連日暑さの続く昼休み。
廊下は雑談をしたりふざけてまわったりする生徒達であふれ、元気のありあ
まった少年少女達の活気でざわつきが途絶えることがなかった。
そんな中、手早く弁当をたいらげた昭司は、ひとり図書館へと向かっていた。
ふたりの男子生徒が座り込んでいるのを見て、女生徒グループが時折爆発す
るような笑い声を立てている階段を昇っていくと、三階で一際賑やかな集団に
出くわした。
一瞬だけ目を遣ると、その集団の中心にいるのは姉の華菜だった。
学園のアイドルの華菜の周囲には常に誰かが集まって彼女と関わりを持ちた
がり、華菜がひとりでいるということはない。むしろ、こうして彼女のまわり
には人だかりができていることが多いのだった。
昭司が三年生の集団を避けて通り抜けていこうとすると、「昭司!」という
大きな声がした。
振り返ると、輪の中心にいた華菜が弾けるような笑顔でこちらに手を振って
いた。
他の三年生達の目を気にした昭司が軽く会釈だけして立ち去ろうとすると、
華菜はそれを知ってか知らずか、
「ちょうど良かった。ちょっと話があったのよ」
と輪を飛び出してきて、弟の手首を取ってずんずんと階下に続く廊下へと歩
き出した。
「ね、姉さん。みんなを放っておいていいの?」
突然の主役の退席にぽかんとしている取り巻き達を後ろに見ながら昭司は引
きずられていく。
「いいの、いいの。あんたが気にする必要なんてないのよ」
華菜は愉快そうに笑うと、何を意図したものか、教室から離れた職員室に近
いエリアへと弟を引き連れていったのだった。
職員室のある東棟は、生徒達の数も少なく、廊下はしんと静まり返っている。
時折少し離れた職員室の引き戸がガラガラと開いて、教諭がいずこかへと立
ち去る足音が響くだけだ。
昭司の手を引いてその廊下に差し掛かると、華菜は周囲を見回して誰もいな
いのを確認してから、素早く弟を職員用トイレへと連れ込んだ。
パタンと薄いドアを閉めて鍵を掛けると、窮屈なまでに狭い個室の中で姉弟
は間近に向かい合った。
「話ってなんだよ、姉さん?」
昭司は期待に胸を高まらせながら訊ねた。
「ふたりの時は」
と美姉は両手を伸ばして、自分よりも背の高い弟の首の後ろにまわす。
「お姉ちゃんと呼びなさい」
華菜は爪先立ちになると、弟の唇に自らの唇を重ねた。
昭司が鼻息を荒くして姉をかき抱くと、その身体は羽毛のように柔らかく、
さらさらとした髪の手触りは絹のようだった。制服の上から抱きしめてみると
意外に細い。
「話なんて別にないのよ」
舌を伸ばして弟の唇を舐めながら華菜は言った。
「ただ、学校の中で少し昭司を可愛がってあげたくなっただけ」
華菜の目の奥に深海の藍色のような色が滲んだ。
「学校と家ではけじめをつけないといけないんだろう?」
何度となく姉から厳しく言われた昭司が聞き返す。
「そうね。でも、お姉ちゃんの方があんたに構ってあげたくて我慢できなく
なったみたい」
姉はそんなことを言って、昭司の股間をズボン越しにそっと撫で上げた。
昭司は股間への快楽刺激に反射的に腰をひいた。
「昭司、そろそろ溜まってきている頃じゃないの。もう四日も出していない
でしょ?」
「う、うん。まあね……」
ここ数日ほど華菜は間近に迫った水泳部の記録会に向けての準備で忙しかっ
たため、昭司は姉の身体を求めずにいた。
「ひとりで出したりはしていないでしょうね?」
華菜は顔を弟の顔に近づけて、少しだけ険のある目をした。
「し、してないよ」
「いい子ね。もうこれからは自分で出してはだめよ。お姉ちゃんがいつでも
してあげるから」
そう言うと、華菜はズボンの上から昭司の肉棒を掴み、布越しに軽くこすり
上げる。強めの快感に力が抜け、昭司は膝を折りそうになる。
なおも姉は弟の快楽茎をしごき上げながら、
「昭司の射精管理はお姉ちゃんの仕事なんだから。あんたが、そこの玉に精
液を溜めすぎて苦しい思いをしないように、お姉ちゃんが面倒を見てあげる。
いつでもあんたが何日溜めてるか数えているんだから、勝手にひとりで出した
りしたらダメよ。もしひとりでしたら──」
と強力な視線を送っておいて、ぐっとペニスの根元を握る。
「お仕置きするからね」
悪戯っぽく笑った。
華菜はしゃがみ込んで弟のズボンとパンツをずり下ろすと、昭司を洋式の便
座に腰掛けさせた。
弾むように飛び出した男根が反り返って元気よく天を向く。
「あらら、やっぱりこんなに硬くなっているわ。苦しかった?」
華菜は、精子が溜まってくると苦しくなると思っているものらしく、腹痛の
時にするように、優しく亀頭を愛撫した。
「今楽にしてあげるからね」
囁くように告げると、口を開いて欲棒を呑み込んでいく。
温度の低い粘膜が滑らかに亀頭を包み、羽毛で軽く撫でられるようにソフト
な快感がペニスを這っていく。
姉は一度肉棒を根元まで深く呑んでから、口全体でこすりあげるようにして
先端まで戻り、激しく亀頭を口の中で舐めまわした。動くたびに唇の間から空
気が入り、ずちゅ……、という卑猥な水音が立てられる。
亀頭だけを口に含まれて、弾力性のある舌で刷きまわされるように刺激され
ると、強い快感に昭司はのけぞった。
華菜の唾液が溢れそうになり、彼女はずずずっ、と音を立ててそれを口の中
へ吸い戻して飲み下す。
姉は学園の誰もが憧憬の念を持って仰ぎ見る美貌を昭司の股間深くに近づけ、
皺だらけの垂れ袋を舌で持ち上げて舐めては落としていく。そして肉茎の根元
に舌をあてると、アイスキャンデーにするように舌の腹を押し当てると、大き
く舐め上げるのだった。
「気持ちいい?」
上目遣いの姉の瞳は、どのような興奮からか、濡れ光っている。
「うん。気持ちよくてたまらないよ、お姉ちゃん」
華菜は満足げに一度ペニスをしごくと、今度は亀頭から肉幹、根元の肉球ま
でにキスの雨を降らせ始めた。もっとも厳格なはずの生徒会長は、世にも愛お
しそうに男のペニスに接吻するのだった。
ふと昭司は、三階でぽかんと待っているであろう姉の取り巻き達のことを考
えてたまらない興奮を覚えた。
あの先輩達は、崇拝する華菜がよもやトイレで弟の股間に美貌を埋めて不恰
好なペニスを熱心にしゃぶり尽くしているなど、想像だにしていないに違いな
い。
バタン
不意に隣の個室のドアが閉まる音がして、姉弟は身を硬くした。
ため息のような中年男の弛緩の声がして、じょぼじょぼ、と水の音が続く。
職員室から用を足しに来た教諭に違いない。
昭司は、ペニスを口に含んだままの姉と目を見合わせた。甘美な共犯者の瞳
には不安よりも興奮の方が色濃く滲み出ていた。
ふう、という男の声が隣から聞こえてくると、華菜は弟のペニスを下から引
き、亀頭の粘膜をぴっしりと張りつめさせた。元々勃起によって張っていた粘
膜は悲鳴を上げんばかりに限界まで張力を高めていく。
そしてもっとも敏感になった亀頭を口に含み、姉は激しく舐めまわすのだっ
た。
「っ!」
昭司は快感にのたうちそうになり、隣の個室を窺ってじっと自制する。
姉はそんな弟の気持ちを無視するように、ペニスを深く呑んでいった。
(姉さん……)
昭司はやめるよう訴えかけるが、姉は唇で肉棒の根元を強く締めると、舌で
肉幹を舐めまわし続ける。一体どうしてしまったものか、姉は普段授業を受け
ている教諭のすぐ隣で弟のペニスをしゃぶりまわすことに背徳の興奮を覚えて
いるようであった。
隣で排泄の音が始まると、いよいよ姉の愛撫は激しさを増していく。
口全体で弟の剛直を圧すると、そのまま首を前後に振ってピストン運動を始
める。昭司は快楽のあまりの強さに顔を歪めた。まるで口腔が女性器となった
ように、セックスさながらの粘膜のしごきが加えられていく。
長く美しい姉の髪がさわさわと揺れ、ちゅぱちゅぱと世にも淫猥な水音が隣
の排泄音に紛れ潜んでいる。
愛撫というよりも強烈な責めに近い姉の口腔奉仕にみるみると昭司は追い詰
められていく。
隣の排泄音がぴたりと止み、再び中年男のため息に似た弛緩の声が響いた瞬
間、昭司の白いマグマが姉の口の中に噴火した。
噴出の音が隣に聞こえるのではないか、と思うような大量の噴射。一瞬の収
縮の後にぶしゅっ、と尿道を押し出されて精液が姉の口に注ぎ込まれていく。
姉はそれを一回一回、顔を震わせながら口の中に受け止めていく。
やがて音を立てて隣のドアが開き、手を洗う音がして、招かれざる隣人は立
ち去っていった。
華菜は口いっぱいになるほどに溜めた精液を、ごくり、と喉を鳴らして嚥下
した。
唇の端から一筋の白い精子が流れているのがひどく淫らな様子に見えた。
「飲まなくても良かったのに」
昭司が言う。
「いいの。昭司の身体で作られて外に出てきたものだから、なんだか吐き出
して捨てるのは悲しいような気がしたの」
姉は目を瞑り、亀頭の先の割れ目に口をつけた。
ずずずっ、と音を立てて精子をさらに吸っていく。それは、睾丸にたまった
精子を肉のストローを介して吸い出しているようにも見えた。
「不味いんだろう?」
「少し苦くて匂いが強いけど。でも、なんだかそれも毎日飲んでいたら好き
になってきたような感じなの」
姉は油を張ったような瞳で弟の目を見る。
「チーズとか、クセのある発酵食品みたいなものかしら。慣れてきたら、そ
の匂いがたまらなくて、かえってそれが病みつきになってきたような感じ」
華菜が口にする言葉はひどく淫蕩だが、一方で精神的な純愛の要素も含んで
いるように昭司には感じられた。
「それに、昭司の中で作られたものを毎日飲んで、あんたの身体の一部を私
の中に取り込んでいきたいの」
姉は弟と見つめあって、
「お姉ちゃんは、あんたのすべてを受け止めてあげたいの」
と言った。
「あんたの面倒はどんなことでもお姉ちゃんがみるし、あんたが必要とする
ことはどんなことでもやってあげる。全部、私がやってあげる」
「それじゃあ、姉ちゃんがいなかったら俺は何もできないよ」
「うふふ。そうね、きっとそう。でもいいの。私と昭司は血の繋がった姉弟
だから、いつまでも別れることがないでしょう?」
姉は満ち足りたような表情で言った。
淫らな聖母がいるとしたなら、きっと姉こそがそうなのだ、と昭司は思った。
三崎華菜の魅力に夢中になり、他の何も目に入らなくなり、熱い恋に身を焦
がす生徒は後を絶たなかった。
一体全体、どれだけの男子生徒が華菜の前で手痛い失恋を喫したのか華菜本
人にすら把握しきれていない。その中には少女に対して少なからず自信を持っ
ている魅力的な生徒も含まれていたのだが、華菜の返事はいつも丁寧だがきっ
ぱりとした拒絶なのだった。
中学高校と一度も浮いた話がなく、誰かに対する恋慕を語ることもない華菜
は男に興味がないのだ、とまことしやかに噂されることがあった。時には、撃
沈した男子生徒から腹立ち紛れに、三崎華菜は誰も愛せない氷のような女だと
中傷が流されることもあった。
だが、それは事実と異なった。
華菜に張り巡らせた鉄の城塞の内側には、炎のように熱く献身的な愛が溢れ
ていた。
華菜の愛は毎夜身体を重ねる毎に深く、そして色合いを濃くしていった。少
しだけ仲の良い姉弟に過ぎなかったふたりの関係は、姉弟でも恋人でもない不
可思議な甘く切ない唯一の関係へとその有り様を変えていく。それはプラトニ
ックまでに精神的でいて、そして時にけだものにさえ近いほどに肉体的な関係
なのだった。
三崎華菜は異性に対して恋心というものを持ったことがなかった。
それは彼女が同性愛者であるということではなく、どちらかというと、彼女
が興味を持てるような魅力のある異性に出会うことがなかったという感じであ
った。
幼い頃からどんなことでも一番だったというのも原因のひとつかも知れない。
学業のみならずスポーツでも一番だったし、誰かに甘えるということができな
い性向の持ち主だったから、あえて異性の存在を必要としなかったという面も
ある。
それどころか、不特定多数の女生徒達から男性の代わり(?)としてバレンタ
インデーにチョコレートを渡される始末だった。
だが、華菜本人はそんな状況にこれといって不満を持っていたわけではない。
いつの頃からか、彼女はただすべてにおいて誰にも見劣りしないことだけを目
標としてたゆまぬ努力を続けてきたし、それは着実な結果を出してきていた。
もしそれが特定の異性の存在によってリズムを乱すとしたなら、それは華菜に
とっては阻害因子以外の何者でもないのだ。
たったひとりの例外である、弟の昭司を除いては。
◇
今日も太陽のような華菜の周囲には、彼女を慕う生徒が集まってきて衛星の
ようにぴったりと張りついてきて離れない。
今までの華菜であれば、それに対して何を思うこともなかった。好意を持っ
てくれる友人や後輩が大勢いるのはとても有り難いことだし、嬉しいことでも
あった。
だが、あの梅雨の土砂降りの日から、華菜の中で何かが変わった。
学校にいて授業を受けていても、部活をしていても、誰かと話していても弟
のことが頭から離れない。ぼうっと弟のことを考え、人ごみの中に弟の姿を探
している。
放課後、家に帰れば飽きるほど見ることのできる実の弟の姿だというのに、
愚かしいことに、弟がそばにいないと落ち着かない感じがする。ああ、いつだ
って弟を抱擁し、口づけて甘えさせてあげたかった。多くの取り巻きがいるこ
とは、弟との障壁に感じられる。昭司がふとそばを通りかかり、目が合うこと
がある。そして、昭司の目が華菜の周囲の生徒にいき、寂しげに目を伏せて立
ち去ろうとする時の、なんと胸の痛むことだろう。
放課後。授業終了のチャイムがなる。
華菜は早速声をかけてこようとする友人達に軽く手を上げて、これ以上の声
がかからないうちにとばかりに、3-Eの教室から一目散に逃げ出した。
今日はどうした廻り合わせか、学校で弟を見かけることがなかった。
家に帰っていればやがて昭司も帰宅してくるだろうが、なんだかその前に顔
を合わせておきたい気持ちが強かった。
華菜は教室を出ると、廊下の端にある階段へと歩を向けた。チャイムが鳴っ
てすぐの廊下はひと気がなく、教室の中で椅子をひく音とざわめきが洩れてく
るばかり。
一階へ下りると、少しだけスカートの裾を直して、華菜は昭司のいる1-Aの
教室のクラスを窺った。すでに授業は終わっているが、弟の席は荷物もなく空
席となっている。
「あ、華菜さん。こんにちは」
目敏く華菜の姿を見つけた裕一が寄ってくると、美貌の生徒会長を見つけた
一年生達の目が彼女に集中する。
「遠藤くん、こんにちは」
「何かご用ですか?」
「うん。昭司にちょっと……」
「昭司なら、体育をやってた風間センパイと話しながらどっかに行きました
が」
「暎子と……?」
一足飛びに階段を駆け上がり、暎子のクラスである3-Bに飛び込んだが、そ
こには従姉妹の姿も弟の姿もない。
談笑していた生徒に訊ねてみると、暎子は帰ってきた後すぐに着替えて昭司
とどこかに歩いていったという。
なんとなく、華菜は嫌な気持ちがした。
昭司の行動範囲はそれほど広くない。せいぜいが校庭、図書室、屋上、購買
部、自動販売機の周辺といった所だ。
そのひとつひとつをあたってみても、どこにも昭司の姿はなかった。
対して、暎子の行動範囲は広い。一年〜三年の教室のどこにでもふらふらと
顔を出すし、たくさんの部活の幽霊部員だから、気まぐれでどの部室にいたっ
ておかしくない。
そしてむしろ一番厄介なのは、学校の外に出てしまわれたら、それこそ足取
りを追えないほどに行動半径が広いのが風間暎子という少女なのだ。
理屈で説明のできない胸騒ぎがして、華菜は校舎を飛び出した。
校門の周りを探してみても、下校する生徒達の波の中に暎子と昭司の姿はな
い。
「三崎先輩、どうかしましたか?」
水泳部の女生徒が華菜を見かけ、声をかけてくる。
「う、うん。弟と暎子を探してるの」
「私は見てませんが」
女生徒は思案顔をして、
「でも、びっくりしました。なんだか三崎先輩ったら、すごく恐い顔をして
いるんだもの」
「え……?」
華菜は驚いて自分の顔を触ってみる。
「そんなに変な顔してたかしら……」
女生徒は笑った。
「変な先輩ですね。そもそも、昭司君はまだ学校にいるんですか?」
「それもわからないの」
女生徒は首を傾げて、
「だったら、下駄箱を見て上履きがあるかどうか確認してきたらいいんじゃ
ないですか?」
と言った。
ああ、なるほど。言われてみればそのとおり。
なぜそんな簡単なことに今まで気付かなかったというのだろう。
三崎華菜らしさというものがあるとしたなら、なんと彼女らしくないことだ。
昭司の下駄箱にも暎子のにも、外履きが入っていた。
つまり、まだふたりは校内に残っている。華菜は教室のひとつひとつを覗い
ていくことにした。
一階1-A、1-B、1-C、1-D、1-E、1-F……。
いない。
二階1-G、2-A、2-B、2-C、2-D……。
いない。
華菜が三階に上ってきた時には、すでに辺りはオレンジ色の夕日が差してき
ていた。
3-A、3-B、3-C、3-D、3-E……。
……いた。
「遅いよ、姉さん」
「あ、華菜。何してたのよ?」
探し続けた弟は華菜の席に座って机に暇そうに突っ伏し、その隣には足を組
んで退屈そうに爪先を揺らしている暎子の姿があった。
「な、なんで……?」
と、華菜は大きく口を開けたまま、ふたりを交互に指差す。
「鞄があったから、戻ってくると思って待ってたんだ」
昭司が言う。
「な、なんで……?」
華菜は白痴のように同じ言葉を繰り返す。
暎子は昭司の足元を顎で示した。昭司の左足のズボンの裾が捲り上げられ、
その膝頭からふくらはぎにかけて裂傷があった。傷の周りは土で汚れ、血が乾
いて凝固している。
「体育の片づけを手伝わせたら、金網から飛び出してた針金で怪我しちゃっ
たのよ」
暎子が言う。
華菜は、痛々しく口を開けた弟の傷口を見つめた。縫うほどではないが、放
置していると化膿してしまいそうだ。
「あんた、弟に一体どんな教育してるのよ?」
暎子は険しい表情をする。
「こんな怪我してるのに、姉さんでなければ手当てはさせないなんて、あた
しに触らせもしないのよ。バイキンでも入ったらどうする気かしら」
暎子が睨んでも、昭司はそっぽを向いてどこ吹く風。
「俺の面倒はどんなことでも姉さんがみるって言ってたからさ」
にやりと笑って、
「暎子姉貴の乱暴な手当てで傷が悪化したらたまらないからね」
と、そんなことを言った。
どうやら暎子は行きがかり上、責任を感じて昭司のそばで華菜を待っていた
ものらしかった。
「……バカね」
華菜はそっと言った。
「俺、姉さんの都合を考えてなかったよ。ごめんね。俺のわがままだったみ
たいだ」
昭司は真面目な顔をした。
「いいのよ」
華菜は言った。
「いいのよ、大丈夫」
それは気の抜けたような、安心したような表情だった。
「さあ昭司、帰るよ」
華菜は弟に手を差し伸べてから、ふと気付いてハンカチを取り出し、昭司の
目頭を優しく拭った。
「目ヤニがついてるわよ、ちゃんとしなさい。それにほら、ボタンも一番上
まで留めなくちゃダメでしょ」
甲斐甲斐しく面倒をみようとする華菜の姿を見て、暎子は面白くない気分に
なったようだった。
「いくらなんでもやりすぎなんじゃない」
と、思わず華菜に言ってみる。
「放っておいてよ、姉弟のことに他人が口を出さないで」
暎子はカチンときたように眉を吊り上げた。
「へーえ。それは、あたしに対する宣戦布告と受け取ってもいいのかしら…
…?」
華菜の浮かべた引き攣った笑顔は、ある意味で怒り顔よりも危険な意味を持
っていた。
「昭司、見てごらん」
と暎子は従弟に呼びかけると、やおら片脚を高く上げて机の上をそのまま踏
みつけた。
短いスカートはあっさりとまくれ上がり、悩ましい太腿から魅惑の布地が顔
を出す。
昭司は、条件反射で美しい従姉の股間へと首を伸ばしていく。
今日の素敵な蜜流れる地は、黒いローライズの透け透けパンツで覆われてい
た。股間の卑猥な谷間には紐状になった布が食い込んでおり、尻肉をもろ出し
にしたセクシーTバックであるように昭司には見えた。
ごんっ
途端に頭頂部に姉の鉄槌がくだる。
「い、いてえっ」
「……どこを見てるのよ」
振り仰ぐと、頭上から般若のような表情になった姉が見下ろしていた。
「ね、姉さん。今本気で殴ったろ……」
「黙りなさい。あんな汚いパンツに気を取られているからよ」
汚いパンツ扱いされて、暎子の口角が危険な角度で引き攣り、ますますその
作られた笑顔が凍りついていく。
「そんなに下着が見たいなら──」
と、華菜は両手でスカートの裾をつまむと、そっとその薄い布を持ち上げて
いった。
「私がいつだって見せてあげるわよ」
もしも誰かが華菜の背後から覗いていたなら、一体その光景はどんな風に映
っただろう。
虚勢を張るように仁王立ちになって、両手で高々とスカートを持ち上げる学
園一のアイドル。そして、目を丸くして腰を屈め、彼女の股間を覗き込む弟と
一方の美少女。
昭司は教室の中で卑猥な示威行動に及んだ姉の股間に釘付けになっていた。
暎子まで立場を忘れてしゃがみ込み、従姉の股間を眺めて目を点にしていた。
「し、白だね、姉貴」
「う、うん。白だね」
「確かに白だよ、姉貴」
「そ、そうね。白ね」
高校生らしい純白の下着を鑑賞しながら、華菜の股間の前で従姉弟はわかっ
たようなわからないようなやり取りを続けた。華菜のあまりにも想定外の行動
にふたりとも思考が停滞し、一時的な精神遅滞に陥ったかのようだった。
ふたりに間抜けな下着鑑賞会をされながら股間を全開で披露している華菜の
顔は真っ赤だった。
「……あ、あんた、意外とやるのね」
従弟よりも一瞬早く我にかえった暎子は、華菜の下着の支配圏から逃れるよ
うに一歩後ずさった。
華菜はスカートをふわりと降ろすと、名残り惜しそうに身を低くする弟を胸
にかき抱いた。
豊満なGカップに顔をぎゅうぎゅうと締め付けられて、昭司は意識が桃色の
霧の向こうへ渡ってしまいそうになる。
あっけに取られていた暎子はふっと顔を緩めると、アハハ、と大声を立てて
笑った。
「面白い。華菜、あんた、そんな顔もできるんだね。ツンとお高くとまった
あんたは嫌いだけど、今のあんたは嫌いじゃない」
その顔には、ある種の清々しさのようなものが見てとれた。
「頑張りなよ、お姉様……」
暎子を睨んだまま緊張を解かない華菜に、やれやれといった感じで肩をすく
めて立ち上がると、ポンと従姉妹の肩を叩いた。
「ほら、さっさと連れて帰って昭司の手当てをしてあげなよ、お姉様」
そこで、目の前の敵に夢中になっていた華菜は弟の怪我を思い出した。
「昭司、帰るわよ。こら、何、白目を剥いてるのよ」
「……それ、窒息じゃないの?」
華菜はうっかりと弟の顔を強く抱きすぎたらしい。
「し、昭司、しっかりしなさいよっ」
慌ててがくがくと揺さぶる。
そんな姉弟を後にして、暎子は軽い笑い声を立てながら教室の入り口をくぐ
った。
「嫌いじゃない」
もう一度呟いてから、
「バイバーイ」
と大きな声で言って、振り返る。
すっかりと日が暮れて闇に包まれた教室の中では、人工呼吸のつもりなのか、
華菜が弟に唇を重ねているのが見えた。
華菜は、弟が望むことならどんなことでもしてあげたいと思っていた。
できることならずっと弟のそばにあって、昭司の面倒をすべて見たい気持ち
だった。
ここにきて、なぜ今まで華菜がすべてにおいて秀でるように努力し続けてき
たのか、その理由がわかったような気がする。
昭司に「お姉ちゃん」と呼ばれると電気が走り身体が震える。「お願い」と
言われると身体は芯から溶け、華菜には逆らう術がない。
ああ。弟といつでもキスをしたい。弟の可愛らしく意外とたくましいペニス
をいつでもさわりたい。
弟のはにかんだ顔を見ると、胸が締め付けられ、息苦しくなり、どうしよう
もなく切なくなる。
反対に、弟の姿を見ない時間は半身をもがれたように落ち着かず、時には今
日のように根拠のない不安に駆られて昭司を探してまわったりする。そして、
遠くからでも弟のシルエットを確認すれば不思議と安心する。
馬鹿みたい、と自分で思う。
まるで迷子の小さな子供のようではないか。
そんな彼女の姿を見た友人から、華菜らしくない、と言われたことが何度か
あった。いつでもしっかりしていて、皆の先頭に立って強く明るく振舞ってい
るのが三崎華菜だったはずなのだった。
まるで、今まで姿を見せることのなかった臆病でさびしがりやなもうひとり
の華菜が、そっと顔を覗かせてきたようだ。
これを恋と呼んで差し支えないのだろうか。今までずっと誰よりも近い距離
にいた弟が、こんなにも新鮮に魅力的に映るというのはどういったことなのだ
ろう。
思いのたけのすべてを込め、暴力的なまでに弟は夜毎華菜に迫ってくる。
そんな夜を過ごす度に弟への慕情は烈しさを増し、それはモラルの壁をも
軽々と飛び越えて、恋を入り口とした妖しい性の世界へと華菜を誘うのであっ
た。
制服を剥かれた昭司は三崎家のつつましい浴室へと放り込まれ、膝に熱いシ
ャワーを浴びせかけられていた。
先ほどまで、傷口に容赦なく熱い湯をかけられ悲鳴を上げていたが、今では
一段落してぐったりしている。
「もう、散々じたばたするからお湯が撥ねたじゃない」
トランクス一枚の昭司に対して、華菜は制服のままである。その濡れたス
カートをパタパタと振って水を切って見せる。
「姉ちゃんが乱暴にするからだよ」
弟が抗議するも、
「シャワーをかけたくらいで大袈裟に言わないの」
と姉は取り合わない。
昭司はそんな華菜の手からシャワーのヘッドを奪い取ると、姉目掛けて冷水
を全開にした。
「きゃあっ、冷たぁいっ!!」
「ははっ、ざまぁみろっ」
華菜は不埒な弟に向かって拳を振り上げて見せるが、屈託なく笑う昭司を見
ると、なんだか憎めない気持ちになってしまった。
「びしょ濡れになっちゃったじゃない……」
華菜がセーラー服を首から抜いて下着姿になると、待ち構えていたかのよう
に昭司が抱きついてきた。
「お姉ちゃん……」
華菜の豊満な胸に顔をこすりつけて甘えてくる。
「もう、傷を放っておいたまま私を待っていたのは、お風呂で私に悪戯する
魂胆だったんじゃないの?」
華菜はツンと弟の額を人差し指でつつく。
「そんなことないよ」
昭司は姉の砲弾乳を柔らかく揉みながらうそぶいた。
「あんたみたいな生意気な弟は、お仕置きよ」
華菜はそう言うと、ぎゅっと弟のペニスの幹を握った。
強い刺激に昭司は腰を引く。
ぽちゃん……
もうもうと湯気が上がり、それは天井で水滴となる。
水滴は集まって大きなひと滴となって落ち、湯船を打つと、静かな余韻を残
す。
風呂椅子に座った昭司の背後から美姉は手を回し、彼の股間に生えた欲情の
男根をこすり上げていた。
時折ボディソープをピュッ、とかけてはしごきたてる右手の動きを早める。
左手は股間のさらに深部にある玉袋をさわさわと撫ぜまわしたり、亀頭を優
しくこすったりと自由に動いている。
激しい摩擦でボディソープは白く泡立ち、股間を包んでいる。
姉の左手は絶妙にソフトなタッチでそっと蠢く。人差し指から小指までの指
尖であやすように亀頭の裏筋をくすぐられれば、弟は喉元を撫でられた猫のよ
うに目を細めて玉袋を切なくひくつかせる。
その間も淫姉の右手は滑らかに昭司の肉幹を滑り、尖端の快感粘膜をつるり
と通過する。ぬめぬめとしたボディーソープによって摩擦係数は限界まで落と
され、純粋な快楽の感触のみが亀頭表面を這っていく。
りゅっ、りゅっ、りゅっ、と浴室に湿った摩擦音が静かに響く。
華菜は夢中になって背後から弟にのしかかるうち、その弾力性にあふれた爆
乳が、知らず昭司の背中に何度も押し付けられ、ゴムまりのように弾んでいた。
汗の滴が浮いた姉のたわわな乳肉は、昭司の背肉にしっとりと吸い付いては
胸が弾むたびに剥がされる。充実してたっぷり肉の詰まった桃の実はぼよん、
ぼよん、といった感じで二度三度弟の背中を叩くと、再び押し付けてきて魅惑
するようにぎゅうぎゅうと圧迫してくるのだった。
この最高に魅力的な巨乳を、毎夜昭司は揉みしだき、吸い尽くし、舐めまわ
してきた。触れば触るほどになお溺れていきそうになる魔乳をぐいぐいと押し
付けられて、昭司は新たな姉の水蜜桃の味わい方を思いついた。
「姉さん」
「なに」
「俺、姉さんのオッパイで身体を洗ってほしい」
「……はぁ?」
華菜は、昭司が何を言っているのか理解できないようだった。
「今、手でやっているみたいに、姉さんのオッパイにボディーソープを塗っ
て、俺の身体をこすってほしい」
昭司がいけずうずうしい申し出をすると、姉はすっかりと呆れたようだった。
「……こら、調子に乗るんじゃないわよ」
コツ、と軽く頭を小突く。
「あんたね──」
姉の説諭をさえぎるようにして、元よりあきらめる気などない淫弟は言う。
「お姉ちゃん、お願い……」
昭司が目を瞑って甘えるように背中と後頭部を後ろにもたせかけた。
「……あんた、そう言えばなんでも許してもらえると思っているでしょ
う?」
姉が白い目で見れば、昭司はあつかましくもコクンと頷いて見せる。
「まったく……」
優姉はどうしようもないスケベ弟の耳を甘く噛んだ。
「──そのとおりよ、この馬鹿」
華菜はむちむちした淫乳を弟の背中に押し付けて抱きしめると、ボディー
ソープに手を伸ばした。
ボディーソープを塗ってぬらぬらとした爆乳肉が昭司の背中で潰れ、弾み、
こすりたてられる。
あまりの快楽に背筋がぞくぞくする。
「気持ちいいの?」
柔らかな胸を弟の背中にぎゅっと押し付けてこすりながら華菜が聞くと、
「うん。すごく気持ちよくて幸せ……」
と昭司はとろけそうな至福の表情を見せるのだった。
昭司の背中にあてられているものはすべすべして、吸い付いて、弾んで、あ
りとあらゆる快感のさわり心地を伝えてきながら、包み込むように優しく洗っ
てくれる。昭司の記憶の奥底にある、母親に頭を洗ってもらった思い出に少し
似た心地がした。
張り詰めた風船のように弾性にあふれた華菜の巨乳は、押し付けられて形を
歪めると、圧の逃げ場を探すように変形する。ともすれば滑って逃げていきそ
うな乳房がぷにょ、と形を変えた瞬間の弾力が、昭司に極上の愉悦を与えてく
れる。
そして、乳房が潰れて滑り、ぷるん、と脇へ逃げていって震えた瞬間に昭司
は、
「うっひょお」
と顔をだらしなく緩めて、つい口に出した。
その情けなさ、憎めなさに思わず華菜は吹き出す。
「馬鹿。なんて声出すのよ」
「ああ、つい……」
弟が常に見せないほどに弛緩した幸せそうな顔をしているのを見れば、華菜
はどうしても我慢ができなくなってしまう。
「そんなにいいなら、もっとしてあげようか……」
華菜は前方へ突き出した豊乳をまた弟の背中にぐいっと押し付け、ぷるんと
横へ滑らすように圧した。その度に昭司の口から喘ぎに近いため息が洩れる。
淫姉は、もっと弟を悦ばせてあげたいと思った。
張り詰めた爆乳を押し付けたまま、円を描くように滑らせていく。
弟の背中が快感に耐えられないように弓なりになり、首がのけぞって再びう
めきが洩れ、寒気が走ったように短く痙攣する。
華菜はそれに気をよくして、助平な弟をもう少し苛めてやろうと、胸を左右、
上下とこすりつけていく。すると、桃源郷にいる弟はいよいよめろめろになっ
て腰が砕けていくのだった。
ふと昭司は鏡を見た。
少し曇った鏡には、腰をいやらしくくねらせながら、弟の背中に淫らに発達
した爆乳をこすりつける姉の全身が映っていた。
たっぷりとした尻が揺れ、それにつれて腰や背中がうねうねと妖しく蠢く姿
は、特別に扇情的なダンスのようにも見えた。
熱心に巨乳をこすりつけていく内、華菜の胸の尖端にある小さな蕾もぐりぐ
りと刺激され、彼女自身にも快感を伝えはじめていた。乳首はコリコリと硬く
なり、華菜は弟に気付かれないようにそっと硬直した尖端をこすりつけてその
感触に目を細めた。
昭司はゆっくりと身体全体で振り返り、姉に抱きついてきた。華菜は正面か
ら弟の身体を柔らかな女体で洗いはじめる。
昭司は、姉の柔らかい双乳に顔を沈めていき、その感触を顔で味わった。
「石鹸がつくよ、昭司」
「いいんだ。お姉ちゃん、おっぱいで顔を洗ってよ」
「おっぱいで顔を……?」
「うん。こう、おっぱいを横に振って……」
華菜は双爆乳の間に弟の顔を挟み、両手で胸を押さえて左右に身体を振った。
ふた成りの巨大水蜜桃はゆさゆさと揺れ、昭司の顔を打ちこする。
「ああ、たまらないよ、お姉ちゃん」
昭司が言うと、
「……あんた、誰にこんな風俗女みたいなことさせてるのかわかってるんで
しょうね……?」
さすがに、昼の誇り高い華菜の顔が覗く。
だがそれも、
「エロいことの大好きな、俺だけの生徒会長様だろう?」
と言って昭司が胸に甘えると、ため息をついて甘くにらみ、「覚えてなさい
よ」と結局は砲弾乳で弟の顔をこすってやるのだった。
つまる所、口ではどれだけ強いことを言ってもやはり華菜は弟の言葉に逆ら
うことなどできないのだった。
それに、どうしたことだろうか。
いつも入っている浴室で、弟とふたりで淫らな行為に耽っているというこの
事実が妙に華菜を興奮させ、次第に硬直しはじめた乳首はじわりじわりと華菜
の全身へと快感のしびれをまわらせはじめる。華菜の口から熱い息が洩れ始め、
股間の女の谷間がジンと熱くなり、淫らな蜜液が染み出してきた。
昭司は身体全体で姉の圧倒的な淫ら乳を味わい、溺れているような快感にた
ゆたって恍惚としている。
だが、弟に下世話な奉仕をしているつもりだった華菜は、いつの間にか身体
が熱く反応し、それだけでは物足りなさを覚え始めていた。ソフトな肌の接触
と摩擦は華菜の女体の奥底にある淫性を呼び覚ますのに十分だった。肌がぴく
ぴくと震えはじめ、時折ふと芯へ響く快感がまつげを切なく揺らす。気がつけ
ば華菜の股間のクレバスは溢れ出す粘蜜でぐっしょりと濡れ、まるで襞肉がと
ろけだしたかのようだ。
巨乳の蕾は硬くしこった快楽スイッチと化し、弟の胸とこすれるたびに電流
のような快感を発生させ、その快楽電流は華菜の背筋を走り、痙攣とともにそ
の身体を不随意に一瞬弓なりに反らせる。
今や華菜の爆乳は堕淫のウォーミングアップを終え、赤く脈打ち、肌の表面
はぴくぴくと不規則な痙攣をしながら次なる刺激を待っている。そっと触れる
だけでいつもの何倍もの純粋な快感が走り、息を吹きかけられるだけで身体が
引き攣る。
身体がおかしい。
華菜の女体が理性を裏切り、暴走しているような心地がする。
もっと、もっと弟との接触が欲しくなる。
華菜は弟の凶暴な剛直をぐっと握った。
すると、その手のひらの感触に身体が震えた。
ああ、なんと素敵な感触だろう。熱く、たくましく、そして一途な感じがす
る。これの感触をもっと味わいたい。手ではなく、もっともっと色々な所で味
わいたいのだ。
「昭司」
と燃えるような目で淫姉は弟に顔を近づけた。
「あんたのオチンチンを出しなさい。姉ちゃんのオッパイで、あんたのオチ
ンチンを挟んで、しごいてあげるから」
目と目が合って見つめ合う。
「ううん。あんたのオチンチンを、私のオッパイでしごかせて。お願い。
──あんたのオチンチンが欲しいの」
姉の瞳は微かな狂気に似た魔性の光を帯び始めていた。
姉は強引に弟を湯の張った浴槽へ沈めると、水面から飛び出した不恰好な欲
望をパクリと咥えた。
「あうっ」
と弟がうめき声を立てるが、そんなことに構いはしない。喉の奥深くまで一
気に呑みこんでいくと、ぞぞっ、と音を立てて先端までしゃぶりあげた。
不意打ち的な快感刺激に昭司は顔を歪めた。力が入り、玉袋の中でふたつの
精玉がぐぐっ、と持ち上がる。
「ああ、美味しいわ」
と美貌の姉は舌で上唇を舐めると、亀頭の先端に唇をつけ、先走りの苦汁を
ずずっ、とすすりあげた。
「どうして、こんなにオチンチンが美味しいのかしら。私、おかしくなって
しまったみたい」
熱に浮かされたような表情で、姉は爆乳を掴み上げ、ぎゅうっ、と弟のペニ
スを挟んで絞りあげた。
「ああっ、姉さんっ」
昭司が無意識に腰を揺すると、姉はペロリと裏筋を舐めた。
「きっと昭司、おまえのせいよ。私がおかしくなったのはおまえのせい…
…」
まるで言い訳のように自分に言い聞かせると、華菜は激しく乳房を上下に揺
すり始めた。しゅっ、しゅっ、と男根が摩擦され、昭司は首を振って強すぎる
快感に悶える。
大迫力の双爆乳に挟み込まれ、昭司の欲棒は見えないほどに埋まってしまう。
それが乳房の上下に伴って亀頭だけが上に見え隠れし、華菜の美貌近くに槍の
ように飛び出して睨みつけているのがひどく卑猥だった。
姉は息を荒くしながら淫乳を上下させるのに夢中になっている。胸から伝わ
ってくる快感が彼女を憑かれたようにその作業に没頭させ、さらに乳房で弟の
ペニスを犯していることの背徳の甘さが頭の芯をじんと痺れさせる。
華菜は初めてのパイズリにすぐさま習熟していった。初めは拙かった動きが
みるみるうちに滑らかになり、弟を追い詰めのけぞらせる。
一瞬動きを止めると、右の乳房と左の乳房をそれぞれ互い違いに上下させ始
めた。そのスピードが見る間に速まっていく。
「ぬああああっ」
ついに弟は悲鳴を上げたが、それすらも姉をサディスティックにぞくぞくと
させただけだ。
姉の双肉丘は、やわやわと自在に形を変えながら圧し、こすりたて、突いて
くる。時にはゆるやかに、時には高速にペニスを攻め立てて決して逃がしはし
ない。豊満で聖母のような聖乳は、今や魔乳となって弟を堕天の快楽地獄に突
き落とし、甘美な背徳の責め苦に責め苛むのだった。
「あ、ああああ、た、たまらないよ、姉さんっ」
昭司は泣きそうな顔になって姉の顔を見た。
姉の瞳は、今やはっきりとある種の狂気に犯された色になっていた。
「いいわ。昭司、姉ちゃんにおまえの精液を飲ませなさいよ」
そう言うや、弟の青筋立ったものを包むロケット乳の上下動を速める。
「っっっっ」
高速で滑る左右の乳と乳。強い浮遊感が昭司を支配し、皺だらけの精子袋で
我慢を続けていた青臭い白濁液が奔流となって肉幹を急上昇した。
「で、でるっっっっ」
昭司は顔をのけぞらせ、喉元をぐいっと突き出した。
淫姉は驚異的な反射神経を発揮して剛直を掴み、その鈴口に唇をかぶせた。
ぶゅっ、ぶしゅっ、ぶしゅうううううううううううっ
のけぞったまま硬直した弟の股間から溜まりに溜まった子種液が姉の口中に
爆ぜて飛散していく。
華菜はその下品な粘液を喉の奥で受け止めては、いつ果てるともわからない
大量のそれをごくごくと音を立てて嚥下していく。
そして、爆発が一段落すると、口をすぼめて、肉のストローからちゅううう
っ、とわずかな残滓をも惜しむかのように吸い尽くすのだった。
すべてを放ち終えてぴくぴくと痙攣している弟の前で姉は唇を拭う。
「あんたの精子、どろどろしていて、臭くて──とっても美味しいわ」
手のひらに付着した精子の匂いをくんくんと嗅いで、恍惚とした表情になる。
「ああ、昭司。姉ちゃん、本当におかしいわ。こんなにいやらしい女じゃな
かったはずなのに。あんたの臭い精子が美味しくて仕方がないの。それに、あ
あ──」
と弛緩した弟の腰を掴んで力の抜けて小さくなったペニスをぺろぺろと舐め
る。
「もっと、もっとあんたのオチンチンが欲しいの。口にも、ここにも」
姉が股間のクレバスを少しだけ開くと、そこから蜜液が糸を引いて一滴また
一滴としたたり落ちていく。
「お姉ちゃん……」
「違うの」
と、華菜は弟に二の句を継がせずに首を横に振った。昭司は、姉の目の端に
小さな涙が光っているのを見た。
「私はこんなにいやらしい女じゃないの。おまえの前だけなの。
……だからきっと、おまえのせいよ。おまえのことが好きだから、こんなに
エッチになってしまったの。おまえにだったら、どんなことだってしたくなっ
てしまうの。
……ほら、こんなことだって……」
苦悩の聖姉は大胆に弟の腰を抱き起こして後ろを向かせると、彼の尻肉の左
右に手を当て、大きく割り開いた。
弟の尻肉の間にはわずかに毛が茂っており、下には玉袋が垂れ下がっている。
そこから蟻の門渡りをさらに上へのぼったところに、皺に囲まれてぴくぴくと
肛門が収縮していた。
「お、お姉ちゃん。何をするんだよっ」
昭司が慌てて言う。
「お姉ちゃん、おまえにこんなことがしたいの──」
華菜は舌を伸ばすとその先を尖らせ、弟の糞門へと近づけていった。
「ああっ」
弟が息を洩らした瞬間、魔姉の舌がずぶずぶと肛門に沈んだ。
ちゅぷっ、ちゅぷっ、ちゅぱっ……
美貌の生徒会長が実の弟の糞門を舐めしゃぶる、世にも卑猥な音が浴室に響
いていく。
昭司は壁に手をつき、浴槽の中に立って姉に向かって尻を突き出している格
好だった。その尻の正面で華菜は膝立ちになり、両手で尻肉を割り開き、端正
な顔をその間に埋めてその深奥を味わっていた。
「お、お姉ちゃん……っ」
昭司は今までに経験したことのない質の快楽刺激に身をよじる。肛門周囲の
粘膜が丹念に舐めしゃぶられ、皺を伸ばされ、肛門を解きほぐすように愛撫さ
れる。そして少し口を離すと、まるで恋人と交わすような甘いキスを弟の肛門
に捧げるのだった。
その間にも華菜の右手は弟のペニスを握ってこすりたて、一度放って力の抜
けたそれに芯棒を通そうとする。
「き、汚いよっ、お姉ちゃんっ」
昭司は糞門を愛しげにぺろぺろと舐める姉を諌めようとする。
「馬鹿ね」
と姉は言った。
「おまえの汚い所だから舐めてあげたいの。綺麗な所なんて、誰でも舐めて
くれるでしょう。
私はおまえのお姉ちゃんだから、誰も近づかないようなおまえの一番汚い所
を舐めてあげたいのよ……」
そう言って舌先を再び尖らせて肛門肉をつつくと、
「だから、もっと奥まで。おまえが誰にも見せない肛門の奥の奥まで本気で
舐めてあげたいの」
ずぶずぶずぶっ
ざらっとした舌先が肛門を割り広げ、直腸の奥にまで伸びてくる。あまりに
特異な性質の快楽に昭司の目が大きく見開いた。
姉は舌を伸ばしては戻し、ピストン運動を始めた。それはペニスで弟を犯し
ているかのようでもある。
「ああ、おまえのお尻の穴、ちょっとくさいわ。
でも、それも好き──」
口の周りを唾液でべったりと濡らしながら、弟の肛門を犯す姉。そこにいる
のは、聖母のような美姉ではなく、魔性を宿し猥褻な興奮にらんらんと目を輝
かせた淫姉に違いなかった。
だがそれは、華菜自身の中では同じことの裏と表に過ぎなかった。もっとも
淫らなことはきっと、もっとも愛していることなのだと華菜には思えた。
一方の昭司は不浄の最奥まで姉に舐め尽くされながら、天国のような地獄の
ような灼熱の快楽の中に身を燃やしていた。姉が左右から大きく尻肉を割り開
き、舌を肛門に刺し貫いてくると、息を呑むほどの刺激だった。
姉は舌を肛門に締め付けさせたまま、しばらくそのままでいた。華菜の温か
い息が昭司の敏感な皺肉周囲をくすぐる。
そして、舌にぐっと力が入ったかと思うと、それが腸内をかき回すように動
いた。
ぐりぐりぐりっっっ
「っっっっっっっっ」
まるでドリルでアナルを掘削されているような刺激。そしてひとしきりそれ
が続くと、やがてそのまま舌で上部をざらざらとこすりたてられる。
狂おしいほどの姉の魔愛が尻穴から弟を貫き、竜巻を起こして雷撃となり脳
髄へと吹き上げるかのよう。尻穴に不潔な感情を一片でも抱いていたなら、到
底できないであろう濃密なアナル責めだった。それはきっと普通とは言えない
淫らな行為に違いなかったが、同時にきっと普通よりもずっと激しく、暴走す
るほどに常軌を逸した深い種類の愛なのだと昭司は思った。
一体、どれだけの時間が経ったのだろう。
それが最も熱い愛情の表現だと信じて疑わないかのように、華菜は熱心に弟
の尻穴を舐め続けている。その様子は親鳥が生まれてきた雛を舐めるように慈
愛に溢れていて、時には女陰を犯すように激しく淫らな責めだった。
口の中に溜めた唾液を肛門内に送り込んでは、それを舐め啜る。硬くした舌
先でほじるように肛門を掘る。音を立ててキスをする。舌を広げてぺろぺろと
舐める。およそ思いつく限りの愛し方のすべてを施し、やっと姉は口を弟の不
浄の地から離した。
「ああ、昭司。もうお姉ちゃんダメみたい」
そして股をもじもじとさせ、淫蕩な炎の灯った瞳で弟に告げる。
「おまえのオチンチンが欲しくて気が狂ってしまいそう」
長く続いたアナル責めに足をがくがくさせた昭司が振り返ると、今度は姉が
弟にお尻を向けていた。
「さあ、お姉ちゃんを後ろから犯して、昭司」
その指はどろどろにとろけた女の襞を広げ、その奥では膣肉が誘うようにひ
くひくと収縮を断続的に繰り返しているのだった。
すでにパンパンに充血していきり立った剛棒を、迷わずに昭司は姉の膣肉に
突き刺した。
「あぅぅうっ」
串刺しにされた姉が反射的にのけぞり、グレープフルーツのような双乳がブ
ルンブルンと揺れる。悦びに打ち震えるように華菜の襞肉は弟の欲棒を締め上
げた。
「姉さんのマンコ、最高に気持ちいいよ」
弟が呻くように言うと、
「ああ、本当? うれしいわ。もっと、もっと締めてあげる」
と淫姉はざらついた淫肉でぞりぞりと弟の亀頭粘膜を擦りあげるのだった。
昭司は華菜の腰を両手で掴み、自らの腰を姉の柔らかな尻肉に打ちつけてい
く。淫槍が姉の深部を抉るたびに息を洩らして姉はのけぞる。華菜が頭を上げ
るとその長く艶やかな髪がほつれて流れて狂乱の態を示し、ゆさゆさ上下にバ
ウンドするふたつの爆乳を伴ってぞくっとするほどの色香を漂わせるのだった。
姉の秘肉は突けば突くほどに柔らかく溶け出し、むっちりと発達した太腿は
蜜でべたべたになっている。潤滑油が流れ出すほどに姉のぎゅうぎゅうと締め
付ける力は純粋な快楽刺激を昭司に送り、いよいよ脳髄が灼けるような感覚の
中で弟は憑かれたように暴力的に姉を背後から犯し抜くのだった。
愛する弟に背後から犯し尽くされ、抵抗する術もなく息も絶え絶えになるま
で喘ぐことは、なんと気持ちの良いことだろう。
ともすればどこかに飛んでいきそうなほど真っ白な意識の中で、華菜は悦び
に震えている。
すでに華菜の身体は息を吹きかけられてもイッてしまいそうなほどに温めら
れ、快楽への準備がなされていた。そこへ弟の剛直が狂ったような猛攻を続け
てくるのだから、ひとたまりもない。
一突きごとに意識は霧散し、集約し、快楽はいよいよ鋭敏になり、意識は霧
の向こうへと飛んでいく。そして残るのは、弟の情熱を求める気持ち。
足はがくがくと震え、もはや立っていることさえままならない。自分は絶叫
しているようにも思えるし、ただ喘いでいるだけのような気もする。ただただ
弟のペニスだけが圧倒的にリアル。
湯船の中で力任せに昭司が腰を使うものだから、バシャバシャとひっきりな
しに湯が撥ね、ふたりを洗い、窓や壁に飛沫が飛んで滴り落ちていく。
昭司が肉槍で姉の淫肉を貫くたびに揺れる姉の淫乳。それは勢いにのって伸
び、反動で形を変えて引き返し、ぼよんぼよんと水風船のように弾んで胸元に
戻っていく。背後からぎゅっと左右のロケット乳を握り締めると、姉が顔を歪
めた。しかし、決してその手を払いのけようとはしない。
昭司は姉を思う様に扱えた。どこでも触り、蹂躙できた。ひと突き加えれば
姉は簡単に屈服し、屈服しながらもさらにペニスをねだるように尻を振るのだ
った。
ああ、背後から姉の尻にのしかかる様はまるで、じゃじゃ馬を乗りこなす名
騎手のようではないか。しかもこの誇り高く美しい一級のじゃじゃ馬は、ペニ
スの一撃でどんなことも聞き、そして蒼く若い騎手に身も心も捧げ尽くし征服
されることで切ない快感を覚えているのだった。
そしてそれは、この未熟な若い弟にのみ捧げられる絶対的な忠誠であること
に、なによりも大きな意味があるのだった。
湯が撥ねる飛沫の量が増え始めた。
ペニスと女陰の淫らな交歓はいよいよ佳境を迎えつつあった。
亀頭が抜き差しされ、雁の段差が通り抜けるたびに華菜は顎を上げて、けだ
もののような唸り声を洩らす。理性が跡形もなく吹き飛ばされて弟の男を求め
る獣性が露になってきたかのようにさえ見える。
姉の身体は足の先まで真っ赤に染まり、興奮は限界に達している。
「もう、許して、昭司……」
と、華菜は遂に泣きを入れた。
「お姉ちゃん、本当に気が狂ってしまいそう……」
「発狂するがいいさ」
と、なおも姉を責めたてながら弟が言う。
「俺はずっと、お姉ちゃんが好きで好きでいつも気が狂いそうだったんだか
ら」
昭司は腰を姉の尻肉に押し付け、ぐりぐりと円を描いて削るように抉り込ん
だ。
華菜が「かはっ」と声にならない叫びを洩らす。
「どんなことがあっても、もう絶対に離したくないんだ。責めて責めて、俺
なしじゃいられなくなるくらいにまでお姉ちゃんを狂わせるんだ」
「馬鹿ね」
と、華菜は最近の口癖を小さく洩らした。
「もう、とっくに……」
しかし昭司はその言葉が終わる前に再びスパートをかけ、一挙に姉と自分の
快楽曲線を上昇させた。
「あっ、あっ、あっ、ああああっ」
悪霊に取り憑かれたように華菜は身体中をガクガクと震わせる。
「ぐっ、い、イク、お姉ちゃんっっっっっっ」
「きてっ、精子をちょうだいっ、昭司っ」
玉袋が持ち上がって、男根の根元でごぷっ、という音がした。次の瞬間、
どびゅ、ドビュビュビュビュビュッ
と激しい奔流が姉の膣内に打ち込まれた。
第一弾が子宮口を撃った刹那、華菜の意識は空の彼方へ舞い上がり、淫肉口
からぶしゅうううううっ、と潮液が噴き出してくる。その飛沫が弟の顔を打ち、
なおも断続的に洗い続ける。
とどめを刺されたかのように、姉の女体が弛緩し、尻穴がぽっかりと開いて、
ぴくぴくと収縮した。
昭司が襞穴からペニスを抜くと、ごぼごぼと泡立った精子が滴り落ちる。そ
れを合図にしたように姉の脚から力が抜けて、ぼちゃん、と大きな水飛沫を上
げて湯船へ沈んだ。
昭司が姉を抱き起こすと、姉は白目を剥いて唇の端から泡を洩らしていた。