回転ベルトの中心で御寿司屋さんがあれこれせっせと握りまくっている。
入り口近くにはきっちり学ランを着込んだ少年が座っていて、彼はサラダ巻を
頬張りつつも皿の色を並べなおし、それから眼鏡の位置を直している。
隣では長いプリーツスカートの膝と膝の間に細い手を置き、金髪の少女がぼやいている。
「うにさんはまだかねぇ」
「乞食は黙ってろ」
「お前に言ってんじゃないんだ
いちいち返事すんな。カスが」
つっかかる声にも何処吹く風で少年は新しく玉子焼きの皿を取った。
一皿百円〜の回転寿司も、深夜になると客は目立って少なくなる。
(立地最悪な田舎に良くある潰れかけのチェーン店だというのも理由だったが)
「カス?いい口の利き方するじゃないか」
「気取ってんじゃねえ!大体てめーはむかしっからそうなん」
「誰のおごりだ。誰の」
積みあがった少女の皿を眺めて念を押すと、金髪がしおれて呻き声をだした。
「家の前でめそめそ泣くほどお腹がすいてるんなら、
『ありがとうございますいただきます一生ついていきます』と言いながら素直に食え。分かったら食え」
空になった緑茶を湯飲みに継ぎ足して、少年は次の獲物を知らぬ顔で物色しはじめた。
少女は泣くように呟いてから緑茶をちびちびとすすって、うにが出てくるのを夜更けの回転寿司でもうしばらく待つ。
「……この、おせっかい」