たとえこれが一夜限りであったとしても
これまで思い続けてきた私の気持ちが満たされるなら
この一夜だけでもご主人様のお気持ちを慰められるなら
それだけでいい――と、私は思った。
白いシーツの上に横たえられて、ご主人様の体の重みを受ける。
すべての着衣をご主人様の手で脱がされていたから、
木綿のシーツのぱりっとした肌触りを背中に感じた。
ご主人様ならシルクのシーツだって毎夜新品のものを使えるのに、
この木綿の感触が好きなのだといって、私たち召使に微笑むのだ。
ご主人様のベッドの上で裸体を晒していると思うと、恥ずかしさが込みあげる。
突然の呼び出しだったので、何も準備していなかった。
昨晩お湯をつかったが、今日一日大旦那様のご葬儀で立ち働いたので、
今はずいぶん汗ばんでいるはずだ。だが、それを拭う暇さえなかった。
葬儀がひと段落ついたので、ご主人様は先ほど湯を浴びられたが、
その準備と後始末を他の召使いたちと一緒にするので手一杯だった。
清潔な白いシーツの上で汗じみた体を愛する人の目に晒す恥ずかしさに
目を閉じて顔を横に向けると、シーツからお日さまの匂いが立ちのぼる。
ふふっと笑う声が上から降りた。
「あ、あの……申し訳ございません」
「どうして謝る必要があるの?」
「あの、……あ、汗も拭っておらず……そ、その、体つきも……」
ご主人様が私の頬に手を添え、しっかり仰向かせる。
顔の両側に腕をつき、そのまま伏せるようにして私に口付けをする。
軽く唇を触れ合わせた後、舌先で唇を舐めそのまま滑らすようにして首筋を下り
胸元へとたどりつく。ご主人様はそこで顔を上げて、深く息を吸い込む。
「お前の肌から甘い香りがするよ。ぼくの大好きな香りが。
それで、体つきが、どうしたの?」
「……そ、その……む、胸、小さくて……」
「小さくて、かわいい……愛しいよ……」
ご主人様の舌がピンクの頂を舐め上げた。
突然の刺激に、私は声をあげてしまった。
「ねぇ、もっと、……もっと、お前の声を聞かせてほしいな」