「真珠亭」はいつも賑やかだ。それは今日も変わらない。  
 だけど、今日は少しだけいつもとは違った喧騒に包まれている。  
 
 
「ベル、それは右の小さい鞄に詰めておいてくれ。壊れないように慎重にな。」  
「それは大きいかばんに適当に詰め込んでくれればいい。」  
 俺達は長年の生活で溜まった荷物を整理していた。俺以外は荷物が少ないため  
俺の分まで手伝ってもらっている。  
 
 なぜこんなことをしているのか───それは近々この住み慣れた「真珠亭」を離れる  
からだ。理由はシルビアの出産が近づいたこと、それに伴う危険と大量の仕事からシルビアを  
守るために、すぐに駆けつけることのできる場所にいる必要が出来たのだ。  
 
「わらわは半年ほどしかここに住んでいないがそれでも離れるのは寂しいな。」  
 そんなことをいったのは、長く艶やかな黒髪に黒い瞳の男装をしている勝気そうな  
美しい少女、マオだ。いつもは黒を基調としている彼女は今日は白いスーツのような服を  
完璧に着こなしている。  
 
「お前やユウは新しくここに知り合いができたろうに。残っててもいいんだぞ。」  
 そんなことをいった俺に彼女はふんと少し怒ったようにいう。  
 
「ばか者が。お前のいるところがわらわのいるところじゃ。わらわがいないとお主はどこまでも  
 無理をしそうじゃからな。見張っておくのだ。」  
「そうですよカイ様。マオちゃんはカイ様がいないと寂しくて泣いちゃいます。」  
「こら、ユウっ!」  
 いたずらっぽく笑う儚げな金髪の少女、ユウも今日は黒を基調としたマオと反対の色の男物の  
スーツを着こなしていた。俺はそんな二人をほほえましく見ながら気になっていたことを聞くことにした。  
 
「お前らの服って誰が用意しているんだ?」  
「シルビアのところのメイドさんたちだよ。」  
「あやつら、わらわ達を着せ替え人形か何かと勘違いしておるのではないか?」  
「行くたびに採寸はかって僕たちの服を作ってくれるんだよ。全部手作りらしいんだ。」  
 マオは怒ったように、ユウは楽しそうにそんなことをいった。シルビアの城ではドレスから  
自分たちの服までデザインする専門のメイドがいる。芸術家である彼女たちはあまりファッションを  
気にしない一流の素材である彼女たちを見かねたのだろう。  
 そういえば、ベルも城に行くたびに困っていたな…。  
 
「でも、本当に引っ越しちゃうんですね…。僕も半年くらいだけど本当にここでの生活は  
 楽しかったです。カイ様がいますし、ベルさんもマオちゃんも…シンも一緒だし…。」  
 少し残念そうな顔をしているユウの頭をぽんぽんと叩き、  
 
「まあ、引っ越すっていってもシルビアが落ち着くまでだ。それにみんな一緒だ。新しい知り合いも  
 あっちにいけばできるさ。」  
「そうですよね。荷造り、僕もがんばりますね。」  
 こうして、着々と引越しの準備は進んでいった。  
 
 
そして、あらかた片付いたころ…  
 
「どうした、ベル。」  
「……………」(これ)  
 ベルが俺に見せたのは、学生時代にベルが会話できるようにしようと作った作品のうちの  
一つだった。鏡の形をしたそれは、懐かしさと失敗した苦さを思い出させるアイテムだ。  
 
「これが残っているとはなぁ…。シルビアの部下はこんなものまで回収してたのか。」  
「……………」(お兄様が私に作ってくれたものだから大事)  
 俺は苦笑する。魔法技師が万能ではないと思い知った…これはそんなアイテムだった。俺は頭では  
万能ではないと理解しながらもどこかで不可能なことなど何もないと思っていたのだろう。  
 
「虚構の鏡…か。」  
「……………」(あの時は大変でしたね。)  
 精神的な障害で話すことができなくなったベルを癒すために、その元になった事件について嘘で  
和らげようとしたのだ。しかし、誤って自分に発動させてしまった。  
 その結果激しく拒否反応を起こし、三日ほど寝込む羽目になった。  
 
「ベルに使う前に自分に使ってよかったよ。全く。」  
「……………」(記憶があやふやですが、あの時、私にも何か…)  
 発動条件は強く何かを思うこと。だとすれば、そのときベルが何か考えていたなら  
近くにいた彼女にも発動していた可能性はある。  
 
「一応調べてみるか?」  
「……………」(はい。お願いします。)  
 意識を集中させ、ベルの魔力の流れを調べる。そうとわかって見なければ感じないほどの  
微弱な乱れが確かに存在した。  
 
「マオ。少し手伝ってくれ。」  
「なんじゃ?」  
「解呪する。制御を俺がするからマオは一定に魔力を流してくれ。」  
「わかった。お主が一人で解呪できぬ魔法とはよほど捻くれた性格の悪いものが掛けたのじゃな。」  
 俺だよ!と、言おうと思ったがやめといた。意識を集中し、魔法の流れを正常の状態に  
戻していく。マオの魔力は俺を遥かに上回っているために強引に解呪されていった。  
 
「……………っ!!」  
「ベル!大丈夫か!?」  
 終わった瞬間頭を抱えて蹲ったベルの肩を揺さぶる。  
 
「……………」(大丈夫、思い出した)  
 少し汗をかき苦しそうにしながらも、ベルは嬉しそうに笑っている。  
 
「……………」(お兄様が本当の兄じゃないことを)  
「っ!」  
 
 どういうことか俺にはわからなかった。命がけで逃げた子供のころの記憶より前は、ベルには  
残っていないと思っていたのだが…。  
 
「……………」  
 困惑する俺にベルは少し微笑んでマオに礼を言った後、作業を再び再開し始めた。  
 
 
 夕方にはそんな引越し準備も終わり、おやっさんは食堂を貸しきりにして送別会を開いてくれた。  
 シルビアはこれなかったが、元暗殺者のミリアム…こいつを俺のところによこすシルビアの  
精神が俺には信じられないが…を代理として送ってきていた。他にもマオの手下たちや、俺が  
修理を受け持っていた近所の店の人などが、駆けつけてくれていた。  
 
「「「姐御〜ううっ〜」」」  
「鬱陶しいから泣くな。すぐ戻る。わらわがいない間の留守は頼んだぞ。」  
「「「おうっ任せてくださいっ!!!」」」  
 相変わらず暑苦しいやつらだ。  
 
「お前が城に来るのか…。」  
 嫌そうな顔で呟く元暗殺者。そんな嫌そうな顔せんでも。  
 
「嬉しいだろ?」  
「ああ。お前の寿命は短そうだからな。」  
 彼女はくびを掻っ切るしぐさをした後、ユウのところに歩いていった。二人は何故か仲が  
いいらしく、護衛しているときなどは一緒にお茶を飲んで世間話をしているらしい。  
 あちらこちらで、別れを惜しんだりお祝いをいったりとそんな騒がしい騒動があちこちで  
起こっていた。辛気臭い雰囲気はまるで無い。ベルもいろんな人たちの相手をしたり、物思いに  
耽ったりしているようだった。  
 
「師匠。」  
「シンか…どうした。お前はここの人間だからな。一緒に来るんだろう…別れは済ませたか?」  
 なんだかんだで人に囲まれ、一人になったところに近づいてきたのはシンだった。であったころより  
髪を伸ばした彼女はまだまだ少年といった感じだが、少し女の子っぽくなった。このくらいの年は  
成長が早いなぁ。  
 
「うん。…城にいくんだよね?」  
「…怖いか?」  
 ずっと会えていないはずの姉に会うのが。シンは姉のイリスにかなりの間あえていないはずだ。  
 やりとりは全て手紙。理由は簡単、人質に取られないためだ。俺たちには敵が多いから。  
 
「大丈夫。お前の姉は人のために体を張れるしっかりした優しい人だ。お前のことを忘れちゃいない。」  
 頭に手を置く。こうすると子供は安心するらしい。…俺はやられたことがないので真偽は  
わからないんだが…。昔はベルにもこうしたもんだ。  
 
「ありがとう師匠。でもなんで姉のこと知ってるの?あそこっていっぱい働いている人いるんでしょ?」  
「う、そ、そのだな…。お前の姉はシルビアのお気に入りなんだ。だから、俺も会う機会があったんだ。」  
 嘘はついていない…はず。  
 
「そうなんだ。でも師匠ってすごいね。侯爵様と友達なんて。」  
「侯爵だって人間だからなぁ。」  
 俺がそういうとシンは笑った。そして、安心したのか元の仲間たちの下へと元気に走っていった。  
 
「しかしまあなんだな。こういう日が来るとはな。」  
「おやっさん。」  
 この人には俺は生涯頭が上がらないだろう。  
 
「ここに着たばかりのころは何があったかは知らないが抜き身の刃物みたいな雰囲気で、あまり長く  
 おきたいとは正直思っていなかったが人間ってのはわからんもんだな。」  
「世話になりました。」  
「一人増え、二人増え…賑やかなもんだ。」  
 おやっさんはいかつい顔で少しだけ笑っていた。  
 
「今度は親父になるって話じゃないか。しかも、相手はあのお嬢様だ。」  
「あんま実感ないんだけどな。シルビアとは喧嘩ばかりしてたのにこんなことになるとは。」  
「……ちゃんと支えてやれよ。あの娘は俺たちこの街の人間全員にとって大事な一人娘なんだからな。」  
「ああ。いつまでも守られてはいない。」  
 おやっさんは俺の方を一度ぽんと叩いた。  
 
「ならいい。部屋は約束どおり空けとくが、なるべく傍にいてやれ。」  
「あんま近くにいると逆にストレスで倒れそうだがなあ。」  
「……女遊び、少しは控えろよ……まったく。いい加減お前も親になるんだから。」  
 苦笑して頭をかくしか俺にはできなかった。  
 
 
 盛り上がった宴も終わり、酔いつぶれたマオやユウを部屋に運んだ俺は自室のベッドに  
寝転んでいた。同じようにシンを運び終えたベルも部屋に戻ってくる。  
 
「あまり飲まなかったみたいだな。」  
「……………」(お兄様も)  
 楽しかったが、酒を飲んで騒ぐような心境でもなかったというところか。  
 
「色々あったな。」  
「……………(こくん)」  
「ミリアムを失ったとき、俺たちにはもう何も残ってないと思ったもんだが…」  
 ベルも懐かしいことを思い出すように目を細める。  
 
「大事なもの、いっぱい増えたな。」  
「……………(こくん)」  
「三度目の正直…か。今度は…守ろうな。」  
「……………(こく)」  
 ベルは頷いた。  
 
「……………」(お兄様、私いろいろ思い出しました)  
 魔法が解けたことによって何かを思い出したらしい。ベルはそういうと一つの  
耳飾を取り出した。変装の耳飾…学生時代の失敗作の一つ。変装するためには変身  
するもののことをかなり詳しく知っておかなければならず、結果、本人もしくは身内に  
しか変身できないという意味のないアイテムになってしまったものだ。  
 
「……………」(これも整理していたら出てきました)  
「また、懐かしいものを…。」  
 ベルはそれを耳に付けて念じたようだ。そして、目の前に現れたのは五年前のまだ、  
少女といってもいい年代のベルの姿だった。髪は今と違ってショートにしており、  
胸も控えめだが、締まった体は今のような傷跡がなく、褐色の肌は健康そうにみずみずしく  
輝くように部屋の明かりを反射している。  
 
「こうしてみると成長したんだなあ。と思えるな。」  
「……………」(この頃には私は昔のことも思い出せるようになっていました)  
 そうだったのか…。思い出せないならそのほうがいいと思っていたのだが。  
 
「……………」(そして、いつも一緒にいて私を守ってくれるお兄様と血がつながってないことも)  
「ま、少しはつながっているんだが…そうだ。実の兄妹じゃない。」  
「……………」(私を背中に乗せて必死に逃げるお兄様とただ怖がっていただけの私…)  
 昔のことを思い出すのは辛いだろうに。  
 
「……………」(いつか反対に守れるようになろうって思ってました)  
「事実、そうなったなぁ。」  
「……………」(それから、本当の兄妹じゃないってわかったときから異性として好きになってました。)  
 そんな前から…という驚きはあるが、今の関係を思うとおかしいこととは思わない。  
 実の兄妹と信じていても同じ結果になったのだから。  
 
「……………」(でもあの時は勇気がなかったし、お兄様には好きな人がいた)  
「ばればれだったか。」  
 ベルは少し笑って頷いた。  
 
「……………」(身近にいるのに…だから余計に辛くて。そんなときにあの鏡が)  
「虚構の鏡か。あれのせいでひどい目にあった。」  
「……………」(お兄様は強いから。逃げなかったから)  
 偽りの記憶との戦いは精神の戦いだった。自分が作った物ながらそれは手ごわく  
辛い戦いだった。  
 魔法のアイテムが最悪の凶器になりうることを心底悟ったのはそのときだ。  
ベルの話は続く。彼女は五年前の目で俺をまっすぐに見つめている。  
 
「……………」(私は逃げた。実の兄妹だったらこんな辛い思いしないのにって)  
「最終的には兄妹って壁を壊して勝ったんだろ。いいじゃないかそれで。」  
 少し微笑んでいった俺の言葉にベルはそっぽを向いた。  
 
「……………」(不戦勝みたいでなんかやだ…それに…)  
 ベルは少し苦笑しながら、  
 
「……………」(ミリアムみたいに独占できなかったし。…シルビアも多分同じ気持ちなのかな)  
「シルビアは……何を考えているかわかんないが違うだろ。」  
 ベルは首を横に振って続ける。  
 
「……………」(私もシルビアも好きな人以外に抱かれたくないし、すごく嫉妬深い)  
「お前がそうなのは知ってるが…」  
「……………」(でも、多分同じ理由で独占はできない)  
 泣きそうな顔で、文字板にそう表示させたベルの頭を俺は抱えて抱きしめた。  
背も低くなってるので丁度頭が胸のところに当たる。  
 
「今日はお前のもんだ。特別な場所と一時別れを告げる大事な日だからな。」  
「……………(こくん)」  
 俺は少し屈んで、目を瞑った彼女の唇に自分の唇を合わせた。  
 
 
 ベッドと初めから備え付けられていたベッドだけになったすっきりした部屋で、俺は  
ベルと向かい合っている。初めて抱いた日からかなりの時間が経ち、もう何度目かは分からない  
くらいにベルを抱いているが…  
 
「元の姿に戻らないのか?」  
「……………」(お兄様が喜ぶと思って)  
 顔を真っ赤にして俯くベル。なんだかんだで、今でもこういうことの前はいつも恥ずかしそうに  
しているのだが…。目の前の小さくなった妹はなんというか…。  
 
「なんか誤解してないか?」  
「……………」(お兄様が特殊な趣味をしてらっしゃると知ったときはショックでした)  
「まてまてっ!断固兄は否定するぞ。俺はノーマルだ。  
 ここは譲れない。確かに手は出したが俺はノーマルだ。多分。  
 
「……………」(マオやユウには縛ったりいろいろハードなことまで…ついにはシンまで毒牙に)  
「まて、シンは関係ないぞ。」  
 前半は全部事実なのが痛い。言い訳しようがない。  
 
「というかお前初めからそのつもりだったろう。」  
 こくっと頷くベル。  
 
「……………」(このくらいの年のとき、毎日大変でした)  
「何が?」  
「……………」(隣で寝てるお兄様を襲わないようにするのに)  
 恥ずかしがりなのに考えていることは過激だ。普段とは違う…といっても見慣れた姿では  
あるのだが…子供だと思っていた頃の姿でそんなことを言われると妙な気分になる。  
 
「昔、たまに俺のベッドに潜り込んでたのは…」  
 寂しいからだとか思ってた。   
 
「……………」(あのころやりたかったことやりますね)  
 ベルに促されベッドの上で寝るふりをする。服を脱ぎ、全裸になった彼女はその姿に  
そぐわない妖艶な笑みを浮かべると俺の体の上に馬乗りになり、技巧などまったくない荒々しさで  
唇を貪り始めた。成長途中の小さい体で必死にしがみ付きキスを求める。  
 息苦しくなった頃、ゆっくりとベルは唇を離した。顔は上気し、興奮しているのか少し息も荒い。  
 
「……………」(ここまでは実はこっそりやったのですが)  
「知らんぞ。そ、そんなこと。」  
「……………」(お兄様は寝るとおきないから)  
「ぜんぜん気づかなかった。」  
「……………」(体が余計に火照って、隣で慰めててそれでもお兄様起きなかった。起きて欲しかったのに)  
 当時、起きてたら自分がどうしたのか。今となってはわからない。  
 多分別の部屋で寝るといった感じだろうか。それとも流されていたんだろうか。  
 ベルは軽くキスをした後首筋からどんどん俺を食い尽くすかのように舐めたり噛んだりしながら  
下っていく。服のボタンも同時にはずしていき、自分の幼い体を押し付けて晒された俺の体を味わっている。  
 
「…ベル…」  
「……………」(お兄様をこうして自分の色に染めて)  
 興奮で顔を赤くしながら、俺も裸にする。  
 
「……………」(動物みたいに何も考えずにお兄様と抱き合いたかった。)  
 俺のモノを少し舐めて立たせると愛撫もしていない自分の秘所へとあてがった。そのまま馬乗りで  
体を沈めていく。ベルの中は触ってないのに濡れており、体が普段より小さい性で強烈に締まったが  
痛くは無かった。俺は。  
 
「ベル。無理するな。」  
「……………っ!」(大丈夫。こうしたかったの。お兄様に無理やりでもこうして傷を付けて欲しかった。)  
 一番奥まで沈み込もうとしたとき僅かに引っかかり、構わずベルは一気に腰を落とした。結合部から  
少しだけ血が流れる。  
 
「……………」(凄いね。完全に五年前の体なんだ。痛くてじんじんする)  
 体を少し起こし、瞳を涙で潤ませながら力が抜けたように俺の胸に手を置いて息をついているベルの細く、  
柔らかい腰をゆっくり掴もうとする。  
 
「……………(ふるふる)」(お兄様はそのままで)  
 慣れてきたのかゆっくりと体の上で腰を動かし始める。手持ち無沙汰なのでかすかに膨らんだ  
薄い胸を愛撫し、弄る。少し硬い胸は触られると刺激が大きいのか、触れるたびにぴくっと震えた。  
 
「……………」(変な感じ。お兄様のがいつもより大きい)  
「お前の体が小さくなっているからな。胸いいのか?」  
「……………(こく)」(普段と感じ方が違う)  
 俺は胸に集中して口と手を使って愛撫を始める。その間、少しずつ気持ちよくなってきたのか  
ベルの腰の動きも自然なものになりはじめていた。  
 暫くすると、さらに動きが早まり打ち付ける卑猥な水の音が高まり始める。その動きから、  
ベルの限界が近いことがわかった俺は下からも突き上げ始める。  
 
「……………っ!」  
 いきなりの攻撃でベルは驚いたみたいだったが、そのまま動きをあわせ始めた。  
 
「……〜ーーーーっ!」  
 ベルが限界に達するのと同時に、俺も中で達した。  
 
 
「大丈夫か?」  
「……………(こく)」  
 一度目が終わったあと、ベルは俺の体にかぶさるように抱きついてきていた。重さは小さく  
なっているせいか、さほどは感じない。いつもは柔らかい感触を与える胸も少しだけしか自己主張  
していない。  
 
「……………」(ずっとしたかったことができて満足)  
「今日くらいするつもりだったのか?えろいな。ベルは。」  
 ぽかっと殴られた。ミニサイズなのであまり痛くは無い。  
 
「……………」(お兄様のせい)  
 上目遣いで睨まれる。そういえば、はじめは主導権とられっぱなしだったが何ヶ月かして  
からは反対になったような。  
 
「なんかいつもと違う感じだったけど、やっぱベルだったな。」  
「……………」(私はぜんぜん違った。でも次は大丈夫)  
「まだ、朝は遠い…か。」  
「……………(こく)」  
 俺はベルを抱え上げるとベッドに腰掛け、その膝の上にベルを乗せた。今のベルの身長では  
この状態では地面に足がつかない。その格好のまま後ろから太ももを抱え下から突き上げた。  
 
「……………っ」  
 太ももを持って腰を持ち上げ、抜けそうになる直前で体を落とす。さらに下から突き上げながら  
首筋に唇を付ける。体をよじろうとするが、足が宙に浮いているために力が入らずなすがままだ。  
 
「気持ちいいか?」  
「……………(こく)」  
 捕まえたまま、後ろから太ももを抱えて落とす。ずぶずぶと再び中へと入っていく。自分で  
動いて突き上げる。ベルもなんとかあわそうとしていたが…  
 
「…〜ーーーーーっ!」  
「ベル、先にイったな。」  
「……………」(だめもう…気持ちよすぎて…え…)  
 腰の止まったベルの体を今度は肩に首を乗せて上から押し付けて固定し、激しく俺はベルを突き始めた。  
 
「……………っ!!?」(お兄様、許して。もう!)  
 潮を吹いた。それでも太ももを抱え、ちゅくじゅく…といやらしい音を立たせながら動き続ける。  
慣れない体で敏感になっているせいか、その間何度も小さく達しているようだった。  
 
「……………」(いやあ)  
「かわいいぞ。ベル。」  
 耳元でつぶやくと、膣がまた締まった。俺の限界も近い。  
 
「今度は一緒にな。」  
「…〜ーーーっ〜ーーーーーーーーー!!」  
 俺はそういうとさらに激しく動き始める。ベルのタイミングを計りながら最後に奥まで深く突き入れ  
俺も二度目の精を中に放った。  
 同時にベルも一度目より大量の潮を吹きながら大きな絶頂を迎えた。  
 
 
 
 しばらく余韻に浸っていると、ベルを魔力の輝きが覆ってもとの大人の姿へと戻した。  
 
「……………」(戻りましたね)  
「二時間が限度ってとこか。魔力を補充すればまた使えるようにはなるけどな。」  
 俺は苦笑して言った。失敗作である理由の一つ。時間制限…。  
 
「……………」(お兄様の作るものには夢があります)  
「そうかな?」  
「……………」(ここを去る前に私の後悔を取り除いてくれた)  
 俺は頷いた。一度でも人の役に立てるアイテムなら作った価値はある。  
 
「……………」(このアイテムも…虚構の鏡も封印したほうがいいかもしれない)  
「鏡はともかくなぜこれも?」  
「……………」(お兄様はわかっておられないのですね。このアイテムの価値と危険さが)  
 ベルは呆れたような口ぶりでいった。鏡が危険なのはわかるが…。  
 
「……………」(一時的とはいえ体を『完全に』五年前の状態に戻したんですよ)  
「ん〜それが?」  
「……………」(魔力を込め続ける手段さえあれば、望むままの年齢で生きることができるのです)  
「あ。」  
 やっと理解した。喉から手が出るほど欲しいものもいよう。若さというものは普通、二度と手に入る  
モノではないのだから。  
 
「いいアイデアだと思ってたんだがなあ。まさかそんなやばいものだったとは。」  
「……………」(没扱いになってて良かったです)  
 全くだ。こんなもの作ってたのがばれたら敵は今の三倍以上増えていただろう。  
 
「……………」(さてお兄様、好きなように私をいじめてくれたけど、次は私ですよね)  
「へ、今日はもう疲れたんじゃないのか?」  
「……………」(今日は朝までです♪)  
 結局、俺たちは次の日昼過ぎまで寝てしまい、先に起きていたみんなに怒られることになった。  
 
 
 
 翌日、夕刻。俺たちは荷物を積んだ馬車とともにシュタインベルグ城へと入っていた。  
 
「ベル、マオ、ユウ…それにシン。ようこそ我が城へ。歓迎しますわ。」  
 金髪縦ロールの悪友で口の悪い美女、シルビアが門の前で出迎えてくれていた。  
 
「おいおい、俺は?」  
「カイはついでですわ。ま、おまけってところですわね。  
「全く言ってくれるぜ。しかし、変わらないな。」  
 くっとシルビアが小さく笑う。実際は歓迎してくれてるんだろう。なかなか気を許せないシルビア  
にとって今日から住み込む面々は気楽に付き合える少ない相手だ。俺も含めて。  
 
「イリスのほうは大丈夫か?」  
「ええ。足も問題ありませんし順調ですわ。」  
 先にみんなを行かせて、シルビアと二人でゆっくりと歩く。彼女に歩調を合わせながら。  
 
「お前はともかく彼女は…いいのか?」  
「イリスは後悔なんてしてませんわ。…詳しいことは女同士の秘密ですが。」  
「ならいい。」  
 親しい他人を犠牲にするなんて考え方のできる性格じゃないこいつがいうんだからきっと、大丈夫なんだろう。  
 
「それにしても、俺が父親でシルビアが母親か。」  
「世の中信じられないことばかりだけど、これ以上のことはないわね。」  
「まったくだ。」  
「私あまり実感がないの。人の親になるってことに。」  
「俺もだな。変わるんだろうか。」  
 シルビアとは恋人というより悪友、戦友というほうがぴったりな関係だった。  
 完璧すぎるのを崩すために昔みたいな縦ロールにすることを真剣に話し合ったり、  
政略謀略について話し合ったり、冗談を言い合ったり…。  
 
「あまり父親に似て欲しくはないわね。性格が悪くなりそう。」  
「おいおい、それは母親に似ても悪くなるだろ。」  
「男に生まれると女泣かせになりそうですわ。」  
「女に生まれても男を泣かせるのは間違いないぞ。いろんな意味で。」  
 
 俺たちは顔を見合わせて噴出して笑い転げた。  
 明日から新しい住処で新しい生活が始まる。  
 
 

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