〜粉砕天使ナツメ 第五話 後編〜  
 
「…思ってたより広いな」  
 
人差し指から出した小さな火の玉で辺りを照らしながらマルーシャは呟いた。  
 
「おまけに壁がコンクリだ。なんかの施設か、ここ?」  
 
最下層まで降りた彼女らを出迎えたのは剥き出しの岩肌などではなかった。一直線に伸びた明らかな人工空間である。それもかなりのスペースがある。  
 
「…どうやら地下鉄みたいね」  
 
エミリアが蒼白い光で足元を照らすと、そこには等間隔で敷かれた枕木と、その上を並行して走る鉄製レールが横たわっていた。  
 
「地下鉄って大丈夫かいな?轢かれたりしたら笑えないっしょ…」  
 
「杞憂ね。どう見ても廃線よこれ。それも相当古い」  
 
なるほど。良く見ればレールは真っ赤に錆び付いている。試しに靴で軽くこすってみると、表面がスナック菓子のようにボロボロ剥がれ落ちた。  
放置されていた期間は数年やそこらではなさそうだ。赤と青の光が交互に照らすトンネル内は、さながら朽ち果てた万華鏡のようである。  
 
「そっか。んじゃ本題なんだが…」  
 
そう言ってマルーシャは目の前に広がる闇を照らす。そして今度はその反対方向を。  
 
「あの贅肉タワーと我らがトンカチ娘は果たしてどちらに行ったのかねぇ?」  
 
誰も答えられなかった。前方と後方。そもそもどっちの方角が奥なのかすら分からない。  
 
「エミィ、敵さんの気配の出処は分かるかい?」  
 
「…無理ね」  
 
トンネル内は空気の流れが一切無く、デスパイアの粘液から漂う青臭い匂いで充満している。連中がどちらに向かったのかは判断しようが無い。  
頼みの綱のクリスタルも、敵が「この空洞内に居る」事しか示しさず、方角に関しては何の仕事もしてくれなかった。  
 
「足跡は?」  
 
「見ての通りよ」  
 
エミリアが光の矢で地べたを指せば、そこにはピチャピチャしぶきを上げる水溜りが無数に。伯爵夫人が大穴開けてくれたお陰で何本もの水道管が破裂しているのだ。これでは連中の通った痕跡は残らない。  
 
「天中殺もいいとこだな」  
 
「ええ。ほんとに厄日」  
 
「ったく。悪のアジトならさぁー、それっぽくデコっといてくれりゃこっちも助かるってのに」  
 
「…どんな?」  
 
「んー、暗雲を照らす怪しいサーチライトでしょ。あと用途不明のパラボナアンテナとか、悪魔の顔した正面玄関とか――――…って関係ないってば」  
 
「自分で言い出して…」  
 
「…あっ!そうだ!!」  
 
暗闇を照らしながらブー垂れていたマルーシャがぽんと手を叩く。  
 
「アンテナで思い出した。エミィ、あんたがナッちゃんをストーキングするのに使ってた例の発信機!今こそアレの出番っしょ!!」  
 
「ああ、アレね。…なんか人聞き悪いのフレーズ混じってた気がするけど…」  
 
「空耳、空耳。いいからはよせな」  
 
エミリアは懐から携帯端末をごそごそ取り出し、せかす金髪娘に渡してやる。  
 
「ん…なんだこれ?もしもーし。なんも映ってませんよー、エミリアさーん?」  
 
「当たり前よ。もともと渡り鳥に取り付けるGPSだもの。こんな地下まで届くワケないわ」  
 
「……………」  
 
黙って突き返された精密機器をこれまたエミリアは黙ってしまい込む。  
 
「ナッちゃんの携帯は?」  
 
「圏外ね。仮に電波が届いても、上であれだけの騒ぎがあった直後なんだから、パンク状態だと思うけど」  
 
「そうだな…。あの肉ダルマ、電柱とかもブッ倒しまくってたし…」  
 
これだけ魔法少女が雁首揃えてテレパシーひとつ使えないというのも貧相な話だ。  
ナツメがマーキングでも残して行ってくれれば万事それで解決したのだが、あの精神状態では無理な注文だろう。いや…平常心でも正直期待できないか。  
 
「しゃーないね。二手に分かれるとしますか」  
 
「敵地で上策とは言えないけれど、この際仕方ないわね。残る問題はどうやって私たちが連絡取るのかだけど…」  
 
「あー…チョイ待ち。それならいいモンがある」  
 
「…?」  
 
首を傾げるエミリアの前で、マルーシャはコートの下から黒い筆箱のような物体を取り出した。いや、よくみればアンテナやらボタンやらが所狭しと取り付けられている。つまりこれは…。  
 
「…トランシーバー?」  
 
「いっえ〜す♪…ってもオモチャに毛の生えたようなモンだけどな。サバゲーに使えるらしいから、じゅうぶんイケるっしょ」  
 
「随分とまた懐かしい物を…。相変わらず中途半端に用意がいいと言うか」  
 
鼻高々の金髪娘から無線機を受け取ったエミリアは、右手を腰に当て呆れた様子で呟いた。  
 
「む…中途半端と。このキリスト級のメシア様に向かって何て言い草かね」  
 
「ナツメに渡しておいてくれれば全部済んだのに…」  
 
「…う」  
 
それきりメシアは沈黙した。  
 
「で、バッテリーはどれぐらい持つの?」  
 
「…え、ああ。ハイハイ。2時間は堅いと思うんだが…さっきも言ったけどあんまし本格的な奴じゃないからなァ。  
どれくらい歩く破目になるのかも見当つかんし、常時電源入れっぱにするにはちょっと勇気いるかもね」  
 
「そう…。なら5分置きに定時連絡ね。交互に掛けていって応答が無かった場合はアクシデントと見なす。それでいい?」  
 
「ああ。あたしはそれで構わんけどさ…。大丈夫なのかい?さっきの戦闘で右肩に一発貰ってたように見えたんだが…」  
 
マルーシャがエミリアの右腕を指す。突入直前まで眉間にシワを寄せながら押さえていたはずだ。  
 
「問題ないわ。痛みは魔法で麻痺させたから、後は歩きながら回復していくわ。…ありがとう」  
 
「オーライ。無茶だけはすんなよ」  
 
「一番それを言ってあげなきゃならない子はここにいないんだけどね」  
 
「全面同意だ。さっさと引きずって連れて帰ろうや」  
 
二人は互いの時計を合わせると、軽く会釈を済ませ正反対の方向へ歩き始める。  
この時、何の気なしに選んだ進行方向が、この先の互いの命運を分かつ事も知らずに…。  
 
♯  
 
「くうぁ…ああ…、あァ…っ」  
 
「…あぁう!!」  
 
ここは楽園なのか、それとも地獄なのか。  
無機質な空間を満たしているのは場違いな肉臭と艶かしい喘ぎ声。ある者は極上の歓喜に乳房を振り乱し、ある者は耐え難い恐怖と恥辱に涙を流しむせび泣く。  
 
「いやァ…あ、もう無理…。お願い…もう無理…ぃ…」  
 
受け入れてしまった者と拒み続ける者。どちらを選んだ女たちも例外なく若々しい肉体を触手で嬲り回され、無様に開かれた股間には肉色のチューブが深々と挿し込まれている。  
辛うじて手の自由の利く者は、自らの膣内に埋ずまった触手を懸命に引き抜こうとするが、ジェルと愛液にまみれた一物は手の内で滑るばかり。  
顔を背け、せめて互いの痴態を目にせぬよう努めるのが彼女らの精一杯だった。  
 
「う…うぅ…。あっ、はァう!!」  
 
「う、うっぷ…!おえぇぇぇ…」  
 
地上で捕獲され、結合したまま連れ去られた哀れな女達。公開陵辱の犠牲者一同を待ち受けていたのは、地上を襲った軍団に倍する数の凌辱者が待ち構える肉の宴であった。  
彼女らは正にテーブルの上に並べられたフルコースの料理だ。一匹の触手がようやく抜かれたかと思えば、別の一匹の肉棒がグイグイと真っ赤に腫れた割れ目に潜り込んでくる。  
秘部だけでは飽き足らずアナルや口腔にまで代わる代わる挿入される触手。限界まで白濁液を飲まされた胃は悲鳴を上げ、未消化物と一緒に怪物の命の素を吐き戻した。  
 
「むぶ…ッ。げほっ…げほっ…。くァ…あ…ァ…」  
 
トンネルの壁に磔にされた先客達の腹はラグビーボールのように膨張し、その肉体は栄養補給と舌噛み防止のため咥えさせられた触手によってただひたすら生かされている。  
悪阻らしき嘔吐を繰り返す者も数名。化け物の子孫のその身に宿した彼女らは、今日連れこまれた娘達の半月後の姿である。  
彼女らはもう人格を宿した人間として扱われていない。ローパーを大量生産するためのプラント。その一構成体と見なされていたのだ。  
 
そして…新入生達の一角に藤沢ハルカの姿はあった。  
 
「あ…ァ、あァう…!たす…け…、お…ねぇ…ちゃ…ん…」  
 
野太い陰茎を彼女に挿入しているのは伯爵夫人ヒルバーツ自身だった。  
下級のローパー達はお楽しみ中の親玉を囲むようにして、攫って来た女をそれぞれ組み敷き、リズミカルな抽送で穴という穴を蹂躙している。  
宴には生まれたてのベビーも加わり、初めて味わう人間の女に舌鼓を打っていた。  
順番を待ち切れない者たちは、脱がされたショーツやストッキングにわらわら群がり、わずかに付着した愛液を浅ましく奪い合っている。  
 
『いいわ、いいわァ〜。バージンの初々しさも捨てがたいけれど、開発済みの身体ってやっぱり素敵。締まり具合から腰の粘りまで別格よねぇ…』  
 
あふれ出る蜜を恍惚の表情で味わいながら、大きなストロークでじっくりと少女を堪能するマダム。  
ハルカの下半身はまるで別人の物になってしまったように波打ち、程よく緩んだ下の口は極太の触手を拒む素振りすら見せずに頬張っている。  
 
(やだ…。こんなのおかしい…おかしいよ…。だって…だって、パパとママを殺した奴らに、こんなバケモノにされてるのに…っ)  
 
蹂躙されているはずの膣壁は大胆な締め付けで侵入者をもてなし、生命力の溶けた愛液をふんだんに迸らせる。  
吸い尽くせなかった分泌液が滴るたびに、待ち構えていた下っ端たちがその少量の体液を巡り小競り合いを繰り広げた。マダムが飽きたその瞬間、ハルカの身はこの飢えた狼の群れに投げ込まれるのだ。  
 
(あぁ…。酷い…、和美さんたちまで…あんな…)  
 
ハルカの真正面で犬のような四つん這いにさせられている白衣の女は和美。その隣でM字に脚を開いているのは蛍子だった。  
デスパイアにレイプされた同性の社会復帰を親身にサポートしてきた彼女らも、今やただの肉奴隷。片や桃色、片や紫の刺激的なパンティを愛液で汚しながら、病室で犯されていた時以上に二人は乱れている。  
姉のナツメに負けないぐらいハルカを気遣い、支え続けてくれた大人の女性達。  
そんな彼女らの目も当てられない姿は、この何ヶ月かで積み上げて来たリハビリの道が、ズタズタに引き裂かれて終わった事を、残酷なまでにハルカに突きつけていた。  
 
(うぁ…熱いよ…。やっぱ私って…こうなっちゃう運命だったの?私のせいで、パパとママは殺されて…。和美さんたちまで、あんな格好にさせられて…)  
 
ごぽりという音と共に、下半身の異物感が膨れ上がる。とてつもない量の何かが胎内に注ぎ込まれたらしい。意識はもうどこかに飛んでいってしまいそうだ。  
 
(結局みんな…。みんな…こいつらのモノにされちゃうの?私たち、その為に生まれてきたの…?そんなのって、ありなの…?)  
 
他の触手から飛び出した白濁液が泥パックのようにハルカの顔面を覆いつくす。唇の合間から浸み込んでくる生臭い液体を、ハルカはもう吐き出そうともしなかった。  
 
『…おや?…この気配…』  
 
不意に巨大ローパーの動きが停止する。まるで何かの違和感を察知した猛獣が耳をそばだてるかのように。  
ピストン運動を唐突に中止され、高揚のやり場を失った女たちは、込み上げてくる切ない疼きを抑えきれずそれぞれ身悶えする。  
 
(―――――あれ?)  
 
睫毛にこびり付いた精液のお陰で視界はボヤけていたが…。ハルカの瞳には、確かに懐かしい人の姿が映っていた。  
最後に姉と顔を合わせたのは、確か先週のお見舞いだったはず。なのに…なぜかついさっき会っているような…。  
よくわからない。ナツメお姉ちゃんなのに、ナツメお姉ちゃんじゃない。ハルカの姉はあんな格好をしていないし、金槌みたいな武器も持ってない。  
だったらどうしてなのだろう。目の前の人は、なんでハルカだけを見据えて立ち尽くしているのだろう。分からない。ハルカには分からない。  
 
(おかしいよ…絶対ないって…。だって、あの人…クラッシャー…エン…じぇ…)  
 
閉じゆく目蓋の向こうの天使は、ハルカの姿を見て悲鳴を上げているようだった。その理由に彼女自身が気付くのは、もう少しばかり先のことになる。  
 
♯  
 
「アロー、アロー。荘厳美麗豪華絢爛天使マルーシャさんより、ナイチチ天使へ。そっちは異常は無いかい?えみー、もしもーし」  
 
『ないわ』  
 
マフィアのボスも黙って受話器を置きそうなドスの聞いた声が無線機から返ってくる。  
 
「おーし。んじゃ次の放送はまた5分後から。『ビリー隊長の銀河帝国軍式バストアップ講座』だ。チャンネルはそのまま。オーバー」  
 
『……………』  
 
通信は無言で切られた。  
 
「ぬーん。ユーモアの通じないヤツ…。なんか姉貴に似てきたな」  
 
少しでも緊張を解してやろうかと思ったのだが、ちょっとばかり意図が見え見え過ぎたかもしれない。…いや、単に怒らせただけなのかもしれないが。  
 
(しっかし随分歩くな、これ。一体どこまで行ったんだよ…)  
 
慎重に進んでるとはいえ通信はかれこれ5度目になる。三十分が既に経過したという事だ。ネタ切れ以上にナツメと妹の身が心配である。  
だが歩けど歩けど景色は変わらず、真っ暗闇に浮かぶコンクリートだけが息苦しい旅情の全てだった。途中、壁のいたるとこに日本語の標識らしき物を目にしたが、いずれも朽ち果てており読解は不能。  
少なくともここまでは確かに一本道だったと思うのだが、こうも何も無いと脇道を見落としたのではと気掛かりで仕方ない。  
 
(妹にゃ悪いが…できればナッちゃんも迷子になってて欲しかったんだけどな)  
 
振り返れば昨夜の出動からナツメは少しおかしかった。  
無理もない。あのローパー型デスパイアは藤沢姉妹にとって親の仇そのものなのだ。  
 
(……………)  
 
恐らくナツメは気付いていないだろう。彼女はエンジェルとしての純粋な使命感が自分を突き動かしているだと信じ切っている。  
だが、マルーシャは薄々感づいている。ナツメの使命感は半ば自己暗示なのだ。彼女の心の内には間違いなくデスパイアへの強烈な復讐心が渦巻いている。  
天然ボケ少女丸出しの普段の素振りと、自ら進んで死地へ赴く彼女の悲壮な顔。その間に横たわる埋め難いギャップは、明らかに単なる庇護精神の域を越えている。  
彼女にとってデスパイアとの戦いは、自身の復讐と同時に、かつての無力な自分を上書きする儀式でもあるのだ。  
 
(エミィの奴は多分気付いてないんだろうな…。あいつ結構抜けてるし)  
 
そう。エミリアは純粋な使命感から戦う娘だ。それだけにナツメの動機も自分と一緒なのだと簡単に処理してしまっている。  
それに加え、幼い頃から戦いに明け暮れて来た彼女は優等生でこそあるが、その一方どこか人の心の機微に疎い。なまじ濁りが無いだけに、人間の心の深みに存在する黒い領域を感知できないのだ。  
 
(困ったモンだな…。結局、戦いをやめさせらんないなら、ナツメは目の届くとこに置いとくしかない。酷いジレンマだよホント)  
 
なにはともあれ、ナツメが貴重な戦力である事に違いは無い。今はメンタル的にもまだ脆い新入りをこれ以上追い込まないためにも、必ずや妹を取り返してやらねばならない。  
だが…正直もうこれだけの時間が経過している。この間、捕まえた女に全く手をつけないデスパイアがいたとすれば、それはもう男色家か不能者のいずれかだ。  
残念だが、ハルカが攫われた時点で大団円への選択肢は失われたと言ってよい。  
 
(とにかく姉妹揃って苗床行きだけは断固回避だな。もちろんナツメの阿呆がまだ連中と接触してなければ、それに越した事は――――…ん?)  
 
マルーシャの歩みがハタと止まった。彼女は指先の炎を消すと猫のように静かな挙動で壁に身を寄せ聞き耳を立てる。  
 
「ん…ん、ぁ…ぃ…っ…。…す…けて…ぇ」  
 
間違いない年端も行かぬ娘の喘ぎ声だ。  
 
「もしもしエミィ。バストアップ講座は延期だ。敵さん発見だよ」  
 
『こっちもよ。数は二匹。…訂正、三匹ね』  
 
「親玉の気配は?居そうか?」  
 
『…わからないわ。少なくとも今いる奴らは全部下っ端ね。そっちは?』  
 
「同じさ。お仕事中だよ」  
 
『いけるわね?』  
 
「ああ。ノープロブレムさ」  
 
息を殺した会話が締め括り無線を切る。  
二人とも襲われているのが探し人でない事は確信していた。例え妹を人質に取られていようとも、並のローパーに後れを取るナツメではない。  
 
(残弾は一発こっきり。三下相手にゃ使えんね)  
 
冷え切ったコンクリートと一体化するように壁に添い、灼熱天使は音も無く歩みを進める。  
周りを憚らぬ嬌声をたどり、虹のような緩やかなカーブを進んだ先。そこに陵辱者の姿はあった。  
 
「ん…あっ、あっ、あぁっ!もう駄目!もう駄目ぇっ!!」  
 
悲鳴の主はキャミソールの上に薄手のパーカー羽織った娘。肩の高さで切り揃えられた茶髪を闇に躍らせながら、彼女はテンポ良く腰を揺すらされていた。  
 
「あっ、あっ、かは…ッ!あ、厚志ぃ…、あつしぃ…。助けてよォ…。助けてってばぁ…あ、あうっ!!」  
 
焦点の定まらない目線を誰もいない空間に走らせながら、少女はしきりと男の名を叫んでいる。彼女を暴行しているのは幼体と成体の丁度中間あたりの若いローパーだ。  
両手首を背中で組ませながら便座に座らせるような姿勢で獲物を自分に乗せ、リズミカルな反復動作で前後の穴を突き上げている。  
 
(あー…覚えてる。確か彼氏の目の前でガンガン犯られてた娘だな。可愛そうに)  
 
マルーシャは狩りに臨む猛獣のように確実に標的との距離を詰めていった。  
巨大な銃器に分厚いブーツ。隠密行動に適しているとはとても言い難い装備なのだが、彼女の挙動は揺らぐ蜃気楼のように静かである。  
哀れな少女と一方的行為中だったローパーは、忍び寄る天敵に露ほども気付いていない。  
 
「もしもーし」  
 
『ギ、ギイっ!?』  
 
結局、ローパーが彼女の存在を察知したのは、当の敵に銃口でトントン小突かれてからだった。  
 
―――――ザシュ。  
 
全身の触手が一瞬痙攣し、やがて力を失う。  
赤熱した銃剣は易々と柔肉を貫いていた。核を串刺しにしたバヨネットがゆっくりと引き抜かれ、肉塊はその場に崩れ落ちる。  
 
「ふあ、あうぅ…」  
 
被害者の娘は椅子から滑り落ちるようにして横たわり、長きに渡る辱めからようやく開放された。  
マルーシャはすぐさまその子の首筋に手を当てる。昂ぶっていた呼吸と脈が落ち着いていく様子が手袋越しにも確認できた。  
 
「ん、はァ…っ。大丈夫…、だい…丈夫だよ…。わたし、綺麗だもん…。汚されてなんか…ない、よ?ねぇ。…う、うっ、うあ…ぁ…」  
 
命に別状は無い。ただ意識の方は混濁が激しい。残念ながら粘膜を通して相当な量の体液を摂取してしまったようだ。  
少女は股間から溢れる精液を両手で拭いながら、ここにはいない誰かに向かってしきりに訴えかけていた。  
 
(ごめんな。じき助けが来るからさ、もう少しだけの辛抱だ)  
 
人差し指を額に当て微弱な魔法衝撃を加えてやると、少女は静かに気を失った。救護班の目印になるようマルーシャは近くの壁を銃剣で斬り付け焼いておく。  
 
「もしもしエミィ。こっちは片付いたぞ」  
 
『同じく。助けた人は?』  
 
「とりあえずは無事だがな…。今は置いてくしかないね」  
 
『…そう。…そうよね』  
 
エミリアの返事は暗い。あちらも嫌な光景が広がっているのだろう。  
しかし感傷に浸っている暇は無い。気持ちは即切り替えねば命取りになる。  
 
「で、足取りは掴めたかい?」  
 
『それもそっちと一緒よ』  
 
「わーった。探索を続ける。なんかあったらまたな」  
 
『ええ。恐らくもう敵のテリトリー真っ只中よ。気をつけて』  
 
「おうよ」  
 
通話機をコートの中に収め、寝かせてあったブラチーノを担ぎ直し、灼熱天使は再びブーツを繰り出す。灯りはもう落としてあった。  
ここでお取り込み中だったということは、既にローパーどもの本拠地に踏み込んでるとみていいだろう。移動用に使う通路に過ぎない線もまだ残っているが、楽観は出来ない。  
 
(増援呼ばれるのが一番困るからな。出くわしたヤツは先手打って残らず潰してかないと――――――…ん?)  
 
再び前方から女の乱れる声。しかも今度は複数だ。  
 
(やれやれだな、弾無いってのに…)  
 
まあ、ブッ放せば他の連中にこちらの存在を教えるようなもの。撃てないのは弾があっても同じこと。そんな理屈をこねてマルーシャは幾らばかりか溜飲を下げるのだった。  
 
♯  
 
あれから六匹ほど仕留めた。助けた被害者は十人だ。いや、十一人だったか?  
どっちにせよ、ナツメの姿も敵の親玉の影もその数には入っていない。なにかこう、まるで遠出して帰って来なくなった猫を探している気分だ。  
 
『頑張りましょう。どこかにきっと居るはずよ』  
 
無線機の向こうの隊長は言う。その声には連戦の疲れが滲んでいるが、本人が隠しているつもりなのだろうからマルーシャは敢えて触れない。  
 
(後輩の事になるとエミィも意固地だよなー…)  
 
彼女のそんな一面がユイの勘違いに拍車を掛け、結果あの事態を招いたのだが…。久々に再会した友人を見ているにつれ、結局何ひとつ改善されていないのだとマルーシャは確信した。  
まったく大理石のように固い娘だ。あれだけの美貌で男が寄り付かないのも納得がいく。聞くところによると、手紙を貰う相手は女子ばかりだとか。…二度目の過ちも近いかもしれない。  
 
(…くだらん愚痴を頭ん中で並べてる場合じゃなかったな)  
 
デスパイアの核に突き立てた銃剣を滑らかに抜き去り、切っ先を軽く掃って焦げた血糊を落とす。これで七匹目。  
十一人、いや十二人目の被害者はいかにも予備校生といった感じの娘だった。暴れる身体を押さえつけ、陰部から触手を抜き取りお決まりの手当てを施すと、マルーシャはまた歩き出す。  
 
(ま、責任感じなきゃイカンのはあたしも一緒だね。あんとき偉そうに止めときながら、結局ナツメに押し切られてんだから)  
 
暗闇と同化するような静かな息遣いで、周囲の気配を探りながら、金髪娘は奥へ奥へと進んでいく。  
 
(ホントに殺風景なモンだ。よくもまあこんなムードの無いとこで女を抱けるというか――――――…おや?)  
 
ふと行く手の風景に感じた違和感。炎は消してあるのにコンクリのヒビ割れまでがハッキリ確認できる。間違いない。灯りだ。  
 
(エミィ…じゃないな。あいつの光は青い。こりゃむしろ電光系の明かりだ)  
 
影から身を出さないよう、上下線を隔てる柱の間を縫ってその方角へと進んで行くマルーシャ。その進行方向から聞こえてきたのは―――――。  
 
「ひ、あ…あッ、ひあぁぁぁああぁぁあぁぁぁん!!」  
 
女のイかされる声。ビンゴだ。  
 
♯  
 
「ふぁッ!あ、あ、あ…っ、ああぁーーー!!」  
 
「もうイヤ!も…もうイヤぁぁぁああ!!」  
 
トンネルの先にあったのは地下鉄の操車場だった。  
回転テーブルのような装置の上に線路が敷かれ、車両を交換できるアレである。円形の空間の奥には地下車庫と思われる穴がいくつも見られる。  
どこから電気を引いてるのかは分からないが、この空間だけは照明がフル稼働で点灯されており普通に視界が利く。他の場所は非常灯ですら落ちているというのに、どういう原理だろうか。  
 
(で、あのデブの玉座がここってワケか)  
 
操車場の中央に鎮座している巨大な肉塊。見間違えようも無い。ヒルバーツだ。  
その周囲には戦力になるのか微妙な大きさの幼体ローパーが十匹ほど。そして…穴という穴を蹂躙される生贄の女達。壁際には既に腹の膨れた者達が並べられ、野太い触手を口に咥えながら涙とヨダレを流し続けている。  
 
(ナツメと妹は…クソっ!やっぱりアイツがお相手かよ!!)  
 
伯爵夫人がホールドしている娘は今は二人だけだった。クラッシャーエンジェルとハルカである。  
 
「聞こえるかエミィ!?」  
 
マダムはこちらに気付いていない。放置されている旧型車両の後ろに潜り込み、マルーシャはエミリアに通信を入れる。しかしなかなか応答が無い。  
 
「おいこら、エミィ!!」  
 
語気を強めて再度コール。多少声を荒げても、これだけの喘ぎ声が周囲から上がっていれば敵も容易には気づけない。  
 
『ごめんなさいっ。見つけたの!?』  
 
ようやく返事が来た。エミリアの息は荒い。戦闘中だったのか…。  
 
「ああ、最悪の一歩手前でな」  
 
『誰を?』  
 
「全員だ。いて欲しい奴から欲しくない奴まで」  
 
『それでナツメは!?ハルカは、無事なの!?』  
 
答えにくい質問だ。何をもって『無事』とするか。そこの線引きが正直きわどい。気を失っているようだが、とりあえず二人とも生きてはいる。  
ハルカの方はどう見ても暴行されてしまっていた。パジャマは殆ど残っておらず下半身からはボタボタと白い液体が滴っている。  
ナツメはどうやらこれからのようだ。純白のコスチュームは埃まみれでボロボロだったが、隠すべきところは隠されている。  
察するにハルカを人質に取られて手も足も出なくなったところを滅多打ちにされたか、あるいは犯されている妹を見て逆上し突っ込んだところをズタズタにされたのか。  
推測するマルーシャの頭上でナツメの胸元がビリリっと破かれ、マシュマロのような両乳房が躍り出た。やはり今からメインディッシュという訳か。  
 
「残念だがハルカは犯られちまった。これからナツメの番だ。来られるかエミィ!?」  
 
『…難しい注文ね』  
 
事態は急を要しているのだが、エミリアの歯切れはすこぶる悪い。となれば考えられるのはたったひとつ。  
 
「囲まれてンだな」  
 
『ご明察。情けないわ』  
 
援軍の望みは絶たれた。いや、どの道お互い相当離れている。妨害無しでエミリアの足で駆けつけても果たして間に合ったかどうか。  
 
「こっち来るにはどんだけ掛かりそうだ?」  
 
『幸い雑魚ばっかりだけど…あとどれだけ出てくるのか次第ね』  
 
「オーライ。ナツメはあたしがなんとかする。…無茶すんなよ、エミィ!」  
 
『ほんと迷惑掛けっ放しね、私』  
 
軽い自嘲と共に通信は切れた。さて…どうしたものか。  
 
(人質二人に弾は一発。冗談キツイね、こりゃ)  
 
先手はこちらが一方的に打てる。その確証がマルーシャにはある。  
自分の羽織っているコートはかつての戦友、バネッサ=リリーヒルより託された物だ。彼女のコスチュームでもあったこの外套は、行動時に外部に洩れるエンジェルの魔力を完全にシャットアウトする。  
完全な奇襲を可能にする言わば魔法迷彩なのだ。その性能はデスパイア化したユイでさえ彼女の到着を全く感知できなかった事実が証明している。しかし…。  
 
(…くそッ)  
 
スナイパーは迷っていた。ハルカとナツメ。果たしてどちらを助け出すのか。  
戦えるのは一人で弾もあと一発。エミリアの加勢なしで挑むには余りにもリスキーなミッションだ。  
 
(畜生。…そうだよ。分かり切った事なんだよ)  
 
どう考えても取り戻すべきはナツメである。理由は単純だ。彼女はまだ吸われていない。  
ナツメを連れてこの魔窟から脱出し、体勢を整え、機会を覗い捲土重来を期す。それが今考え得るベストの選択だ。  
犠牲者たちにしたって昨今のデスパイアは滅多な事では女を殺したりしないし、ハルカだって奴らの子を産まされるまでにはまだ時間がある。  
「仕方が無かった」今まで通り、その一言で全て片付けられる事態だ。悪いのは勝手に先走った挙句にドジを踏み妹を攫われたナツメなのだから。…だが。  
 
(……………)  
 
マルーシャの脳裏を掠めたのは、妹が連れて行かれたときの…今にも泣き出しそうなナツメの顔だった。  
 
♯  
 
『ぬふぅ〜、漲って来るわァ。さっきの戦いもコレならチャラにできるわね。ぬふふッ』  
 
ハルカの肉体を堪能した伯爵夫人は、その良質の魔力に恍惚の笑みを浮かべた。  
これでもう少し味わえればもう文句なしなのだが、残念ながらこれ以上は危険だ。この娘は普通の人間。あまり犯し過ぎると使い潰してしまう恐れがある。  
デスパイア同士の競争で勝ち組になる秘訣は、何よりも良質なハーレムの構築、その一点に限る。ここの娘たちは言わば貴重な資本なのだ。乱費は自殺行為に繋がる。  
 
だが…今日は少しばかり違った。  
 
『で〜も〜ね〜…。ぬふっ…、ぬうっふふふふ〜…』  
 
込み上げてくる喜びを伯爵夫人は隠せなかった。そのハーレムに、ようやく『本気で犯せる娘』が加わったのだ。  
エンジェルの入手。これが意味するアドバンテージは絶大だった。実際、過去に人類の天敵と目されたデスパイア達は必ずといって良いほど天使を自分の囲いにしている。  
そして何よりも…今夜からはこの身に渦巻く欲望の全てをぶつけられる相手がいるのだ。今まで溜め込んできたフラストレーションも残らず吹き飛んでしまう。  
 
ビリリーーーッ!!  
 
真っ白な衣装と共に空色のブラジャーを引き裂けば、包装に見劣りしないくらい白い脂肪の塊がはじけ出た。実に良い身体をしている。  
妹の姿を見て突っ込んで来たとこから察するに、まだ経験の浅いエンジェルなのだろう。だが、その張りのある肉体に漲っているエネルギーは相当なポテンシャルだ。  
楽しみ方も自由自在。このハルカという娘の命を盾にすれば、自分から奉仕させる事だって簡単だろう。だが…何はともあれまずは…。  
 
『味見といきますか。ふふ…♪』  
 
乳房をいじくり回しながらスカートを大胆に捲り上げ、衣装の中に隠れていたショーツの股布に触手の先端を引っ掛ける。…と、その時!!  
 
ズダアァァァーーーーーン!!  
 
撃発音と共に目視不可能な速度の何かがヒルバーツ目掛け放たれた。逃げ場の無い空間で反響する銃声が、巨大ローパーの聴覚を打ちのめす。  
 
『がぁッ!?』  
 
高圧電線ほどもありそうな極太の触手が血液を噴射しながら宙を舞う。ブラチーノの砲火が撃ち抜いたのは天使を戒めていた肉縄…ではなく、ハルカを捕まえていた方の触手だった。  
そして二発目の弾丸のように一直線に突っ込んでくる影。  
空中に投げ出されたハルカの身を完璧なタイミングで抱き止めたマルーシャは、伯爵夫人の巨体を蹴り反転。銃剣付きの大型火器を片手で振り被り、今度はナツメの方に跳ぶ。  
 
(―――――間に合うかっ!?)  
 
宙吊りのナツメまで地上なら数歩の距離。背中まで振り被ったブラチーノを猛然と振り下ろす。  
 
…ズシャア!!  
 
「―――――いよしッ!!」  
 
灼熱のバヨネットは見事触手を両断した。落下するナツメの襟首を左手で掴み、小脇にはハルカを抱えてマルーシャは着地。  
三人分の体重に悲鳴を上げる脚をもう一度鞭打ち、最後の一蹴りでこの場から離脱しようとする…が。  
 
『こォそドロめぇぇぇーーーえ!!』  
 
怒号と共に唸る巨大な鞭。赤黒い血管の蠕動する打撃用の触手が、柱を次々と薙ぎ倒し大量の瓦礫を吹き上げながら迫って来る。その姿はまるで灰色の津波。  
 
「………!!」  
 
頭で判断したのではない。体が咄嗟に動いたのだ。  
灼熱天使マルーシャは、左に抱えた二人の娘を庇うように右肩を突き出し、そのまま…土砂吹雪の中へと呑まれていった。  
 
♯  
 
「くっそ、…いっ…てぇ」  
 
朦々と立ち込める粉塵の中、金髪娘は舌打ちしながら身を起す。  
一瞬、意識が飛びかけた。どうやったのかは分からないが直撃だけは避けたらしい。コンクリ製の柱が数本へし折られ酷い埃が舞い上がっている点を除けば、先ほどと何ら変わっていない。  
耳にねっとり粘りつくような女たちの喘ぎも健在だ。ただ…何かが足りない。  
 
「…っ!ハルカ、ナッちゃん!?」  
 
『ここよ、お馬鹿さん』  
 
一番聞きたくない呼び掛けに視線を上げるマルーシャ。煤まみれの顔が悲痛な表情に歪む。  
 
(ちっく…しょう)  
 
お求めの二人は再び敵の手中に落ちていた。灼熱天使は砕けそうなほど奥歯を噛み締める。  
 
『私の上前をはねようなんて、あなたホントいい根性してるわね。ロクな死に方しなくってよ』  
 
「ちっ!!」  
 
マダムの嫌味にジャキリと対戦車ライフルを構えて応じるマルーシャ。だが、先ほどの一撃が効いたのかブラチーノの遊底は開きっぱなしだった。  
撃ってみなければ分からないが、銃身も曲がっている可能性が高い。いや、大体もうコイツの機関部に弾は入っていないのだ。  
幸い目の前の肉饅頭にその事は理解できないだろう。せめて牽制になってくれればと一縷の望みを賭け照準だけでも敵の急所に合わせる。  
 
『およしなさい野蛮人。この細首が飴みたいに曲がるわよ?』  
 
「…っ」  
 
威嚇は無駄だった。マダムに捕まった二人の首に筋肉隆々の触手が巻きつけられる。あれにかかれば人間の首などそれこそ小枝のようなものだろう。  
とどめに人質は二人。つまり、片方を殺してしまってもデスパイア側にはまだストックがある。これの意味する所が完全敗北でなくて何であろう。  
 
『あなたもつまらない欲を掻いたものねぇ…。片っ方だけなら簡単に助け出せたのに。二兎を追うものは一兎をも得ずってのは人間達のウンチクでしょ?』  
 
「けっ…。全く以ってその通りだよ畜生め。肉の塊に説教とは落ちたモンだよあたしもさ」  
 
バケモノに嗤われるまでも無い。普段の自分なら絶対やらないミスだ。強敵相手の単騎駆けで助け出せるのはどう考えても一度に一人まで。母性というのもとんだ落とし穴だ。  
 
『ま、その蛮勇に免じて敢闘賞ってトコかしら。ご褒美にこれから始まる愛の儀式を特等席で観させてあげるわ。うふふ…』  
 
「……………」  
 
配下のローパー達がのそのそと背後に回り出口を塞いだ。そして伯爵夫人はマルーシャなど気にも掛けない態度で、ナツメのスカートの中に触手を忍ばせる。  
撃ちたければ撃ちなさい、とでも言いたげなその様子。姉妹を人質にされたマルーシャが、ハッタリ以上の行動をとれない事を完全に理解している。  
その上で彼女に二人の犯される様を見せ付けてやろうと言うのだ。  
 
『もう一人の黒いエンジェルも今頃きっとお楽しみ中よ。あれだけの数、到底一人で捌けやしないわ。こぞって追ってきたのが運の尽きね』  
 
(へっ…どうだか。アイツはナツメの為ならえんやこらだからね。わからんぜ?)  
 
つい最近やってきたばかりのこのデスパイアには分かるまい。ナツメと自分が合流するまでの間、エミリアは一人でこの街を守護してきたのだ。  
雑魚を山と積んで包囲したところであの女は追い込めない。その点、マルーシャは自信を持って断言できる。だが…。  
 
スル…シュルシュル…。  
 
ナツメが犯られるまでには流石に間に合わないだろう。スカイブルーのショーツが裏返りながら引き下ろされ、彼女の秘部は最後の守りを失う。  
濡れそばった亀頭で陰唇を撫でられ、ナツメは意識の無いまま「うぅん」と呻いた。ありもしない伯爵夫人の顔が愉悦に歪んでいるように見える。  
 
「……………」  
 
決断するなら今しかない。「エミリアは絶対に来る」というのを大前提に、時間稼ぎの策がひとつだけある。  
出来る事なら使いたくない。本当に賢く立ち回りたいのなら、今すぐ後ろの下っ端どもを蹴散らしてエミリアの加勢に行けばいいのだ。ナツメだって殺されはしないのだから。―――――でも…。  
 
“そんときゃ責任持ってアタシが助けたる。新入りがそんな切羽詰った事考えるなっての”  
 
ついこの間の事なのに、もう随分昔の出来事のようだった。だが、あの時自分がナツメに言って聞かせた言葉は色褪せる事無く今も鮮明に頭に残っている。  
 
(らしくないかもしれないけどさ…。やっぱ自分で切った大見栄ぐらい、守ってやんなきゃなァ…)  
 
♯  
 
ガシャン…。  
 
脈絡の無い金属音に伯爵夫人の挙動が止まる。何歩か先を見下ろせば、先ほどのコートの天使が構えていた馬鹿デカイ鉄砲を瓦礫の中に投げ出していた。  
いぶかしむ巨大ローパーの元へ、彼女は空拳徒手のままツカツカと歩み寄ってくる。そして…。  
 
「交代だ」  
 
無骨に一言、彼女はそう告げた。  
 
『…?』  
 
「あたしがその子の代わりになる。だから片っ方は放せ。両手に華は変わらないだろ。いいな?」  
 
饒舌な伯爵夫人も今度ばかりは黙り込んだ。この金髪娘は何を企んでいるのか。彼女はどう見ても丸腰だ。  
 
『…何を画策してるのかしら。正直、興醒めなんだけど?』  
 
「安心しな。あんたの低脳でも分かる範囲の事しか考えちゃいないよ」  
 
自殺行為だ。自分が先に餌食になったところで、伯爵夫人がナツメを諦める可能性はゼロ。全員揃って触手を突っ込まれヒイヒイ言わされるのがオチだ。  
要するにマルーシャの狙いは自分が身代わりになっている内にエミリアが到着する事だ。ナツメとハルカさえ助け出してくれれば、まだ逆転の手段がある。  
 
『……………』  
 
夫人もマルーシャの狙いに感付き始めていた。こいつはもう一人の仲間に賭けているのだと。だがそれが一体何になる。あの黒衣の天使にはこの場にいる者以外の全ての配下を差し向けてある。  
仮に全ての手駒を潜り抜けても、来ると分かってる不意打ちを二度も三度も食う自分ではない。ましてや、あの弓使いはこの三人の中では一番攻撃力に劣っているのだ。  
 
カチ、カチリ………バサっ。  
 
あれこれと思考する敵の前で、マルーシャは何重ものベルトを外しコートを脱ぎ捨てた。  
ミリタリー調の外套の下から現れたのは、意外にもダークブラウンと深い紫を基調としたロングスカートと、簡単なフリルを目立たない程度にあしらったタートルネックの衣装。どこか魔女を連想させるコスチュームだ。  
そして…魔力を遮断するコートを脱ぎ捨てた彼女からは、息が詰まるほどの高濃度の力が迸っていた。弱いデスパイアなど触れただけで溶かされてしまいそうな凄まじいオーラだ。  
手元のハンマー娘も相当なものだったが、はっきり言ってこちらは怪物である。一体なぜこれほどの者がこんな地方都市に?これだけの女なら十二天使に名を連らね、各国首都の警護に当たっているのが相当だろうに。  
 
『ふ、ふふ…。見え透いてるわよ。頼みの綱はもう一人の子でしょ?彼女が私を相手に何が出来るって言うの?』  
 
「そう思うんだったら早くしな。こっちだって正直まだ迷ってんだぜ?」  
 
そう言ってマルーシャはスカートの両端を摘みゆっくりと持ち上げる。  
 
『夢にも近い賭けをしてまで庇わなきゃならないような子なのかしら、このトンカチ娘って』  
 
「さぁね。あたしにも今はまだ分からんよ。ただ…約束は約束だ」  
 
いかついブーツと対照的な白く長い脚美線が徐々に現れる。この細い手足で、よくもまああれほどの重火器を振り回していたものだと思えるほどの、美しい脚が。  
 
『なら…交渉成立よ…ッ!!』  
 
「…くッ!!」  
 
―――――パシィ!!  
 
鞭を打つような音がトンネル内に響き渡る。伯爵夫人の触手がマルーシャの右足に勢い良く巻き付いたのだ。まるで飢えた狼が獲物に飛び掛るようだった。  
あっという間にマルーシャの体は持ち上がり、逆さ吊りのままローパーの親玉と対面する。  
 
「言ったハズだよ。あたしに手ぇつけるんならナツメは放せってな」  
 
『それは今からの貴女の態度次第ってところかしら』  
 
予想通りの答えだ。当然期待はしていない。天使との取り決めを守るデスパイアなど、交通マナーを順守する暴走族と同じくらいあり得ない。  
 
ギリリ…ミシ、ミシ…。  
 
「…っ痛!血ィ止める気かよ馬鹿野朗」  
 
マルーシャの腕を頭上で組ませ、両手首をこれでもかと締め付ける伯爵夫人。よほど彼女を警戒しているようだ。  
両手を起点に吊るされ、真っ逆さまだった体は180度回転して元に戻る。今度は左足にも肉縄が打たれ、マルーシャの脚をがばりと開かせた。  
 
『震えもしないなんて大した度胸ね。それとも慣れっこかしら?』  
 
新手の触手がススーッとスカートを持ち上げていく。程よい肉付きの太腿に次いで現れたのは、下腹部をピッチリと覆っている黒一色のハイレグショーツ。  
戦うことを念頭に選ばれたその下着は、激しい運動でもズレることのないよう、まるで水着のボトムのように良く伸びる生地で随分と締め付けが強そうだった。  
 
『うふふ。こんなにガード固めちゃったら、下のお口はさぞ欲求不満でしょうに』  
 
「ご心配には及ばずだね。大体、年がら年中盛ってる誰かさんと比べられちゃ困るって―――――…んくッ!」  
 
真っ白な太腿と強烈なコントラストをなす三角地帯にベトベトの亀頭が押し当てられる。精液の通り道から先走る液体が黒い下着に滲み、より一層深い黒の光沢を描いていった。  
失禁してしまったような妖しいシミがショーツに広がり、マルーシャの股間に冷たいヌメリが浸透してくる。  
 
『じゃあ、上はどうなってるのかしらねぇ…?』  
 
腰の高さから潜り込んできた触手が、彼女の衣装を鎖骨の辺りまで一気に捲り上げる。  
無駄肉のない身体にでんと乗っかった双つの白桃は、シンプルなストラップレスブラの中に窮屈に収納されていた。色は下と同じ半光沢のブラック。  
谷間をぺちぺち叩いてみても振動ひとつしない。戦闘中に動いて集中力を奪わぬよう随分タイトな物を着用しているようだ。  
 
「…っつ!もう少し手心加えろっての。…破けたら弁償させっぞ」  
 
拘束具のように胸を押さえ付けていたブラジャーを、アンダーラインから滑り込んだ触手が力任せにめくり上げた。下着と擦れる乳房の痛みにマルーシャは唇を噛む。  
 
『あらあら。窮屈そうだったから楽にしてあげたのに。こんなに締め付けられちゃって可愛そうにねぇ〜もう』  
 
そんな彼女の抗議を軽くあしらいながら、ローパーは二本の触手でたわわな膨らみを揉みほぐしてゆく。  
歯を食い縛り顔を下に向ければ、首元まで持ち上げられたブラの向こうで、自分のバストが水風船のように変形しながら玩ばれている。  
ナツメにこそ及ばないものの、カップから解き放たれた白い果実は、服の上からでは想像もつかないほどのボリュームを誇っていた。  
 
「…くっそ。そんなに弄りたきゃ猫でも飼え」  
 
『強がらない強がらない。あんまりお手入れが行き届いてないみたいだから…御覧なさい、今日は特別サービスよ』  
 
「ん、んだと…?」  
 
グチュリと嫌な音を立てながら、先端のすぼまった怪しげな触手が一組マルーシャの前に現れる。やがてその責め具の頭部はゆっくりと花開き―――――。  
 
「げ…」  
 
出てきたのは人間の唇そっくりの吸盤だった。いや、そっくりどころではない。ご丁寧にイボだらけの舌を垂らし綺麗に並んだ前歯まで覗いている。これには流石の灼熱天使も顔色を無くした。  
 
『ぬぅふっ♪まだミルクの出ない子にはちょっと勿体無いけれど…。不憫なオッパイを慰めるためだと思って奮発してあげるわ』  
 
ヒルバーツの嬉々とした声は、新しい玩具を前にした女児そのものだ。  
 
(ち…畜生。エミィの馬鹿!早く来いっての!!)  
 
目の前でユラユラ揺れながら舌なめずりする肉のバキューム。一瞬、便器の詰まりを解消するあの清掃器具を連想してしまう。  
正直、嫌なデザインの凌辱器官は今まで相当見てきたつもりだったが、獲物を前にニヤニヤ笑うリップ付き触手は生まれてこのかた初めてである。まるでナンセンスなドッキリグッズだ。  
軽く血の気の引いた顔で何とか半笑いを保つマルーシャを見て、搾乳装置たちの唇がサディスティックに歪む。  
 
『そーれーじゃ…。いーただーきまーす』  
 
…ずちゅ。ぐぷ。ぶちゅり。  
 
「ん…ッ、んくぅ…!あ…っ」  
 
挨拶と共に大口を開けた触手が飛び掛り、Dカップのバストは一呑みでその表面積の大半を唇に含まれてしまう。  
マルーシャの身体はビクンと跳ね、背筋を反らしたままの姿勢で強張っていた。取り付いた唇はポンプのように脈打ち、競い合うように互いの獲物である乳房を丸ごと覆い尽くそうとする。  
バケモノに吸い付かれてしまった白桃は、吸盤の中に潜むザラついた舌に張りのある皮をくまなく舐め上げられ、サーモンピンクの突端を生え揃った歯でコリコリと転がされる。  
 
(いよいよヤバくなってきやがった…。くっそ…。頼むナッちゃん、早よ起きてくれって―――――…んぐッ!?)  
 
…くちゅり。  
 
(上下同時侵攻かよ…。畜生め…底意地が汚ねぇ…)  
 
へその下あたりを冷たい何かが撫で、続いて腰回りがグイッと前に引っ張られる。先端を細く尖らせた触手が、張りの強いゴムを強引に押し上げショーツの中に侵入してきたのだ。  
窮屈な化学繊維は内側から盛り上がり、気色の悪いミミズ腫れを浮かべてモゾモゾ運動する。粘液をこすり付けられていなかった上の方にまで、黒々とした光沢が染み渡り始めた。  
 
『汗に石鹸。ほど良く蒸れてていい匂いだわ。リンスは下にも使った方がいいわよ。うふふ…』  
 
「ち。ド変態ここに極まれりだな…。スネ毛一本生えてねぇくせして一丁前に…語って、やがら…っ」  
 
『心外ね。こう見えてもどんな人間の男よりも、見て来たここの数は多いのよ』  
 
パンツの下で押し潰されたブロンドを粘液まみれの触手が愛おしげに掻き回す。中の様子を見ることは出来ないが、糸を引き合う自分の陰毛が容易に想像できた。  
そして侵入者は黄金の茂みを掻き分けながら三角州を下流へと下り、遂にお目当ての亀裂を探り当てる。  
 
「…んッ」  
 
ほのかに綻び始めていた花弁を、ゆっくりと触手が撫で回した。駆け抜ける空気が喉をヒュッと鳴らし腰がピクリと動く。  
クリトリスを、尿道口を、土手肉を…。まるで巣穴に帰ってきた獣が留守中の異常を確かめるように、性欲の化身はマルーシャの秘所をまさぐっている。  
余裕を取り繕うのも厳しくなってきた。だが、折れてしまえばそれっきりだ。彼女をしゃぶり尽くしたヒルバーツは間違いなくナツメたちに襲い掛かるだろう。  
 
『ふ〜ん…。見た感じ、ここ最近使われた形跡は無いわね。バージンではないけど人間の男が入った様子も無し…。ひょっとして貴女、デスパイアにしか抱かれた事ないとか?』  
 
図星だった。マルーシャは男を知らない。知っているのはどれもこれも…おぞましい化物の一部が入り込んで来る悪夢のようなあの感触ばかりだ。  
 
「へっ、そりゃなァ…。誰かさんたちが西で東でと悪さばかりしてくれるモンだから、こちとりゃ満足に男漁りさせて貰う暇さえありゃしない。いっぺんお互いバカンス取れりゃあ、こっちの人生もちっとばかり楽しくなるんだがね…」  
 
事実、なぜ自分は女に生まれたのか。幼い頃のマルーシャは、あの化物の体内でずっとそれを呪っていたのだ。来る日も来る日も犯されながら。時間の概念さえ消し飛びそうなほど。  
だが今は違う。今の自分には歩んできた道があり、培ってきた力があり、倒すべき敵がいて、守るべき仲間がいる。  
こんなところで肉饅頭の子供を産み続けて終わるつもりは無い。  
 
『そ。なら丁度いいわ。それならお望みどおり休暇をあげる。今から永遠の育児休暇をね。ぬぅふふふ…ッ』  
 
「あ…こらテメっ。人が感慨に浸ってるとこを。そーゆう雑な神経、遅かれ早かれ命取りにな―――――…」  
 
語尾は尻すぼみだった。彼女の目の前に首長竜の頭部を思わせる見事な一物が伸びてきたのだ。顔をしかめるマルーシャの前でニチニチと音を立てながら陰茎の包皮が裏返っていく。  
 
「うっ…くさッ」  
 
チーズのような不潔臭が鼻腔を突く。めくれた亀頭にびっしりこびりついた黄色い汚物。酷い量の恥垢だ  
 
「…チンカス野朗って、罵って欲しいのか…?」  
 
伯爵夫人は答えなかった。返事の代わりに触手がぐいんとしなり、獲物の下半身へと伸びていく。  
 
(マジ…かよ。畜生。もう最悪だ)  
 
先に入り込んでいた触手がショーツの前袋をグイッと引っ張り侵入路を確保する。タイトな下着が僅かにずり落ち、大福のような尻肉が上半分だけ露出する。  
よりにもよって、あんな汚いモノを咥えさせられるのか。文字通り「とっておき」だ。笑えないにも限度がある。  
 
(くそったれ…。できれば合体前に助けて欲しかったんだがなァ。チョットだけ恨むぜ、エミィとナッちゃん。チョットだけ、な。…んッ、んくぁ…あッ!!)  
 
小康状態だった胸へのバキュームプレイがにわかに激しくなり出した。堅くシコった乳首を舐め回し、こねくり回し、唾液まみれの果実は変幻自在に形を変える。  
海老反りになったマルーシャの腹部に悪臭のするスメグマを付着させながら、男根は下へ下へと這い進んでいく。  
ショーツの中でクリトリスと戯れていた触手はウェストのゴムを強引に伸ばし、狭苦しい下着を膝の高さまで一気に降ろした。ギトギトの生地が乱暴に通過した太腿は摩擦で真っ赤になる。そして…遂に…。  
 
(久々だな…。…耐えられるか…)  
 
緩んだ秘部の入り口に真っ赤な大業物の切っ先があてがわれる。  
 
『さぁ…。もう虚勢は要らないわ。何もかも脱ぎ捨てて、女を剥き出しにしてよがりなさい』  
 
「…言ってろ…タコ」  
 
『口の減らない事…。結構だわ。…そおーらァ!!』  
 
グググ…ずにゅ!!  
 
「んあ…あ…!!くああぁぁぁー…ぁ…ッ!!!」  
 
目蓋の裏が一瞬スパークした。ずちゅ、ずちゅ、ずぶぶぶ…。焼けた鉄棒と、鍋の煮汁を同時に入ってくるようなこの感覚。頭では無駄だと理解しつつも腰は懸命に逃げようとする。  
 
(だ…大丈夫だ…。これっくらいなら…まだ…。んぐッ!?)  
 
粘膜の壁は分け入ってくる狼藉者を締め出そうとするが、その行為は却ってデスパイアの長大な前立腺に快楽を送るばかりであった。  
一寸刻みに這い進み、尺取虫のように蠢動しながらマルーシャの奥へ奥へと侵攻する欲望の凝固物。触手の突き上げに併せてブロンド娘の白い身体は人形のように踊る。  
 
(早く…早く止まれって…)  
 
上下左右に飛ぶ視界が徐々に平衡を取り戻していく。触手の侵攻が急速に緩み始めたのだ。そして…。  
 
「ふ…あ…あ…、は…ぁ…。く、そ…っ。どこまで、入れたんだよ…」  
 
『わかるでしょ。一番奥よ、一番奥。私と貴女の赤ちゃんが育つと、こ、ろ』  
 
運動が一段楽したその時、マルーシャの下半身にはさっきまでの身体とは思えないほどの異物感が誕生していた。  
途轍もなく太くて熱い物体が足の付け根からヘソの下あたりにまで収納されているのが分かる。ゆっくりと視線を降ろせば、自分の股間から真っ赤なデロリとした物体が生え、ローパーの方へ伸びていた。  
 
「…くっ…くそ…ッ」  
 
『おめでとう。ドッキング完了ね』  
 
分かってはいた。分かってはいたのだが…やはりキツイ。出来る事なら、二度とこの身体をデスパイアに触れさせたくなかった。  
勿論、戦い続ける身にそれは叶わぬ事だ。誰だって、いつかは負ける。それは摂理でありこの世の法則だ。しかし…。  
 
(そうだったな…。まださ…。これからさ)  
 
マルーシャはまだ負けていない。この勝負はまだ道半ばだ。そして自分が諦めてしまった瞬間、この賭けは御破算になる。  
それに…。デスパイアだってここで終わりにするつもりなど毛頭ない。地獄の扉はまだ開かれたばっかりなのだから。  
 

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