その少年が俺たちの住んでいる「真珠亭」に飛び込んできたのは昼食を取っていたときだった。  
 お世辞にも綺麗とはいえない服装の、顔に帽子をかぶりそばかすを残した少年はドアを  
開けるなり叫んだ。  
 
「姉御っ!」  
「なんじゃシン。わらわは今食事中じゃぞ。」  
 長い黒髪を後ろに無造作に縛り、シンプルなシャツを着た勝気そうな目を持つ美少女の  
マオは口を優雅にハンカチで拭きながらその少年に少し突き放すような調子で言った。だが、少年は  
気にした風もなく続ける。  
 
「いえ、ダンの兄貴たちが明らかに貴族っぽい女を保護したからご連絡をと。手荒いことは  
 してません。姉御の命令がありますから。」  
「ふむ、良い判断じゃ…褒めてやろう。」  
「あ、ありがとうございますっ!」  
 びしっと少年は直立して喜んでいた。俺はそんな光景を見ながら、よくこんなやつら  
しつけたなぁと人事のように思っていた。  
 
「カイ。確認に行くぞ。お主が会わないとどうするのかわからん。」  
「わかった。」  
 俺は頷いてマオと共に席をたった。そんな俺を少年は訝しげな目で見ている。なんだ?  
 
「あの、姉御…この男は…?」  
「わらわの伴侶じゃ。」  
「ええっ!!姉御ほどのお方がこんな男にっ!!」  
 失礼な子供だなあ…と思いつつも顔には出さず、さっさと案内するように俺は促した。  
 
 
 アジト…というか名ばかりの廃屋に見えたその建物は、内部はわりと清潔に掃除されており、  
持ち主の性格を伺わせた…マオは綺麗好きだ。  
 中の一際大きな部屋に足を踏み入れると、海が割れるかのようにざああっと男たちが  
左右に整列して、その奥の中央にある席にマオを促した。彼女は当然のごとく、そこに威厳を  
もって席に着く。やっぱ魔王の習性か何かなのかなぁ…。ユウもなんか変なとこあるし…。  
 俺は玉座(?)に座るマオの隣に立つことにした。落ち着くと、マオの前に背の高い筋肉の  
かなりついた男が中央に進み出てきていた。俺も知ってる。こいつは鍛冶屋のダンだ。  
 
「姉御、報告しやすっ!今日の早朝、店の近くでうろうろしていた貴族風の女を保護しやした。  
 今はアジトの客室に置いてありますっ!」  
「うむ、よくやった。近くに寄れ。」  
 マオはにやりと笑って胸を張り、近づいてきた大男をしゃがませると頭を撫でた。周りから  
おおっ!!!といった歓声が上がり、羨ましそうな視線が大男に集まる。彼は顔を上気させて  
興奮させて下がった。  
 
「黒猫団規則っ!!!」  
「「「ひとーっつ!!仲間は家族!絶対に護れ!」」」  
「「「ひとーっつ!!俺達はヤク、殺人、強姦は絶対に許さないっ!!!」」」  
「「「ひとーっつ!!黒猫団はいい男!女は自力でくどけっ!!!」」」  
「「「ひとーっつ!!俺達はマオ様に絶対の忠誠を誓うっ!!!」  
「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」  
 ユウが怖がったのも判るな…。なんだこの無意味に熱いやつらは。俺はさめた目で  
こいつらを眺めていた。  
 
「で、姉御なんでカイ・リスターが横にいるんですかい?」  
「ま、まさかこの悪魔を部下にっ!!さすが姉御っ!!!  
「マオ様がいれば俺達は無敵だっ!!」  
 俺は一体こいつらの中でどんな噂が立っているんだろうか。確かに何人もぼこぼこにした  
顔があるが…。  
 
「ふ、皆のものよく聞け。こやつはわらわの伴侶じゃっ!」  
「「「「ええええええ〜〜」」」」  
 大きな喧騒と怒号。統率の取れていた室内がざわめきだす。マオは俺に座るようにいうと、  
 
「静まれ!」  
 その声で、騒ぎが一瞬で止まる。ほんと、どうやって躾けたんだろか…。考え込む俺の服を  
自分の手で脱がせた。  
 
「こやつの身体を見ろ。歴戦の勇士だ。それにこやつは平民でありながら公爵に逆らって  
 逆に滅ぼさんとしている知勇兼備の男じゃ。今度は貴族になる平民の英雄だ。」  
 歓声が上がる。俺やベルの身体は傷だらけだ…俺はいいがベルは女なのに…そのうち傷跡が  
消えるアイテムを作ってやりたい。シルビアも俺たちよりましだが、消えない傷はいくつもある。  
 自信に満ちた目で全員を見渡しマオは声をあげて演説を続ける。  
 
「人は誰でも努力すればこやつのようになれる。お前たちも同様だ。誇りを持って自分を磨けっ!!」  
 おおっ!と声が上がる。平民は貴族には絶対服従が当たり前だ。当たり前すぎて誰も疑問に  
思わない。皆が諦めている…。  
 
「「「「兄貴っ!!!俺達は絶対の忠誠を兄貴にも誓いますっ!!!」」」」  
 一斉に尊敬の眼を向けられる俺。逃げたい…。ま、まあ、よしとしておこう…。  
 
「この部屋です。」  
 黒猫団名誉顧問とかいう役職を頂いた俺は、保護したという貴族のいる部屋を訪れていた。  
 
「え…」  
 
<汝術使うことあたわず!>  
 
 顔を見た瞬間、俺はすぐさま彼女の魔法を封じた。部屋の中には銀色の髪の美しい女性…  
セシリア・フォン・ヴァストル…公爵の妹がそこにはいた。  
 不安からか憂いを帯びているがそれでもその美しさは衰えることがない。  
 
「どうした、カイ。こやつの魔法を封じても意味はあるまい。」  
 不思議そうな顔で聞くマオを無視し、俺はセシリアに近づいてペンダントを強引に奪った。  
 
「マオの欠点は強すぎることだな。弱いものの怖さが判っていない。」  
「カイ……?」  
 俺はセシリアとマオを連れて外へ出て、ペンダントに細工して魔法で深い穴を掘ると  
そこに投げ入れた。上からは土をかぶせる。セシリアの顔は真っ青になっていた。  
 
<我が身を生贄に敵を滅ぼす>  
 
 淡々とルーンを唱えると…地面を揺るがす物凄い振動が起こった。  
 
「こういうことだ。マオ…。どんな相手でも油断はするな。お前は死なないが、仲間に  
 被害が及ぶ。」  
「わかった。カイ………覚えておく。すまぬな。」  
 そんな俺たちを遠巻きに見ていたマオの部下はますます、尊敬の念を強くして俺を見つめていた。  
 
「なんにせよ事情は宿で聞こう。」  
 俺はそういうと紙を取り出して説明書を書いて先ほど報告した鍛冶士のダンに、俺のしていた  
指輪の一つを渡した。  
 
「そいつはその値段で売れる。全員で分けて遊んで使え。仕事料だ。」  
「「「うおっ!!ありがとうございます。兄貴っ!!!」」」  
 俺はそれはやめて欲しいと思ったが口には出さず、セシリアとマオを連れて宿に  
戻ろうとしたのだが…。初めに宿に来たシンとかいう少年が俺を引きとめた。  
 
「兄貴っ!俺を弟子にしてくださいっ。強くなりたいんです!」  
「俺は弟子はとらん。これから忙しくなるし死ぬ危険もまだ高い。面倒みれん。」  
「何でもします!死んでも後悔しないし迷惑もかけません!」  
 正直困った。俺に巻き込まれればただではすまないのだが…この眼はをした奴がそんな  
簡単に引き下がるとも思えない。そんな時、マオが助け舟を出した。  
 
「シン、おぬしは本気か?」  
「はい、マオ様っ!」  
「何でもできるか?」  
「できますっ!!」  
「では、カイ。何か試験をしてやればよい。覚悟は出来ているそうだし、真面目で度胸も  
 あるやつじゃ。お主の試験に耐えられるなら認めてやってくれ。」  
 俺は考えていった。  
 
「シンといったか。お前、文字の読み書きはできるか?」  
「いえ………できません。」  
「では、日常に困らない程度の読み書きを二週間以内に覚えれたら弟子にしてやる。  
 どんな手段を使っても構わない。」  
 まあ、無理だろう。普通、こういう場所の人間は一生文字を覚えずに終わるものだ。  
 わざわざ茨の道を一緒に歩かせることもあるまい。  
 
「わかりました!!」  
 そんな俺の思いとは裏腹に、シン少年はやたら嬉しそうにはしゃいでいた。  
 
 
 宿に戻ると俺達はそのまま、マオの部屋に入った。シルビアには公爵の妹を保護したと  
連絡を入れて同時に対処案をいくつか送った。そして、今、マオとセシリアと俺の三人で  
部屋のテーブルを囲んでいる。  
 銀色の髪の公爵の妹は、貴族内での噂以上にに美しいが今はその表情は冴えない。  
 
「こうやって貴女を助けるのは三度目ですね。セシリア・フォン・ヴァストル嬢。」  
 服装は適当だが、俺は貴族の礼儀を持って彼女に話を振った。マオは俺の顔を見て  
不安げにしているのがわかる。安心しろというように、そんなマオの頭を俺は撫でた。  
 
「感謝しております。何度も…。本来ならば、一生かけて返さねばならぬほどの恩を貴方には  
 受けております。」  
「魔法で私を暗殺できるとでも……お思いでしたか?」  
「これなら大丈夫と………貴方と共に…死のうと思っていました。」  
「わらわのカイをっ!貴様っ!」  
 怒りに震えるマオを俺は手で押さえる。銀色の少女は動揺することもなく、静かに俺を  
見つめている。  
 
「復讐を止めて頂くわけにはいきませんか?」  
「私のことはご存知のようだ。それでも止めろと?」  
「父や兄のしてきたことは謝罪します。」  
「謝罪などされても誰も喜びはしない。」  
 冷然と切って捨てる俺に彼女は言った。  
 
「代わりに私を好きにしてもらって構いません。弄ぶのも殺すのも…」  
 俺は苦笑した。上手くいってるかはわからない。狂ったように笑いたくなる衝動を  
必死に押さえて冷静さを保とうとする。  
 
「貴女は色々勘違いされているようだ。復讐をやめろ?…俺は公爵に手を出したことは  
 一度だってない。手を出してくるのはいつも公爵だ。俺やベル、シルビアが何度死に掛けた?  
 復讐ではなく自衛というのが正しい。ヴァストルが存在している限り俺たちには平穏は  
 ない。あんた一人を玩具にしても何も変らない。意味は何もないんだ。」  
 もはや言葉遣いも取り繕わず、俺は喋る。言葉は止まらない。  
 
「五年だ。血反吐を吐きながら強い者に抗ってきた。大事な人を失い、仲間を失い、自身  
 死にかけるような地獄の中、それでも抗ってきたんだ。それをお前一人犠牲になるから  
 やめろと…努力を無にしろと…笑わせるな。最早形勢は動かない。ヴァストルは必ず滅ぼす。」  
 彼女は震えていた。俺の顔がきっと酷いものになっているのだろう。  
 
「ヴァストルを滅ぼし、今の貴族絶対の体制を変えていく。俺のような人間を出さないために。  
 その体制を変えるためにもヴァストルは滅ぼす必要がある。必要性も実利も備わってるんだ。  
 マオやユウを危険に晒したくもない。公爵家はその意味でも害しかない。」  
 俺はそこまで言って黙った。これ以上は言う言葉はないし、政治的にも彼女に手を出すことは  
無益有害だ。その意味では、シルビアの城にすぐ送るべきであって俺も冷静じゃなかったなと思った。  
 しかし、彼女の次の一言は理性という俺の枷を弾き飛ばした。  
 
「今の貴方を見たらミリアムさんは悲しむでしょう。駄目になったと…。」  
「死ね。」  
 俺は全力の魔法を叩き込もうとして─────後ろから衝撃を受けて意識を刈り取られた。  
 
「全く世話の焼ける。お主がいったのだろう、油断するなと。安い挑発に乗りよって。らしくもない。」  
 わらわは、カイを後ろからの手刀で落とすと目の前の銀髪の小娘に向き直った。  
 
「貴女はマオさんでしたね。貴女にも私は恩があります。」  
 ふんと、鼻を鳴らして目の前の小娘を睨みつける。そこにはカイと対峙していたときの  
怯えた目はない。演技でもなかろうが…わらわは恐怖心を与えないのだろう。  
 
「見事に仇で返してくれたな。暗殺、篭絡、自らを犠牲にしての政治的優位の確保か。  
 カイはわらわを護るといっておるが…素直に護られる女じゃないぞ。わらわがこいつを  
 護るのだ。お主が敵となるならわらわは排除をためらわん。」  
 目の前の女はわらわに感情のない目を向けている。  
 
「貴女も私を敵と見るのですか。」  
「当然じゃ。わらわ自身もヴァストルの被害者じゃからな。仇といってよい。」  
 小娘は流石に驚いたようだ。  
 
「私は敵になどなりたくなかった。何度も助けてくれた恩人…魅力的な人。だけど、シルビア様の  
 いうとおり、この人は確かに私だけは想ってはいけない人だった。私は貴女が羨ましい。  
 私はどれだけ想ってもこの人に愛されることはない…せめてと思ったのですが。」  
「これからどうするのだ?」  
「私には優しいお父様とお兄様を見捨てるわけにはいきません。関係が修復できるよう  
 努力するしかありません。」  
「今回は不問にする。カイの意思だからな。ユウに護衛をしてもらってシルビアのところに  
 送る。その後迎えが来るだろう。」  
 小娘はわらわに頭を下げ、部屋から出て行こうとして一度止まり言った。  
 
「私は…罰して欲しかった。ただこの人に殺されたかった…。」  
「生憎カイやシルビアの方針は生きてればなんとかなるだそうだ。お前も生きて償う方法  
 を考えろ。現にわらわのカイはそうやって生きている。」  
 そして、返事を返さず去っていった。  
 
「ミリアム………か。」  
 ひょっとしたら────カイはその人しか愛せないのかもしれない。そんな不安が  
わらわの心をよぎった。違うと思いつつその疑念は晴れなかった。  
 
 
 ゆさゆさと身体を揺さぶられる。目をあけて周りを見る…そこは灰色に彩られてはいるが  
大学時代の自分の部屋だった。大学時代………俺は………今………?  
 
「あーっ!やっと起きたね。この寝ぼすけ〜。」  
 目の前には、ブラウンの髪をショートカットにした女性が立っていた。俺の恩人の娘で  
恋人…そう、恋人のミリアムだ。背も低いしとりわけ美人ってわけではない。ただ、笑顔になると  
物凄く魅力的になる人だ。そして、明るくて賢い。不意に訳も泣く涙が流れた。  
 
「あれ……俺なんで……。」  
「どうしたのカイ……そいえば、さっきもうなされてたけど。昔の夢でも見た?」  
「…かもな。大丈夫だよ。ミリー。」  
 俺は身体を起こしてベッドに腰掛ける。なんだ…この違和感は…。  
 
「そういえば、最近シルビアと仲いいわね。みんな怖がって近づきもしないのに。」  
「ふん。あいつが突っかかってくるんだ。俺は受けて立ってるだけ!」  
「ぷっ!でもやけるわー。あの子すっごい美人だし。天才だし…気があってるみたいだし〜。  
 でも浮気なんてしたらぶっとばしてやるんだから。」  
 拗ねたように横を向く。わざとだ…なんだろう…この違和感は。しかし、ベルもいないので  
そっと後ろから抱きしめる。  
 
「馬鹿いえ。俺の恋人はミリーだけだ。それにお前だってシルビアからかってるだろ。」  
「あの子からかうと面白いんだもの。すぐむきになるし…でも、シルビアは偉ぶらないしいい奴よ。」  
「だな…だけど、どんなにいい奴でも…女としては…お前だけだから。俺は…」  
 俺はミリアムの口を塞いだ。何故か心の中で刺すような罪悪感が巻き起こる。彼女は  
猫のような可愛らしい元気な笑顔で囁いてくれる。  
 
「私も大好きよ。カイ。ずっと…子供の頃からライバルで友達で…恋人。」  
 もう一度口を塞ぐ。今度は口を割り舌を彼女の口へと割り込ませる。そして、彼女の  
腰を抱えるとベッドにゆっくりと横たわらせた。自分の意思かよくわからず…何か…  
警告の声が聞こえるような…。  
 
「ん…ふぅ………ぁ……服は……脱がせて………」  
 小さい身体に合わない大きな胸を愛撫しながらゆっくりと服を脱がせていく。強烈な  
までに俺の頭は愛した人への激情で焼かれそうなほど燃え上がらせられていく。同時に、  
違和感も…強くなる。  
 
「なんかミリーを抱こうと思うとドキドキするよ…」  
「くすっ……いつものことじゃない。私もだよ。」  
 その言葉で………俺の頭は完全に鮮明となり、全てがはっきりとした。同時に現在の  
状況を全て理解する。だが、俺はそのままミリアムの服を全て脱がせ愛撫を続けた。  
 
「あん……」  
「相変わらずえっちな胸だな。誰かに揉まれてるんじゃないか?」  
「馬鹿…カイだけに決まってるでしょ。」  
 拳を作って結構強めに胸を殴られた。ちょい痛い…。乳首を転がすように舐め、吸い上げ  
ていくと、乳首も勃起してきた。  
 
「う、…あん…カイ赤ちゃんみたい。」  
「じゃ、思う存分甘えさせてもらおう。でもほら、凄い感じてるんじゃないか。下ももう  
 びしょびしょだぞ。」  
「うー。カイのいじわる。そんなこといわないでよ。恥ずかしい…」  
「いまさらだろ。」  
 顔を見合わせて笑う。目の前にいる長い友人で幼馴染の少女に。俺は軽くキスをすると  
彼女の秘所を舌で責め始めた。左右に割り見えるピンク色の部分を残す場所もなく舐め、  
そのたびにぴくっと震える彼女の感触を楽しむ。彼女も負けじと、俺の下になっているに  
も関わらずモノを口や手で愛撫し始めた。  
 
「ちゅむ…ぴちゃっんあは……ぁ……駄目気持ちよすぎて集中できないっ……あっ!!」  
「……イった?」  
「〜〜〜〜〜〜っ馬鹿!!」  
 身体を震わせて痙攣した彼女に冗談ぽく声をかけると彼女は顔を真っ赤にして怒った。気軽な  
関係。まるで友達のような…楽しい関係。小柄な彼女の身体の下から手をいれお姫様  
抱っこしながらベッドに腰掛けた。  
 
「楽しいな。色気はあんまないけど。」  
「うそつけっ!じゃなんでそんな大きくしてるのよ?」  
「む、ただの男の生理現象だ。」  
「それを起こしてるの私でしょ。ほんと素直じゃないんだから。しっかし、カイってば  
 昔はちっちゃかったくせに一人で大きくなって。こんな抱っこも簡単に出来るなんて…ずるいぞっ。」  
「しょうがないだろ。俺も男なんだし。ちなみにさっきのは嘘。お前可愛すぎ…限界だから…」  
「うん…。」  
 俺はそういうと俺の膝に座らせるような体勢にして彼女の秘所に俺のモノを入れた。ぬちゅっと  
卑猥な音を立てて、抵抗なく俺のを飲み込んでいく。  
 
「あはっ……ん……入ったね……」  
「動くぞ。」  
 入れたまま片手で彼女の腰を持ち上下に動かし、自分も乱暴に何度も突く。あいた手は大きな胸に  
あて乳首をこりっといじった。  
 
「ぁ……カイ!あん…はっ…は……いい!もっと…あう…隣に聞こえちゃう…!」  
「中が…熱くて…やばいな。気持ちよすぎるっ」  
 ぐちゅぐちゅと部屋に俺たちが交わる音が規則正しく響き、何度も体勢を入れ替えて  
まるで獣のようにひたすら俺達は交わっていた。初めの羞恥心などかけらもなく、雄と雌に  
もはやなっていた。  
 
「やんっ!後ろは…こつこつあたって気持ちいいっ…あっあっ…ひゃん!声がとまんない!!」  
「もっと鳴け。感じてくれ」  
 激しく犬のように後ろから突きまくる。相手のことをあまり考えない貪るような性交なのに  
ミリーは嬉しそうに気持ちよさそうに声をあげている。  
 
「あああんっカイ!もうだめだよっ!ううっ…いく…いっちゃう…ああっ!!!」  
「もう少し…」  
「やあ!ちょっとまってカイっ……やん…うぁ…またイきそうっ!!」  
「一緒にっ!」  
「うん…カイ…大好きだよっ…はっ…ふっ…やん…ああっ…だめ…ああああっ!!!!」  
 躊躇無く、俺は彼女の中に全てを吐き出し余韻に浸るように彼女を後ろから抱きしめる。  
 
「ふー、カイってばほんとえっちだよね。」  
「男なんてそんなもんだ。」  
 裸で布団の中顔を見合わせる……ミリーの顔は笑顔なのに……泣いてるように見えた。  
 
「大好きだよ…カイ。」  
「俺も大好きだ……マオ。」  
 いたずらっぽく微笑んでいうと彼女はびくっと体を震わせた。ミリーの姿をした彼女は  
今度こそ涙を流して泣いていた。顔も体もそのままで…口調だけが変る。  
 
「いつ…気づいたのじゃ。完全に操作は上手くいったはずなんじゃが?」  
「違和感は初めから感じてた。決定的だったのは…俺はさ…ミリーを抱いたことないんだ。  
 愛し合ってはいたけど、キスどまり。身分とか…色々考えて…ヘタレだったな。」  
「信じられん……」  
 俺は知らないなんらかの魔法だったのだろう。彼女は元の幼い自分の姿に戻りながら  
眼を見開いて驚いていた。  
 
「思い出を汚したわらわを怒らないのか?」  
「俺のためなんだろ。怒れるわけがないさ。かなり似てて懐かしかった…。」  
 マオは口調はともかく性格は一番ミリーに似ている。勝気で賢くておせっかいで人のことを  
自分のことより優先する…そんなやつだった。  
 
「ところでここはどこだ。俺の昔の部屋にしかみえん…。」  
「次元の狭間。カイが馬鹿やった後、わらわがカイの封じるルーンを逆操作して作り出した。  
 灰色なのは時が止まっているからじゃ。」  
「そんなことできるのか…さすがだな。」  
「魔力を使い切れば過去にお主のまま戻すことも不可能じゃないが…どうする?今のお主  
 ならば過去に戻れば…未来を変えることも出来よう。」  
 マオは表情を消し、綺麗な瞳で俺を見つめている。答えは決まっている。  
 
「ありがとうマオ。だけど必要ない。辛い思いでも楽しい思いでも全部背負って俺は前に  
 進むって決めたんだ。過去に戻ればマオやユウとも会えなくなるしな。俺は今の俺が  
 大事な人を護るさ。」  
 心の中で、そんな情けないこといってたらミリーにぶっ飛ばされると思って…驚いた。  
 彼女との楽しい思い出を思い出したのは久々だ。  
 
「カイ……。すまん。わらわは少し疑っていた。愛してる人は本当は死んだその人だけじゃ  
 ないかと。いつも冷静なお前が怒ってたから…でも、カイが望むならそれでもいいかと  
 思ったのじゃ…。」  
 泣いているマオを俺は強く…痛いくらい強く抱きしめた。  
 
「ごめんな、不安にさせて。ちゃんと愛してるから。」  
「うん……うん………っ!」  
「それと、ありがとう。辛いだけだった思い出だったけど楽しいことも思い出せたよ。」  
「馬鹿っ抱きしめながら他の女の話をするなっ!……前の約束がまだあったな。それを  
 使おう。今は昔の女を忘れてわらわだけを見ろ。」  
「わかった。愛してるよ。マオ。」  
 泣きながら拗ねる彼女が可愛く、俺は彼女にキスをかわした。意識が徐々に薄れていき…  
マオが作った偽りの世界は崩壊していった。  
 
 それから二週間が過ぎた。俺達はマオ、ベルとともに昼食を食べていた。ユウは身重の  
シルビアの護衛だ。そんな真珠亭に、そばかすの少年…シンが飛び込んできた。すっかり、  
忘れてた。  
 
「姉御っ!兄貴っ!お久しぶりですっ!!」  
「ほう、シンではないか。今日はどうしたのじゃ?」  
「ほらっ!試験ですよ試験!」  
 それでようやく思い出した。確か文字を覚えたら弟子にするとかいう…まぁ、二週間じゃ  
無理だろうと正直思ってたので忘れていた。ベルは不思議そうにしている。  
 
「……………」(お兄様、この子は?)  
「弟子志望らしい。」  
「……………」(お兄様は若い子の教育上よくないと思う。)  
「ほっとけ。無理な課題を出したんだが…。シン。どうだった?」  
 背の低いその帽子をかぶった少年は胸を張って自慢げにいった。  
 
「完璧です。何でも来てくださいっ!!」  
 俺がいくつか質問すると、性格に文字を書いていく。驚いた。本当に二週間で覚えるとは…。  
 
「どうやって文字をここまで勉強したんだ?」  
「ふっふー。企業秘密ですっ。…といいたいとこですが、初めから出来たと疑われると  
 困りますからね。帝国大学にいってそこのお姉さん方に教えてもらったんです。なんでもありですよね。」  
 十代前半のこの少年の発言に心底驚いていた。俺はこのくらいの年はヘタレだったのに。  
 先の恐ろしい子供だ。発想は柔軟だし頭は悪くないのか。  
 
「わかった。約束だしな。一から全部教えてやる。部屋はここの宿に取れ。金は出す…厳しいぞ?」  
「望むところです。強くなりたいからっ。」  
「何でそんなに強くなりたいんだ?」  
 俺は何気なく聞いた。子供っぽい動機にしては努力の度が過ぎる気がするのだ。  
 
「最低男を倒すためです。」  
「最低男?」  
「俺の姉はシュタインベルグ侯爵様のところでご奉公してるんだけど、姉は妊娠だけ  
 させられて男に逃げられたんですっ!」  
 なんか変な汗が背中に出てきた。なんでだろう。  
 
「姉は自分が無理に頼んだっていってるし、シルビア様も自分のせいだからと擁護してたけど…  
 俺はその不潔な最低男を絶対倒すんです。あのシルビア様が自分より強いっていってたからに  
 は相当強いと思うけど俺は負けないっ!!」  
「………お姉さんの名前は?」  
「クリス。クリス・ロシェーヌ…。優しい姉だよ。だからほんと悔しい。」  
 事情を知っているはずのベルやマオのほうを向くと、  
 
「……………」(自業自得)  
「ま、わらわには無関係じゃが約束は守らないとな。」  
 と、我関せずだった。冷たい…。  
 
「師匠っ!!よろしくお願いします。」  
 俺は肩を落として力なく頷いた。  
 
「しかし、最近の少年はませてるな。お姉さん口説き落として教えさせるなんて。」  
「し、師匠、なんか変な想像してませんか?俺普通に頼んだんだけど…」  
「うーん、まあ、可愛げのある顔立ちしているし好きなやつは…」  
 本気で考え込む俺をベルやマオは冷めた目で見ていたが、可愛いという発言に何故か  
顔を赤くしたシンを横目にみつつ、マオが俺に呆れた声でいった。  
 
「シンは少年じゃないぞ。少女じゃ。」  
「……………」(お兄様…)  
「へ、変装してるししょうがないよっ師匠!」  
 呆然としながら弟子となったシンのフォローを聞き、俺は今後の苦労を苦笑しながら想像していた。  
 これもこの先、大事な弟子…といえる日が来るのだろうか。彼…もとい彼女は引越しの  
用意をしてきますと上機嫌で去っていった。俺は完全に彼女の姿を消えたのを確認して  
からなんとなく、マオに小声で質問してみた。  
 
「俺の今の状況をみたら…ミリアムはなんていうと思う?」  
「この馬鹿っ!浮気モノ!ろりこん!!」  
「う………」  
「でそのあと、よかったね。幸せになって。とまあ、こんなところじゃろう。少なくとも  
 わらわは失望はしてないと思うな。」  
「そっか。そうだといいな。」  
「だが、弟子には手を出すなよ。あれはわらわの被保護者だからの。」  
「なんだ。妬いてるのか?」  
「ば、馬鹿!そんなことあるわけないだろう。」  
 にやっと笑っていつものようにマオをからかう。  
 異次元空間でのことは二人の内緒だ。マオは何らかの方法でほぼ完璧にミリアムの性格を  
再現していた。彼女は教えてくれないが…。  
 
 俺は、ま、楽しくやってるよと心の中で話しかけ、マオとベルの頭をなんとなく撫でてから  
止まっていた食事を再開した。  
 
 

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