――――最近、よく夢を見る。夢ってのはその当人の精神状態とか…  
まぁ何かよく分からないけどその人の状態によって見る夢もそれに関係してるい夢を見るらしい。  
あ、ちなみに今言ったのは俺の知識じゃないぜ?テレビでたまたま見たのを抜粋して読み上げただけだ。  
 夢ってたまに「あ、これ夢だ」って分かる時あるよな。あれは不思議なもので、夢って分かっててもなかなか起きられない。  
だから誰かに起こしてもらうか、自力で頑張って起きるか。俺はどっちかって言うと誰かに起こしてもらう派だ。  
目覚ましとか最近は凄い性能のがあるけど、所詮は機械だから俺の場合起きれりゃしない。  
誰かに起こしてもらうのが一番手っ取り早い方法だと俺は考えて―――――バコッ!!  
 「痛って!」  
痛みと共に俺は目覚めた。頭から入った痛みがつま先から飛び出していき、機能停止していた脳が正常に動き出す。  
ただ、俺の脳のエンジンはどうも旧式らしく回転数が少ない。ま、簡単に言や馬鹿だってことなんだろうけど。  
 「やっとお目覚めか横山…?いい身分だよなぁ、お前今回の中間平均点何点だったっけか?ん?」  
起きて早々ガタイの良い筋肉質な男の顔が目に入る。こいつは……そういや保健の授業だったな。  
しっかしいつ見ても顔でけぇな〜、ほんとに人間なのか?原人の生き残りじゃないのか?  
故にコイツには異名があった。本名は片山というのだがあまりにも原人…いや、現代ではゴリラに相当する形相なので  
『ゴリ山』と呼ばれていた。何が異名なんだか分からんくだらない名前だ。誰か知らないが、正直センスに欠けると言うかなんと言うか…  
まぁ、高校生の発想なんてそんなもんだろう。くだらなく単純だから面白いっていう利点もある。  
コイツの顔など見たくも無く、関わりたくないのだが…運悪くコイツが俺の担任教師でもあるのでそうもいかなかった。  
 「まぁまぁ先生、勉強だけがその人の価値を決めるものじゃないっしょ?人間性とか、そいつにしかない才能とか。  
つまり!人を判断する要素は勉強以外でも――――っ!」バコッ!!  
再び頭から入った痛みがつま先へ向かい飛び出した。それと同時に、とめどない笑い声が俺の四方360度を埋め尽くした。  
 
*  
 
 「やっとお目覚めか横山…?いい身分だよなぁ」  
「ちッ…うっせぇ、茶化すんじゃねーよ」  
悪友の恭介だった。コイツは俺が奴に怒られる度に今みたいに似てないモノマネをしてくる。  
似てないのでほんっとワザとらしくて腹に立つ野郎だ。一度ブン殴ってやろうか。  
「まぁ、そうカッカすんなって。確かにアイツはムカつくよなぁ、言い方が嫌味でさ。  
あんな図体してるくせにやる事は妙に女っぽいところなんかもう気持ち悪っちゃありゃしないっての!」  
 よく喋る奴だ。こいつとは子供の時からの付き合いだから分かる。とにかく人の話をまーったくこれっぽっちも聞かない奴だ。  
相手が誰であろうとお構いなし、とにかく喋って喋って喋り通す!何考えてんのか知らないけど、これがコイツ流の会話術らしい…。  
 
「オイ、ちょっと黙れって。聞いてんのかよ、喋るのやめろって」  
予想通り注意しても聞く耳持たずだ。それどころか「もうちょっとだけ!な?」などと訴えてくる。  
何がもうちょっとだ、毎回そのもうちょっとが長ぇんだっての。ほんと、呆れるしかねーよ…  
 「彼方彼方、おい聞けって。これから言うのが一番面白いんだよ。聞き逃してももう話してやんねーからよーく聞いとけよ?」  
「別にいいよ、お前が黙ってくれれば何でも」  
再び無視された。俺の言葉など聞かずに嬉しそうに楽しそうに愉快そうにトークを続けてきた。  
「実はさ実はさ!ゴリ山の野郎3組の担任の白樫先生になんと!…恋をしちゃってるらしいんだよこれが!!」  
「……」  
くだらない話のネタが飛び出した。んなもんどーでもいいじゃんか、ゴリ山が白樫先生に恋しようが何しようが…興味ねーっての!  
聞いて損した…すぐに頭のメモリーから情報を削除せねばならない。  
こんなくだらない情報で俺の少ないメモリーを埋められちゃたまったもんじゃない。削除削除っと…  
 「とまぁ馬鹿話はここまでで。本題だ。」  
「何?本題?」  
「そう、本題。お前に言わなきゃいけないことがあってな。」  
「どうせ、またくだらない話なんだろ?」  
すると恭介はニヤけていた表情を一転させ、真剣な表情でじっと俺の事を見ながら口を開いた。  
 「伝言を頼まれたんだ。お前宛にな」  
「は?伝言?」  
「そう、お前にだ。その伝言なんだがな『ただいま』だってさ」  
「…は?」  
キョトンとしざるを得なかった。意味がまったく分からんうえに意味深だ。一体誰からの伝言だ?この学校の人?男?女?  
様々な疑問がフワフワと宙に浮ている。だが聞いても恭介はただ『明日になりゃ分かる』としか言ってくれず  
結局のところ、疑問を解決する為の答えは教えてはくれなかった。  
 
*  
 
 何度も何度も伝言とやらを復唱しながら俺は下校していた。今日は珍しく俺での一人での下校だ。  
いつもは恭介と帰っていたのだが、最近どうも彼女が出来たらしい。  
つい最近振られたばかりだったのだがものともせず猛アプローチしてゲットしたらしい。  
俺の人生武勇伝がどうのこうのとこの前熱く語っていたのをふと思い出した。  
 「―――にしても、伝言で誰からなんだ…?ただいま、かぁ…まったく意味が分からん」  
再び頭の中は伝言の事で一杯になった。  
家に帰っても変わらずだった。飯を食ってる時も、風呂に入ってる時も、テレビを見ている時も、歯を磨いてる時も。  
とにかく、常にその事が気になって仕方がなかったのだ。  
 「明日になれば分かるかぁ…ほんとだろうな…?」  
最後まで恭介の言葉を疑っていた。  
だがそのうち睡魔に襲われ、俺は抵抗せずに睡魔に体を預けた。  
疑問の答えは明日以降に持ち越しとなった。  
 
  不思議な夢を見た。けど、どんなのだったか具体的には憶えていない。  
『ただいま』と、誰かに言われた事だけが記憶に新しい。一体誰だったんだろう?  
それも含めすべてが今日分かるはずだ。恭介の話が本当だったらの場合だけどな。  
 不意に時計に目をやる。ぼんやりとしていた視界が段々と開けてきた。徐々に時計の針にピントが合い始める。  
時計の針は俺が家を出る時間の10分後を指していた。毎日遅刻ギリギリにつくように家を出ていたので10分の遅れは確実な遅刻を意味していた。  
 「やっば!!」  
慌てて家を出る準備をする。テーブルの上の食パンを手探りで掴み、口に銜え勢い良く玄関を飛び出る。それはどこかのベタなドラマのような光景。  
この後どこかでヒロインと正面衝突したりするんだよ。んで、何だかんだ色々あり、最終的には付き合ったり結婚したりすんだよな。この前の番組のオチはそうだったし。  
しかしながら当然そんな事は起きるはずが無い。所詮テレビドラマ、フィクションな話だ。現実にはありえんありえん。  
大体、同じ学校に向かってるのに正面衝突する意味が分からん。ああいうのってそういうところが手抜きだよなぁ。ま、どうでもいいんだけど。  
 そうこうしてるうちに学校に着いた。予想通り誰とも衝突しなかった。遅刻1分前、家からダッシュした甲斐があったようだ。あんなに走ったのは何年ぶりだろうか?  
とりあえず遅刻しなくてよかった…あと1回でも遅刻してたら生活指導を受けなければならないのだ。過去の遅刻回数は3回。4回でゲームオーバーだ。  
 「もう遅刻出来ねーな…」  
ボサボサの髪を少し整えてから教室に向かう。途中ゴリ山とすれ違い、軽く挨拶した。ゴリ山は『ほう、今日は遅刻じゃなかったんだな』と見下したように笑いながら言い放ち去って行った。  
朝っぱらムカつく野郎だ。ほんとモチベーション下がるよ…  
 教室は幾人もの会話や、携帯電話での音楽再生による音で埋め尽くされていた。いつもと同じ光景、かと思ったのだが一ついつもある光景が今日に限って見られない。  
恭介がまだ来ていなかった。このクラスで一番のお喋り君の声が聞こえてこなかったのはこのためだった。  
 「珍しいな…休みか?それとも遅刻か?」  
自分の机に頬杖をつき窓の外をぼんやり眺めながら考えてみる。あいつに限って遅刻はないだろうし…昨日までピンピンしてたから休みってのも無いと思うし…  
まぁ、別にいいか。あいつがいなけりゃちったぁ静かになんだろうし。  
うんうんと頷き納得。その事を考えるのはもうやめにしよう。つーかゴリ山遅ぇな。もうとっくにHRの時間過ぎてんじゃねぇか、時間に人一倍うるさいあいつがねぇ…  
こりゃ何かあったな。勝手な推測だけど。  
 
「おはよう」  
不意に声を掛けられた。遅い反応の後、声のする方へ顔を向ける。  
 「凪か…」  
声の主はクラスメートの冬月凪だった。凪は俺の反応が気に食わなかったのか、少し不機嫌そうな表情を浮かべている。  
 「凪か…って、ちょっと酷いんじゃない?折角人が親切に挨拶したのに。普通、返すのが常識なんじゃない?」  
「悪かったな非常識人間で」  
冷たく言い返しまた窓の外へ顔を向ける。凪は顔、性格、スタイルが共に完璧な女の子だったので男子生徒に絶大な人気を誇っていた。  
故に、凪と会話を交わすと周りの男子に冷たい目で見られたり闘争心剥き出しの表情で見られたりした。この前なんかトイレで手洗ってたら『調子に乗るなよ…?』とか言われた。  
まったく、怖い怖い連中だ。だからあんまり凪とは話したくなかった。  
凪が嫌いとかそういうわけじゃなくて、ただこれ以上凪と仲良しこよしをやってると面倒な事になりそうだったから。それはどうしても避けたかった。  
 ――――バタバタバタバタ…ヒュンヒュンヒュン…  
ヘリコプターが低空で飛んでいる。それになんかこっちに向かってきている。  
「ねぇ、何か近づいてきてない…?あのヘリコプター」  
凪が不安気な声でヘリコプターを指差しながら言う。まったくもって同感だ。明らかにこちらへ向かってきている。  
教室内の他の生徒もそれに気付き、窓へ押し寄せてきた。「何アレ…?」「オイオイ、何かのショーか?」などとざわつき始めた。  
するとヘリは校庭のど真ん中に着陸した。ざわつきがさらに大きくなる。  
ヘリから4,5人の黒い服を着た連中が現れた。そして一人、ロングの髪をなびかせたうちの学校の制服をきた女の子が黒い服を着た連中に囲まれながら姿を現した。  
そのまま校舎へ向かってくる。校長を始めとする職員の連中が慌しくそれを出迎えている。ゴリ山の姿も伺える。  
何やら少し会話を交わした後案内されるように校舎へ入っていく。校舎へ入ったところで姿が見なくなった。  
それと同時に放送が入る。  
 『生徒の皆さんは教室で待機していてください。くれぐれも教室内からは出ないように』  
「…何だぁ?」  
一体何が起きているのか理解出来ずにいた。それは俺だけでなく、全校生徒が同じ境遇であろう。  
耳に入る大きなざわめきがウザったくて仕方が無かった。  
 

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