――――唐突だが、俺はかなり驚いていた
もうこの時点で唐突じゃ無いだろ!とかツッコミされてもスルーしか出来ない訳で。
まあ、それはさて置いて、今日は何だか驚く事が多過ぎである、
多分一生の半分とはいかないが3分の1は驚いていると思う。
と言うのも、何気に満月を見たらいきなり身体は痛熱くなって気を失うわ、
それで目が覚めたら俺の身体が狼獣人に変貌しているわ、
その事に驚く間も無く、何時の間にかセーラー服姿の少女、月詠 時子(つくよみ ときこ)が部屋に入っているわ
しかもその少女が目の前で今の俺と同じ狼獣人に変身するわ……
ひょっとしたら今日の俺はナニかに憑かれているのかもしれない。
……それも、月の光が大好きなナニかに……
【MOON・LIGHT 第1夜 3話目 月輪(がちりん)に狼は咆えゆ】
「な、な、な、な、なっ!?」
「コラ、お前も私と同じ獣人だと言うのに何を驚いているのだ?
……いや、驚くのも無理も無いか、美少女が目の前で狼獣人に変身したのではな?」
目の前で少女が狼獣人へと変貌した事の驚きの余り、俺は自分の姿も同じ狼獣人である事を差し置いて、
尻尾を丸めて腰を抜かし、狼獣人となった目の前の彼女を指差したままどもりまくった声しか出せないでいた。
その俺に対し、彼女は口の端を笑みの形で歪めながら俺の側まで歩み寄る、
……何だか凄まじくイヤな予感。
「まあ、それよりだ、早速で悪いが『仕上げ』に取り掛かろうか……」
「え!?ちょ……まてまてまてっ!『仕上げ』ってのはまさか!ってヤメおまっ!」
おもむろにしゃがみ込むと俺の腰に巻いている唯一の着衣であるタオルをあっさりと剥ぎ取る、
―――うわぁぁぁぁぁぁぁ!?イキナリナニスルンディスカッ!?
俺は慌てて股を閉じて精一杯の抵抗をするのだが、
彼女は両手に力を掛けると俺の股を一気にこじ開け、イン○ン・オブ・ジョ○トイ真っ青のM字開脚にさせると
腰の尻尾をバタバタと振りながら顔を股間へと近づけてゆく。
―――か、母さんにもM字開脚にさせられた事無いのにぃっ!
「フフッ、久しぶりの雄の臭い、これは……堪らない物があるな……」
「――――ひぁっ!?」
俺が抵抗するも空しく、まだ慣れない身体の所為か、
力もろくに出せないままに彼女に組み伏せられ、彼女の長い舌がベロリと俺の股間を舐め上げる、
少しだけ舐められただけだと言うのに、まるで腰に電撃が走ったかの様な快感が俺の脳に突き刺さる。
その股間から脳まで突き上げる刺激に反応したのか
毛皮の鞘に収められていたピンク色の肉棒が出番とばかりにムクムクと臍の辺りまで伸び上がり怒張してゆく。
うわ、自分のモノだけどこんなに……あ、そういや、ここも狼の物へと変貌してたんだっけ……
「……や、止めろって……こら……」
「ほう、お前は止めろと言うが、それに対してここは……全く止めてほしく無さそうだな?」
「うう……」
下腹部で肉棒を怒張させながら尚、俺は彼女を止めようとするのだが(初対面な上に初めてだし)
彼女は金色の目を淫らに輝かせると怒張した肉棒を指で弄りながら意地の悪い事を言って俺を惑わせる。
そりゃーさぁ、刺激を受けたら反応するのが人間(獣人?)の性(さが)だけど……
「さて、先ずは口で頂くとする……動くなよ?牙でお前のモノを傷つけたくないからな」
う゛……流石に痛い目を見るのは勘弁、と思い抵抗を止めた矢先に俺の肉棒が生暖かい何かに包まれる。
見れば彼女が狼の口で俺の肉棒を優しく、そしてしっかりと咥えこむ所だった。
うぁ……き、気持ち良過ぎる……
彼女のぬめぬめざらざらとした長く生暖かい舌を肉棒へと巻きつき、敏感な先端や裏筋を責めたててゆく。
その刺激は何時もオナニーでする物とは段違いに凄まじく、その快感で俺の視界を白く霞ませてゆく。
更に時折、牙がコツコツと肉棒に触れるが、それは逆に刺激となって更に俺を昇り詰めさせる。
「うっ……くぅ……」
「中々耐えてくれるな……だが……これならどうだ?」
思考が痺れるほどの快感を必死に耐える俺の様子を見て、
彼女は1度咥えていた肉棒を離し、狼の目を意地の悪そうな笑みの形に歪め、
再び肉棒を口に咥えるとぢゅうと音を立てて一気に吸い上げる。
「で…でるっ!もう耐えられ…ない!」
その吸引の刺激は凄まじく、辛うじて耐えていた俺の意思を彼方まで吹き飛ばし、
脳から腰、そして腰から肉棒へ突き抜ける様な放出感となって肉棒の先から迸った。
そして肉棒から全身へ痺れる様な快感が走り、腰を震わせ、手足から力が抜け、視界が白く霞み。
俺は口から舌をだらりと出して荒い息を付くしか出来なくなった。
「んぐっ……ふむ……濃い、凄く濃いぞ、お前の精は……さては、お前は初物だな?」
「……うう、初物で……悪かったな……」
彼女は俺の肉棒から迸った精を咽喉の奥で受けるが、
全てを受けきれずに口の端から唾液の混じった白濁液が溢れ出す。
その溢れ出した液を指で拭って、指先に付いた精液を舐め取りながら狼の顔で妖しい笑みを浮べる。
うう、相手が狼の顔だってのになんかすっごくいやらしく感じる。
「さて、今度はお前が私を気持ち良くさせてくれ」
「え?……わぶっ!?」
彼女の言葉に俺が疑問に思う間も無く、彼女が俺に体重を掛けて押し倒し、
更に仰向けとなった俺の顔に尻を向けた状態で覆い被さる。
押し倒された俺は何をされたのかも分からず、
俺の顔にぎゅうぎゅうと押し付けられる毛皮に覆われた甘い匂いを放つ熱くぬめった物が
獣人と化した彼女の秘裂である事と、そして彼女が何を望んでいるのかを俺が理解するまで数秒を要した。
こうなったらなるよーになれ、と俺は本能の赴くまま
無我夢中で鼻先にある甘い匂いを放つピンク色の秘裂を舐め上げ、
更に舌に塩味を感じながらその穴に舌先を伸ばして中を穿る(ほじくる)
舐める度に溢れ出てくる愛液と口から漏れる自分の唾液の所為で数分もしない内に顔がびしょびしょになるが、
我慢するしか出来ないのがちと辛い。
「ふっんぅん、そうだ、その調子だ……あふん……良い感じだ……お前、上手いぞ……」
しかし、俺が顔の毛並みをびしょびしょにしてまで舐めた成果は出ているらしく、
俺の肉棒を乳房で挟み込みながら指先で弄っていた彼女が身体を震わせながら喘ぎ声を上げ始める。
それを見て取った俺は更にもう一手と一番反応のあった秘裂の上の豆みたいな部分を集中的に舌で責めたて、
さらに吸いついて見たり、牙で軽く甘噛みして見たりする。
「――――――ぁっっ!?くぅ……!」
ブシュッ
「ぶ!……ぶへぇ!?」
そうしている内に彼女は声にならぬ声を上げると共にビクリと大きく身体を震わせ、力無く身体を横たえる、
それと同時に俺の顔に盛大に愛液が噴きかかり、それに俺は驚いて思わず情けない声を上げてしまう。
「……まさか私を、達させるとは……お前……初物にしては中々やるな?」
「そいつは……どうも……」
息を荒げながら顔を上げた彼女が上気した声で言い
俺はすっかりぐしょぐしょになった顔で答える。……と、何だか俺が情けないのは気の所為か?
「さて……前置きは終わり、ここからが最終仕上げだ」
暫く余韻を味わった後、彼女は妖艶な笑み(狼の顔でやや分かりづらいが)で俺に微笑み掛け
そのまま俺の肉棒の上に跨ると、彼女の獣毛に覆われた手を俺の肉棒へ添えられ。
俺の下腹部の上でヒクヒクと蠢く彼女の秘裂から愛液が糸を引いて下腹部や肉棒を濡らしてゆく。
「や、やっぱ駄目だ!幾ら何でもいきなり過ぎるだろ!」
「……っ!?」
だが、俺はここまでいっておきながら踏ん切りがつかず、秘裂が肉棒を飲みこむ直前になって彼女を突き放す。
幾ら人間の姿に戻る為とはいえ、見ず知らずの少女とヤるなんて俺の倫理が許さなかったからだ。
しかし……
「……何故……何故、お前は私を拒む?……私が嫌、なのか?……」
突き放された彼女は狼の顔でも判る位に落胆し、悲しげな目を浮べて俺に問い掛けてくる。
「……え?……いや、その……」
「……確かにそうだろうな、お前は元々人間だったのだ、
人間の姿でなら兎も角、獣人の姿の私なんぞ抱きたくないと思うのが普通なんだよな……」
俺が返答に困っている側で、俯く彼女の目から光る滴がこぼれ始める、
その滴は彼女の涙だと気付いたのは涙で潤んだ彼女の金色の目を見た時だった
「戦争で同族の男が居なくなってから、私は何十年も寂しい想いをして、
長い時を流浪の旅に費やしてやっと『月の欠片』を受け入れられた男を見つけたのに……
……また、私は愛する男も居ないままで過ごす事になるのか?……そんなの、あんまりだ……」
う゛……このシュチュエーションは滅茶苦茶弱いんだよな……俺……
「わ、分かった、俺が悪かった……だから、続きをやってくれ……時子……」
仕方がなく俺は折れ、ひたすら泣きじゃくる彼女の側に寄り背中を撫でようとする…………が!
がっし
「よし、捕まえた、もう突き放せると思うなよ?」
「 え゛ !?」
おもむろに彼女の片腕が俺の首の後へ回され、
それに驚く間も無く更に両脚が俺の腰の後へと組まれ、対面座位の形でがっしりと抱すくめられる形となる。
俺は驚きながら彼女の顔に目を移すと、何時の間にか彼女の目からは涙が消え、
その代わりに『してやったり♪』と言わんばかりに彼女の目と口の端が笑みの形に大きく歪んでいた。
だ……騙されたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!女の涙の裏に針千本、俺は見事に彼女に釣られちまった訳かぁっ!?
「さぁ、続きを始める……先に言っておくが、人間のものより凄いぞ?」
彼女が蠱惑的な笑みを浮べ、秘裂に肉棒をあてがうとゆっくりと腰を沈めてゆく。
ズプズプと音を立てて秘裂に肉棒が飲まれると同時に、彼女の膣壁が肉棒へと纏わり付いてくる。
ちょ……これは気持ち良いと言うレヴェルじゃない!?
「うっ……くぁっ!?」
俺はその刺激と快感に驚き、思わず其処から逃げようと腰を動かすが
それは余計に彼女の中へ突き入れる結果となる。
「くっ……フフッ……早速、お前のが膨らんで来た……さぁ、ここからが凄いんだぞ?」
「あっ……くっ……凄いって……何が……っ!?」
肉棒を包みこむ肉襞が蠢き、肉棒を胎の奥へ奥へと吸い込んで行く感覚に俺の思考の殆どが霞んで行く中
彼女の中に完全に飲みこまれた俺の肉棒の根元が自分でも分かる位に膨れ始め、彼女の膣壁を押し広げて行く。
「……さぁっ、出せっ!」
俺の肉棒の根元が完全に膨れきったのを膣壁の感覚で確認した彼女は強く腰を動かす。
ぶぶっ……ぶっしゅるるるるうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっっ
「……ぐっ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」
「あはっ、出てる……出てるぞっ、私の中にお前の精が!」
その途端、腰から脳へと突き抜ける様に快感の電流が走ると同時に
まるでダムが決壊するかのように俺の中から何かが怒涛の如く溢れ、肉棒の先から大量に迸る。
その快感は口でされた時とは比べ物にならないくらいに凄まじく、
瞬く間に俺の思考は真っ白に塗りつぶされてしまう
……これ、が、人間の物より凄いって意味……か……?
そう、霞みがかった思考で考えつつ、俺は止めど無く彼女の中へと放出しながら腰を突き上げる。
びゅびゅびゅびゅるるるるるるるぅぅぅぅぅるぅるぅぅぅぅっっっ
「あっ!がっ!?ぐぁっ!!」
「あふっ、どうだ、獣人のはきもちいいだろ?わたしもっ、ぎもぢいいぞっ!」
腰を突き上げながら、身体の何処にそんな大量の精があるのかと思えるくらいに彼女の胎の中へと放出する中
噴き出される物を漏らすまいと、そしてもっと大量にと彼女の膣壁がグネグネと蠢き、
しっかりと肉棒へと巻き付いて絞り上げて行く。
その快感でもう何も考えられなくなる俺に対して、
彼女もまた、何度か絶頂しながら尻尾を振り回し快感で目を惚けさせて喘ぎ声混じりの声で叫ぶ。
ぶびゅびゅびゅびゅるるるるるるるぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっっ
「あぐぅぅぅあ゛あ゛ぁぁぁぁぁっっっ!!!!」
「あはははっ、凄いぞ、すごいぞおまえぇぇぇぇぇっっっ!!!」
既に凄まじい量を放出しているにも関わらず、肉棒も放出される勢いも萎える所か勢いを増して行く。
俺はぼうっとする意識の中で彼女の方を見ると大量に放出された物の所為か彼女の下腹部が膨れ始めている、
だが、それでも俺は自分の意思で止める事が出来ず、逆により強くガツンと腰を突き上げる。
俺と彼女の下の絨毯が結合部から溢れ出る精液や愛液、口から漏れ出る唾液などでぐちょぐちょになり、
部屋の中が汗や愛液、精液などが交じり合った何とも言えない淫臭で満たされ
更に俺と彼女が上げる嬌声が周囲に響いてしまっていたとしても、もう俺は何も考えられなかった。
既に俺の意思は本能の色で真っ赤に染め上げられ、その本能の命じるままに俺は行動する。
如何すれば気持ち良いか、如何すれば彼女を悦ばせられるか、それだけが俺の思考に浮かぶ。
そして何ら疑う事も無く、俺は彼女の動きに合わせて腰を動かす、只、それだけだった。
「……ハッハッハッハッハッハッハッ」
「……ハッハッハッハッハッハッハッ」
肉棒から放出される物が半ばゼリー状になり始め、
結合部から溢れ出た液で絨毯どころか床までぐちょぐちょに汚される頃
俺も彼女も止まる事の無い絶頂の所為でお互いに息を荒げた狗の様な喘ぎ声しか出せず、
口からだらりと舌を出し、涎を絨毯へと垂らし、尻尾をバタバタと振りまわしながら
俺はただ本能の赴くまま、腰を突き入れ、そして彼女は腰をくねらせ、膣で絞り上げ、快感を追い求めて行く。
最早、其処に人としての知性は無く、只々快楽と絶頂を追い求める獣の交わりが続いていた。
「うっぐっっあぁぁっ!!」
「あ゛っ?あ゛っぁぁぁぁっ!!」
だが、どの様な物にも永遠に続く物は無い、
今までに無い位に腰に沸きあがる物を感じた俺は叫び声を上げながら彼女を強く抱きしめ、
腰を一瞬引いた後、突き壊さんばかりに彼女に突き上げ
「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぅぅぅ…」」
その動きでお互いにそれまでに無い絶頂を感じ、
夜空に浮かぶ満月に向かって自分の存在を誇示するかの様に咆哮を上げ、
抱き合い繋がったまま二人の獣は力無く横たわり、そのまま気を失い、寝息を立て始める。
―――夜空の満月は只、抱き合う二人を見守るかの様に静かに、そして優しく輝いていた―――
――――唐突だが、俺は満月の輝く夜空の元を駆け抜けていた。
何故、俺が駆け抜けているのか俺自身にも分からない、
だが、満月の輝きを身に受けながら大地を疾駆する感覚は何処までも心地良かった。
ひょっとすれば満月の輝きがある限り、俺は世界の果てまで駆けぬける事が出来るかもしれない。
そう、俺は力を得たのだ、かつてヒトが文明を得る代わりに捨て去った力を得たのだ。
俺はそれが嬉しくもあり、同時に恐ろしくもあった。
ある程度疾駆した所で、俺はふと地面の水溜りに目を移す。
鏡面の様になった水溜りに満月と共に映った俺の姿、其処にはかつての夢で見た狼の姿があった。
そして、俺は理解した。
―――――――――俺は、人と獣の狭間の存在、獣人(けものびと)となったのだと……
【MOON・LIGHT 第1夜 エピローグ】
ピピピピピピピピピピピピピピ………
「う……」
不意に耳元で鳴り響いた騒音の所為で、俺は夢の世界から現実へと急に引き戻され
騒音の大元である目覚し時計を手探りで探し出し、引っ叩く様にしてアラームを止める。
「……あ、朝か……」
寝起きでぼんやりとした意識の中で、俺はゆっくりと体を起こしながら頭をワシワシと掻き周囲を見やる。
この朝日の眩しさの加減から見て、どうやら今日は快晴の様だ。
……んー、今日は気分良く起きれた……ってあれ?
背伸びをしようとして、ふと手を見やるとその手は獣毛に覆われ、鋭い爪を持った獣の手では無く、
何時も見慣れている毛が殆ど無い肌色で扁平な爪を持つ人間の手だった
「……あ、元に戻ってる!」
そのままテーブルの上に置いてある手鏡へと視線を移すと、
鏡には、手と同じく見慣れた緊張感の無い平々凡々な日本人的な俺の顔が寝起きの状態で其処にあった。
そう、俺は狼獣人の姿から人間の姿に戻っていたのだ。
しかし、妙だ……
昨日の事を思い返して見るとあの時は服も破けて裸になった上に、更にあんなに乱れた筈なのだが
今の俺はちゃんと服を着ているし、布団を敷いた憶えも無いのに布団で寝ているし、
身体の調子も何処もおかしくは無い、いや、むしろ調子が良い位だ。
「―――昨日のあれは夢だったのかな……?」
俺は今だボーっとする頭で、昨日の出来事を全て夢だったと結論付けようとした矢先。
「目が覚めたか?……全く、あの後、お前が寝たまま起きないから少し心配したぞ。
取り敢えずだ、『仕上げ』の方は滞り無く終わった、今の調子はどうだ?」
「……夢じゃなかったのか……」
声の方に視線を移すと、其処にやや困った感じに腰に手を当てたセーラー服姿の少女、もとい時子の姿があった。
俺は彼女を見て疲れた様に呟きをもらし、再度頭をぽりぽりと掻くと
「良し、寝直すか」
「…………」
ど げ っ !
「―――っ!?っっっっ!!!」
そのまま寝直そうとした俺は、彼女が無言で放った蹴りを顔面に食らい悶絶する事になる
……い、痛ひ……
「寝るな、蹴るぞ?」
「……蹴った後で言わないで、時子……あつつ……」
蹴られて痛む鼻の頭を擦りながら、俺は先ほど俺を蹴飛ばした彼女へ弱弱しく抗議の声を上げる。
「人を勝手に夢だと決めて寝ようとするお前が悪い。
全く、私が選んだ男がこんなのだったとは自分が情けなく思える……」
「をいをい、俺がこんなので悪かったな……」
こんなの、と言う言葉に少しだけムッとした俺に、彼女は意地の悪い笑みを浮べて
「まあ良い、昨日のあれで帳消しにしておくとしよう。私があそこまで乱れたのは久しぶりだからな……」
き、昨日のあれ……昨日の情事を思い出し見る見るうちに俺の顔が赤くなってゆくのが自分でも分かる。
そういや、あれが俺の初めてだったんだよな……何と言うか……
「さて、そんな事より私は腹が減った、何か食わせろ」
「…………」
何と言う態度の変わり様、俺は唐突に眩暈と頭痛を感じ思わずこめかみを手で抑える。
いきなり何か食わせろって……ってちょい待て、
「お前さん、ひょっとしてここに居付くつもりか?」
「む?初めからそのつもりだが、それが如何したのだ?
……まさかとは思うが命の恩人に礼をしないのがお前の主義なのか?」
「えっと、俺はそう言う主義では無いです……」
「だったら早く飯を食わせろ、私は腹が減って仕方が無いのだ」
「……分かりましたよ……はい……」
……結局、そうなるのですね……?
俺はより激しくなった精神的な頭痛を堪えながら、
腹を空かせた彼女がこれ以上五月蝿くならない内に朝御飯を作るべく台所に向かうのだった。
―――第1夜、終―――
第1夜 おまけ
「―――そういや、時子、少し聞きたい事があるんだが……」
「む?私に聞きたい事か?よし、何でも聞いてくれ」
朝御飯のハムエッグを食べながら、
俺はテーブルの向かい側で3杯目の御飯の御代りをする彼女に質問をする、
そう、俺が一番彼女に対して一番気になっていた事があるのだ、それは、
「なら聞くけど、お前さんは今何歳なんだ、聞いた限りだと見た目以上に――――」
ど が す っ !
「―――ひでぶっ!?」
質問を言いきる前に―――彼女から返ってきた答えは、無言のグーパンチだった。
「女性に年齢を聞くのは野暮だと聞かなかったのか?お前は」
「……わ、わはりまひた……もうひひまへん……(訳 わかりました……もう聞きません)」
そっぽを向き、ハムエッグの黄身に醤油を垂らし掻き混ぜながら怒る彼女を前に、
見事なまでに頬を腫らした俺は弱弱しく同意する。
以降、俺は彼女に対して年齢を聞く事は無かったのだった……
―――おまけ 終―――