4.  
 
 午前2:00。奥深い山林の、とある大きなブナの根元で、ミノリは足を止めた。そこは下草が生い茂る  
急峻な斜面で、よほどのスキモノでなければ、わざわざ足を運ぼうとはしないだろう。ジョギングが趣味  
で、足腰には少々自身がある恭子でも、ミノリの助け無しにたどり着くのは困難だ。  
 しかしそれこそが、ここを彼らのねぐらに選んだ理由でもある。  
 
 ブナの根元にはやや大きなウロがあった。一見、何の変哲もないただの空洞である。よく見れば、  
周囲に引っかいたような跡が沢山あるのに気付くかもしれない。しかし、それでも熊か何かの仕業だと  
勘繰るのが、精一杯だろう。  
 よもや誰も、そこが触手の巣穴だとは思うまい。  
 ミノリは、駆け足登山で乱れた息を整えると、ゆっくりとその穴に近づいた。踏みしめた羊歯の葉の音が、  
静かな森にやけに大きく響く。獣が迫る気配に、彼には穴の中が緊張するのが分かった。敵か、味方か、  
はたまた無害な第三者か。こちらに気付いているのかいないのか。  
それを探ろうとする動物的緊張が、夜の森を凍らせる。  
 
 だが、そんな野性を欠片も感じ取れない人間が、約一名触手の腹にいた。  
「ごめん下さーい。あたしだよ?」  
あらゆる意味で場違いと言って差し支えない、その能天気な一言で、周囲の空気が一瞬で溶ける。  
次いで、穴の中の緊張が、歓喜へと変わった。  
 ウロの淵に数本の触手が手をかけたかと思うと、黒い影がミノリめがけて勢いよく飛び掛ってきた。  
九本の大きな肢と、腹側に生えた無数の触手、外見はオクトルそっくりだが、その大きさは二回りほど  
小さい。しかしその勢いにバランスを崩され、ミノリは大きくたたらを踏んだ。いきなり何しやがると鼻を  
鳴らす彼をよそに、その個体は恭子を回りの触手ごと抱きしめて、嬉しそうに頬擦りする。  
 
 「うわっと!?おお、ノーナじゃん。熱烈歓迎、ご苦労ご苦労♪」  
ミノリごとぐらついて吃驚した彼女も、やはり上機嫌だ。押し付けられた体に手を回し、お腹の細い触手が  
集中している辺りを、わしわしとさすってやる。ノーナと呼ばれたその個体──当然恭子の命名──は、  
その手つきに気持ち良さそうに伸びをすると、ようやくミノリの体の上から降りた。  
 
 手に絡み来る触手をペシペシと叩いてあやしつつ、恭子がしみじみと言う。  
「相変わらず元気だねぇ、この仔は。」  
”元気過ぎて何よりだ。思うに、もう少し高尚な出迎えの作法を教えるべき頃合ではないかな。”  
「三つ指突いてお帰りなさいましって?あらやだ、ミノリにそんな趣味があったとは。」  
”……我々の体に三つ指突かせようという君の発想力は、真に感服に値すると思う。これは本心だ。  
ところで、たまには彼の全力タックルを受け止める私の身にもなってみてはくれまいか。”  
 彼女はにやりとした。「そう?でもわたしには”毎度のことだか、貧弱な君の運動神経では、自重のたった  
半分のノーナを抱きとめる事は到底出来ない” なんてイジワルなことは言えないな。」  
 
 わざわざ危ない場所に立って、勝手に自爆した恭子と、暗がりから不意打ちを喰らった自分を一緒にしないで  
くれ、とミノリは思ったものの、賢明にも口(?)にはしなかった。代わりに、彼は少女と触手で猫パンチの応酬に  
興じているノーナを、ウロ穴へと追い立てた。  
 
 
5.  
 
 週に一度、ミノリと恭子の二人が、この巣穴を訪れる目的は、一言で言えば、この人造生物達の心身の  
健康管理である。  
 森の主と言っても通じそうな風体に反して、研究所の温室育ちである彼らは、実はサバイバル能力が皆無  
であった。あらゆる組織を自由自在に自己培養し、別個体の免疫系にさえ介入できるその超科学的能力は、  
衣食住が保証された飼育室では、一見無敵に思われた。しかしいざ一歩、外界に出てみると、餌のとり方も  
巣作りの仕方も知らない彼らは、いきなり生命の危機に陥ったのである。  
 今では、ミノリと恭子の必死の学習のフィードバックを受けて、ある程度自活できるくらいにはなってきているが、  
それでも、栄養失調などはしばしばである。その兆候をミノリが発見して、対処する。これが体の健康管理。  
 
 そして、心の方は恭子の領分だった。  
 
 
 ウロ穴を降りて残りの二体──「デッカ」、「トリデス」と恭子は呼ぶ──からも歓迎の抱擁を受けた後、  
二人はテキパキと診察の準備を開始した。  
 恭子はナップザックから電気ランタンを取り出し、天井を這うブナの根に引っ掛ける。灯りと点すと、巣穴の  
様子がぼんやりと浮かび上がった。  
 中はかなり広い空洞になっていた。ウロは下にストンと落ちた後、樹壁を横に突き破って斜面の奥へ  
掘りこまれている。側面はそのままむき出しの土壁となっているが、床には木の皮を剥して乾燥させた  
ものが、絨毯代わりに敷き詰めてあった。人が直に寝転ぶには若干ゴツゴツとして痛そうだが、恭子が  
ここに居るときは、大抵誰かしらの触手の上に乗っているので、特に困ることは無い。  
 
 準備が整うと、恭子は一体ずつ順番に名前を呼んだ。そして、彼女と彼らがじゃれている間に、ミノリが  
その体を診察するという手筈である。  
 恭子に抱かれてすっかり大人しい触手たちを手際よく診ていきながら、ミノリはふと回想する。  
 初めの頃は、口をこじ開けたり腹を摘んだりする触診に、皆むずがって暴れたりすることが多く、大変な  
苦労をしたものだった。そのあまりの悪戦苦闘ぶりに、当時はまだあまり友好的とは言えなかった恭子が、  
見かねて協力を申し出てくれたのだが、そこからの道のりも決して平坦ではなかった。  
 飽きるまで抱き合わせてみたり、疲れるまで遊ばせてみたり、最終手段で少女と一度交わらせてから臨んだ  
こともあった。だが一度は成功しても、次はまるで駄目だったり、ある一体でうまくいっても、他の個体  
では通用しなかったり。  
 結局、恭子が、彼らには個々に落ち着かせるコツがあると気付くまでは、うまくいかなかった。 ノーナは  
ひたすらお腹をさする、デッカは落ち着かない触手を見つけて抱きしめる、トリデスはとりあえずおっぱいを  
触らせておけば大丈夫、という風に。  
 
 思えば、あれが『体』達の、"個性"を意識した、最初だった気がする。  
 そして、この17歳の小娘に、自身の体のことで、自分の無知を突き付けられた、最初。  
 
 「トリデス、どっか悪いの?」  
 ”いや、そうじゃない。”  
知らぬ間に診察の手が止まっていたらしい。心配そうにこちらを見上げる彼女に、本当になんでもないんだと  
言って、ミノリはトリデスの口腔を拡げていた触手を取り去った。  
 ”三体ともまあ健康な部類に入るだろう。ノーナはタンパク質が少し不足気味だから、あとで補うことにする。  
それ以外の処置は特に必要ない。季節が良くなってきたおかげだな。”  
 「そう、よかった。」  
 ようやく笑顔に戻った恭子が、胸に張り付いている触手を優しく撫でる。今日の診察が終わったことを知って、  
トリデスが大きく伸びをすると共に、邪魔をしないよう控えていた二体も、彼女の方に擦り寄ってくる。  
 そんな彼らを笑顔で迎える人間は、どこをどう見ても、身長150cm半ばの、まだ幼さが残る少女でしか  
なかった。  
 しかし、研究所のどの職員も、またミノリでさえあり得ないと考えていた、『体』群の、つまりオクトル達の  
個の発露をもたらした、ただ一人の人間でもある。  
 
 再び固まっている彼に気付いて、検査が必要なのはミノリの方なんじゃないの、と恭子が笑う。  
”集団検診を終えて一休みしているお医者様にそんな言い方はないだろう、看護婦さん。”  
「看護"士"さん。それに、医者は婦長に逆らうと生きていけないらしいわよ。」  
”ふむ、確かに君無しでは生きていけないという点で、その指摘は全く正しいな。”  
「……。あー、うん…、まぁ。」  
”さて、私の仕事は終わりだ。次はきみの出番だぞ。”  
 出番なんて言い方しないで、とだけ言うと、恭子は少しだけ赤くなった顔を隠すように俯いた。  
 
6.  
 
 恭子を中心に、四体の人造生物が一つに集まった。一体でも無数と言っていいほどの触手を持つ彼らが  
一箇所に集まると、その密度は相当なものになる。恭子は、触手の群れが集まって出来た肉の小部屋の  
ような場所へ上がると、着替えを待つ幼児の様に万歳をした。  
 「今日は、んーじゃあ、デッカお願い。」  
 すると、肉部屋の壁の一部が崩れ、五、六本の触手が彼女の元に伸びてくる。内三本が、彼女のTシャツの  
裾を掴むと、ゆっくりと捲り上げて、彼女の頭から引き抜いた。余った触手達が、布に絡んだ髪をひっつれない  
様に丁寧に梳く。  
 
 デッカ達に着替えの手伝いをさせるよう言い出したのはミノリだった。触手に女の子の脱がせ方なんか教えて  
どうすんだと反論する恭子に、その人工知生体は真顔で言った。  
 ”君が命じて、彼らにさせる。ここが重要なんだ。君がよくやるように、ただ抱きしめて当たり前に話しかける、  
それが効果を持つことは私も認める。ただ、君と彼らとの会話のによって、何でもいい、何かやり遂げたという  
結果が生まれれば、それは君と彼らのコミュニケーションにより一層の進展をもたらすと私は確信している。”  
 回りくどくも、妙に熱の入った説得に、少女はどこか納得いかないがらも、頷くしかなかった。  
 
 Tシャツとスカートを畳み終えた触手が再び彼女のもとへと伸びる。数本は靴を、残りが肌着に取り掛かった。  
この段階に来ると、触手達も焦れてくるのか、壁や床が揺ら揺らと動き始める。だが、今衣装係を務めている  
デッカは、比較的おっとりとした性格なので、恭子は安心して身を任せていた。10本の大肢と、四体の内で  
最大の350kgを超える巨体の持ち主は、その見た目とは裏腹な繊細な手つきで、彼女の服を一枚一枚  
脱がしていく。ノーナやトリデス相手だとだと、なかなかこうはいかないのだ。  
 
 とうとうショーツが取り除かれ、連結肢がむき出しになった。膣口から伸びた細い触手が、別の触手で太股に  
縛り付けられている様子は、たまらなく淫靡で、それまで触手の動きを目で追っていた恭子も、この時ばかりは  
何となく目を逸らす。  
 「ミノリ、じゃあ……、」  
 ”分離準備よし。何時でも抜いて構わない。”  
 だんだんと恥ずかしさが勝ってきて、尻切れになる恭子の言葉に、ミノリはあっさりと答える。ん、と声には  
ならない返事をして、恭子は連結肢を両手で掴んだ。どうせならこの行程こそ触手に任せたいのに、と思い  
つつ、一つ深呼吸すると、彼女はゆっくりと触手を引いた。  
 「ん…んっ!くうぅ……」  
 胎の奥に摘まれるような痛み。しかしそれは"直結"する時に比べれば数段に軽いものだ。口を覆うことも  
なしに、殆ど声を漏らさず子宮口から引き抜くと、一度触手を握る手を緩めた。ここはベランダと違っていくら  
声を出してもいいのだが、気が高まっている時はともかく、素の状態のときに丸裸で大声を出すのは、  
恭子としては勘弁願いたい。  
 
 ドサ、と音がして、触手の一部が力を失う。ミノリの体の分、つまりオクトルの触手が、急に『頭』を失って  
脱力したのだ。だが、ミノリと違って、ものの数分もすれば、オクトルとして動き出すだろう。ミノリが無事分離  
を終えたことを伝えると、恭子は膣に残っていた分を一気に引き抜いた。  
 膣口から細い連結肢がズルリ、と抜け落ちた。それはオクトルと恭子の粘液がねっとりと纏わりついて、  
触手の壁から僅かに漏れるランタンの光を、テラテラと反射する。  
 
 いっとき、恭子の体が全ての触手から自由になった。久しぶりに自分の足を動かして、畳まれた服のところ  
まで這うと、デッカがまだ伸びているオクトルから引き抜いてくれたナップザックへと詰め込む。ありがと、  
といってその触手に軽く口付けをすると、デッカは機嫌良く、そのよろず袋を部屋の奥へと仕舞った。  
 
 さて、と座り直した所で恭子は息を吐く。これでさあどうぞ、と一言言えば始まるわけだが、その口火を  
自分が切るというのはなんともやりにくい。ゴソゴソと揺れる触手達が焦れているのは火も見るよりも  
明らかで、そんな状態で放置するのは可哀想だとは思うのだが、出来ればこう、流れで何となく雪崩込む  
のが彼女の理想なのだ。とはいえ、そんなロマンチックな雰囲気で持ち込む術など『男性』経験皆無の  
17歳は例え人間相手でも持ち合わせているわけがなく、というか触手相手にそんなことが出来る人間は  
全世界の娼婦を当たっても見つからないだろう。 トリデス達にそれを求めるのは………うん、たとえ世界中  
の触手達に出来たとしても、この仔達には無理だ。いるのか知らないけど。  
 そこまで考えて、やっと諦める。ミノリじゃないけど、毎度の事だが、メリハリの効いたセックスなんてのは  
なんかやだなぁと思いつつ、仰向けに寝転んで言った。「えーと、うん、いいよ。」  
 
 
 恭子が言葉を切った途端、触手の部屋が一気に崩れた。天井は落ち、壁は倒れ、床は緩んで彼女の  
体を一斉に飲み込む。その余りの過剰な反応に、恭子はやっぱりおかしくなった。吹き出しながらも、  
待たせちゃってごめんね、と心の中で謝る。  
 
 しかし、そんな余裕を保っていたれるのが、最初の数分だけということも、彼女は知っていた。何本もの  
触手が、恭子の手足に絡み、頬を撫で、また髪を梳く。その癖や力加減で、普段彼女は大体どれが誰だか  
予想がつくのだが、こうも複雑に絡まれては、正確なところは分からない。ただ、真っ先に左の乳房に  
飛びついたアレは、トリデスで間違いない。  
 
 まず触手達は、恭子の肌との接地面積を出来るだけ稼ごうとするかのように、我先にと彼女の体を包んだ。  
そして、そのさして広くない土地の争奪戦が一段落すると、今度は自分が得た畑を耕し始める。  
 「んっ…はぁ、きゃんっ………はぁうぅ、」  
その触手の数は、オクトルの腹に抱え込まれた時の比ではない。上下左右、あらゆる方向から、うねり  
のたくる触手が押し寄せて、恭子の平衡感覚はあやふやになる。  
 
 「あっ……はうっ!んふ……ん……」  
お腹が突然、ぬらぬらと湿った熱い触手に覆われる。一瞬、誰かの生殖肢かなと恭子は思ったが、それに  
しては柔らかいし数が多すぎる。彼女はデッカの幾つにも分岐した舌だろうと、当たりをつけた。  
 彼女の予想通り、デッカはその大きな頭を恭子の腹の上に陣取ると、口内に溜めた粘液で少女の下腹を  
濡らし始めた。その成分は人間の唾液と似ているが、幾分粘度が低くさらさらとしており、その割りに乾き  
が悪い。それを舌で触手の合間に塗りこんで、潤滑剤の代わりにする。  
 
 やがて舌は、恭子の両足の付け根まで降りてくる。しかしそこは、意外にもぴったりと閉じられていた。  
股間はその僅かな三角の隙間にほんの数本、細めの触手が回してあるだけである。これは、恭子が懸命に  
閉じようとした結果ではなく、足を拘束する触手群が開こうとしないのだ。彼女を焦らす作戦なのか、或いは  
人造生物達がただお互いに牽制しあっているだけなのか。膝上にかかる不揃いな圧力から、恭子はおそらく  
後者なんだろうなあと考えた。  
 
 下半身でそんなせめぎ合いが起こっている頃、上ではトリデスが一人、お気に入りの胸を味わっていた。  
早々に確保した左の乳房の周りを、太く力強い触手がしっかりとガードして独占している。それ自身は  
膨らみに触れることはなく、その柔らかな感触を味わうのは感覚に優れたより細い触手達だった。そして  
揉み込む際には、他の触手のように一本が巻き付いて絞り上げるようなことはせず、十分な数を割いて  
乳首を頂点としたドーム状になり、それが収縮する形で、胸の弾力を1gも余すことなく楽しんでいる。  
 
 その呆れるまでの執着ぶりに、何度か「おっぱい星人」に改名されそうになったことがあるトリデスは、  
その実、四体の中で一番の変り種だった。  
 八本の大肢、腹側に多数の触手と、ここまではオクトル達と似ていなくもないが、背中側にも五本の  
大肢に近い触手が生えていて、遠目には腹と背の区別がつきにくい。また、口の一部が分化しており、  
メインの口の他に、ストローのように伸びた触手の口管がある。  
 性格は一番落ち着いていると言えなくもないが、より厳密には唯我独尊、割と従順なのが多い触手達  
のなかで、恭子が手を焼く困り者でもある。前回、彼女のお気に入りのスポーツブラをダメにした犯人も、  
他ならぬこいつであった。  
 
 そんな彼は、他の触手との押し合いへし合いの末、ようやく例の口管を、左胸まで伸ばしてきた。  
足首程度の太さを持つその触手は、唇から分化した先端が、朝顔の花弁状に四つに開いており、その内  
には舌にあたる細い粘膜性の触手が蠢いている。  
 それは、乳首の直上でやっとたどりついた獲物の前に一筋、涎をたらすと、その感覚に恭子が反応する  
瞬間に、他の触手をどけて、大好物の肉塊へとむしゃぶりついた。  
 
 「きゃっ!?……あっ、ちょっトリデっ…ひゃっ!…はぅっ」  
乳房を吸引されるような動きに、恭子はたまらず声を上げた。口管は少しでも多くの肉を含もうと、一度  
吸い付いた後も、花弁状の唇をギュッギュっと広げている。それにタイミングを合わせる形で、管の中が  
少女の膨らみを吸い上げる。  
 「あうっ…んっ…ん……も、もうホントに好きだねー、おっぱい…ぃ!…はぅ……」  
恭子が無理して呆れたような声を作っても、全く動じる様子はない。口管に左胸を明け渡した触手達は早くも、  
今度は三つ巴状態の右胸を攻略できないかと、その隙を窺っている。  
 
 胸への愛撫が強まって、恭子の体が徐々に温まり始めた。嬌声が漏れる頻度も段々と高まっていく。  
 そしてある拍子に、彼女の身体がビクンとはねると、下半身の力の均衡が崩れて、恭子の膝が僅かに  
開いた。閉ざされていた秘部が顕わになり、周りで機会を窺っていた触手達は、今がチャンスと一斉に  
股間へ伸びていく。  
 だがその中に約一名(?)、もうどうにも我慢できない触手がいた。  
 
 一本のガチガチに勃起した生殖肢が、他の触手を掻き分けて、真っしぐらに膣口へと向かう。  
周囲の触手は、敏感な秘部を愛撫するため細く繊細なものばかりなので、その動きに抵抗できない。  
邪魔者を難なく排除すると、その生殖肢は勢いそのまま一気に中へと入り込んだ。  
 「へっ?…やっ、ちょっ、い゛っ!痛っ!……やっ…んあ゛っ!」  
一息で奥まで到達する。全身の愛撫と、先のオクトルとの行為の名残で、膣内はぬかるんではいたものの、  
体はまだ半開きといった状態で、その強引な挿入は、やや強い痛みを伴った。  
 「やっ、やめっ、まだだよノーナぁひゃん!…きつい、きついってば!」  
 手をばたばたと動かすが、触手が複雑に絡まってうまく外れない。他の三体は、恭子の突然の制止に  
ビクッと動きを止めたが、肝心のノーナは興奮のため聞こえなかったのか、他の触手が緩んだ隙にますます  
拘束を強めて、彼女の腰を自分の腹に引き寄せた。  
 
 「あっ…くぅ!…あぅ…う゛ーー、もう!……っくう…」  
 悪態をついても、胎の中の触手は一段落するまで止まりそうにない。その強引な動きに、膣壁が拡げられた  
のか、はたまた単に慣れただけなのか、抽送に伴う痛みは若干和らいだが、その無理矢理な出し入れは、  
まだちょっと苦しい。とにかく挿入が楽な姿勢をとりたくて、恭子がもがくと、その動きを察したのか、デッカが  
力まかせに膝を割った。  
 大きくM字に開かれ、腰がやや持ち上がる。背中が下というわけではないので、そう言うのが正しいかは  
分からないが、ちょうど"人での"体位で言えば、まんぐり返しと言ったところか。膣道がまっすぐになり、  
壁を変に押し退ける動きがなくなって、少し楽になる。  
 突かれながらも、肩を使って目尻をこすり、涙で滲んだ視界を払った。ノーナのバカの触手を見つけたら  
噛み付いてやろうかと前を見る、と、  
 「うっ…あっ…あん……あ?」  
腰高になったせいだろう、勢いよく上下するノーナの生殖肢が間近に見えた。大分暴れたせいで、腕の拘束も  
緩んでいる。殆ど反射的に、左腕を触手の筒から引き抜くと、恭子はえいっ、と生殖肢を掴んだ。  
 
 効果は覿面だった。急所への突然の攻撃に、ノーナはビクッと動きを止めると、そこで我に返ったのか、  
やべ、やっちゃった、とでも言うように、そそくさと触手の力を抜いた。抽送が止まり、余裕が出てきた  
恭子が、性器をギリギリと握り締めながら「のおぅーなぁあー君?」っと詰ると、彼はますます萎縮する。  
やがて彼は、一本の触手をすっと恭子の眼前に伸ばすと、ごめん、とばかりに頭を下げ、もう怒り収まる  
まで噛むなり何なり好きにしてくださいと、スケープゴートを差し出して来た。同時に左手の方は、別の  
触手が遠慮がちに絡みつき、だから生殖肢(それ)だけは勘弁を、とばかりに、身を摺り寄せる。  
 
 その反応に思わず吹き出してしまって、結局、恭子はあっさり許すことにした。  
「もういいよ、そのまま最後までして。ただ、さっきみたいな滅茶苦茶はやーよ?分かった?」  
そう言って生贄を銜え甘噛みする。ありがたや、とノーナが言ったかは分からないが、恭子が生殖肢を  
手放すと、揉み手摺り手で左手から退散していった。  
 暇でしょうがないミノリが、出し抜けにポツリと言う。  
  ”やれ噛むな 触手が手を擦る 足を擦る”  
 「……もうね、何でもいいけど、お願いだからエッチの時だけは黙ってて。」  
 
 この人造知性体の生みの親は本物の専門バカだったに違いない。会ったらまず情操教育に関して小一時間  
説教してやると、恭子が決意を固めた時、ノーナが抽送を再開した。  
 空気を読んで大人しくしていた他の触手達も、少女への攻めを再開する。やっと開かれた秘部へは四体分の  
繊毛が集中し、敏感な核やその周りの外性器を刺激し始めた。デッカの舌も到着し、ドタバタでやや渇き気味  
だったそこへ潤いを与える。  
 「あっ…あんっ…ふぁ……やぁっ!……」  
 再び激しくなっていくノーナの動き。しかし、今度は周りの愛撫が効いているのか、先程の辛さは感じない。  
恭子の心構えが出来ているのもあるのだろう。先程は突然の挿入にビックリして、中々身体が受け止める  
体勢に切り替わらなかったのだ。  
 「んっ……ふくっ…あっ…ノーナぁうっ…あっ」  
 奥まで突きこむ動きの他に、浅い部分を持ち上げる動きが加わる。先程の無理な行為を反省して、彼も何とか  
恭子を感じさせようとしているのだ。Gスポットを探られて、膣壁が急速に弛緩していく。小陰唇が生殖肢に  
引きずられて膣口に出入りを繰り返し、そこを愛撫していた細い触手も時折巻き込まれて秘穴へ潜る。  
 
 胸は相変わらずトリデスの独壇場だ。左の乳房は専用の口管で存分に吸い上げ、右胸もその執念を  
以って徐々に支配率を高めている。その数としつこさに、他の三体はやや諦め気味だ。  
 そう言えばオクトルの動きが余り感じられない。今日は先に一度恭子を独り占めしているので、遠慮して  
いるのだろう。あの仔はそういうとこ、妙に謙虚だしなぁ、と恭子は思う。  
 
 中の触手の動きが、大分小刻みになってきた。恭子も感じてきてはいるが、一緒にはイってあげられそうに  
ないなと思っていると、出し抜けに硬いぬめりが頬骨を擦った。  
 デッカの生殖肢だ。そのまま、鼻から耳にかけてのラインへ、その身を扱くように押し付ける。そっか、この仔  
もそろそろ限界だっけと気付いた彼女は、左手でそれを捕まえると、自分の口へと導いた。  
 「ふぁむ…むぐ…んぐんぐ…ふぁ…ふぁぶっ!…んんぅ」  
 時折襲う強めの突き上げで思わず噛まないように注意する。デッカものは、その大きな体を反映して、  
サイズもやや大きめだ。化け物じみた巨根ではないが、それでもちょっとした外人サイズである。口をしっかりと  
開けて頬張り、硬い亀頭を舐め上げる。先端の割れ目をほじるように突くと、先走り液が漏れ出して、口内に  
薄い塩味が広がった。  
 
 「はぐっ…んっ…あふ…んっぐっく、あむ…んぢゅる…」  
さらに刺激を求めて、デッカの触手が前後し始めた。相手の興奮を感じて、恭子は吸い上げる動きを強くする。  
同時に、左手を添えて幹をしごきつつ、余り深く突っ込まれない様に注意した。  
 「んぢゅ、れるれる……はむ…、ん!ふんっ!ひゃっ、はうっっ!」  
 ノーナの動きが一気に大きくなった。射精を控えて、亀頭が膨らむの分かる。腰回りの触手も、恭子の身体を  
合わせようと、愛撫をいっそう激しくするが、やっぱりちょっと間に合いそうに無い。代わりにお腹に力を入れて、  
中で暴れるノーナの生殖肢を、キュッキュと意識的に締め付けてやる。  
 
 「ふっ…ああぅ…はんっ…はう!……ほぶっ?…んぐっ、がふっ!」  
 すると今度は、デッカの動きが急に大きくなってきた。下に気を取られて、口が疎かになったためだろう、  
何とか強い刺激を得ようと、奥へ向かう力が強くなる。しかし膣内でノーナがラストスパートをかけてる  
状態では、流石に丁寧な口唇愛撫をする余裕がない。下手したら噛んでしまうだろう。恭子はちょっと  
悩んだ末、腹をくくって、左手の力を抜いた。  
 ディープスロートは苦手だけど、デッカだしそんなに無茶はしないだろう。それにノーナが暴れた時、身体を楽に  
してくれたお礼を、今日はまだしていない。その意味も込めて、苦しいのはちょっと我慢だ。  
 
 「がぼっ…はぐぅ…ぶぇ…んぐっっ…ふううぅうん!」  
 大口を開けて、歯で傷つけるのだけは避けるように頑張る。喉を引いた瞬間に、息を吸おうとするのだが、  
体奥を突くタイミングと違うので、うまく呼吸が合わせられない。再び涙が溢れ出し、あっという間に視界が  
滲む。先から漏れ出る味が変わって、彼も終わりが近いのと分かったのが、唯一の救いだ。  
 
 そして、ノーナの触手が一度身震いするようにうねると、最後に強く、性器を奥に押し当てた。  
 「はぐっ、んくっっっくぅっ、あう゛っ………んあぁっ!」  
 そのまま、グリグリと捻る動きと共に、傘が開く。バシャっと浴びせられる感覚が、先のオクトルの時よりリアル  
なのは、恭子がまだ若干の余裕を残しているせいもあるだろう。ノーナはその後、射精を長引かせようとする  
ように、数度膣内で身を捻ると、やがて完全に動きを止めた。  
 
 ノーナはそのまま、射精後の余韻に浸って伸びているが、恭子の方はそうも行かない。体奥が満たされて  
いくのを感じながら、口を犯す剛直へ、必死になって舌を這わせる。  
 「んぐっ…ううっ…くっんぅ…わぶ!」  
 下からの横隔膜への揺さぶりが収まって、呼吸は若干出来るようになったが、それでも満足とは程遠い。  
嘔吐感が襲う間隔は短くなるばかりだ。とにかく、一秒でも早くデッカをイかせようと、恭子は自分からも頭を  
振り始めた。左手も添えて、動きを抑えるのではなく、快感を送り込むために幹を摩る。  
 
 そしてノーナに遅れること数十秒、とうとうデッカの生殖肢も傘を開いた。  
 「んぐううぅぅううっっ!!…ごふっっくっ、…ふ、んぐ、んく…ぅ…ごく……っ」  
 喉奥に強く精液が叩きつけられる。その感触は膣の何倍も強烈だ。顎を上げ、流し込まれた粘液を、  
こみ上げる嘔吐感ごと飲み下す。  
 しかし体に見合って、デッカの吐き出す精は大量だった。口の容量を巨大な生殖肢で狭められている  
こともあり、飲み切れない分が、すぐに少女の唇からあふれ出す。  
 「んく…ごく…んく…ふっ、げぼっ!?…ごほっ…うぇ………あぅーごめん。」  
 結局、溢さないようペースを上げようとした所でむせてしまい、半分以上が周りの触手や恭子の体に  
飛び散った。慌てて背中を擦るデッカを、大丈夫だから静止して、最後の嘔吐感をやり過ごす。深呼吸  
すると、そこかしこから立ち上る、強い牡の匂いが、むっと彼女の鼻腔を突いた。  
 
7.  
 
 一息吐いた所で、恭子は自分の状態を確認しようと目を開けた。が、涙で滲んでよく見えない。手や肩で  
拭おうにもネトネトなので、「だれかー手のきれいな仔ー。目、拭いて。」と援助を求める。  
 すぐにトリデスとオクトルの触手がやってきて、彼女の目尻を拭ってくれた。ついでに舌まで伸ばしてきた  
オクトルに目ん玉を舐められて、恭子は小さく悲鳴をあげる。  
 「っもう、あんまりビックリさせないでよ。」  
 苦笑いでそう言うと、悪戯が成功して楽しそうな触手舌は、彼女に軽くキスして退散する。クリアになった  
視界で見渡すと、なんとデッカと目が合った。  
 
 『体』達の目は、触手の先でなく体幹に直接付いている。そのため、普段は多くの触手に阻まれて、外側  
から直接、その瞳を見ることは難しい。普段、本人達はうまく隙間から覗いているのだろうが、こうして直接  
見つめ合うという体験は初めてだ。よっぽど注視して覗き込んでいる、ということか。  
 どうしたのと聞こうとして、その声が喉から出かかる直前に、恭子は急に合点が言って、出かかった言葉を  
飲み込んだ。先程、喉を強引に犯してしまったことを、謝ろうかどうか迷っているのだろう。一応、彼女の側から  
承諾した形のはずだが、ちゃんと口に出してOKを貰ったわけではないし、もしかして無理強いしたのかと  
心配して、こちらの様子を窺っているのだ。  
 
 そんなデッカの懸念を拭ってやろうと、にっこり笑って恭子は言った。  
 「デッカさ、ノーナが暴走した時、わたしの身体楽にしてくれたでしょ?さっきのはそのお礼。  
大丈夫、怒るわけないよ。」  
 ちゃんと加減してくれたしね、と付け加えると、彼女はまだ不安そうなデッカの生殖肢に吸い付いた。  
若干柔らかくなったそれを、手と唇で優しく扱き、まだ中に残っているものを吸い出してやる。思ったより  
沢山出てきたが、さすがに今度は零すことも無く、喉を鳴らしてコクンと飲み干した。全部出したかな、  
とその鈴口を舌先で探っていると、早速硬度が戻ってくる。  
 
 最後に少し深めに銜え、性器を舌で簡単にすすぎながら目を開けると、もうデッカの目は見えなくなって  
いた。ところが今度は、それまで射精後の倦怠感に伸びていたノーナが、恭子のお掃除フェラに気付いて、  
いそいそと動き出す。  
 ジュポン、とかなりやな音を立てて、膣から生殖肢を引き抜くと、自分と恭子の液を滴らせたまま、彼女の  
口元まで持ってくる。空いた胎内にすかさず自分の生殖肢を挿れたのは、トリデスだ。おっぱいばっかり  
構ってると思ってたのに、全くもって抜け目ない。  
 早く、早く、と目の前で触手を揺らすノーナに、恭子は、あんたが元凶でしょー、と呆れた声をかけたものの、  
結局は求めに応じてあげた。デッカよりはややぞんざいな動きで、それでもちゃんと綺麗にしてやると、  
ノーナも満足して、生殖肢を口から引き抜いた。  
 
 
 それが休憩終了の合図となって、触手達は再び愛撫を開始した。  
恭子も、何かわたしだけあんまり休んでないぞーとは思いつつも、四肢を触手に投げ出した。そのまま力を  
抜いて、暫くはマグロを決め込むことにする。  
 トリデスは一旦、生殖肢を奥まで埋めきると、ピストン運動はせず、そのまま中でうねうねと蠢く動きを  
し始めた。オクトル、ノーナとやや激しい抽送が続いた恭子には、その優しい動きが有難い。先程、  
中途半端なところで止められた身体が、また熱を取り戻していく。  
 
 今まで遠慮していたオクトルも、今度は攻めに加わってきた。体を恭子の背後に回し、背筋とおしりを  
触手で擦る。かと思うと、頭だけ器用に前へ回して、口を彼女の顔全体に押し付ける。ベランダでは、猿轡を  
噛ます必要があって、あまりしていなかったが、実はオクトルは相当なキス魔である。  
 オクトルに限らず、彼らとの接吻は恭子も大好きなものの一つだ。暖かい腕に包まれた中で、唇に与えられる  
優しい触れ合いというのは、やはり何か特別なんじゃないかと、彼女は思う。些か乙女チックな思考回路だとは  
自認しつつも、まあ実際今はまだ乙女だしと、自分を納得させている。その相手が触手でいいのかという葛藤は、  
もう大分昔のものだ。  
 
 恭子と比べてちょっと大きすぎる口唇を、オクトルは器用にすぼめて、彼女の口を吸った。それから舌を  
伸ばして、軽く唇をノックし、そして再び口を吸う、ということを数回繰り返すと、段々彼女の方も乗り気に  
なってきた。ついさっきまで、疲れて動けんと伸びていたのに、気分次第であっさり復活するのは、さすが  
若さといったところか。両手を伸ばしてオクトルの頭を抱え、恭子の方からも、盛んに口を寄せる。  
 
 少女の腰の部分には、今はノーナを退かしてデッカが構えていた。幾重にも分かれた舌を、秘部へと伸ばして、  
トリデスをくわえ込んだ膣口の周りを、ゆっくりと舐める。彼女の丁寧すぎる清拭で、すっかり硬さを戻してしまった  
生殖肢は、行き場が無いので、とりあえず左の膝裏に当てている。  
 
 「ん……んぅ…ぁ…あむ……ん…っ…」  
前半に比べて、その愛撫は皆、比較的穏やかだ。お陰で大好きな接吻を、あまり邪魔されることもなく、  
恭子はかなり上機嫌である。本人が乗ってきたことで、敏感な局所への愛撫無しでも、お腹に快感が  
ゆっくりと溜まって行く。  
 
 身体が十分に温まってきたのを受けて、トリデスは乳房を攻めを強め始めた。  
 「んちゅ…ん……むあ…ふっ…っ…くん」  
口管が吸い上げだけでなく、先端の花弁による揉み込みの動きを大きくする。そして、快感と痛みの境を、  
見極めようとするかの様に、その握力がゆっくりと強くなっていく。  
 「ふむぅ……あっ…うん…も少し、だいじょぶ…ん…んっ…」  
トリデスの探る動きに、恭子が答える。ゆったりとした愛撫でも、もう身体は十分に高まってきていて、  
平時なら痛みを伴うような揉み上げにも、彼女はまだ甘い声を上げている。  
 
 ここまで来て、トリデスはやっと十分と判を下した。触手の動きが、それまでのただひたすらに甘いものから、  
自分が女体を楽しむためのものへと、一変する。  
 
 「んっ!…ううっ…あぁ…やあっ!…ん……くぅぅ…」  
圧力に負けて、触手の合間から膨らみが溢れる。痛みに変わる、ギリギリ手前の匙加減は、さすがトリデスと  
いった所で、その弾力を好き放題に揉みしだきながらも、恭子の身体の快感の波が、収まることを許さない。  
今では右胸も、ほぼトリデスの触手が仕切っており、例のドーム状の形態をとって、全体を押し潰すように  
収縮する。  
 「あ…あ…っ、はあぁ…ひゃっ…いや…ぁ」  
それに連動して、胎内の触手も動きを強める。相変わらず抽送こそないが、ミミズのような蠕動を開始して、  
生殖肢が奥へ奥へと膣壁を蹴る。当然行き止まりなので、その動きは空しく内側の襞を擦ることになる。  
 「んはぁ…んっ!……んあぁっ!…や…いやぁっ!……ん…くぅっっ……!!」  
 恭子の中から分泌される液が、白濁したものに変わってきた。その変化は、既に二体分の精液が溢れている  
秘部では、見た目では分かりにくい。しかし、先程からずっとそこを舐めていたデッカの舌は、その味の変化で、  
彼女が本気の汁を出し始めたことを、知っていた。  
 後ろではさっきから、背筋の一番弱いところを狙って、オクトルの生殖肢がのたくっていた。ひたひたと濡れた  
感覚が、ゾクゾクとした刺激を脳髄に送り込む。恭子と安心させるように舌を絡めては、その隙を突く形で  
アナルから尾?骨にかけてを舐め上げる。  
 
 三人がかりの愛撫で、全身がじっとりと汗をかくほどに感じている。体はもうとっくに、絶頂へ向かって走り  
始めていてもおかしくないのに、ふわふわとした性感だけが、際限なくお腹へと溜まっていく。思わず自分で  
内股をこすり合わせようとしたのを、デッカの触手に阻まれて、恭子も気付いた。  
 「……っっ!」  
 敏感な三点だけは、まだ誰もさわりもしていない。そこを刺激すれば、彼女が容易く昇りつめることを分かって、  
わざと外しているのだ。  
 焦らされている。  
 そうはっきり意識した途端、羞恥やら期待やらが、その他興奮と一緒くたになって、彼女の体温を一気に  
押し上げた。  
 
 「あっ…はぅっ!…んぁ…ゃ…や、っもう、もう…っねぇ!…」  
乳首とクリトリスへ、一度向いてしまった意識が離れない。今や、周りで蠢く触手の熱気、側を滴る汗や液の  
流れまで、そこで敏感に感じ取れてしまう。そんなに感覚を集中していては、いざ触られた時に、大変なことに  
なってしまうと、分ってはいるのだが、脳を冒す膨大な熱が、気を逸らすことを許さない。  
 「…っ…やぁっ…ねぇ…おねっ、お願ぃ…やっあむっ…ん…ちゅる」  
ついに出かけたおねだりの言葉を、オクトルの口が飲み込んでしまう。こうなったら、キスに集中して気を  
逸らそう、とその頭部を抱きかかえた時、トリデスの口管の舌が、くぼんだ乳首を引っ張り上げた。  
 
 「ひ…!? ひあぁっ!だ…ダメっ…あぁああっっ!」  
 今日一番の嬌声が巣穴に響く。  
 間を置かずに、下の核にも触手が走った。デッカは二本の触手が脇を押さえて包皮を開くと、その皮と中の粒の  
間に、極細の繊毛を挟み込む。  
 「んんあぁぁ〜〜っ!!ダメっっ!ヤっ…やあぁっあううっっ!」  
 狂ったように身体がはねる。しかし三体で計700kgを超える触手群は、しっかりと要所を押さえ込み、  
相変わらず正確で大胆な攻めを緩めない。  
 
 膣はトリデスの生殖肢を真似たように蠕動を始め、くわえ込んだ性器を自分の奥へと引き付けだした。  
それに逆らうような形で、トリデスも緩やかな抽送を開始する。襞と触手がお互いの動きと逆向きに引っ張られ、  
強い摩擦が膨大な性感を、こすれ合う二人に送り込んだ。  
 その興奮に煽られ、胸の揉み上げがさらに強まった。普段の恭子なら、もう苦痛を訴えるレベルだが、脳を  
冒す快感の熱に、痛感が弱められた今は、彼女には強い刺激としか感じられない。さらに、口管だけでは  
満足出来なくなったのか、彼女を抱え直して頭部を無理やり下ろしてくると、メインの口腔が、直接右胸を  
吸い込んだ。  
 「はううぅっっ!!…んああぅっ!…あんっ!やあぁ、おっぱいが、ひゃんっっ……!」  
膨らみを丸ごと綺麗に飲み込んで、その麓を唇で絞っていく。そして、口内で見事に丸く実った脂肪の  
果実を、さくらんぼのように舌でコロコロと弄ぶ。  
 
 膣口で生殖肢の出入りが激しくなってきた。デッカはそれを迂回して、クリトリスへと舌を伸ばすと、  
繊毛を挟み込まれたそこを、包皮の上からぎゅっぎゅと押し付ける。途端に恭子が悲鳴を上げて、  
くわえ込んだそこが収縮する様子は、外からでもはっきりと分かった。愛液はまるで失禁したかのように  
とろとろとあふれ出し、それを片っ端からデッカが舐めとるので、触手の白濁まみれだった秘部は、  
逆に綺麗になってきた。生殖肢は我慢できないというように、畳んだ膝裏を無理やり上下して、  
溢れたぬめりを、ふくらはぎへと垂らしている。  
 
 「ああぁっ…!!やあっっ…!ダメっっ!やだっっ!…あっ!もうダメっっ!!」  
ついに身体が走り出した。頭は朦朧としてたが、それでも本能で、一緒にイけそうなのは、トリデスだけだなと  
恭子は悟る。そうすると絶頂後の敏感な身体で、デッカとオクトルを受け止めることになりそうだ。  
 とんでもない事になりそうだが、もうこうなっては、彼女にはどうしようもない。来るべき絶頂に備えて、  
頭を振りながら、必死になって快感をこらえる。  
 「んあっっ!!やっ…ぁ…ぁっ…イク、ねぇっ、もういっちゃうよっ!」  
視界が白み、三半規管が狂って、重力の感覚がおかしくなる。両手をばたばたと動かすと、彼女の意を汲んだ  
オクトルが、太い第4肢を差し込んできた。それに力いっぱい抱きしめて、彼女はさらに声を上げる。と、  
 
 「やぁっっ……!ああうっっ…!!あんっっ…!……っ…、ひゃぁっ!?」  
いきなり生殖肢がすっぽ抜けた。性感に浮かされている恭子には、何が起きたのか全く分からない。疑問を  
浮かべる暇があればこそ。  
 「んあっっ……あ゛う゛ぅうぅ!?……ひゃあぁんっっ……!!」  
まだ黒く口を開けたままのそこに、デッカの生殖肢が飛び込んできた。小柄な彼女にはややサイズオーバーな  
それも、今日はもう既に三体分の生殖肢で、徹底的にこなされたおかげか、恭子の膣は割り合い、あっさりと  
飲み込んだ。ギチギチと拡げられる痛みは、もはや快感にしか感じられない。  
 そして抜かれたトリデスの生殖肢は、まっしぐらに胸へ奔る。そこで待ち構えていた触手達は、素早く両胸  
を抱き寄せて谷間を作り、その隘路に生殖肢が飛び込んだ。  
 
 間髪いれず、デッカのものが抽送を開始。身体の中心を貫く巨大な楔に、恭子は全身を支配される。息も、  
思考も、きっと臓の鼓動さえもが、その突き上げに合わせて動かされた。圧倒的な圧迫感で、快感を  
溜め込んだお腹のダムが決壊する。全身が性感の濁流に押し流されて、恭子は達した。  
 「ひぁ…!やぁっ!……んんんんぁぁぁあぁぁ!!」  
 
 絶頂の震えが全身を襲う。それにあわせる形で、少女の胸で猛烈な抽送を繰り返していたトリデスも、  
亀頭を乳房で包むようにして、射精した。膨らみを強く寄せて密閉しようとしているが、結局どこかに  
隙間があるのだろう、胸の合間から精液が勢いよく飛び出して、再び彼女の顔を汚す。  
 
 そして、デッカは止まらない。  
 「はああぁ、はう、んあっ…っ!!…っっんあう゛っ」  
 絶頂中の、一番おいしい膣内を存分に味わう。断続的に収縮する壁、生殖肢を飲み込まんとする襞、そして  
吸い付くように首を伸ばす子宮口。その快楽を出来るだけ長く味わおうと、陰核の繊毛がざわざわと蠢き、太い  
雁首がGスポットを攻めて、彼女を絶頂に押し止めた。  
 
 しかしそれも長くは続かず、結局は身体が降りてきてしまう。高まりで訳の分からない状態から、絶頂後の  
敏感な状態へと、性感の回路が切り替わる。そこへデッカの怒涛の攻めを受け、恭子は思いっきり泣き  
叫んだ。  
 「はううぅ、!……んはぁ!!…やだっ…!!やだやだぁっっ!!きゃうっっ!」  
 思わず否定の言葉が混じる。だがその中に、彼らへの静止の合図である、「やめて」と「待て」が入って  
いないため、デッカは抽送と愛撫の手を緩めない。  
 
 しかし、彼女の中を最高の状態で味わえた甲斐あって、彼に二回目にしてはやや早いゴールが見え  
始めた。あまり長引かせると、少女に本格的な負担となる恐れがある。ので、そのまま一気に自分を高める  
ことにした。上半身にも触手を伸ばして、伸びているトリデスの隙間から、その膨らみを楽しむ。  
 
 「はあぅ…っ!…やあぁっっ!!……んああっ……ダメっ…!!」  
 痛みとも快感とも付かない猛烈な刺激に、やがてジンジンとした痺れが混じってきた。降り切れなかった  
身体が、途中から再び昇りに転じたのだ。頭はもうぐちゃぐちゃで、触手達の様子も、自分の身体の状態も、  
分からない。ただ、そこは牝の本能というべきか、今自分を抱いているのがデッカだということだけは、  
直感的に悟っていた。  
 
 「んあっっ……だっ…デッカっっ…ゃっ…くるっ…またくるっ……!」  
 再びふわふわと浮き上がる感覚。恭子に言われるまでもなく、デッカも膣の様子からそれを感じていた。  
途中から無理矢理昇らせられたためか、絶頂に向かう感覚は、さきほどよりは明確ではない。しかしながら、  
胎内の蠢きはやはり至高のもので、この機を逃すまいとデッカの抽送がいよいよ激しくなる。  
 「あう゛ぅ…!…だめぇっ!…ひぃあっっ……かはっ!……はぐぅぅっっ…!!」  
 身体を触手で固定されているにも関らず、突き上げの衝撃で乳房が揺れる。今は完全に露出した乳首を、  
デッカの舌が膨らみに押し戻した。  
 膣壁が蠕動運動を再開する。蠢く襞は先と同じ、しかし亀頭の膨らみでその摩擦はさらに強まった。もう  
中の詳しい感覚などほとんどないはずのに、それでもデッカの生殖肢が、射精に備えて傘を開くのが、  
朦朧とした恭子の頭でも、はっきりと分かる。オクトルの肢を抱き直し、どこかに飛ばされそうな身体を  
抑えるために、必死になって縋り付く。  
 そしてオクトルは一度、大きく生殖肢を引くと、傘を開きながらそれを最奥まで突きこんだ。  
 
 「やっっ…だめぇっっ……っっ──ッんぁああ゛っ、…っ───!!」  
 
 最後の最後で、息が出来ない。声も出ない。それでも、彼女は胎は、血中の酸素を総動員して、銜えた  
生殖肢を扱き上げた。大きく膨らんだデッカのそれは、しっかりと栓になっていて、吐き出した精液を、  
膣外へと漏らすことを許さない。  
 子宮口が、おもむろに首を伸ばすと、目の前で白濁を吹き上げる鈴口へ、その吸い口を突っ込んだ。  
 
 息が戻り、一瞬、恭子の思考が戻る。射精はまだ続いていた。しかし、さすがに今日は限界だ。お開き、  
とだけなんとか言うと、彼女は折角戻った思考を、今度は意識ごと手放した。  
 
 
8.  
 
 バシャバシャと音を立てながら、ノーナとトリデスが行水をしている。恭子はオクトルに抱えられて、彼の  
生殖肢を口に銜えつつ、その楽しそうな水音に、耳を傾けている。  
 
 ここは、彼らの水場であった。巣穴から少し下ったところにある、崖下の湧水である。粘土層の露頭  
から湧き出す水は、水源林のものだけあって、かなり綺麗だ。実際、恭子も今さっき、ここでオクトル、  
デッカと共に行水を済ませたところだった。今は三人で、こうして身体を乾かしつつ、残りの二体の  
水浴びを待っている。  
 
 あの後、恭子がそのまま寝てしまったので、彼らはとりあえず、いつも通り恭子を抱えてこの水場に  
やってきた。彼女の全身にべっとり付いた、精の汚れを落とすためである。  
 つい最近までは、とても水に入れる気温ではなかったので、触手達だけ水に入り、恭子は彼らに  
ひたすら舐めとってもらうことで、我慢していた。それでも、わりと奇麗にはなるのだが、当然唾液が  
残ってしまうし、気分的にもサッパリしない。なので、前回からは、少々無理をおして、彼らと一緒に  
水浴びすることにしたのだ。  
 それを覚えていた触手達は、水際で僅かに戸惑ったものの、結局、眠ったままの裸の少女を、  
そのまま水面に下ろすことにした。そしてミノリがおいおいと思う間も無く、その裸体は20度を下回る  
湧水に浸けられ、結果、恭子は悲鳴をあげて飛び起きた。  
 
 その後、  
「わたしの身体を水に浸けるのは絶対わたしの許可をとってから、まして眠ったままなんてもっての他!」  
とよくよく四体に言い聞かせた後、恭子は気を取り直して水に入った。  
 そして余りの冷たさにカラスの行水で飛び出す(といっても、腰が立たないので触手任せだが)と、  
同じくさっさと上がったオクトルの体に包まった、という次第である。  
 
 「んちゅっ…ちゅる……ぷはっ、ちょっとノーナー!遊んでないで体洗いなよー!」  
その結果今は、こうしてオクトルの生殖肢を銜えながら、やんちゃ坊主とおっぱい星人の二体のお風呂を  
監督している。  
 オクトルは結局、自分の番が回ってくる前に、いい所でお開きになってしまったので、水浴びの後も  
硬くしたままだった。それに気付いた恭子は、さすがに可哀想になって、残りの触手達を待つ間、口で  
簡単に抜いてやることにしたのだ。  
 
 巣穴ではかなり限界だったらしく、この分ならトリデス達が上がる前に終わらせられるかな、と思っている  
と、ミノリが言った。  
 ”もう帰宅のための"直結"の準備をした方がいいんじゃないか。あれ程の行為の後とはいえ、水を浴びて  
君の身体は急速に閉じつつある。”  
 「あれ程って……。まあいいけど、オクトル、もうちょっとで終わりそうなの。それからじゃ駄目?」  
 ”神経を繋ぐだけで、『体』を掌握はしない。君の身体の負担を減らしたいだけで、オクトル君との戯れの  
邪魔をする気はさらさらない。”  
恭子はにやりとした。 「…そんなこと言っちゃって、自分が感覚の共有をしたいだけじゃないの?」  
ミノリは平然と返した。 ”勿論、君の口唇愛撫が素晴らしいということに異論はないよ。”  
 また藪蛇だった。そう思いつつ、恭子は赤い顔を誤魔化すように、オクトルのものを吸い上げる。  
 
 "直結"は、ベランダの時と同じ要領で簡単に済んだ。オクトルにその意を伝えると、初めはまた生殺しか、  
と渋面をしたが、事情を話してそうでないと分かるとすぐに応じた。四体分の挿入と3度の絶頂を受けた  
そこは、連結肢をあっさり受け入れ、痛みもさほどではなかった。恭子はそのままフェラチオを続け、結局  
繋がって数分もしないうちに、彼あるいは彼らの迸りを受け止めた。  
 ここで零すと、折角の行水が元も子もない。幸い二度目のせいか、あるいはただ抜きだけに集中したせいか、  
たいした量にはならなかったので、彼女は余裕を持って飲み干した。  
 
 口でオクトルのものを洗いながら、ふと、ここで「ねぇ、"直結"間に合った?無事感じてくれた?」とか  
聞いてやれば、さすがにこの人造知性体の鉄面皮も、剥がせるだろうか、などと恭子は考えた。或いは、  
また返り討ちに合うだけか。  
 思考がだだ漏れなことをすっかり忘れて、権謀術数をめぐらす少女に、ミノリは敢えて何も言わない。  
沈黙は金だ。  
 そうこうしている内に、ノーナとトリデスも、水から上がってきた。  
 
 巣穴に戻る際も、ミノリは『体』をオクトルの自由にさせていた。基本的に、どうしてもミノリで『体』を  
動かす必要があるのは、人気のある場所だけだった。  
 中に入ってまず一番に、恭子はナップザックを探し、服を着た。風邪はともかく、お腹をやられてないか、  
ちょっと心配だ。時計を見るともう大分朝が近かった。明るくなると、オクトルでベランダからの帰宅が出来なく  
なるので、色々面倒なことになる。  
 後は今日何すんだっけ?と思い出そうとして、行為の前後の記憶が曖昧なことに赤面する。記憶飛ばす  
程乱れた覚えはないけどなぁと、頭を掻いていると、ミノリが、ノーナにプロテイン、と教えてくれる。  
 洞穴の奥の倉庫から、人間用のプロテインサプリを出して、ノーナに飲ませる。こんなんでいいのかと  
恭子は思うが、ミノリがちゃんと計算してのことだから、間違いないのだろう。最近は簡単に済むが、  
以前は飲ませる量も種類も多くて、結構大変な作業だったのだ。  
 
 大分時間が押してきた。別れの時間を悟って、触手達は何となく擦り寄ってくる。恭子も、もう少し  
ゆっくりできたらねぇと思うのだが、どうやら今週はここまでのようだ。時間があれば週中でも顔を出す  
つもりだが、一応真面目に学生してる身としては、中々そうもいかない。  
 
 それに。  
 ”我々のために、君の生活が破壊されたのでは元も子もない。これは、君と共存するしか生きる道が無い  
我々の真理であるし、またミノリ、オクトル、ノーナ、デッカ、トリデスの、個人的意見でもある。”  
 以前そう言った時、ミノリは初めて『体』達を、野々宮恭子の命名通りに呼んだのだ。  
 
 「んーじゃ、そろそろお別れかなー」  
そう言って両手を差し出すと、右手にデッカ、左手にノーナ、そして何故か両胸にトリデスの触手が巻きついた。  
それでぎゅうぎゅうと引っ張り合いをした後(胸の方は如何ともし難いので好きにさせるだけ)、最後に  
顔に寄せて口をつけると、「はい、"やめ"、終わり」と言い手を離す。  
 静止の言葉で、触手達も大人しく引き下がる。名残惜しいのは恭子も同じだが、ここでぐずぐずした結果  
脅かされるのは、ミノリも含めた5人全員の命なのだ。  
 オクトルに合図してウロ穴を出る。あとは、振り返らなかった。  
 
 
 随分飛ばして、行きの3分の2の時間で山を降りたが、ベランダに飛び込んだ時には、既にやや薄暗かった。  
素早く連結肢を外して、オクトルの体の掌握を待つ。激しい運動後で血の巡りがいいせいか、オクトル  
の回復も早かった。一分少々で頭部がピクンと動き、恭子が顔を寄せ小声で「オクトル?」と聞くと、  
返事がわりに彼女の頭を抱き寄せた。  
 恭子は逆らわず数度口を吸った後、触手を制して自分から立ち上がる。彼も抵抗しなかった。  
瞳は見えなかったが、こちらを見ているのがわかったので、口パクで「ありがと」と礼を言う。  
 
 それを合図に、八本肢の巨体は柵の向こう側へ姿を消した。恭子はそのまま座り込んで、彼は誰時の  
空を見上げる。後姿を見送ることはしなかった。確か昔に、ミノリがそうしないように勧めたのだが、  
理由はもう忘れてしまった。  
 
 5分ほどたって、そろそろ部屋に戻ろうとガラス戸に手をかけた時、胎の知性体が宿主に言った。  
 ”全員を代表して礼を言う。ありがとう。”   
 「どういたしまして。」  
そう言葉を返す彼女の表情を、ミノリが毎週ガラスの反射で盗み見ている事を、野々宮恭子は未だ知らない。  
 
 二人の姿が部屋へと消える。そして間も無く、町に朝日が昇った。  
 
 

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