589 名前:C・ジョー・リバイバル 投稿日:04/04/08 10:12 ID:/8SNe/0M 
男女平等が叫ばれて久しいが、やっぱり男と女の間には越えられない  
壁がある・・・と俺は思う。自己紹介が後になったが、俺の名は国分元治。  
モックンと呼んでもらえれば有難い。基本的にエロ本は自販機で買う・・・  
そんな、ちょっとシャイな高校二年生である。今、俺は学校の屋上にあって、  
昼食後の僅かな休息を愉しんでいる所。たとえ、勉学に励まねばならない  
学生とは言っても、安らぎは必要だと俺は思う。ああ、アイロニー・・・  
「おい、モッコリ」  
・・・俺の貴重な休み時間を、心無い誰かの呼び声が侵そうとしている・・・  
ちなみに、モッコリとは俺のあだ名。  
「聞こえないのか?モッコリ」  
声の主は分かっている。が、俺はそいつを無視したまま、デザートにと  
持参したうみゃい棒キャラメル味を取り出し、貪り食う。そして、  
「ここには、こくぶもとはる君はいますが、モッコリなんて人はいないよ」  
それだけ言って、屋上の金網越しから青空を見上げた。うむ、抜ける  
ような青さ・・・なんて、思っていたら、  
「モッコリって言ったら、お前しかいないだろう!」  
と、声の主が俺の背中へ飛び蹴りを食らわしてきた。この時、食いかけの  
うみゃい棒は宙を舞い、俺に蹴りを食らわせやがった奴の手へ吸い込まれ  
ていく。すると、  
「うむ。甘露、甘露」  
日本を代表する国民食うみゃい棒は、かりかりと香ばしい音を立て、そいつ  
の胃袋へ収まってしまった。  
 
「かすみ、貴様!」  
俺はよろけた体勢を整え、うみゃい棒を奪った奴を斜に見る。そいつは、  
キャラメル風味の残る指をぺろぺろと舐め、猫のような好奇心を携え、俺  
と正対している。  
「ごちそうさま」  
ちゅうっと指を吸い、そう言った奴の名は天蓋かすみ。幼稚園からの腐れ  
縁で、事あるごとに俺を苛むいじめっ子である。こいつの人なりを手早く  
説明すると、黙っていれば可愛いのに・・・そんな感じ。言葉使いが荒く、  
自分の事を『ボク』と言う、キャラ付けが激しい女だ。  
「よくも、俺のうみゃい棒を!」  
「ケチケチしなさんな。たかが、一本十円のお菓子ひとつで」」  
「バカヤロウ!キャラメル風味は人気商品で、中々売ってないんだ!だから  
俺は朝早くコンビニへ行って、買えるだけ買ってくるんだ!それを、お前は!」  
今さら『国民食うみゃい棒』についての説明は不要だと思うが、俺の、キャラ  
メル味への思い入れは、上記の争いから分かっていただけると思う。昨今は  
コンビニでも駄菓子が買えるのだが、そのバリエーションは決まっていて、  
選択の幅が狭いのが現状。故に、うみゃい棒をフルコンプリートする事は  
きわめて難しい。・・・まあ、諸兄にはどうでも良い話かもしれないが。  
「まあ、まあ・・・それよりもモッコリ、もう授業が始まるよ」  
かすみがそう言って、腕時計を指差した。もう、予鈴がなる時間になってる。  
「ちくしょう!今日のところは俺が引いてやる!覚えてろ、かすみ!」  
次の授業は、鬼軍曹とあだ名される鬼瓦先生の日本史。遅れる訳には  
いかないので、俺はバク転をしながらかすみの脇をすり抜けた。普通に  
走れよ!という意見もあると思うが、やつに背を向けたくないという俺の  
男心と理解していただきたい。  
 
午後の授業が始まると、途端に眠気が襲ってきた。今、教鞭を振るって  
いる鬼瓦先生のダミ声すら、子守唄に聞こえるほど眠い。  
「モッコリ、モッコリ」  
囁くように、誰かが俺を呼ぶ。声は俺の真横から聞こえてくる。予定調和  
というか、諸兄の予測どおりかすみとは同じクラス。  
「なんだよ」  
「眠そうね」  
「ああ、昨夜遅くまで起きてたからな」  
「ひとりエッチでもしてたの?ウフフ」  
「違う!大人アニメみてたんだ!」  
「それで、しこしこしてたんだ。やだ、いやらしい」  
かすみが俺をからかうのは昔から。しかし、最近ではエロい事を平気で  
口にするので、性質が悪い。俺の方は、エロ本を買うのも自販機を利用  
するような、小心者だというのに。と、この時、  
「楽しそうだな、国分」  
まさに鬼軍曹というあだ名の通り、逞しくいかめしい鬼瓦先生が、俺の前に  
立っていらっしゃった・・・かすみは、誘い水をかけておいて、自分はちゃっかり  
教科書を見てるふりだ・・・次の瞬間、  
「海軍式バックブリーカー!」  
という鬼瓦先生の叫びとともに、俺の体が宙に舞う。ぐわあ!背骨が折れそうだ!  
おのれ〜!かすみ・・・ああ、意識が・・・ふっ・・・  
 
放課後、俺は背を丸め、だんご虫のようになりながら帰途についた。まだ、  
背は痛むが、命があっただけ良しとする。  
「モッコリ!待って」  
校舎のスロープをかすみが走ってきた。制服のスカートをひらつかせ、  
パンツが見えるか見えないかギリギリのストライド。粗忽な性格のくせに、  
意外に愛らしいところがあざとい。  
「待たない」  
校舎内にはまだ人も多い。その中で、モッコリと呼ばれる俺の心情を理解  
して欲しい。道行く生徒たちが、なんだよ、モッコリって!って言うような顔  
してるしな・・・  
「背中、痛む?カバン持ってあげようか?」  
「いやん、カバーン(バカーン)・・・お前の世話にはならない」  
「そんな・・・ねえ、怒ってる?」  
「別に・・・」  
かすみが珍しく俺を気遣っている。鬼瓦先生の海軍式バックブリーカーの  
破壊力は、生徒なら誰もが知っているので、奴も心配なのだろう。  
「ボク、家までついてってあげるよ」  
「無用」  
「・・・ねえ、怒らないで。モッコ・・元治」  
付き添ってやるという言葉を言下に撥ね付けると、かすみは悲しい目をした。  
そうして、俺の後を少し離れてついて来る。  
(言い過ぎたかな)  
なんて思わないでもないが、いったん口にした事を取り消すのは男らしく  
ないので、俺は無言のまま歩く。だが、ちょっとおどけ混じりに阿波踊りを  
見せ、かすみを気遣う所が小心者。・・・だって、嫌いって訳じゃないからね。  
 
家に着いた。ついっと後ろを向くと、かすみはへへっと笑って見せる。  
俺が怒っていると思って、機嫌を伺っているらしい。  
「上がってくか?俺のうみゃい棒コレクションを馳走してやるよ」  
「うん!」  
俺が誘うと、かすみは嬉しそうに頷いた。別に、俺は怒っている訳では  
無い。というか、正直、奴とのコミュニケーションが楽しいとすら思って  
いる。だから、変な気遣いは無用と言ってやりたかった。だが、この時  
はしゃいだかすみが振り回したカバンが、俺の脳天を直撃。こういう所  
が粗忽だと言うのだ!・・・が、今は何も言うまい。  
 
「久しぶりに来たなあ・・・元治の部屋」  
「俺も久しぶりだよ。お前に本名を呼ばれたの」  
「意地悪ね」  
俺の部屋に入った後、そんな会話が紡がれた。子供時分には良く二  
人で遊んだものだが、何時の間にかお互い大人びてきて、中々二人っ  
きりになる事は無かった。ここで、俺はバケットに詰められたうみゃい  
棒を差し出す。  
「うみゃい棒食うか?」  
「うん。食べる」  
「俺的には、明太子味がお薦めだ」  
「ボク、たこ焼き味がいいな」  
「ああ、ソース味と酷似しているが、ほんのりおたふくソースっぽくて  
いいよな」  
フィーチャリング・バイ・うみゃい棒って感じの会話がかわされると、  
俺とかすみは子供の頃に戻っていた。昔はこうして、駄菓子について  
気炎を上げたものだが、今は二人とも大人になってしまった。  
 
「あっ、サラダ味がある。食べちゃおう」  
一本しか残っていないサラダ味を、かすみが目ざとく見つけた。これも  
最近は手に入りにくい一品。  
「ああ、それは俺の・・・ちょっと、待った」  
「ケチケチしなさんな。あーん」  
俺の静止にも関わらず、カリカリとサラダ味を食すかすみ。まさに甘露  
といったような表情で、偉大な国民食をたいらげた後、  
「うふふ。元治も食べたかった?」  
そう言って、俺を見据えた。  
「ああ、サラダ味は俺の好物だからな」  
「そう。じゃあ、チューしてみる?まだ、味が残っているかもよ?」  
「えっ・・・」  
不意にかすみが唇を突き出した。目を閉じて、んっと鼻で誘う。  
「あ・・・あの・・・」  
俺は戸惑った。すでに、うみゃい棒の事は頭から飛び、つやつやと色っ  
ぽいかすみの唇だけが目に入った。若干粉っぽいのは、うみゃい棒の  
残滓か。  
「・・・女の子に恥をかかせちゃ、駄目なんだから」  
かすみが呟くと、俺はふらふらと奴を抱き寄せ、柔らかな唇へ自分の  
思いを重ねていった。・・・しょっぱい。実はこれが始めてのキス。だが、  
その味はサラダ味・・・正直、微妙なファーストキスだと思った。  
 
キスは三分も続いただろうか。まだ、拙い二人の口唇愛撫はぎこちなく、  
ただちゅっちゅっと唇を鳴らすだけだったけれども、お互い十分に気持  
ちが通い合ったと思う。  
「元治・・・ボクの事・・好き?」  
「う、うん・・・」  
「じゃあ、よろしい。うふふ、元治のうみゃい棒・・・硬くなってるけど」  
「す・・・すまん」  
俺はかすみに自前のうみゃい棒(イカ味)を触られ、困惑した。妙に  
うみゃい棒にこだわる理由はここにあったのか!と思うが、それはさて  
置く。  
「元治のうみゃい棒・・・ご馳走してくれる?」  
「え・・・そ、それって」  
かすみが身を横たえながら、言う。足を軽く開き、腕を俺に向かって伸ばし、  
「い、いいよ・・・ボクでよかったら・・・」  
かあっと頬を赤らめ、かすみは言った。そして、両手で顔を覆い、  
「元治の好きにして・・・あ、あたし良く分からないの」  
指の隙間から俺を見遣った。  
「お、俺でいいの?」  
「うん・・・」  
「そ、そうか。ふ、服脱がなきゃな・・・ははは」  
俺は混乱しつつも、着ているものを脱ぎ、丁寧にたたんだ。この辺に、  
躾のよさがうかがわれるが、話は更に続く。  
 
「ボ、ボクも脱がなきゃ。パンツだけでいい?」  
かすみは言いながら、スカートの中へ手を突っ込んだ。性の知識に疎い  
とは言え、下着だけ脱いでナニをするのは、マニアックだと思う。  
「とりあえず、全部脱ごう」  
「そうだね」  
そうして、俺とかすみは着ているものを脱ぎ、生まれたままの姿となる。  
カーテンを閉め、部屋を暗くすると何やら妖しい雰囲気になった。  
「もう一度聞くけど・・・元治は、ボクでいいの?」  
「いいっていうか・・・俺、かすみの事が好きだし」  
「本当?もう一度言って」  
「す、好きだよ、かすみ」  
「もう一度!」  
「好きだ!かすみ!」  
「嬉しい!ボクも好きだよ、元治。ああ、早く来て」  
お互いの気持ちを再度確認しあった後、俺たちはベッドへなだれ込んだ。  
そして、緩やかな時の流れの中で愛し合う。  
「ああーッ!元・・・は・・る」  
かすみは俺のナニを受け入れたとき、がくがくと震えていた。そして、背中に  
爪を立て破瓜の痛みに耐える。  
「かすみ・・・」  
俺はかすみをなるべく優しく抱き、果てた。印象的だったのは、シーツに  
ついた処女の証。それは、お互いが間違いなく純潔だった事を示すように、  
赤々と染まり、消えなかった。  
 
 
それより半年後、俺はいつもの通りかすみと一緒に過ごしていた。  
いや、厳密に言うともう一人いる。  
「だいぶ、お腹目立ってきたなあ・・・」  
そう言って膨らんだ腹をさするかすみ。手にはうみゃい棒を持ち、時折  
カリカリと小気味良い音をさせている。  
「もう、暴れるのか?」  
「うん。へへへ、あたしに似たのかな?」  
かすみは妊娠していた。勿論、お腹の中にいる子供の親は俺。半年前、  
処女と童貞を喪失したあの日の一撃が、大当たりしてしまったらしい。  
「学校休むか?」  
「ううん。行こう。一緒に!」  
かすみの妊娠が発覚したとき、互いの両親は怒り狂い、学校は大騒ぎ  
となった。二人とも退学は間違いなし、と覚悟していたのだが、意外にも  
俺たちを庇ってくれたのは、あの鬼軍曹と呼ばれる鬼瓦先生であった。  
「子供が出来たって、勉強は出来る」  
鬼瓦先生はそう言って、校長や教頭を説き伏せてくれたそうな。だから、  
俺もかすみも相変わらず高校生のまま。  
「手、繋ごうよ」  
「ああ。カバンは俺が持ってやる」  
結局、俺たちは両親の援助もあって、同棲する事となった。高校生が  
同棲してどーせいっちゅうねん!との見解もあったが、もはや俺たちは  
離れられない。だから、借りたアパートから通学するのが、俺たちの  
日常になっている。  
 
「ねえ、元治」  
「なんだい?」  
二人は手を繋いで、アパートを出た。傍目から見ると、お腹の大きな女子  
高生の姿はかなり奇妙である。しかし、俺たちは気にしない。  
「子供の名前、ボクがつけていい?」  
「ずるいぜ。俺だって、色々考えているのに」  
かすみと俺は、にこやかに争った。こういう争いなら大歓迎とばかりに。  
「あっ、コンビニ寄っていこうよ」  
かすみが指差す方向には、見慣れたコンビニがある。そう、あそこには  
うみゃい棒がある。俺たちの仲を取り持ってくれた、偉大なる国民食が。  
「キャラメル味があればいいな」  
「サラダ味もね」  
俺とかすみはそう言って互いに見つめあい、朝もやの中、コンビニへ向かっ  
て・・・否、未来へ向かって歩き出したのであった・・・・・  
 
おちまい。  

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