても、
男根を理沙に含ませる腹づもりらしい。
「そんな・・・」
理沙の手が震えている。春雨が一旦狂気に疾れば、引く事が無いのは
分かっているが、それにしても・・・
(こんなの、しゃぶれない!)
と、理沙は思う。少年といえども、男根は忌まわしいほどに欲望を滾らせ、
隆々と天をついている。茎の部分には血潮が浮き彫りとなり、興奮状態に
ある事は明らかなのだ。
(これを・・・しゃぶれって・・・)
知識として、女性が男性器を唇で愛撫する・・・その事は、理沙も知って
いる。しかし、現実にそれを目の当たりにして、身が竦んだ。
「早く!」
春雨が叫ぶ。見れば、手には何時の間にかGペンを持っている。まさに、
何とかに刃物。
「やります・・・」
このまま拒めば、春雨が暴れ出して収集がつかなくなるかも、と理沙は
思った。そうなれば、自分はおろか何の罪も無い少年までもが巻き添え
を食う。下手をすると、三面記事の主役にもなりかねない。
「やめて・・・お姉さん」
この時、少年が理沙を見下ろしながら呟く。自分の男根を握り、追い詰め
られていく少女を気遣うように。だが、これは理沙にとってはツボだった。
(か、可愛いじゃないの!)
実は理沙、少々ショタッ気があり、お姉さんと呼ばれるのが嬉しい。普段、
春雨を狂人扱いしてはいたが、彼女も同類に近い。というか、同類。
「うふふ、お願いしても、やめないんだから」
理沙の目にも狂気が疾った。まだ、キスさえした事の無い少女が見せた
変節に、狂人、春雨は意味もなくルンバを踊り始めた。本当に意味も無く。
「あーん・・・」
大口を開け、理沙が男根へ食いついた。一旦、雁首を含み、次の瞬間には
唇で甘く噛む。なりきり要素が強いようだ。
「ああ・・お姉さん」
男根を含まれた少年が身悶える。腰砕けになり、膝が笑うがイーゼルへ
戒められているため、体が折れることはなかった。
「うふ・・・ん」
頭の中であれこれイメージしながら、理沙は男根を貪る。お姉さんがして
あげる、とか、ボクのおちんちんは美味しいね、などと悦に入りまくりで。
「いいぞ!いい!」
淫靡な口唇愛撫シーンに春雨が狂喜した。スケッチブックを手にして、木炭
をほとばしらせデッサンに狂う。時折、ブリッジをしてみたり、組体操でいう
所の『一人扇』(人数が余って、横でポーズを取っている寂しい人)を
決めたりする所は、狂人のなせる技か。
「お姉さん・・・出るよ!」
少年が腰を戦慄かせた。絶頂が近い。そこへ、
「飲め!理沙!」
何かに憑依されたように指をパチパチと鳴らす春雨。体をぐにゃぐにゃと曲げ、
あの大物芸人の生霊でも憑いたのかと思わせる。ああ、指パッチン・・・
「んんッ!」
理沙は何故かガッツポーズをしながら、少年の男根を強く吸った。そりゃあ、もう
バキュームフェラって感じで・・・
「出るッ!」
男根が雄叫びを上げると、理沙の表情が歪む。何か、苦いものを口にしたような
時の顔だ。精液を味わっているらしい。
「来た、来た、来た!キタロウ!」
狂人、春雨がスケッチブックを持ったまま絶叫!しかも、最後に物真似と駄洒落
をないまぜにした与太含みで。
(ああ・・・精液飲んじゃった・・・)
理沙は放心状態になりながらも、少年の男液を飲み干した。苦味は
あったが、精液を飲むという行為が少女の純情を弄ぶ。まだ処女は
守られているが、男液の味を知っている・・・そんな不思議な矛盾にも
似た物が淫らがましくて、退廃的に感じる・・・らしいよ。(←投げやり)
「でかしたぞ、理沙」
デッサンを終えた春雨がご満悦で言った。もう、日は暮れて、部室内に
は少年の姿も無い。無論、少年にはここであった事を他言無用とさせた。
男根を携帯電話のカメラに収めた上、恫喝して。
「あたし・・・ナニやってたんだろう・・・」
少年の男根を含み、精液を飲んだという事実が、正気に返った理沙へ
圧し掛かる。それと同時に、羞恥とか後悔の念も溢れてきた。
「いい絵が描けたよ。見るか?理沙」
春雨がそう言って理沙にスケッチブックを渡す。その喜ぶさまが、せめて
もの救いかな・・・理沙はそんな思いでページをめくる・・・が・・・
「なんじゃあ、こりゃあ!」
次の瞬間、理沙は上記の如き叫びを上げ、悶絶した。春雨が描いた
デッサン。それらは全て、便所の落書きのような・・・更に言えば絵とも
つかない物だったからだ。そこへ、
「あたし、抽象画専攻だから」
と、春雨は事も無げに・・・本当に事も無げに言った。
終わり。