「織姫って可哀相だよね〜。好きな人に年に一回しか会えないなんて、私なら死んじゃう。」  
「バ〜カ、俺達だって似たような物だろ。間に流れてるのが天の川か、日本海か、のね。」  
俺達は北京の町を歩きながら七夕の話をしている。  
「私は涼也が頑張ってくれるおかげで、年に2回会えるもん。」  
蘭は頬を膨らませて言う。  
俺と蘭は2年前まで、生まれた時から一緒にいた。  
そして幼なじみという関係から脱却して、俺達は幸せの絶頂にいた  
だがそれを蘭の父親の中国転勤が引き裂いた。  
 
それから俺はバイトを始めた。  
蘭に会いに中国に行くために。  
そして何とか年に2回ここに来るだけのお金を手に入れ蘭との半年に一回の逢瀬を重ねている。  
 
「一回と二回じゃ大して変わらないだろ。」  
俺も苦笑して答える。  
「本当はもう少し来たいんだけどな…」  
「これ以上無理しちゃダメだよ〜。涼也だって学校とかあるんだし。」  
「あと二年だから。大学は日本で通えるように頼むから…その時は、一緒に行こうね。」  
「ああ、その時を楽しみにしてるぜ。あと蘭のためじゃなくて俺が来たいから来てるんだぞ。可愛い俺の蘭に会うためにな。」我ながらクサイセリフだと思う。  
「もう……」  
 
でも蘭は顔を真っ赤にして恥ずかしがってくれる。  
可愛いやつだ。  
「んじゃ行きますか。」  
「行きましょ〜〜。」  
半年ぶりの一泊二日泊まりがけデートの始まりだ。  
 
 
楽しい時は一瞬で過ぎていく。  
 
 
 
 
「もう終わりなんだね。」  
寂しそうに蘭が言う。  
この二日で色々な事をした。  
観光もした。  
おいしい食事もした。  
一つにもなった。  
でももっと一緒に居たかった。  
「まぁまた来るさ。」  
横に淋しげに立ってる蘭を抱きしめる。  
「うん…」  
「次は一月かな、まぁ頑張るさ。」  
「あは、待ってるからね〜。」  
「まぁ慎ましく待ってなさい。」  
「あはは、何それ〜。ねっ?」  
蘭が顔を寄せてくる。  
俺はそれに唇を重ねる。  
「はむっ……くちゅ…ちゅる……」  
 
「ぷはぁっ。うん、これでまた半年頑張る元気貰ったよ。」  
「俺も蘭に会うために頑張りますか。」  
「頑張れ!それじゃあね。」  
「それじゃあまた一月に。」  
「うん。」  
俺は、蘭の精一杯の空元気な眼差しを後ろに搭乗口へと入る。  
 
さあ勉強&バイト地獄の始まりだ。  
寂しくなんかない。  
精一杯自分を元気づける。  
 
 
逢ひ見ての  
後の心にくらぶれば  
昔は時を思はざりけり  
 

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