集中────一字一字、壁にルーンを刻み込んでいく。正確に一ミリの狂いもなく。  
 魔法のアイテムを作るのに最も技術を要する作業だ。  
 
 俺は今、二週間前拾った漆黒の長い美しい髪に勝気な同じく黒の瞳、きめ細かい白い肌を  
持つ美少女の魔王──マオの部屋にルーンを昼夜問わず、刻み込んでいた。  
 
 
 時は二週間前に遡る────  
 
 俺たちが魔法施設で出会った日、俺は無理矢理襲われて人として大事なものを失った…。  
 それからというものシルビアの持ってきたゴスロリ服を器用に着こなした魔王様は、  
 
「おい、下僕。わらわのお茶もってこい!」  
「おい、下僕。わらわのお菓子もってこい!」  
「おい、下僕。わらわを楽しませよ!」  
「おい、下僕。わらわの背中を流せ!」  
 終始こんな調子である。無論、俺様言うことなど聞くはずないが喧嘩するたびに…  
 いやいや、男たるもの後ろを振り返ってはいけない。  
 それだけならまだいい。少しでも旗色が悪くなると、  
 
「ベル~わらわをこの人が苛めるよ~えっちな目で見てくる~怖いよ~」  
「……………」(お兄様!大人気ない)  
 このとおりベルに無表情で睨まれ件の魔王様はというと、背中の後ろから嫌みったらしく  
わらって舌を出していた。騙されてるっ騙されてるぞ我が妹よ!!!  
 
 後日、マオに俺たちの序列についてどう考えてるのか聞いてみた。  
わらわ>シルビア>ベル>宿屋のおっちゃん>>>>>超えられない壁>>下僕  
 ………この腐れ魔王がっ!いつかお仕置きしてやるぜ!  
俺は公爵にも侯爵にも喧嘩を売った男だ。魔王とだって喧嘩してやるぜ!  
 背中の上でご満悦の黒髪生意気美少女に心の中で中指を立てながら俺は復讐を誓った。  
 魔法技師はやられっぱなしではおわらないぜ。  
 
 二週間後、俺に復讐のチャンスがやってきた。シルビアから手紙が来たのだ!  
 この前、魔法施設潜入の仕事料として材料の提供を求めたのだがそれが届いたらしく、  
忙しいので引き取りに着て欲しいというものだった。  
 俺はこれを機会に外を見てこいとそこそこの金額を持たせてマオをベルに護衛させて  
シルビアのところへとお使いに出した。シルビアへは二週間くらい世話をしてやってくれと  
手紙を書いておいた。やつはマオを気に入ってるから喜んで留めるだろう。  
 
「ふん、下僕にしては気の効いたことをするな。ベル、よろしく頼む。」  
「……………」(お兄様、いってきますね。)  
 ふっふっふ、喜んでられるのも今のうちだ。俺は一発殴られ三発殴り返さなかった  
ことはないのだから。こら、子供相手に大人気ないとか言うなっ!  
 
 
 そして、現在に至る。マオの部屋に入った俺は突貫で魔法封じのルーンを壁に床に天井に  
刻み続けている。そう、俺の勝てない理由の一つに絶対的な魔力の差がある。これを封じねば  
勝ち目はない。さすがに中途な覚醒とはいえ魔王なだけあって施設破壊以来魔力の補充を  
行っていなくても、絶対的に人間では勝てないのだ。  
 その上、歴代魔王の中に武術に長けたものが居たらしく力は普通の少女なのに簡単に  
組み伏せられるのである。なんとかせねば…ということで、今回作っているアイテムの出番である。  
 
 さらに二週間のときが流れ、ベルとマオが材料を持って帰ってきた。それから  
さらに一ヶ月の忍耐と屈従のときが流れ、ついにそのときはやってきた。  
 
「ふ…ふふ……ふはははははっはははあはははは!」  
「……………っ!!!」(お兄様だいじょうぶ?)  
「完成したぞ。完成したぞ…。ついに理論だけしか研究者の中では完成しなかったものが!!」  
 隣で昼寝していた赤髪の妹…ベルは少し好奇心を持ったような眼で俺に聞いてきた。  
 
「……………」(何この縄の切れ端…)  
「複合魔方陣。通常ルーン───────(一時間半)───────という、素晴らしい  
ものだ。わかったかっておい、ベル!寝るな!!」  
「……………」(zzz)  
 秋も深まるこの季節、今日はやけに日差しが妙に暖かかった。  
 
 
 夕食後、俺とマオは彼女の部屋にいた。服の中には俺の努力の結晶が入っている。  
 マオはいつもどおり、勝気な目で俺を見つめている。  
 
「なんじゃ?ついにわらわの下僕と認める気になったか?」  
「ふん、お子ちゃまが悪いことしたらお仕置きするのが大人の責任なのだ。今日こそ  
 おしりぺんぺんしてやる。」  
 魔王ができるものかと不敵に笑う。俺もようやく仕返しができることへの喜びで  
爽やかな笑みがこぼれた。決して邪悪ではない…と思う。  
 
 俺たちは同時に動いた。マオの美しい髪が靡き一瞬で俺との間合いを詰めて拳を放ったが  
大雑把なその一撃を簡単にかわした。驚いたかっ。今日のために体術は本気を  
出さなかったのだ。深慮遠謀という奴だなっ。せこいとか言うな!  
 攻撃をかわされたマオは俺の体術のレベルを把握し、魔法戦へと切り替えようとする。  
 
<汝術使うことあたわず!>  
 
「な、何!貴様っ!!」  
 今日のための準備その一だ。キーワードを唱えると部屋中から淡い光が漏れ、  
マオの魔力を封じ込める。  
 
「やるな、下僕の分際で…ふふ…面白い。それでこそわらわの下僕に相応しい。だが、  
 この程度でわらわを封じれると思うな。」  
 黒を基調とした大きなフリルの付いたゴスロリ服を着た魔王は部屋中に張り巡らされた  
結界の中でも余裕の態度を崩さなかった。俺は初めてこちらから接近戦を挑んだ。  
 手には新兵器がある…。緊張で手に汗が…。幾度となく突きを放つが見切られ簡単に  
かわされる。相手のカウンターの蹴りを後ろに飛んでかわしながら俺はわざとらしく  
ならないように「それ」を投げた。  
 「それ」が魔王の手に掴まれる。  
 
「ふ…これが主の切り札か。じゃがそれもわらわのもの。お主は下僕になる運命じゃ。  
 おとなしく降参するなら痛くはせん。」  
「げっ!しまった!やばいっ!!」  
 俺は内心高笑いを上げながらもばれないようにルーンを唱える。魔王は獲物をいたぶる  
猫のような目でそんな俺を眺めている…が、ここまでだ!!  
 
<拘束せよ!!!>  
 
 俺の最後のルーンの言葉と共に縄の切れ端が全方向に一気に広がり、ゴスロリ生意気魔王を  
完全に拘束した。首にかけた二つに束ねた縄を股間から背中に回し、正面の縄を開く  
ように固定する。その際に胸のあたりに六角形を作る。さらには手首を固定し、足が  
M字型に開くように縄で縛り上げられた。名づけて亀甲縛り改…この形に調整するのに  
一週間余計にかかってしまった。  
 
「こんなもの簡単に……何!切れん。わらわの魔力が……封じられている?」  
 焦るマオに俺は不適に笑って言った。  
 
「人間様なめんじゃない。時間と条件さえあえば俺に勝てる奴はそういねえ。  
 その縄は何重にも魔法封じの結界を束ね合わせてしかも、縛ったときに立体型の  
 魔方陣になるように作ってある。本来のお前ならそれでも強引に切れるかもしれんが  
 今の結界で弱ったマオには確実に無理だな。さて、お仕置きしてやるぞ。」  
「こ、こら下僕!へ、変態鬼畜っなんでこんな縛り方なんだ!卑怯だぞ!!」  
「喧嘩に卑怯もなにもないっ!ついでに悪い子には体に教えさせるのが一番だ。」  
 防音の魔法も掛けているため、隣で寝てもらってるベルに声が漏れる心配もない。  
 俺は目の前でその豪華な服の華奢な体を亀甲縛りにされた彼女をお姫様抱っこし、  
ベッドの上に上げた。縄からはみ出た服がなんともいえない。  
 何からするかは既に決めていた。ふっふっふ…  
 
「あ、や、やめろっ!きゃははははっ!やめ…きゃはははっ!!!」  
「こちょこちょこちょ~大笑い地獄だっ!」  
 俺はマオが動けないのをいいことにくすぐりまくった。制止の声も聞かず、ひたすら  
続ける。彼女はそれでも俺を罵るのをやめなかったので手を止めた。  
 マオは俺を少しだけ涙を悔しそうににじませた眼でそれでも綺麗な目で俺を睨んでいた。  
 そんな縛られた彼女の上に体重がかからないように気をつけてかぶさる。彼女は  
少しとまどったように眼を泳がせ、  
 
「な、今度は何をする気だっ!この下ぼ…んんっ…ちゅ…じゅる…!」  
「ふぅ……ちゃんと、俺を名前で呼べるように気持ちのいいお仕置き。」  
 優しく深くキスをすると顔を紅く染めながらそっぽを向いて、  
 
「ふんっ!何をされてもわらわは負けはせぬ。」  
「この間は魔眼でやられっぱなしだったからな。魔力は封じてあるし、今日は反対に  
 俺が気持ちよくしてやる。」  
 縛られていて脱がせにくい複雑な服をなんとか胸元だけはだける。  
 もう一度軽く左手を頭に回して少し髪の毛の柔らかい感触を撫でて感じながら  
キスをし、右手で微かに膨らんでいる柔らかな胸を愛撫しながら乳首を少しつまんだ。  
 マオは色っぽい声をあげ体がびくっと震えて感じているのを確認し、唇を離して  
半妖精のようにすこしだけ尖った形のいい耳を甘噛みする。  
 
「ぁ…っ…………ぃゃ…」  
「随分気持ちよさそうだな。」  
「ぁ…わらわは…別に…気持ち…よくなんかない。」  
 言葉と違う不安に戸惑う初々しい表情に、強すぎるために攻められることが少なく、  
あまり優しくされることに耐性が無いことがわかり、俺は嬉しくなった。  
 唇は耳から首筋へとゆっくりと下っていき、必死に顔を真っ赤に上気させながら  
眼を瞑って耐えるマオを横目に唇は乳首に到達した。舌で乳首を転がすように愛撫し、  
手は太ももから股間へと這わせた。  
 
「っ!!!!~~~~~~~~っ!!」  
 凄い反応だった。秘所に触れた途端、縛られて動けないせいで体全体で撥ねた。  
 眼をあわせられず、上を向いて息を細かく吐きながらそれでもマオは声をあげずに  
耐えていた。時間を掛ければ…そう思わないでもなかったが…俺は悪魔の囁きを選んだ。  
 俺は下着の上から感じる部分を探し出し、そこを重点的に責めながら耳元で言った。  
 
「マオ…我慢できなくても仕方ないんだ…。この前の魔法がかかっているんだ…。」  
「……魔法のっ……せい……っ?」  
「そうだ。だから声がでてもマオのせいじゃない。」  
 耳元で話しながら軽く耳を噛んだ。同時にちゅく…と、水音を少し立てるように  
強めに押した。  
 
「っぁ~~っ~~~ああっ!!  
 ついに黒髪の少女は我慢できずに声をあげて軽くイった。荒く息をする彼女の  
頬に手をふれる。彼女は真っ赤な顔で上目遣いでう~っと俺を睨んだ。  
 
「わらわは、お、お前に気持ちよくされたわけじゃないっ!魔法の、そう魔法のせいなんだから!」  
「そうか、まだお仕置きが足りないようだな。」  
「えっいや!ま、まて…あっそんなとこっ舐め…」  
 全部を聞かずに下着をずらし、全く生えていないそこに頭をつけて先ほど指で確認した  
秘所の弱い部分を舐めて責め始め、殆ど縦筋の少女らしいそこを割って執拗に舐めた。  
口に愛液の味が広がり、女を俺は感じていた。  
 
「や、やめてっ…いやっ、そんなとこっ…舐めるなんてっ……気持ち……!」  
「…お前のここ…綺麗だぞ。気持ちいいか?」  
「……よくない…っ……あっ!!!」  
 抵抗しようにもM字型に魔法の縄で縛られた足は動かせず、なすがままに俺に  
嬲られている。  
 
「じゅ、ずずずずっじゅる」  
「もういやあ…吸わないでっあっ…~~~~いくっ!!!!」  
 止めとばかりに皮をむいて剥きでた豆に軽く歯をあて、舐めるとぷしゃっと顔に  
生ぬるい愛液を俺に浴びせた。魔王の顔を見ると、それでも勝気な表情は崩さず  
少し弱くなりながらも負けるものかとばかりに見つめていた。  
 
「降参するか?」  
「だ、誰がっあんたなんかに!」  
「じゃ、お仕置き続行だな。」  
 今度は指を入れた。初めは一本の指の出し入れをゆっくりと始める。  
 
「ぁ……」  
 二回目が達したばかりで敏感になっているのか、軽く入れているだけでも体が  
びくびくと震える。マオの中は狭い、あまりやりすぎると痛みのほうが強くなるので  
二本で止めることにし、ゆっくりと出し入れしつつ反対の手でクリトリスを弄った。  
 
「聞こえるか…指を入れるたびにするマオのやらしい音が。」  
「わ、わらわは……っ…感じてなど…そう、お前の…魔法のせいだっ……っ…卑怯だぞ!」  
「気持ちはいいんだな。そうだよな、こんなにぐちゃぐちゃだもんな。」  
「馬鹿っ!いうなあ!」  
 口で羞恥心を煽りつつ、俺はどんどん指のスピードを上げていく。中の気持ちのいい場所も  
完全に把握し、そこを重点的に激しく攻め立てた。高い水の音が部屋に響く。  
 
「ああっ…気持ちいいっ…もっと…ああ…いやっ駄目っ…やめてやめてやめて!」  
「どうした?気持ちいいならやめなくていいんじゃないか?」  
 なんとなく原因はわかっていた。さっきから快感とは違う震えを感じていたからだ。  
 縛られているため動けないがそれでも逃れようともがく。もちろんそれを許さずに  
俺は指のスピードをさらに上げた。  
 
「いやあ!ごめんなさい!!全部謝るからっ謝るからっやめてええええっ!」  
「すまん、聞こえないな。ちょっと耳が遠くなった。」  
「だめええええええっ!!!」  
 懇願に耳を貸さず激しく両手で責め続けた。そうすると激しく痙攣した後、  
 ぷしゃ~~~~と、潮ではない黄色い水が放物線をかいて垂れ流された。マオは  
羞恥で泣きながら呻いた。  
 
「う……うう、全部…魔法のせい…」  
「俺は魔法なんてかけてない。全部嘘だ。感じて声をあげたのも気持ちいいって  
 いったのも、謝ったのもおもらししたのも、ちゃんとマオだ。」  
 暫く呆然と俺を彼女は見ていたが、やがて、徐々に涙目になり感情が暴走したように  
泣き始めた。さすがに俺もうろたえる。ちょっとちょっと?  
 
「う…えぐ…うわああああん!ひどい、ひどい!!いじわるいじわるいじわるっ!!!」  
「おい、わかったお仕置きはもうやめるから…な、泣くなっ」  
「大体、わらわは悪くないのにっ!わらわも構って欲しいのにいっつもいっつも、  
 ベルばっかり構って!!寂しいのに隣から毎日仲良くしてる音が聞こえてくるんだ!!  
 少しくらい仕返ししたって悪くないだろぉっ!うわああ~~馬鹿馬鹿馬鹿!!」  
「そ、そうか…。」  
 あれは甘えてたのか…。  
 
「甘えたいならわかりやすく甘えろ。お前は可愛い。邪険にしない。今後もっと  
 俺も気をつけるから……な?」  
「うん……」  
 俺はマオの柔らかくてさらさらとした黒髪を撫でながら優しくキスをした。  
 彼女は俺に嬉しそうに笑った。  
 
「お前も……わらわに…その…していいぞ…」  
「いいのか?」  
「うん………最後の以外わらわに優しくしてくれたし……」  
「じゃあ、せめて…名前で呼んでくれよ。下僕じゃなくて。俺は誰の下にも付かないんだ。  
 公爵だろうと侯爵だろうと皇帝だろうと魔王だろうと…。なれるのは友達だけだ。」  
「わかった。わらわも…すまなかった。」  
 いい加減、俺も限界だったのですぐに挿入した。二度目のそこはかなり濡れているのに  
未だに狭く、押し返すような抵抗がある。俺はあまり大きくない胸を愛撫しつつ、負担を  
かけないようにゆっくりと動き始めた。  
 
「あっ……わらわに入ってくる……カイのが……。」  
「痛くないか?」  
「大丈夫。動いて。」  
 本当に表情に痛みが出ていないことを確認し、俺は激しく動いた。今回は、愛撫で  
気持ちのいい場所はわかっているのでそこを擦るように気をつけた。  
 
「んあっ!!カイ…カイ………気持ちいいよっ………」  
 マオの顔が勝気で小生意気な少女から魅惑し快楽に溺れる美しい女の顔に変っていく。  
 それを見ながら俺の興奮も否応なく高まっていった。  
 
「もっと!…わらわをもっと突いて!カイ……好きっ…大好きっ!!」  
 限界が近づいてきていた。マオの反応も近いことを察した俺はラストスパートを  
かけ、マオのちいさいあそこを壊す勢いで突いた。  
 
「カイ凄い!……いい……すごいっ……もうだめっ…いく!…カイも一緒にっ!!」  
「ああ。俺ももう…」  
「いや……気持ちよすぎて…何も考えられない…っあっいく~~~~~~~あ~っ!!!」  
 最後に一突きして俺は精液をマオの中に出した。びくんびくんと俺のモノが中で震えるたびに  
マオも小さく痙攣する。  
 縄の魔法を解くと、力尽きたようにぐったりとベッドに横たわる。  
 俺はマオを抱きしめて口付けした。彼女は花びらのような笑顔でくすくすと笑った。  
 
「酷いお仕置きじゃった。ほんとに滅茶苦茶な男だ。」  
「マオが可愛いから調子に乗ってしまった。」  
「~~~っばかっ!」  
 ぽかぽかと胸倉を叩くマオに俺は微笑んだ。  
 
「酷いことしてごめんなさい。素直じゃなくて…ごめんなさい。」  
「俺も悪かった。これで…仲直りでいいか?」  
「そうだな…後は…今日はわらわと一緒に寝てくれ。」  
「了解だ。お姫様。」  
 俺はマオの髪を優しく撫でて腕枕をしてあげて眠った。  
 
 
 翌日、朝食にはシルビアも来ていた。魔法施設事件にようやく蹴りがついたらしい。  
 だいぶ自分に有利に進めたらしく来たとき、彼女は随分機嫌がよかった。だが今は…  
 
「ふんふんふん~♪おい、カイ!口をあけろ。わらわが食べさせてやろう♪」  
 俺の膝の上にはシルビアから送られた青を基調としたゴスロリ服を完璧に着こなした魔王様が  
ここは自分の玉座だといわんがばかりに鎮座していた。そして、ベル向けられる殺意の視線。  
シルビアからは説明を求める怪訝そうな視線。  
 
「さて、カイ……これはどういうことですの?」  
 そういったのは金髪縦ロールの侯爵、シルビアだ。彼女はまるで犯罪者を見るような  
目つきで俺と魔王の微笑ましい食事風景を眺めている。  
 
「……………」(お兄様?)  
 無表情でこちらを睨みつけているのは赤髪に、豹を思わせるようなしなやかな肢体を  
持った少女。妹のベルだ。背後に本当に豹が見える。  
 
「これはだな。話し合いの結果、下僕じゃなくて友達になることにきまってだな…。」  
「うむ、カイがわらわを思いっきり可愛がってくれたのじゃ。上手かったぞ。  
 何度もイカされてしまった。」  
 空気が凍った。  
 と、おじさんは後日語った。  
 
「……………」(お兄様…覚悟はよろしいですか…)  
「カイ……貴方……こんな年端のいかない美少女を……ずるいわよ!」  
「勘弁してくれベル…。シルビア…お前それはどうなんだ。」  
「そうカイを責めるな…こやつはいい男だ。仕方がない。はじめは下僕にしようと思ったが  
 気が変った。カイをわらわの伴侶としようじゃないか。ほら、むちゅー」  
 そういって、ご機嫌な笑顔のマオは膝の上で体の向きを変え俺にキスをした。  
 俺の寿命は………間近に迫っていた。  
 
 

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