とある町のとある場所、一人の店員がきりもりするお店がある。
その店員が売るものは只の道具じゃない。魔法の道具や凄い力を秘めた道具だ。
客が欲しそうな道具を、手に入るだけの値段で売るのだ。
とある客は、未来を見る道具を手に入れて自殺した。
とある客は、過去を見る道具を手に入れて大金を手に入れた。
とある客は、最強の肉体を手に入れ、チャンピオンとなった。
とある客は…………
そして、また一人、そこに客が入る。
「あーらあの子、また弁当二つ持ってきてねえ……」
「あれだけ食べて太らないなんて、一種の才能よねえ……」
「可愛いんだろうけど、あの性格じゃあ、彼氏なんて出来ないよねえ……」
そんなひそひそ声が、クラスの中から聞こえる。
私は、それに反抗する事ができない。だって事実だから。
前髪で目は何時も隠れてるし、クラスメイトだって話しかけてこない。
好きな人が出来たって、話しかけることも出来ないから、恋人も出来ない。
そんな悶々とした気持ちを持ちながら、町を歩いているとふと小さなお店を見つけた。
「こんな所にお店あったっけ?」
そっと中を覗いてみる。
「なんだろう?色々あるけど、何のお店かな……」
さらに開いて覗いてみる。
とんとんと急に背中を叩かれた。
「あわわわっわわわわわわ、ゴメンナサイ!何のお店か興味があって!そのけっしてやましい気持ちは!」
慌てたせいで、足を滑らせてそのままずっこけて、スカートの中をあっぴろげてしまった……。
「どうぞ、しばらく見てて下さい。」
店員さんはそう言うと、私を置いて店の中に入っていった。
「……はあ……色々あるなあ……」
気落ちしたまま見てみると、色々な装飾品や、本やパソコンそしてなにやらあやしそうなもの一式が揃ってた。
その中で、私の目を引いたのは、白金の台に紫色の宝石が乗っている髪飾りだった。
「えーと、これ幾らですか?」
私は恐る恐る店員さんに聞いてみた。
「1万円になります。」
ちょっぴり高い………貯めていた小遣い使えば何とか買えるかな?あっでもうーん。
他のも見てみたが、どうもしっくり来ない。
「あっ、迷ってるようでしたら、一回家に帰って決められてはどうですか?」
店員さんがそう言ってくれたので、私はそれに従う事にした。
「はー、結局買っちゃったか」
ひとまずこつこつ貯めてたお金で買って出してみると、意外と似合うような感じがした。
『聞こえるか小娘』
そう、女性の声が私の頭の中に響いた。
「はっ?はい??」
回りを見渡す。誰もいない。
『ふふふふふふふ、驚くな。私はこの髪飾りについている霊だ』
「は???」
『この髪飾りはな?『悪女の髪飾り』と言って、幾つかの超能力が使えるようになる髪飾りじゃよ。
まあ、論より証拠じゃ。』
その声が響いた瞬間に、私の髪が突如として切り裂かれる。
「えっあっあのっ!」
前髪が急に切れて、私の顔を隠す物が無くなってしまう。
『ふふふ、初々しいな……まあ髪型などこの髪飾りの力を使えば幾らでも変えられるぞ。』
ほれほれと私の髪が元に戻ったり変わったり……。
『後は、他の人に『お願い』が出来るようになるのう……
但しあまりにも不利益になるお願いはできんし、
記憶が消えるわけではないからのう……まあ使い次第じゃ。
それと、最後の能力じゃが……『呪殺』の能力がある。』
「呪殺……って相手を殺す能力ですか?」
『それも可能じゃが……本質は相手の体を変質させることにある。只相手の体の一部……髪の毛や精液でも構わんが必要じゃがな……』
そう言って、髪飾りの霊は私に語りかけてくる。だったら……この能力を使って……。
「あの、お弁当、余分に作っちゃったから………一緒に食べていただけませんか?」
そう言って、彼に話しかける。うん、ようやく話せた。
「良いけど……」
うふふふふふふふふふふふ……計画通り。
はあはあと狭い部屋の中で彼が喘いでいる。私の『お願い』で指一本動かせずに私に体を洗われているのだ。
ねえ、こんなに腫れあがって、これを他の女性に入れるなんてそんな馬鹿な事しないわよね。
「はっはい………」
よろしい、だったら私がもっと気持ちよくしてあげる。だから私を洗って……。
彼と付き合い始めて10年の月日が流れた。彼と結婚して幸せな毎日を送って……。
彼の邪魔にしかならない人はこっそりと排除して、彼に寄生しようとする泥棒猫は『お願い』で去ってもらって……。
気がついたら、私は会社の重役婦人になっていた。子供もできて幸せな日々を送っている。
ふと、私は彼と子供を送り出して、ことことと家事を始めた。
ちょっとしないといけない事があるので、なるべく速めに行う。
「あの……奥さん…なんであんなつまらない男と付き合ってるんです?」
そう言って、とある男がそう言って私に言い寄ってくる。いわゆる浮気と言う奴だ。
とは言っても向こうが一方的に言い寄ってきてるだけ。
「私の良人をそう言わないで下さい。そんな子と言う人大嫌いです。私は彼を愛してますし、彼が何時も私を向くように努力しています。………。」
そう言って、精神的に重圧を仕掛けていく。そして最後に一言、こう『お願い』するのだ。
「私と貴方がここで喋った事は、全て忘れてください。」
これは彼にとっては不利益になることではない。そして私を二度と口説かないように幾つかの『お願い』をした。
「……『悪女の髪飾り』って名前負けしてるじゃないのかしら?」
私はそう言って、部屋の外を見る。そこには髪飾りの霊がいた。
「何を言っている。お前は凄まじい悪女じゃよ」