体育館は四つの試合場に分かれ、それぞれで試合が行われていた。  
 最神学院入学試験、実戦形式の実技試験の部だ。  
 
 受験生、高円寺陸(こうえんじ りく)の頭上スレスレを、高速  
の蹴りが通り抜けた。茶色の癖毛が風圧で揺れる。小柄な身体を、  
白い剣道着に包んでいた。  
「ひゅうっ……」  
 鋭い目つきの童顔は、いつもの温厚そうな可愛らしい顔つきとは  
まるで別人だ。  
 屈んだ体勢のまま、陸は木刀を素早く横薙ぎに振るった。ちょう  
ど、蹴りを放った白い学生服の相手と逆回転の弧を描く。  
「くっ!」  
 対戦相手の端正な顔が苦痛に歪む。  
 しかし、早かった分軽かったかと陸は内心舌打ちした。さらに追  
撃を試みる。  
「たぁっ!」  
 だが、その攻撃は相手の蹴りに弾かれた。  
 ふわり、とうなじの辺りで一括りにした長い黒髪が揺れる。  
 がら空きになった顔面に、足の先が迫ってきた。  
 陸はそれを、身体を仰け反らせて回避した。  
 
「当てにくいな……小さいだけにっ!」  
 さらに、二撃三撃目を足を使って避け、間合いを取る。  
 防戦一方に回ってしまい、陸はなかなか攻撃を放てない。  
「大きな……お世話だよっと! あー、もうムカつくぐらい足長い  
し……とわっ!」  
 足を掬われ、陸の身体が軽く宙に浮いた。  
 もちろん、その隙を逃すほど、相手は甘くはない。  
「掛かった! 『万鷹蹴(まんようしゅう)』っ!」  
 無数の蹴りが陸に襲い掛かった。陸はとっさに木刀を突き出した  
が、それでもいくつもの蹴りが身体に突き刺さる。  
「ぐ、うっ……うううっ……」  
 膝をつくのをかろうじて堪えた。  
 その陸に、相手は勝負を決めようと、一気に間合いを詰める。  
「これで……とどめっ!」  
 陸は顔を上げた。  
 痛みに顔をしかめながらも、その目はまだ死んでいなかった。  
「まだぁっ! 静心流――『大騎剣(たいきけん)』!!」  
 相手の渾身の蹴りへの、溜めた必殺技でのカウンター。  
「なっ!?」  
 ――二人は弾き合うように吹っ飛んだ。  
 
 体育館の床に、同時に叩きつけられる。  
 ……しばらくして、かろうじて木刀を杖に立ち上がったのは陸だ  
った。  
 すべての戦いを見守っていた審判は、手を上げた。  
「勝負有り! 勝者、高円寺陸!」  
 その声を聞いて、陸はようやくその場にへたり込んだ。  
「ふあぁ……危なかったぁ」  
 よろよろとした足取りで、まだ倒れたままの相手に近づいた。  
「くっ……?」  
 意識は失っていなかったらしい。  
 陸は、手を差し伸べた。  
「大丈夫だった?」  
 
 
「どうだった、清夏」  
 学院長である最神秋光(もがみ あきみつ)は、にやりと唇を歪  
めた。  
 和服姿のひげ面の老人だ。  
 しかし肉体はいまだ衰えず、隆々とした鍛え上げられた筋肉が服  
の上からでも察することが出来る。  
 
「……強かったです、お爺様」  
 ついさっきまで、陸と戦っていた最神清夏(もがみ せいか)は、  
小さく息を吐いた。  
 乱れた髪を、手で掻きあげる。  
「だろうな。ふむ、両方合格、と」  
 評価表を見、秋光が呟く。  
「二勝一敗か。悔いが残ります」  
「なら、正式に入学してから決着をつけい。我が学院は、挑戦拒否  
権は認めとらん」  
「はい、お爺様……あ?」  
 清夏と秋光の頭上を、受験者の一人が飛んで行った。  
 落下地点を眺めてから、秋光は視線を戻した。  
 すなわち、相手をぶっ飛ばした少年に。  
「ふむ。今年も活きのいいのが揃っているようだな。あれは……榊  
大輔(さかき だいすけ)、か。憶えておこう」  
 
 
「大輔、お疲れー」  
 試合を終えた榊大輔のもとに、陸が駆け寄ってきた。  
「おう、お前の方はもう終わったのか?」  
 頷き、大輔の隣に座る。  
「うん。で、大輔はどうだった? さっきのは見てたけど……」  
 大輔は、陸に三本指を立てて見せた。短く髪を刈り上げた、中肉  
中背の少年だ。  
「三戦三勝。ま、実技の方は不安ないだろ」  
「なるほどね。じゃあ、後は筆記だけか」  
 陸は、楽しそうな笑みを大輔に向けた。  
「うっ……い、今更言ったってしょうがないだろ!? もう終わっ  
たんだから!?」  
「あはは。まあね。でも、心配要らないよ。こっちの試験はほとん  
ど形式的な物だって言うから、名前さえ書き忘れてなかったら……  
うん、それが不安か」  
 少し、真剣な表情になる。  
「お、お前なぁっ!?」  
「冗談だよ。さすがに、それはないでしょ? じゃ、帰ろ」  
 陸につられ、大輔も渋々と立ち上がった。  
 
 
 大き目のガクランに着替え終えた陸と並んで、大輔は最神学院の  
正門に向かって歩く。  
「そういや、お前は試験、どうだったんだよ」  
 
 昼を過ぎ、腹が減ったなぁと思いながら大輔は陸に尋ねた。  
「ん? ボクも三戦三勝。最後の人がすごくてこずったなぁ」  
「へえ、お前がてこずるなんて、よっぽどなんだな」  
「大輔でも危ないよ。特に足技が多彩でねー……あ」  
 陸の足が止まった。  
 大輔が視線を正面に向ける。  
 そこには、白いガクランの長身の生徒が立っていた。  
「先ほどはどうも」  
 薄い唇が笑みを作る。  
「?」  
 誰、と大輔は表情で陸に尋ねた。  
「さっき言ってた人」  
 つまり、陸が三人目に戦った相手か。  
 陸の答えに、その人物は二人に近づいてくる。  
「最神清夏だ。苗字から察してくれると、話が早い」  
「学院長のお孫さん?」  
「うむ」  
「あ、名乗るのは二度目になりますけど、高円寺陸です。試験に受  
かっていると、同級生ですね。よろしく」  
 陸は、裾で手を擦ると清夏に向かってそれを差し出した。  
 
「? あ、ああ……あの試験内容なら、心配は要らないだろう。僕  
の祖父も言ってい……ああ、これは内緒で頼む」  
 清夏は、陸の手を握り返した。  
「うん。よかったね、大輔」  
「ああ」  
 大輔は清夏から顔を外さずに、頷いた。  
 見とれている訳ではなく、技量を測っているのだ。  
「それと、敬語はいらないぞ。同じ歳だからな」  
 清夏も大輔の視線を真っ向から受け止め、不敵な笑みを浮かべた。  
「大輔? どうかしたの?」  
 大輔は、陸の高等部を軽くはたいた。  
「……お前、無防備すぎ。最神学院の生徒だぞ? いきなり利き手  
預ける馬鹿がいるか」  
「えぇっ!? で、でも、せっかく友達になれたんだし。ねえ……  
ええと?」  
 清夏の顔が、途端に無防備なものに変わった。  
「せ、清夏でいい」  
「ん、じゃあ、せーか。よろしくね」  
 ぶんぶん、と陸は握った手を振ると、ようやくそれを離した。  
「榊大輔だ」  
 
「繰り返すが、最神清夏だ」  
 ちなみにこの二人の最初の握手は、当然ながら利き手同士ではな  
かった。  
 
 
 繁華街。  
「お待たせっ」  
 陸の声に、先に私服に着替えて合流場所で待っていた大輔は視線  
を向けた。  
「お、おう」  
 そして、そのまま目を逸らしてしまう。  
「どうかした?」  
「いや」  
 昼下がりの空は青い。  
「むう、やっぱりスースーするよね、スカートって。前の服に戻そ  
うか」  
「ガクランでデートってのもどうかと思うぞ。それに、まあ、なん  
だ」  
 ようやく落ち着いた大輔は、視線を陸に戻した。  
 
 茶色をしたタートルネックのセーターに赤のジャケット、ミニス  
カートから突き出た足は黒のストッキングに包み、ブーツを履いて  
いる。  
 顔も、薄く化粧をしていた。  
「似合ってる?」  
「……っ!!」  
 陸は動揺しまくる大輔の腕に、自分の腕を絡めた。  
「よーし、それじゃ、張り切って行ってみよっかー♪」  
 
 
 夕方になり、ようやく大輔は自分の家に到着した。  
「……お前、マジで買い物多すぎ」  
 両手の荷物を玄関に置き、荒い息を整える。  
「うん、そりゃボク、女の子だもん。それでも少ない方だよ。服な  
いもの」  
 ブーツを脱いだ陸は、家に上がった。  
「まあ、当分、使う機会ないもんな」  
「三年間、かー……もったいないよねー?」  
 しみじみと言い、大輔に視線を向ける。  
「悪ぃ」  
 
 男子校である最神学院に進学する、と言い出したのは大輔の方だ。  
 もっとも、それについて行こうとする、陸も陸だが。  
「いいよ。その分、今日たっぷり着替えたし。大輔も楽しめたでし  
ょ?」  
「女の買い物は面倒くせーって思っただけだ」  
 言いながら、大輔も靴を脱いだ。  
「あ、そんな事言うと、ご飯作ったげないよ? その荷物の大半は、  
材料なんだから。あと、それ台所に置いたら、お風呂沸かしてね」  
「あ、ああ」  
 お風呂、という単語に、大輔が緊張する。  
 ちなみに今日は、大輔の家も陸の家も留守だった。  
 緊張は陸にも伝わり、それまで軽快だった彼女の足取りも停止す  
る。  
「…………」  
「……どうする?」  
 大輔の言葉に、陸は困ったような笑みを浮かべた。  
「……どうしよっか?」  
「……風呂入ったらお前、着替えるだろ?」  
「うん」  
 それは、そうだ。  
 
 しかし、風呂に入ったら……大輔は首を振った。  
「じゃあ、やっぱり今からだ。これからの三年間、そんな姿は拝め  
ないからな」  
 大輔は、陸に近づいた。  
「まだ、明るいよ?」  
「だから、よく見れるんじゃねーか」  
 廊下のど真ん中で、大輔は陸に口付けた。  
 
 
「あははー……き、緊張するね」  
 大輔のベッドに横たわった陸は、ぎこちない笑みを浮かべた。ジ  
ャケットは既にハンガーに掛かっている。  
 大輔の顔も、無理やり笑みのまま強張っていた。  
「同じく……はー……やべ。乱暴になっちまうかも」  
 深々と息を吐いて自分自身を落ち着かせた大輔は、陸に覆いかぶ  
さる。  
「そんな口利けるうちは、まだ大丈夫だよ……あっ」  
 大輔の手が胸に触れ、陸の身体が固まった。それをほぐすように、  
大輔の手はマッサージのように陸の身体中を這い回る。  
「なんつーか、あれだな。相手が緊張してる分、こっちは楽になる  
っていうか……」  
 
 ある程度落ち着いたところで、大輔は陸に顔を寄せた。  
 どちらからともかく、唇が重なり合う。  
「ん……それ、ずるい……服、どうしよ」  
「脱がしてみたいんだが……」  
 セーターだからなぁ……と思いつつ、裾から手をしのばせる。  
「大輔の……へんたーい。でも、脱がしちゃったら、あんまり意味  
が……んん」  
 小さく、舌と舌が触れ合う。その一方で、大輔の右手が陸の素肌  
を這っていく。  
「口、開けて……」  
 大輔の言葉に、陸は従順に従った。  
 開かれた唇に大輔の舌が侵入して、彼女の口腔内を探った。  
「んぅっ……は、ぅん……大輔…ボクもぉ……」  
「いいぞ……そうしてくれると、俺も気が楽だし……負けたくなく  
なる」  
 とろんとした目で、今度は陸の舌が大輔の口の中に入ってきた。  
 口内に溜まった唾液が音を鳴らす。鼻を鳴らして求めてくる陸に  
それを送り込むと、彼女の喉が小さく動いた。  
「そうやってすぐに勝負に絡めるのは……ん……喋るの、しばらく  
やめ……んむ……ん、んんっ……」  
 
 大輔の右手が、陸の乳房に触れた。  
「やっぱ、男と女だと肌も違うんだな」  
 大輔はさらに右手をセーターの奥に潜り込ませる。  
 指先が小さな突起を捉えると、陸の身体がピクンと跳ねた。  
「んぁっ! だ、大輔、そこ、敏感なんだから……」  
「っと、悪い……ええと……」  
 混乱する大輔の脇腹に、陸の拳が軽く入った。  
「大輔、落ち着いて……」  
 小さく優しく囁く陸に、大輔は我に返った。  
「こ、これぐらいなら……どうだ?」  
 薄い乳房を手の平に包み込むようにし、その中で揉む。だが、確  
かにある柔らかな感触の中、手の腹の突起が妙に心地よかった。  
「ん……うん、いいかも……って言うか、安心する、かな……?」  
「じゃあ……」  
 大輔は、もう一方の手で陸のセーターを捲り上げていく。  
 薄っすらと朱に染まった陸の肌が、夕日に当てられる。戦いの跡  
の痣が多く残るが、それでも大輔はきれいだと思った。  
「痛くないのなら……大輔の、その、したいようにしていいよ……  
任せる」  
 陸は、赤い顔を恥ずかしげに逸らしながら、大輔に告げた。  
 
「ん、なら……」  
 大輔は、胸の先端に吸い付いた。  
「あぁっ……ん、い、いいっ!」  
 嫌がっていない。  
「ん……ん……陸、いい臭いがする」  
 陸の臭いを大きく吸い込みながら、舌先で乳首を舐め、吸い、胸  
全体を舐め上げていく。  
「ば、ばかぁ……恥ずかしいこと、言わないでよぉ……」  
「本当にそう思うんだからしょうがないだろ……すげ……くらくら  
する……」  
 自分自身は何もされていないのに、この心地よさは何なんだ。  
 大輔は不思議に思うが、それもほんのわずか。もっと陸を気持ち  
よくさせたいという、それだけに思考が支配されていく。  
「あっ……はぁっ……じゃ、じゃあ、もっと吸って……恥ずかしい  
けど……いっぱい、大輔が気持ちよくなってくれるなら……」  
 甘い声に、大輔の股間がたぎる。ズボンの上から痛いほど、圧迫  
されていた。  
「俺だけじゃ駄目だ。陸も、気持ちよくならないと」  
 手と口を駆使し、大輔は陸の胸に愛撫を施し続ける。  
 彼女自身の薄い汗と、大輔の唾液で乳房は濡れ、荒く上下を繰り  
返す。上半身の痣を癒すように、大輔の舌はそれらを舐めていった。  
 
 陸は耐え切れないのか、ギュッと大輔の身体に腕を回した。  
「充分、気持ちいいよぉ……すごいの、胸から伝わってくるんだか  
らぁ……あっ?」  
 陸が声を上げた。  
「こっちもそろそろ……」  
 スカートの中に潜んだ大輔の指が、陸の足の付け根に触れていた。  
「う、うん……触って……で、でも」  
 陸は、泣きそうな顔で大輔を見つめた。  
「でも? あ……」  
 大輔が気付いた。  
 陸のそこは、下着の上からでもはっきり分かるほど濡れていた。  
「うん……その、ね……さっきから、ずっと……こうなんだ。自分  
でも分かるぐらい濡れてて……」  
 耐え切れなくなったのか、陸の瞳から大粒の涙がこぼれた。  
「うわ、泣くことないだろ?」  
 一つこぼれると、もう止まらないらしい。  
「だ、だって、しょうがないでしょ!? 恥ずかしいんだからぁっ!」  
「恥ずかしいのは俺だって一緒だっつーの……ほら」  
 大輔は少し身体を持ち上げると、ベルトを緩めた。下着ごとズボ  
ンをずらし、自分自身を取り出した。  
 
「大輔の……?」  
 陸の目にも、はっきりといきり立った大輔のモノは見えたようだ  
った。  
「俺だって、ずっとこうなんだよ。いつ暴発するか分かったもんじ  
ゃねえ、けど、我慢してるんだからな」  
 陸の頭を撫でると、彼女はやっと落ち着いたのか泣きやんだ。  
「……ん。大輔、続けて」  
 大輔は陸の下着を引き抜くと、そこに指をしのばせた。  
 愛液に濡れた秘唇を何度か往復した指が、彼女の中に入り込む。  
「すげ……熱い、お前のここ……」  
 大輔の中指を包み込んだ粘膜が、きつく締め付けてくる。  
 それを傷つけないように、大輔は指の抽送を開始した。  
「んんっ……は、あ……自分の指より、すごいよぉ……」  
「陸……自分がどれだけエロい事言ってるか、自覚ないだろ」  
 スカートの中から漏れる淫らな音に、今すぐにでも自分自身を突  
っ込み入れたい衝動をかろうじて自制し、大輔は陸の中をゆっくり  
と解していく。中指に加え、人差し指も挿入する。  
「分かんないよ、そんなのぉ……ん、指が……だって、出入りして  
るのだけで……頭いっぱいだし……ふあぁっ」  
 親指が、敏感な突起を捉えたらしく、陸が激しく鳴いた。  
 
「悪い……ここは、もうちょっと……」  
 指の動きを緩め、その上で秘処を往復する指の動きは次第に大き  
く強くしていく。  
「あ、ああっ……だ、大輔……お願いだから…っ…も、もう……」  
 ギュッと陸が、すがるように大輔の服を掴んだ。  
 しかし、大輔の指はさらに激しさを増していった。  
「ごめん、陸……俺、お前のイク顔、見たい」  
 親指で淫核を撫で、大輔は陸の胸に再び吸いついた。  
「あ……ああっ……! や、すごっ、すごいのぉ……ん、あ、ああ  
あぁぁんっ!!」  
 大輔の指を、これまでにない強い締め付けが襲ってきた。  
 高い泣き声を上げて、陸が絶頂を迎える。  
「……陸」  
「はっ……はぁっ……はぁっ……んんっ」  
 痙攣を繰り返す陸に、大輔はキスした。  
 
 
 大輔は陸のスカートを脱がすと、その足を広げた。  
 薄い桃色の割れ目に、大輔の先端が押し当てられる。  
 ちょっと腰を押しただけで先端が秘処に潜り込んで、亀頭から初  
めての快感が押し寄せてくる。  
 
「陸」  
 大輔の呼びかけに、陸はコクンと頷いた。  
「はぁ……あ……う、ん……きてぇ……怖くないから……大輔だか  
ら……」  
「ああ」  
 角度は問題なし、陸の腰を抱えた大輔は彼女の中に躊躇いなく侵  
入する。  
「んっ! んあぁっ……」  
 大輔の先端から筒を、徐々に陸の肉襞が包み込んでいく。  
「陸、力を抜け……一気にいくから」  
「あ、ああっ……ん、あぅんっ!!」  
 大輔は腰に力を込めて、言葉通り一気に陸を貫いた。  
「入った……全部、陸ん中に入ったぞ……痛くないか?」  
 大輔はそこで動きを止めた。  
 ちょっとでも引き抜くと、そのまま放出してしまいそうだった。  
「あ、ぅん……あ、あれ?」  
 陸は、涙に濡れた顔を少し不思議そうなものに変えた。  
「どうした?」  
「痛く、ないみたい……うん、変な感じはするけど、平気っぽい…  
…」  
 
「変な感じ?」  
「その……大輔のが入ってるから……って、変な事言わせないでよ  
っ」  
「と、とにかく痛くないのなら、それにこしたことはないが……じ  
ゃあ、動くな。俺、このままでもやばいし」  
 慎重に、陸の中で大輔は動いた。  
「うん……んぅっ……だ、大輔……でも、本当に…っ…ボク、初め  
てで……ぅんっ?」  
 大輔は、陸の言葉を自身の口で封じた。  
「……疑う訳ないだろ? お前は、ずーっと俺と一緒にいたんだか  
ら」  
 激しい運動をすると、時々処女膜が敗れるという話を聞いたこと  
がある。  
 多分、それだろうな、と大輔は察しをつけた。  
「んっ……うんっ……ん……あ、ありがと……でも、いいのかな」  
「何が」  
 ちょっとずつ、大輔は腰の動きを大きくしていく。少しでも気を  
抜くと、不覚を取ってしまいそうだった。  
「すごい、気持ちいいの……最初から、こんなで…ぁっ…ボク、す  
ごい…あぁっ……やらしい娘になっちゃうかも……っ」  
 
 陸自身、何だか微妙に腰を揺らし始める。それがいっそう、大輔  
の昂ぶりを抑えるのを苦労させていた。  
「だとすると、三年間、大変だよな」  
「ん、うんっ……でも、同じ部屋だったら、寮、二人べやぁ……」  
 うわ言のように、陸が呟く。  
「……お前、すごいこと口走ってるぞ。うん、でもルームメイトな  
のは、いいかもな」  
「うん、えっちなことも出来るの……他の人と一緒は…いやぁ……」  
 陸の腰使いのぎこちなさが徐々に消え、うねるような動きが大輔  
を刺激していく。  
「俺も……うあ、お前、その腰やらしいって……」  
 大輔は、陸の乳首に口付けた。  
「んっ……胸、さっきよりよくなってる……」  
「あんまり、育たないでくれよ。バレたら、コトだからな」  
 言いながら、もう一方の胸の先を指に挟んで軽く引っ張った。か  
と思うと、手の中に収めて揉み立てる。  
「大輔…っ…胸、ちっちゃいままで…いいの……?」  
 互いの腰を休めないまま、陸の言葉に大輔が答える。  
「特に不満はないぞ……これはこれで可愛いし……」  
 口に含んだ乳首に、軽く歯を立てた。  
 
「ん、あ、ああっ! 噛むの、駄目ぇ……!」  
「じゃあ、やめるか……と、悪ノリやめ。初めてん時ぐらい、優し  
くしないとな。あんまり余裕ないけど、何かして欲しい事あるか?」  
「はぁっ……はぁっ……じゃあ、キス……んっ」  
 要望に応えて大輔が顔を寄せると、陸は積極的に舌を絡めてきた。  
「んぅっ……く……んむ……陸、いいよな、もう……俺……」  
 大輔は、陸の頭に手をやった。  
 髪を撫でながら、腰の動きにスパートをかける。  
「あっ、あぁっ……う、うんっ……今日、大丈夫だから……大輔の  
……出していいからっ……ボクの中に……!」  
 陸も大輔を抱き締め返す。  
 陸の中が、急速に強い締め付けを開始した。  
 大輔は、限界まで膨張した自分自身を彼女の最奥に突き入れる。  
「くぅっ……!」  
 そこで、大輔はそれまで堪えていた衝動を、一気に迸らせた。  
「んあっ! あ、ああっ! ふああぁぁんっ!!」  
 大輔の腕の中で、陸の身体が絶頂に震える。  
「……陸、力入れすぎ」  
 言いながら大輔は、大量の精液を陸の処女地に注ぎ込んでいった。  
「はっ……ああっ……ま、まだ、出てるよぉ……っ……あぁ……」  
 
「ま、いいけどな」  
 陸の髪を掻き上げると、その唇に口付ける。  
「大輔ぇ……」  
「おう?」  
 大輔の射精も、陸の絶頂もようやく収まりつつあった。  
 しかし、陸は大輔の身体に自分の身体をすり寄せる。  
「その、ね……も、一回、いい?」  
 大輔は、陸の頭にポンと手を置いた。  
「……やっぱお前、えちぃわ」  
 
 
 夜になった。  
 あれからもう一ラウンドこなした大輔と陸は、晩飯と風呂に入っ  
てから再び部屋に戻ってきた。  
「いいの、これ?」  
 大輔からシャツを借りた陸は、袖をつまんだ。大きくて、手が出  
切れない。  
 ちなみに大輔は、いつものTシャツにジャージ姿だ。  
「ああ……ま、どうせすぐ汚れるんだし」  
 ベッドに腰掛けた大輔に、陸はまたがった。  
 
「……大輔のえっち」  
 顔を真っ赤にした陸のお尻に、大輔の硬くなった股間が当たって  
いた。  
「どっちが」  
 大輔は、陸のお尻に手を回した。ショーツは履いていなかった。  
「じゃあ、お互い様って事で……大輔、へーき?」  
「ま、あと二回ぐらいなら……あ、でも、その気になれば何回でも  
いけるか?」  
 大輔は、陸の身体を抱いたまま、後ろに倒れる。  
「……うん……じゃ、いっぱい、して」  
 陸にキスされながら、大輔は自分のベッドに沈んだ。  
 
 
 で。  
 早朝、最神学院の学院寮。  
「大輔ぇ……」  
 陸は、姿見の前で困ったような声を上げた。  
「あん?」  
 ジャージから学生服に着替えながら、大輔が生返事をする。  
「どうしよ。胸、ちょっと成長してるかも」  
 
 陸は自分の胸をつついた。やっぱり、ちょっと膨らんでいるかも。  
「ま、成長期だからな」  
「そんなのんきな事言ってないでよ。他人事じゃないんだからねっ!  
 それとも大輔は、ボクが学校やめさせられてもいいの?」  
 シャツの前を全開にさせたまま振り返った陸は、ビシッと指を大  
輔に突きつけた。  
「むう、じゃあ、胸揉むのやめるか」  
「……うーん」  
 陸は腕組みして、首を傾げる。  
「いや、お前そこで悩まれても」  
 逆に、大輔が困った。  
「でもボク、えっちも嫌いじゃないし」  
「陸よ……それは、お誘いと受け取ってよろしいのか?」  
 大輔は、手をワキワキさせながら陸に迫る。  
「へ? いや、ちょっと待って……ち、遅刻しちゃうよ?」  
 壁に追い詰められた陸を救ったのは、ノックの音だった。  
「おい、大輔、陸。早く出ないと、遅刻するぞ」  
 清夏の声に、陸が大輔を払いのける。  
「うわ、わ……早く着替えないと」  
 急いで着替えを再開する陸に、大輔は声を掛けた。  
 
「陸よ、今度の休み、ちょっと遠くまで行かないか? 新聞部や写  
真部が届かないぐらいまで」  
「え?」  
 陸が動きを止める。  
「いや……三年間、『男』通すよりも、たまにはと思って……」  
 ちょっとした思い付きだった。  
 やっぱりこれって、夢ん中で、初めて陸とした時の事を思い出し  
たせいだろうなぁ。  
 着替え終わった陸は、笑顔のまま木刀を抱えた。  
「じゃ、再来週の日曜日。行こう、大輔。せーかが待ってる」  
「あいよー……ってだからお前、腕組むのはまずいだろ!?」  
「廊下に出るまでね」  
 言って、陸は自分の唇を、大輔の頬に押し当てた。  
 
 
<おしまい>  

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