私は昨日、斎藤夏姫から五嶋夏姫に名前が変わり私の初恋の人であり、恋人をすっ飛ばして許嫁になり夫婦になった愛しい人、五嶋雅之の妻になった。  
雅之は私にとって運命の人だった。本当に幼いときから私の側には雅之がいてくれた。  
雅之とは幼稚園から一緒だった。  
 
小・中・高校と一緒だったが雅之の隣に居続けることは並大抵の事ではなかった。  
雅之の頭のよさは際立っていた。  
雅之の成績が小・中・高校と二桁になったのを見たことがない。  
私は自慢ではないが上の中位の成績だった。  
大抵の高校ならA判定を貰えただろうが雅之の受けると言った高校は私ではB判定がやっとだった。  
雅之と同じ高校に行きたいがために私は昼夜を問わず勉強した。そんなことは苦にならなかった。  
全ては雅之の近くに居たいがために。  
でもそんなことよりもっと大きな事件があった。  
中学1年の夏休み明けのこと。  
雅之が話しかけてきたときに、違和感に気付いた。  
小さな事だが私にとっては大事件。  
雅之が私のことをそれまで呼んでいた「夏姫ちゃん」から「斎藤さん」に変わったのだ。  
それだけじゃなく雰囲気がどことなくよそよそしくなった。  
私は必死に理由を考えたが結局分からなかった。  
 
 
大学で初めて雅之と別の学校に通うことになってしまった。  
雅之には言わなかったが第一志望はもちろん雅之と一緒だったが私は落ちてしまった。  
結果雅之は都内にあるK大学の法学部に進み、私はJ大学の法学部に通うことになってしまった。  
 
 
 
大学に落ちた時はこの世の終りだと思った。  
私は暫く塞ぎこみ体重が八キロも落ちた。  
そんな状態の時、私を助けてくれたのは雅之だった。  
高校を卒業して三日たったある日。私は自己嫌悪と悔しさで家に篭っていた頃だ。  
急に雅之から電話が有った。  
今でも覚えている。その当時私が好きだった画家の展覧会が上野で行われていた。  
それに誘ってくれたのだ。私は暫く出していなかったよそ行きの服を引っ張りだしてリップを塗り家を飛び出すと雅之が門の所に立っていた。  
三日ぶりに見た雅之の笑顔を見たらなんだか閉じ籠っていたのが馬鹿みたいに思えた。  
雅之はそんなつもりはなかっただろうけど私にとっては初めてのデートつもりだった。  
 
雅之に惚れていた私が言っても信憑性が薄いけど彼はとてもハンサムだ。  
高校の時は私が目を光らせていたから彼は気付きもしなかっただろうが彼は女子から人気があって彼を慕う女子は少なくなかった。  
そのせいで雅之が大学で恋人が出来やしないかとハラハラしていたが、すぐに名案を思い付いた。  
定期的に食事や遊んだりすることにしたのだ。  
お互い電車通学で偶然を装いながら雅之の帰り時間になると彼の学校の最寄り駅で待ち伏せしてみたり、金曜日は必ず一緒に夕御飯を食べたり。正直、雅之のそばに居るためならストーカーだろうがなんだろうがするつもりだった。  
 
その努力が実ったのかどうかは解らないが彼は大学時代一度も彼女をつくらなかった。  
なぜ言い切れるかと言えば雅之と同じ学校に行った近藤くんにそれとな毎月聞いていたのだ。  
それでもその四年間は不安でしょうがなかった。  
 
 
大学を卒業し雅之は彼のお父様が経営なさっている会社に就職した。  
私も親の会社に就職した。雅之もそうだっらしいけど私は親の会社に就職するつもりはなかった。  
冷やかしのつもりで受けたら受かってしまったのだ。  
親にばれると厄介だと思ったがいつまでも隠し通せるわけがなく入社三日前にばれてしまった。  
父はしつこく花形である秘書課に入れようとしたが私は突っぱた。  
社会人になって親に干渉されるのも嫌なので独り暮らしを始めた。  
順風満帆の社会人生活とは裏腹に雅之との距離はどんどん遠ざかり、とうとう週一回金曜日に会うだけになってしまった。  
 
 
私にとって金曜日は何事にも換えがたい日になった。それでも雅之との関係は一向に進展しなかった。  
 
 
そうこうしている内に私は社会人生活4年目の春を迎えていた。  
この頃になると私は心のなかで雅之を諦め始めていた。  
毎週金曜日に会う雅之は一緒に飲んでいてもアルコールは頼まず、ただ淡々と私の愚痴に付き合うだけになっていた。  
きっと呆れてる、めんどくさいって思ってる。そんな悲しい思い込みが暴走して私は雅之にこれでもかというほどに迷惑をかけた。  
具体的には毎回ベロベロになるまで酔って彼に背負って家に送らせた。  
彼は一度も私を襲うことはなかった。彼は誠実な人だから当然だけどそのころの私にはどうしても「お前なんか興味無い」と言われてる様な気分だった。  
土曜の朝に一人で目覚める度に枕に顔を埋める日々が続いた。  
勝手に彼を試して答えは解っているのにそれを否定したくて・・・・・・そんな自分が嫌いだった。  
それでも彼は一言も文句を言わないで私のとなりに居てくれた。  
 
私は雅之がいつ「もう会うのを止めよう」と言われてもいいようにと、  
独り暮らしの私の部屋にあった彼に関連するような物(例えば彼の好きな蒼色のマグカップとか好きなブランドの服)を少しずつ整理していった。  
それでもその日が来ないようにと必死に願っている自分もいた。  
私にはもう何をしても彼を捕まえる事は出来ないような気がしてならなかった。  
彼を思わせるような物を周りに置いていたらいつまでも彼から離れられないし辛すぎる。  
 
でもどうしても整理出来ないものがあった。  
高校卒業のとき雅之と一緒に写った校門前での写真だ。  
これだけはどうしても整理出来なかった。  
 
 
 
そんな私に物凄いチャンスがめぐってきた。  
私の父が経営する会社と雅之のお父様が経営する会社が資本提携をすることになったのだ。  
私には最後のチャンスに感じられそれにアイデアがあった。  
それは私と雅之のお見合いである。  
と言ってもただのお見合いではない。そもそも私と雅之は顔見知りだからお見合いにならない。  
全ては私が仕組んだのだ。  
同時に悔しくはあったが父に感謝せざるおえまい。  
父が資本提携をしなければこれは廻って来なかった。  
父には見合いをしたいと言い相手の名前を告げた。  
すると父は呆れたような口ぶりで  
「なんだ、まだ雅之くんと出来ていなかったのか。私はてっきり結婚するものだと思っていたよ。」  
と言われてしまった。  
 
なんとでも言え。私には最後のチャンスなんだ。構っていられるか。  
 
父にそう言ったあと雅之のお父様に会いに行った。  
 
私の思いと事の運びを伝えるとお父様は  
「なんだい、夏樹さん雅之はまだプロポーズしていないのかい!まったく我が息子ながらなんて不甲斐のない。  
あなたのしたいようになさい。なにお金は私が出すから心配は要らないよ。あの馬鹿息子を捕まえてやってくれ。  
あの馬鹿息子は本当の自分が見えていないらしい。」  
 
 
こうしてお膳立ては揃った。  
 
 
雅之の性格からして親から言いつけられたことは反発するだろう。  
それが狙いだ。  
なし崩しでお見合いに引っ張ってくる。  
彼の事だから最後の抵抗とばかりに写真や経歴なんて目を通さないだろう。  
 
 
 
私はこのお見合い事態、二人の関係を一歩でも進められたら、せめて友達以上になれればよしとしてこのお見合いに望んだ。  
お見合いが行われる週の金曜日は雅之の顔をみることが出来そうになかったのでキャンセルした。  
 
行けないとメールしたときの雅之の返信は  
「そうか、じゃあ来週にな。」  
だった。  
正直来週があるかどうかはお見合いにかかっていた。  
 
 
 
お見合い当日。  
大好きだった祖母が私にくれた深い蒼色の和服を来ていった。  
雅之の好きな色ということもあるが、私はこの深い蒼色の和服が大好きだった。  
それにこれを着ていれば、何故かは解らないけど駄目だったとしても涙を流さなくて済むような気がした。  
 
 
仲人さんに通されて雅之の居る座敷に通された私を見た雅之は鳩が豆鉄砲でも食らったような顔をしていた。  
 
 
まぁ私も演技ではあったが驚いてみせた。  
 
暫くして仲人さんが引っ込むと雅之は外に出ようと行った。  
 
 
 
 
外に出た雅之は私の和服を似合っていると誉めてくれた。  
それだけでも嬉しかったが彼が次に言った言葉は嬉しい反面、面を食らってしまった。  
「結婚しないか」  
そう彼はいった。  
私はきっと世界で一番間抜けな顔をしていたに違いない。  
思わず出た言葉が  
「はぁ?」  
だった。  
彼は誤解したらしく慌てて取り消そうとした。  
私は驚いていたがこれは逃せないチャンスということは分かっていた。  
・・・分かっていたけどひねくれた私はどうしても彼の言葉が信じられずに思いとは裏腹な言葉が勝手に口から溢れる。  
 
私は彼に好きな人がいないのか、告白しなくていいのか?  
などと言っていた。  
彼は好きな人がいる、告白はしてないという。  
その場で手をついてしまいそうな脱力感に見舞われた。  
当たり前だ。何のモーションも見せていないただの幼馴染みだ。私を好きなわけがない。  
お見合いさえなければその人に告白していたのだろう。責任感が強いから私に恥をかかさないように結婚しようと言ったのだ。そうに違いない。  
彼の好きな人が憎くて憎くてしょうがない。  
私が今までの人生を賭けても手に入らない物をその人は手にしているのだと思うと気が狂いそうだった。  
泣きたいの堪え私は告白してこい、振られたら私が拾ってやるなどと偉そうにいっていた。心の中で言おう言おうとしていた言葉は遠ざかり、真逆の言葉が出ていった。  
「好きです、私と恋人になってください。」  
この一言が言いたいがために努力してきたのに。  
頭の中を後悔が駆け巡っていった。  
それ以上何も言えずにうつ向いて黙りこくっていた私に彼はこういった。  
「僕が好きなのは夏姫、君だ。」  
耳を疑った。  
それ以上に嘘を吐かれたと思った私は彼を責めた。  
そんな嘘は要らない、なにが楽しいのか!と。  
私は今までの思いが故に彼の言葉を鵜呑みに出来るほど余裕がなかった。  
それでも彼は私を好きだと言ってくれた。  
結婚しようとも。  
 
私は思わず思いを吐漏していた。  
彼は私を胸に抱き寄せキスしてくれた。  
私の今までの苦労は全て報われた。  
神様は今までの試練のご褒美に最高のプレゼントを残しておいてくれたらしい。  
 
 
しかし私の受難はまだ先があった。  
彼が私を求めてこないのだ。  
雅之と過ごす夜は幸せに満ち溢れそれだけでも幸せになれた。  
しかしこれから夫婦になるというのにこれはマズイと焦り始めたのが今からちょうど四ヶ月前。  
私の苦労が報われてから二ヶ月後の事だ。  
最初のうちは疲れているのだと思い込むようにしていたがだんだん不安になる。  
 
今まで友達だったのだ、無理もないかもしれないことだがどうやってHな気分にさせればいいか分からなかった。  
友達から聞いたサイズオーバーで私が着るとダボダボの雅之のTシャツを着て(下着はパンティーだけ)で彼を向かえたりしたがあまり効果を感じることが出来なかった。  
焦りは不安になりとうとう雅之に聞いてみた。  
何故、私を抱かないのか。  
彼らしい答えだった。  
私を心配していたからだった。  
性癖なんてそんなことを含めて丸ごと彼が好きなのに。  
彼は私を大事にしすぎるがあまり抱けなかったのだ。  
なんて優しい男性なのだろうか。  
私は彼を解き放つために彼の言葉をことごとく否定し、セックスをしようといった。  
 
 
解き放たれた彼は私を抱いた。  
何度も何度も繰り返し私を攻める快感と幸福の波に私は溺れた。  
 
 
 
 
 
そろそろ彼が起きる時間だ。  
朝御飯つくらなきゃ。  
今日は土曜日。  
一週間のなかで一番嫌いな日だったけど、今は一番好きな日だ。  
彼を一日中好きなだけ独占出来るのだから。  
私が土曜日に枕に泣き顔を埋める事はもうないだろう。  
 

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