昼の華菜は、やはりいつでも毅然としたままだった。  
 そして毅然としながらも、あけすけなまでに弟への溺愛を隠そうとはしなか  
った。  
 そんな姉は夜な夜な、昭司の前でだけ淫戯に溺れる切なげな女の顔を見せて  
くれる。  
 昼の姉が生真面目で強くあればあるほど、ますます夜の痴態を鮮やかに際立  
たせ、そんな姉を屈服させることでこの上もなく昭司を欲情させるのだった。  
 裕一は昭司を前にして、「ああ、華菜さんのオッパイを揉みしだきたいな」  
と両手を下品に把握する仕草をしながらしばしば語った。  
 しかしそんな裕一も、よもやアイドルのように神格化された華菜が、昭司の  
前で尻穴までひくひくさせて毎晩悶絶しているとは想像だにしなかったに違い  
ない。  
 風間暎子が子悪魔的な光を瞳に湛えて再び昭司の前に現れたのは、そんな風  
に彼が毎晩姉の身体を貪りながら、深遠なる性の世界への探究に夢中になって  
いる時のことだった。  
 
 
 放課後、昭司は翌日の授業に使う資料の詰まったダンボールを抱えて廊下を  
歩いていた。  
 すでに人影の絶えた校舎の廊下をよたよたと歩き、教室の引き戸を足で蹴り  
開け、室内へと入っていく。  
 そこで、昭司は教室の隅の机の上にあぐらをかいて座っている女生徒がいる  
ことに気づいた。  
 彼女は、頬杖をついてカチカチと携帯電話をいじっている。  
 「──姉貴じゃないか」  
 風間暎子は昭司に気付くと、顔中に笑みを浮かべた。  
 「なんだ、昭司じゃん。ああ、ここって昭司のクラスだったんだ」  
 「知らずにいたのかい。三年生がこんな所で何をしてるの?」  
 昭司が呆れて言うと、  
 「別に。遊びに行ける友達はいないかと思って、メール打ってただけ」  
 暎子のスカートはとても短くカットされているのに加え、彼女は片膝を立て  
て机に座っているので、股間のV字ゾーンが際どく見えそうになっている。  
 暎子の股間を昭司が凝視していることに気付いた彼女は、  
 「あんたはいつも人のパンツばっかり見ようとしているんだね」  
 と言って、ふふふっ、と笑った。  
 「この間は結構なパンチラ、ゴチになりました!」  
 昭司が大仰に頭を下げて見せると、  
 「いえいえ、こちらこそ、汚いパンツで恐縮です」  
 と暎子も頭を下げて見せた。  
 なんだかおかしな挨拶に、ふたりは顔を見合わせて笑った。  
 
 「今度は、おまえの好きなパンツを穿いてきてあげようか」  
 暎子は悪戯っぽい目をした。  
 「昭司は、あたしにどんなパンツを穿いてほしい?」  
 昭司は首をひねった。  
 「そうだね。白い──清純なパンツかな?」  
 「あたしにそんなパンツが似合うと思ってるの?」  
 「姉貴みたいな人が白いパンツを穿くから価値があるんじゃない」  
 真面目くさった顔で言った昭司に、暎子はくくくっ、と笑った。  
 「やっぱり、おまえはすごいエロだね」  
 「そうかな? エロい奴は、Tバックとかを見たがるんじゃないの」  
 昭司は首を傾げる。暎子はそんな昭司の鼻先に人差し指を当てた。  
 「直接的な裸より、意外性とかギャップを求めたがる男の方がエロいでし  
ょ」  
 「なるほど、そうかも知れないね」  
 暎子の指が鼻から離れ、下の方へ伸びていった。  
 「あ、ちょっと姉貴、どこを……」  
 暎子のほっそりと長い指は昭司の抱えたダンボールの下を潜り、ズボンの前  
を撫でた。  
 「うふふ、すごい。あっという間に勃起したじゃない、昭司」  
 「ちょっ、やめ──」  
 淫らな従姉の整った指は昭司の太い怒張を繊細に握り、妖しく上下動を始め  
た。快楽が送り込まれ、腰の力が抜けていくような気がする。  
 昭司が口から声を洩らすと、暎子は愉快そうに笑った。  
 五本の指は独立した蛇のようにペニスを這いまわり、時に優しくくすぐり、  
かと思えば不意に強く締め付け、幹を絞り上げる。  
 「やめて欲しいの? 昭司」  
 「う、や、やめないで、姉貴……」  
 昭司の顔が苦悶に歪むような表情になった。  
 暎子は昭司の耳に唇を寄せてきて、耳に息を吹きかけた。  
 そして、  
 「ごめんね。あたしはドエロだから、昭司のそんな表情が大好きなの」  
 と囁いた。  
 そっとさすってくる指はズボン越しで、刺激はじれったく、もどかしい。  
 しかし、それでも敏感な少年の性器はみるみる追い詰められ、快感のマグマ  
は根元から上昇してくる。  
 「姉貴、もう、だめ……」  
 「イクの? 昭司。学校の教室の中でイッちゃうの?」  
 暎子は愉快げに笑った。  
 「やっぱりあんた、すごいエロ坊主だね」  
 刹那、パンツの中で白いマグマが炸裂して噴火した。  
 全身の力が抜け、ダンボールが手から滑り落ちた。  
 
     ドサドサドサッ  
 
 「やだ、プリントが飛び出しちゃったじゃない」  
 暎子がさすがに驚いて言うが、昭司はそのまま廊下にへたり込んでしまって  
立ち上がることもできない。  
 「──そんなに気持ち良かったの?」  
 暎子は優しく声をかけ、そっと昭司の頭を撫でた。  
 右手で精液の噴出した昭司のペニスをいやらしく撫でまわす一方で、左手で  
は幼児に対するように昭司の頭を撫でている。暎子の中では、淫蕩さと母性が  
どこかアンバランスでありながら、それでいて矛盾なく同居しているようであ  
った。  
 そんな暎子は、快楽で腰の立たなくなった昭司に温かな笑顔を送ると、  
 「うふふ、可愛いね」  
 と昭司の頬に顔を寄せてそっと口づけた。  
 「昭司、今日はもうすることないんでしょ。あたしに付き合いな」  
 一転、暎子の声には有無を言わせない強い響きがあった。  
 
 風間暎子は屈託なく良く笑う明るい表情と、全身から放たれる正のオーラの  
持ち主だった。  
 風紀委員長さながらの華菜とは明らかに異質な美しさではあったが、それは  
それで魅力的だと昭司は思っていた。  
 スレンダーでいてグラマラスなスタイルと、校則に真っ向から挑戦状を叩き  
つけるような明るいブラウンの巻き毛やメイクは、まるでファッション誌のグ  
ラビアからそのまま飛び出してきたかのような華やかさだった。  
 そして、持ち前の明るさと口さがのなさが前面に出た暎子は、そのきらびや  
かさとあいまって、誰に対しても臆することがない。  
 それは、時には敵を作ることにもつながるのかも知れないが、恐いもの知ら  
ずで少し小生意気な、若さあふれる女子高生としての彼女の魅力につながって  
いるのだった。  
 そんな、内面も外面もきらびやかな暎子は、ひとりの一年生の昭司から見る  
と、まるで別世界に住むスターのような存在だった。けれども従弟としての彼  
にとっては、気さくで気取らないもうひとりの姉でもあった。  
 暎子は、サナギが蝶になるほどの外見的な成長を遂げたものの、中身は依然  
として昭司の「姉貴」のままであった。昭司をからかったりわざと意地悪をし  
て困らせて反応を楽しんだり。幼い時の関係そのままに彼に接してくる。  
 だが、昭司の方は突然美少女に脱皮してしまった従姉にどぎまぎしていつも  
戸惑いを隠し切れない。それがいよいよ暎子の嗜虐心を刺激し、彼女のからか  
いはいつしか性的な色の濃い、むしろ誘惑に近いものへと徐々に形を変えてい  
きつつあった。  
 元々奔放で悪戯好きだった暎子は、思春期の到来とともに少女としての魅力  
を備えてきたことによって手のつけられない子悪魔に育ってきつつあった。  
 そんな子悪魔は入学以来しばしば昭司の前に現れては姉の目を盗んでちょっ  
かいを出すというスタンスに留まっていた。  
 しかし今日、魅惑の従姉は一体にどんな気まぐれを起こしたのか、すっかり  
戸惑っている昭司の手を引いて、街へと飛び出したのだった。  
 
 昭司達の高校があるのは小さな町だったけれども、古くからある私鉄や最近  
通った環状の地下鉄一本で、大きな街へとすぐに繰り出すことができる。  
 暎子はごく自然な感じで昭司の手を握ったまま、街のランドマークとなって  
いる高層複合レジャー施設沿いの大通りに向かって先に立っていく。そして、  
彼の隣に位置を占めながら、楽しげな感想を述べながらウィンドウショッピン  
グを楽しんだり、ピンク色のワゴン車が売っているクレープの行列に並んで大  
いに照れる昭司の様子を楽しんだりした。  
 暎子はどんな所にいても何をしていても、その姿は人目を引いた。  
 歩けば皆が振り返るし、ゲームセンターでダンスゲームをすれば遠巻きに立  
ち止まる人が何人もいる。  
 今日は昭司が隣にいるから何もないが、もし一人で歩いたなら、ナンパのメ  
ッカとしても有名なこの通りではひっきりなしに声がかかるに違いなかった。  
 立ち居振舞いが絵になる暎子は、生まれついての人気者なのではないかと昭  
司は思った。  
 そして、そんな暎子と固く手を握ったまま街を歩く昭司は、学校で姉といる  
時に似た居心地の悪さを感じているのだった。  
 立ち止まって昭司に胡散臭げな視線を送ってくる人々に一々事情を説明した  
い。しかし、残念ながらひとりひとりに語っていたら、説明をし終えるより先  
に立ち止まる人の方が増えていきそうな気配だった。そもそも、その中に学校  
の生徒でもいたら結構厄介なことになるのでは、と昭司は思ったが、暎子は微  
塵も意に介している様子はない。  
 
 「ほら、昭司、クレーンゲームやるよ、クレーンゲーム!」  
 暎子は学校を飛び出すと、水を得た魚のようにテンションが上がったようだ  
った。顔を輝かせて昭司を引っ張りまわす。  
 ひとしきり大型ゲームセンターではしゃぎまわった後は、ふと昭司を見つめ  
て、  
 「昭司、チョコレートパフェ食べに行きたいわ」  
 と言い出す。  
 「マジっすか。それだけは勘弁してよ」  
 「アハハッ、勘弁できないよ。ロッテリアの向かいにある店が美味しいんだ  
って」  
 蛍光色の華やかな内装を見て尻ごみしている昭司の手をぐいぐいと引っ張っ  
ていく暎子。  
 「姉貴、甘いものばっかり食べてたら太るよっ」  
 「大丈夫。あたし、いくら食べても太らないから」  
 「そんな体質の人は存在しないって……」  
 そして、背の高いグラスに入ったフルーツパフェをぺろりとたいらげるや、  
今度は、  
 「昭司、ボーリングいくぞ!」  
 と席を立つのだった。  
 「そのバイタリティーはどこからくるんだ、一体」  
 そして、ハイテンションの彼女はストライクを連発し、その度に振り向いて  
ポーズを決めるのだ。  
 遊んでいる時の彼女は、一事が万事そんな調子だった。  
 ひとまわりして、疲れ果てた昭司に向かって今度暎子が口にしたのは、  
 「昭司、下着買いに行くから付き合って」  
 だった。昭司は大いに慌てて、  
 「じ、冗談じゃないよ!」  
 と手を振った。  
 「彼氏の振りしておけば平気だって」  
 「尚更ダメだよっ」  
 昭司がいかに逆らおうとも、暎子はまったく譲る気配はない。  
 「誰もなんとも思わないから。普通、普通」  
 「どこの普通の高校生がランジェリーショップに出入りするんだよっ」  
 「ごちゃごちゃ言うな。ほら、いくぞ。レッツトライ!」  
 「やっぱり挑戦って言ってるじゃないか。あわわ、む、胸が当たってる!」  
 暎子が昭司の腕を強く引くため、その巨乳がぐいぐいと腕に押し当てられる。  
 「サービス、サービス。だからおとなしくおいで」  
 「そんな交換条件知らーんっ!」  
 そうして昭司は、生まれて初めて女性下着店へと引きずり込まれることにな  
ったのだった。  
 
 昭司はカラフルな布地が所狭しと吊るされている店内で、所在なげに立ち尽  
くしていた。  
 若い女性がその一枚一枚を手にとって吟味する中、時折白い目で彼を見てす  
ぐに目を伏せている──ような気がする。  
 ここまで彼を引きずってきた張本人は、哀れな彼を店内に置き去りにしてさ  
っさと試着室に篭もってしまった。すっかり梯子を外された体の昭司は、子供  
の頃にデパートで迷子になって以来の心細さを感じながら、必死で空気や木の  
ように環境の一部になろうと気配を消していた。  
 「昭司、昭司」  
 試着室の奥からくぐもった声が聞こえた。  
 「なんだい、姉貴」  
 「こんなの、どう?」  
 ザッ、と音を立ててカーテンが勢いよく開いた。  
 そこには、大きく谷間の開いたブラジャーと、ほぼヒップ丸出しで股間も鋭  
く切れ込んだ黒いレースの下着をつけた淫靡な従姉が立っていた。  
 「な、なんて格好でカーテン開けるんだよ、姉貴!」  
 「なんでよ。下着店で下着姿になって何がおかしいのよ」  
 「外に出てきたらダメに決まってるだろ!」  
 「何だ、おまえが中に入ってきたかったの?」  
 「違うよっ」  
 力一杯否定した昭司を無視するように、暎子はローライズパンツのヒップを  
気にし始めた。  
 「少し下がりすぎかしら。これじゃあお尻の割れ目まで見えそう」  
 「ちょ、な、何をする気だよっ」  
 暎子はおもむろに両サイドに手をかけると、ぐいっと引き上げた。  
 それに合わせて、股間部の布が幾度も食い込みを増す。  
 「あ、あわわ、や、やめてくれよ、姉貴っ!」  
 「あら、失礼。引っ張りすぎてお毛毛が少しはみ出しちゃったわ」  
 「このアホーっ!!」  
 昭司が勢いよくカーテンを締めると、奥でカラカラと愉快げな笑い声が聞こ  
えた。絶対にわざとやっている、と彼は思った。  
 
 心身ともに消耗しきった昭司は、下着店を出ると暎子に手を引かれ、気が付  
くと芸術劇場前の大きな公園へと連れて来られていた。  
 すでに陽は沈み、夜の闇が色濃く立ちこめている。  
 噴水のある公園の中央から少し離れた、人気のないベンチに昭司は座ってい  
た。  
 「昭司」  
 トイレに行く、と言っていた暎子がこちらに歩いてくる。  
 「ねえ、あたしがどんな下着買ってきたのか知りたくない?」  
 いつもの悪戯っぽい表情になる。  
 「どんなの買ったの?」  
 「教えてあげないよ」  
 暎子の目が悪の笑いを浮かべはじめる。  
 昭司が首を傾げると、暎子は座っている彼の前に仁王立ちになって、両手を  
腰に当てて胸を張った。  
 「もし知りたかったら──自分で確認してごらん」  
 暎子は腰を軽く振って短くカットしたスカート揺すって見せた。  
 「え……確認って言われても……」  
 「わかるでしょう? 昭司」  
 美しい子悪魔の瞳の奥に妖しい光が灯った。  
 薄い布地は、彼女のむっちりと美味しそうな太腿の上で風にそよいでいる。  
それは、美少女の大切な場所を守っているにしてはあまりにもきわどく頼りな  
い。しかし、肝心の本人はと言えば、それを守るどころか両手を腰にあて、む  
しろ昭司に突き出すようにしてにやにやと彼を挑発しているのだった。  
 「いつも見たがっているでしょう。見たら? 昭司」  
 「え、見てもいいの」  
 「さあ、どうかしら。スカートなんてめくられたら、大声出すかも知れない  
わよ」  
 暎子は含み笑いをした。  
 「そ、そんな。自分で言っておいてそれはないだろ……」  
 「ふふふ。でも、そういうものだとあたしは思うわ」  
 小生意気で理不尽な姉貴は戸惑う従弟の顔の前に腰を近づけると、この上も  
なく楽しげに笑った。  
 「おまえがあたしのパンツを見たいなら、そうすればいいじゃない。  
 そうすれば、あたしは受け入れるかも知れない。  
 平手打ちをするかも知れない。  
 でもそれは、おまえの本当の気持ちなんだから、きっとあたしはおまえのこ  
とを嫌いになったりしない」  
 暎子は昭司の頬にそっと手をあてた。  
 「いつでもおまえの望みが叶うわけではないけれど、おまえの正直な気持ち  
は、それだけで大切な価値があるものだよ。  
 たとえそれがどんなものでもね。  
善悪なんて誰にも決められないものだから、一番大切なのは、おまえが本気で  
求めるかどうかだと思う」  
 ふと昭司は、この従姉は自分と姉のことを知っているのだろうか、と思った。  
 「──だから、何も恐れることなんてないよ、昭司。さあ、もしおまえがあ  
たしを欲しいなら、あたしを求めてごらん」  
 
 暎子は、もう一度スカートを悩ましげに揺すって見せた。  
 「姉貴が、欲しい」  
 昭司は若干震え気味の手を、恐いもの知らずの姉貴のスカートの裾に伸ばし  
た。  
 そっと上へ持ち上げていくと、それは禁断のカーテンのように、誰も見るこ  
とのできないすべすべむっちりとした太腿から股間への禁猟区を露にしていく。  
 危険なデルタエリアを隠していたのは、白いレースの柔らかそうなショーツ  
だった。  
 「おまえ、女の子のスカートなんかめくってパンツを凝視したらダメでし  
ょ!」  
 ふと上から、暎子が軽く昭司の頭をつついた。  
 「そんな、姉貴が……」  
 「言い訳すんな。お仕置きだ!」  
 暎子は楽しげに言うと、スカートの布をすっぽりと昭司の頭にかぶせた。  
 「む、むーっ」  
 窒息させんばかりに、ぐいぐいと力任せに白いパンツを昭司の顔面に押し付  
けてくる。  
 そこは、微かに甘くて、むっとするような女の匂いに満ち満ちていた。それ  
は華菜の股間よりもずっと熟成されたような、ずっと女っぽくいやらしい匂い  
だった。  
 スカートの中は誰も入ることのできない許されざる密室のはずだった。昭司  
は誰よりも素敵な先輩の最も隠された秘部へと迎え入れられ、あまつさえ美少  
女の股間に顔を押し付けているのだった。  
 昭司は、鼻から大きく息を吸った。  
 「こ、こら。おまえ、どこの匂いを嗅いでるのよ」  
 「先輩のアソコの匂い」  
 後輩はわざとクンクンと音を立てて見せた。  
 「こら、ドスケベ! やめなさい」  
 彼は舌の先でそっと彼女のスリットを布越しになぞった。  
 「んっ!」  
 びくんっ、と電流が走ったように暎子の身体が震えた。  
 昭司はそれに勢いを得て、さらに舌を伸ばして、本丸の陥落した先輩の秘部  
を攻めにかかる。  
 暎子の膝がガクガクと揺れ、頭を強い力で掴まれる。  
 夜の公園で先輩のスカートに頭を突っ込み股間を舐めまわす昭司は、ひどく  
卑猥な感じがして、その行為に熱中した。  
 その時、昭司のポケットから場違いに明るいメロディーが流れた。  
 昭司はスカートから頭を出した。  
 「メール。姉さんからかも……」  
 ズボンから携帯を取り出すと、案の定、帰りの遅い弟を心配した姉からの  
メールだった。  
 返事を打とうとすると、上から細い手が伸びてきて、ひょいっとそれをさら  
っていった。  
 「姉貴、何するんだよ」  
 暎子は電光石火の指遣いで勝手にメール画面を操ると、カチリと送信してし  
まった。  
 「あーっ、何を送ったんだよっ」  
 「お姉様に、裕一の家に泊まるから心配しないようにって送った」  
 「ええっ。そんなでまかせを」  
 「いいのよ」  
 と、誰よりも自由で奔放な従姉は言った。  
 「だっておまえは今夜──お家に帰れないんだから」  
 暎子は猫のように目を光らせて、ズボン越しにぎゅっと昭司のペニスを握っ  
た。  
 
 高層複合レジャー施設から少し離れた駅側に、バーやブティック、書店にコ  
ンビニといった雑多な店の建ち並ぶ通りがある。  
 その並びに、まるでそこにあるのが当然のように、少し洒落たブティックホ  
テルが一角を占めていた。  
 暎子に連れられて昭司が会計を済ませ、しんとした廊下を抜けてふたりは個  
室へと進んでいった。  
 狭さと薄暗さ、必要以上に華美な内装がどこか淫靡で、昭司が暎子の手をぎ  
ゅっと握ると、いつの間にか自分の手が汗ばんでいるのに気付いた。  
 
 
 ドアを入ると、ドアを閉めるのもそこそこに暎子は昭司の胸元に潜り込んで  
きた。  
 首の後ろに両手をまわされる。  
 見つめ合った。  
 腕の中にある美少女の身体は柔らかくて温かい。そして、女のフェロモンを  
発散しながら昭司を無言で誘惑するのだ。  
 誰の言うことも聞かない我がままな子悪魔の我がままなエロボディがこれか  
ら自分のものになるのかと考えた瞬間に、彼の股間は鋼鉄のように硬直し、不  
意に襲った衝動のままに昭司は暎子の巨乳を鷲掴みにした。  
 「ふふ、焦ってはダメよ」  
 従姉は豊かにたゆむ乳を揉みしだくのを許したまま、慌てずに従弟に言い聞  
かせた。  
 「まずはキスから……でしょ?」  
 そんな暎子は、子供に箸の遣い方を教える母のようでいて、ファウスト博士  
を悪徳の道へといざなうメフィストフェレスのようでもあった。  
 
 
 暎子は昭司の膝を折ると、彼をベッドに押し倒した。クッションの利いたダ  
ブルベッドの上で彼は大きく弾んだ。  
 シーツの上に身を横たえた彼の上には、見上げるように仁王立ちになってい  
る暎子。不敵な笑顔を浮かべる彼女の顔は彫刻のように整い、脚はすらりと伸  
びて、トップモデル顔負けの完璧な美しさを誇っている。そして、少しだけ気  
が強そうに上がった唇の端が男心をくすぐる彼女のアクセントになっているの  
だった。それはまるで、かしずいた奴隷を遥か高みから見下ろす古代の女王に  
似た種類の気高い美しさでもあった。  
 しかし、この美しく淫らな女王は古代の奴隷よりもずっと甘美で破戒的な使  
役をこの恋の奴隷に課すつもりでいるようだった。  
 
 暎子は押し倒した従弟の頭を抱えて彼の目をまっすぐに見据えた。射抜くよ  
うな眼力で彼を捉えて離さないまま、昭司の唇に形の整った自らの唇を近づけ  
る。  
 軽く唇を触れて離す。ぷるん、とゼリーのような柔らかな感触がして、すぐ  
に離れた。  
 彼女の唇を光らせているグロスのぬめりから目が離せない。  
 再び、従姉の唇が近づいてきて、彼の唇を捉えた。  
 今度は、上下の唇が昭司の唇をついばみ、甘く引いて滑って離していく。昭  
司は、唇が性感帯だなんて、この時に初めて知ったのだった。  
 再び唇を合わせた時、暎子の唇から長い舌が伸びてきた。それは蛇のような  
動きで彼の舌を絡めとり、口腔内の性感帯を外界へと引き出した。  
 昭司の舌が引き出されると、暎子は大きく口を開き、彼の舌を唇で挟んで根  
元から自らの口腔に引き抜くようにした。  
 彼女が昭司の舌を吸い込むと、ずずっ、という卑猥な水音が静かな部屋に響  
いた。  
 彼の舌を吸い込もうとする一方で、彼女自身の口をさらに昭司の口の中にま  
で近づけていこうとする。ぬめぬめと蠢く暎子の舌が昭司の舌に絡みつき、ざ  
らざらとした表面でこすりたてる。その卑猥な舌はひとしきり舌をしごき立て  
ると、さらに奥へと侵入し、淫らな意思を持った軟体動物のように昭司の歯や  
歯茎、口蓋に唇を這いずり回る。  
 空調の微かなモーター音に比して、唾液をすする音、舌と舌とが絡み合う湿  
った音がやけに大きく感じられる。それはどこかいかがわしい感じのするBGM  
として、ふたりだけの背徳の時間を流れ続けていく。  
 昭司の伸ばした舌を、暎子は唇をすぼめて締め上げ、しごきたてた。彼は、  
自分の舌がペニスになって暎子の顔に開いた性器に責められているような錯覚  
を覚えた。しかもそれは強く猥褻な意志を持った性器であり、湿った水音を立  
てながら素早いピストンを繰り返すのだ。  
 そして、昭司の吐く息と暎子の吐く息は荒く熱く互いの顔に吹きかけられ、  
くすぐり合い、それすらもじれったい愛撫のひとつとなって、猥褻な一室とい  
う淫らなキャンパスを紫に近い桃色の油絵の具で塗りつぶしていく。  
 昭司はもう、暎子の唇のひとつひとつの動きから眼を離すことができない。  
ああ、キスがこんなにもエロいだなんて、今まで知ることがなかった。口でセ  
ックスができるだなんて、彼は初めて知った。  
 「昭司」  
 と、魅惑的な子悪魔は唇を手の甲で拭いながら言った。  
 「おまえの唾液をあたしに飲ませて」  
 「つ、唾を……?」  
 子悪魔の瞳はいよいよ自らのフィールドにおいて輝いていく。  
 「そう。おまえの唾を、あたしに飲ませなさい」  
 暎子の瞳は淫らな口のセックスによって、油を張ったように淫蕩さを増し、  
ギリシャ彫刻のように完璧な美しさを誇っていた顔は今や紅潮し、彼女に血が  
通っていることをこの上もなくいやらしく主張している。  
 暎子は軟体生物のように昭司の口に吸い付くと、彼の口腔を強く吸引した。  
 ずずず……っ、と音を立てて昭司の唾を吸い込む。そして、喉を鳴らしてご  
くごくとそれを飲み下していく。  
 「もっと。もっと飲ませて」  
 飢えて乾いた何かを満たそうとするかのように、暎子は夢中になって昭司の  
唾をすすり、嚥下していく。薄暗いベッドライトに照らし出され、壁に大きく  
描き出された彼女の影法師は、夜な夜な行灯の油をすする化け猫をさえ彷彿と  
させる。一体昭司の唾に何の力があるものか、妖しい猫娘は一心不乱に彼の口  
を貪り続けるのだった。  
 やがて、ちゅぽっ、という音を立てて唇を引き剥がした暎子は、顎へと唾液  
を滴らせながら、昭司の目を見つめた。  
 「昭司。今度は、おまえのチンポを食べたいわ」  
 彼女は舌で唇を舐めながら、そう言った。  
 
 焦らされるだけ焦らされた昭司の剛直は精液の噴射手前一歩手前で充血して  
張り詰め、今にも破裂しそうな水風船を連想させる。  
 仰向けになった昭司の股間を跨いだ暎子は、人差し指と中指で自らの股間を  
パックリと開いた。下から見上げると、赤い亀裂がやけに大きく感じられ、そ  
の上に実ったふたつの下乳の間から、女王然とした暎子の美貌が昭司の顔を見  
下ろしている。  
 その視線は突き刺さるように鋭く、とろけるように甘い。  
 昭司は暎子の眼力で身体を硬直させられる。それはまるで、見つめられるこ  
とで動くことのできなくなる魔法をかけられたよう。悪魔的な女を魔女と呼ぶ  
ならば、風間暎子は掛け値なしに一級の魔力を持った魔女に違いなかった。  
 暎子が腰を静かに落としていくと、昭司の分身はずぶずぶっ、と女の底なし  
沼へと沈んでいった。  
 「うぅっ」  
 昭司が呻く。  
 暎子は快感を味わうように目を瞑って大きく息を吐いた。  
 そして、彼女は目を開くと、  
 「動くわよ、昭司」  
 と言って、ゆるやかに腰をまわしはじめた。  
快楽の粘膜がざらついた膣の中でこすられ、昭司はのけぞる。それを高みか  
ら満足げに眺める暎子自身も、快感に背中を小刻みに不規則な痙攣をさせてい  
る。  
 「気持ちいいの、昭司?」  
 「あ、ああ。たまらないよ。魂が抜けていきそう……」  
 「ふふふ、可愛いのね」  
 目を細めて笑うと、長い睫毛が揃って伏せられ、目元に色気が漂った。  
 だが、じりじりと責め上げる暎子自身も同様に快楽が送り込まれており、悦  
楽の魔女は快楽に理性のコントロールを奪われるのを避けるように耐えながら  
荒い息を吐いている。  
 そして、一度欲壷がぎゅっと収縮すると、それを合図にして誇り高き痴女は  
美しく卑猥なヒップを前後に振り始めた。  
 陶器のようにすべすべとした腰から丸い尻にうっすらと汗が浮かび、引き締  
まった腹が収縮して野性的な魅力を発散する。  
 優雅なグラインドでは昭司は目尻を下げて穏やかな快感にたゆたう。すると、  
それを見下ろす暎子は悪戯っぽく笑って、不意に激しく前後にペニスをこすり  
たて、攻勢に転じる。途端に昭司は背筋を突き抜けるような快楽攻撃に表情を  
歪める。  
 そんな昭司を眺める暎子はこの上なく愉快げで、まるでそれは快楽によって  
彼の理性さえも制御しきった誘惑の悪魔のようにも見えるのだった。  
 「う、ぐ、ぐ……っ」  
 刹那、昭司の股間の奥で、白いマグマが沸点を越えた。  
 「出すの、昭司? いいわよ。あたしの奥深くまでおまえの精子を撃ちこん  
でくるがいいわ」  
 妖しく挑発した悪魔が笑った瞬間、昭司のペニスは解放されて白濁液が間歇  
的な噴射を始めた。  
 
 幾度もの射精を経て、今もなお昭司の股間に跨った淫らな悪魔は腰を振って  
いる。  
 そしてその淫猥なダンスは幕を下ろすどころか、いよいよ佳境を迎えようと  
しているのだった。  
 狭い室内には昭司と暎子の分泌する淫液と汗、吐き出される熱い息の生々し  
い生命の匂いが混在してこもり、夏独特の熱気の中で醸し出されて、比類のな  
い淫気が濃密に立ち込めていた。  
 薄い壁ひとつ隔てた向こう側の、多くの人が行き交う大通りの日常と、この  
部屋が地続きになっているとは、昭司には感じることができない。さながら暎  
子の淫らな魔力に支配された異空間へと迷い込んだ心地がする。  
 「う、あっ。また……出るっ!」  
 昭司は今夜何度目になるかわからない噴射を暎子の肉壷に放った。そして、  
ぐったりと力を抜いて横たわった。  
 だが、なお暎子の襞肉は満足しないかのように、蠕動し収縮してペニスに血  
液を吸い込んで勃起を促す。  
 昭司の理性は射精とともにとうの昔に吹き飛び、今や動物的な性的本能に支  
配されて勃起と射精を繰り返し、ただただ快楽の螺旋回廊を廻り続けて堕ちて  
いく。  
 もはや暎子の目的は交合ではなく、昭司の精液を一滴でも多く絞りだす作業  
に変わったようですらある。汗でべっとりになりながら美女が昭司のペニスを  
貪り躍動する姿は一種凄絶ですらあり、いつ果てるとも知れない快楽の無間地  
獄を連想させる。  
 昭司は暎子の圧倒的な磁場に捉えられたまま、身動きひとつとることができ  
ない。それは、巣に捕らえられた蝶が女郎蜘蛛にじわじわと食い尽くされてい  
く様子にどこか似ていた。  
 「も、もう、ダメだ。姉貴、許して。これ以上はもうダメだよ」  
 ついに昭司は泣きを入れた。  
 「許してほしいの?」  
  猛る魔女は激しく腰を振りながら問う。昭司はがくがくと首を振って頷い  
た。  
 「……そう。じゃあ、やめてほしいなら、許してほしいなら、」  
 暎子は昭司の情けない顔を覗き込んだ。  
 「──あたしのことをお姉ちゃん、と呼んでごらん」  
 意味はよくわからなかったが、とにかく解放されたい一心で昭司は叫ぶ。  
 「もう許してよ、お姉ちゃん」  
 口にした瞬間、昭司の股間で睾丸に溜まっていた最後の精液が破裂した。  
 ぶしゅ、ぶしゅと、幾度もの射精を繰り返した後とは思えない量の精子が噴  
き出し、それは暎子の膣奥を直撃し、暎子を大いに満足させた。  
 大の字になった昭司はぴくりとも動かない。  
 「いい子ね、昭司」  
 屍のようになった昭司の唇に、淫らな悪魔は穏やかな笑顔をうっすらと浮か  
べると、唇に優しいキスをした。  
 
 

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