1.  
 午前0時30分。  
 両親の部屋から物音がしなくなった事を確認して、さらにきっちり15分待ってから、野々宮恭子は  
行動を開始した。  
 
 部屋の明かりも点けぬまま、窓から差し込む街灯の光を頼りに着替えを始める。  
ショーツは専用に用意してある綿の頑丈な奴。色気もいの字もないが、こと洗濯される事に対しては  
優秀だ。ブラは恭子の場合、あった方が動きやすくていいのだが、前回お気に入りのスポーツブラを  
ダメにされた事を思い出し、諦めた。  
続いて、手持ちで一番古いキャミソールの上に、着古しの深緑色のTシャツを重ねる。どこか野暮ったい  
チェック柄のスカートは、これまた頑丈さが唯一の取り柄といわれた中学時代の制服である。  
 恭子は特別ファンッションセンスに恵まれているわけでもないが、それでも今の自分の格好については  
自信を持って評を下せる。ダサい。  
 だが、とにかく今の服装に要求されるのは、夜陰に溶け込む目立たなさと、万一ダメにしても惜しくない  
という安価さだ。  
 
 最後に、机の引き出しから犬笛を取り出して首に掛けると、彼女は出来るだけ音を立てぬよう、  
そっとベランダに出た。前もって用意しておいたナップザックから、運動靴を取り出し、履く。  
マンションの三階から柵越しに階下を見下ろすと、初夏の夜特有のどこか生ぬるい風が、恭子の  
頬を撫ぜた。  
 
 
 ”準備は出来たか?”  
唐突に、恭子の頭に声が響く。テレパシーというよりは、自分の中の別人格が話しかけてきたような感じだ。  
もっとも、彼女は幸い多重人格者にも精神感応者にもなったことがなかったので、詳しいところは分からない。  
 
 「うん、大丈夫。いつでもいいよ、ミノリ。」  
と、恭子は小声で、子宮の間借り人に返事をした。別に声に出さなくても、脊髄を介して脳が繋がっている  
彼には通じるのだが、実は彼女の思考の大半が常に彼に流れ込んでいるので、色々と混乱を避ける  
意味もあり、彼への意思表示はあえて口にするようにしている。  
”では早速『体』の方も呼び出そう。犬笛を頼む。”  
「分かった。」  
 言われたとおりに、恭子は首に下げている犬笛を吹く。が、それは人間の可聴域を超える高音で鳴る  
ため、普通の人間には何も聞こえない。  
 するとまもなく、下を見下ろしていた恭子の視界に大きな影が現われた。街灯の明かりを出来るだけ  
避けるようにしながら、三、四メートルはあるその塊は、見かけからは想像も出来ないような素早さで  
野々宮家のベランダの真下の辺りに移動する。そこで一時、周りを窺うように動きを止めた後、それは  
手すりや雨どいを足場に、恭子の待つ三階へと登り始めた。  
 
 そう、そして今しがた彼女と会話していた声の正体こそ、この8本の巨大な肢と大小の無数の触手を  
備えた、生物学的な分類のふるいにかけられない人造生命体”ミノリ”であった。  
 
 
 事の起こりはおよそ半年前に遡る。  
ここでは詳細を省くが、その日、研究所を出てほぼ3日、まともな栄養素を殆ど摂取できずに瀕死の状態  
だった人造生物『ミノリ』と、夕ご飯も終わって、採りすぎたであろう栄養素を燃焼させるべくジョギングに  
出ていた健康なホモ・サピエンス『野々宮恭子』の、人気のない夜の出会いが、全ての発端であった。  
 
その時、自らの体機能全てを維持することが極めて困難であることを悟ったミノリは、せめて再生が難しい  
大脳機能だけでも、なんとか保全できないかと考えていた。そして、彼言わせれば当然の論理的帰結として  
(恭子に言わせれば悪魔的閃きの結果)、それを目の前に現われた人間の少女の子宮に移すことを考え付いた。  
 
そしてその結果もたらされた壮絶なすったもんだの末に、二人は当時両者ともが予想だにしなかった関係に  
落ち着くことになる。  
すなわち、互いの生存と幸福ため、協力しあう関係に。  
 
 
 10メートルの高さを僅か10秒足らずで登りきると、その『体』は一気に彼女のベランダへと乗り込んだ。  
より正確には、「流れ込んだ」というべきか。全重で200キロ近いその肉塊は、猫のように身を竦ませると、  
バケツで水を流し込んだかのように、その身を一息で、ベランダの内側に埋めた。  
 おかげで、登るのを手伝ってやろうかなどと、のんびり縁に構えていた恭子は、その勢いに煽われて、  
「わぶっ…!」と、情けない声をあげながら、仰向けに倒れそうになった。後頭部がコンクリートにぶつかる、  
あと数cmというところで、力強い触手に掬い上げられる。  
 思わず呆然としていると、やがて太い肢が2本、腰と脇から頭にかけて優しく巻きついた。そして彼女の  
体を抱き起こす………と思いきや『体』の中心にゆっくりと抱き寄せる。  
 その甘えるような仕草に、恭子はふと何かおかしくなって、両手でポンポンとその肢を叩きながら、  
お礼を言った。「ありがと、オクトル。」  
 
 自分の『体』に勝手な名前を付けて謝辞など言っている少女に、ミノリは何か皮肉の一つでも言って  
やろうと思ったが、効果が無いのは分かりきっていたのでやめた。実際、彼の『体』を、恭子が別に  
名付けて呼ぶにのは、理由がある。それはミノリの大脳機能と"直結"されている時は、まさに彼の  
手足となって動くのだが、今のように離れている時は、ある程度それ自身の意思で動くのだ。  
恭子の言葉を借りれば、「ちょっとお馬鹿な忠犬」程度の振る舞いで。  
 それになんだかんだいって、名付けというその行為は、自分達に対する彼女の愛情の象徴でもある。  
たとえそれが、八本足→タコ→オクトパスという哀しいほど安直なものであってもだ。  
 
 ………やっぱりどこか面白くない。  
 
 まだオクトルの第3肢とじゃれている彼女に、ミノリはため息交じりで言ってみた。  
”毎度のことだが、42kgの君の体で、私の『体』を抱きとめる事は到底出来ない。こういう時は  
奥に控えてくれていると、私としては気が楽なんだが。”  
「転んだわたしを助けてくれたのは、ミノリじゃなくてオクトルでしょ。偉そうに言わないの。」  
しかし彼の皮肉もどこ吹く風。恭子は、ねー?、などと言って巨大な触手の頭をなでている。  
 
 「それにしても、今日は何だってこんな勢いで飛び込んできたんだろう?」  
”もう月が大分高い。『体』なりに考えて、出来るだけ人目に付くまいとした結果だろう。”  
「おお、最近なかなか賢いぞ。オクトルいい子いい子。」  
”ならば聡明なオクトル君の意を汲んで、早急に出発の準備をしてはどうか。いくら小声とはいえ、  
こんな所でぶつぶつ独り言を呟いていては、君のご両親やご近所がいつ気付くとも限らない。”  
 ミノリのその冷ややかな一言に、それまで調子よく喋っていた恭子はう、と言葉を詰まらせた。  
確かに、この状況は傍から見れば、真夜中に怪しい娘が、ベランダでぶつぶつ言っているようにしか  
見えないだろう。  
 いや、巨大な触手がベランダにみっしりと詰まっている時点で、それどころではないのだが。  
 
 「そうね、かかりましょ。」  
そう言って恭子は身じろぎすると、自分を抱き寄せる二本の触手からするりと身を抜いた。  
 
 
2.  
 物音を立てないように、ベランダでオクトルがそっと体勢を入れ替える。  
床を背に仰向けとなり、恭子はその腹──といっても、実際はそこから生える無数の触手の上──に  
寝そべる格好になった。彼女の手首より少し細いくらいの触手が、ゆっくりと恭子の掌に絡んで、  
その自由を奪う。同様に腰と足首にも、場所相応の太さのものが優しく、だが確実に巻きついて。  
やがて完全に、少女の身体をその巨体に縫い付けた。  
 
 普段は、黙ってて欲しい時に限って喋くり回るミノリが、今はすっかり大人しい。恐らく、"直結"の準備に  
集中している為だろう、恭子は思う。  
 "直結"の概念は余りにも単純明快で、齢十七の恭子にも簡単に理解できた。曰く、ミノリの『頭』は  
彼女の子宮にあって、『体』は外にある。彼らが一体となって行動するには、両者がきちんと神経で繋がる  
ことが望ましい。ので、オクトルの中枢に近い神経索を膣を通して子宮内の脳とつないでしまおう。  
 大雑把に言えばそういうことらしい。だが、一体どんな魔法をつかったら、現実にそんなSF染みた芸当が  
出来るのか、恭子にはさっぱり分からなかったし、ミノリから説明をうけた当時は、彼女はその過程が  
意味するものに仰天して、それどころではなかった。  
 
 少しばかり物思いに耽っていた恭子の頬を、オクトルの固い触手がツンツンと突く。これからの行為で、  
恭子が声を漏らさない様に、猿轡代わりにするものだ。万が一、彼女が思いっきり噛んでもいいように、  
外殻付きになっている。  
 準備いい?聞くようなその仕草に恭子は頷いて、その触手をしっかりと咥え込んだ。  
それでも大声を上げでしまった時に備えて、細い脂肪質の触手が、外殻と恭子の口の僅かな隙間を  
埋められる様に、待機する。  
 
 下準備が整って、恭子はいよいよだ、と深呼吸をする。やがてヌラリとした生殖肢が、ペトっと太股の内側に  
張り付いた。その冷たい感触に、彼女は思わず身を硬くする。下手な緊張は身体の準備の逆効果にしか  
ならないと、分かってはいるのだが、この最初の感覚だけは、どうしても慣れることが出来ない。  
 しかし、すぐに何本もの暖かい触手が、彼女の両の太股にぐるぐると巻きついて、マッサージを始めたので、  
その緊張はすぐほぐれていった。ひんやりとした生殖肢も、粘液を彼女の太股にこすりつけながら動くに  
つれて、すぐに人肌を取り戻す。芯から冷えていたわけではなく、最初の感覚は単に、粘液に濡れた  
表面が気化熱を奪われていたからに過ぎない。  
 大腿筋全体が、触手にほぐされてゆっくりと弛緩していった。それと反比例するように、徐々に硬度を増していく  
生殖肢が、太股を濡らしながらゆっくりと少女の付根に向かっていく。  
 
 その感覚に気を取られていたこともあって、また別の幾つかの触手が、Tシャツとキャミソールを一気に  
たくし上げた動きには、完全に不意を突かれた。  
「ひゃっ…!ふっ…んく……」  
快感というよりは驚嘆で出かけた声を、口の触手をかんで押し殺した。彼女の顎の上に控えていた脂肪質の  
触手たちは、一瞬ピクリと反応したが、それ以上は動かずに、やがて元の位置に戻る。  
 肌着が急に取り払われてお腹がひんやりとする。初夏とはいえ、汗ばんだ腹をさらしても平気というほど  
ではないし、そもそも恭子はあまりお腹が強いほうではない。以前、友達に乗せられてやった臍だしルック  
などは二度とすまいと思っている。  
 そんな彼女の意を汲んでか、すぐに長めの触手が、ぐるぐるとお腹に巻きついた。そして窮屈でない  
ギリギリの加減で恭子の腹部を締め付ける。彼女の言うところの、「腹巻き加減」だ。  
途中、先端がからかうように恭子の臍の穴を弄る。彼女が首を上げて睨みながら「う゛ー」と唸ると、触手は  
いたずらを見つかった子供のように、パット離れた。どうやら、オクトルには、恭子のその反応が面白くて  
仕方ないらしいのだが、お腹の弱い彼女としては、正直勘弁してもらいたいというのが本音だ。  
 
 そうこうしているうちに、下の生殖肢が恭子の股下にたどり着いた。ヌラヌラとしたその触手は一旦  
肌を離れると、秘部を飛び越して今度はショーツの上辺を撫で上げる。ついで新たな触手が数本現われ、  
スカートを濡らさぬ様、めくり上げると、端を腹に巻きつく触手に挟みこんで固定した。それから、  
コットンの布の上に下りてきて、ゆっくりと彼女のスリットを掻き分け始める。  
 オクトルの意図を悟った恭子は、しかし首を上げて横に振った。念入りに準備してくれるのは嬉しいが、  
今回はとりあえず子宮が"降りて"、受け入れやすいくらいまでしてくれれば十分だ。今晩はこの後に、  
より頑張らなければならない行為が待っていることもあって、ここで無理にイって体力を浪費したくなかった。  
 
 少し戸惑うような仕草を見せたものの、結局オクトルは素直に彼女の意思に従った。腹に巻きついた触手が  
恭子の腰を上げさせ、両足に巻きついていた内の二本が解けたかと思うと、すっとショーツを引き降ろす。  
触手ならではの見事な連携に、恭子はどこかおかしさを覚えた。  
 
 外気にさらされた秘部が、先程の腹と同様にひんやりと風を感じる。  
そんなことを思っていると、ヌラリとした生殖肢が、襞を分け入ってその身を押し付け始めた。まだ中には  
入ろうとせず、ちょうど素股の要領で、会陰からクリトリスにかけてを愛撫する。  
「くふっ…ふっ…んっ…ふぅううっっ……、ふぁ、ふぅ…」  
ようやく始まったクリトリスへの刺激で、恭子の身体も本格的に反応し始めた。湿っている、といった  
程度だった陰部は、彼女の液でしっかりと濡れ始める。先程までは、意識して抑えられていた呼吸も、  
すっかり上がっていた。今は必死に口の触手を噛んで、なんとか声だけは我慢している状態だ。  
 手足も時々ビクッビクッと引き付けるが、こちらはオクトルの触手がしっかりと押さえ込んでいるので、  
問題ない。  
 
 「ん…ん…んくっ!……はっ、ふ…ん…」  
続いて、それまでほっぽらかしだった胸の方にも触手が回ってきた。仰向けで流れたバストを集めるように、  
淵からトグロを巻いて立ち上がると、最後に恭子の控えめな乳首にその先端を押し付ける。陥没乳頭気味  
なので、あまり立っているという感じはしないのだが、硬くなったその部分をグっと刺激されると、恭子は  
反射的に身を竦ませた。  
 
 お腹に快感が溜まっていく、独特な感覚。子宮の位置が変わるっていうのは、もしかしてこの感覚のことかな、と  
どこか惚けた頭で思う。  
 
 そろそろかなと思ってきた矢先、唐突にオクトルの生殖肢が、恭子の秘部を離れた。  
「ふぁ…ふ…ふ………。ぅん?」  
暫らく待ってみたが、どうも触れてくる気配がない。不思議に思って、恭子はきつく瞑っていた目を開けた。  
こちらとしては、もう受け入れるのには十分で、それをオクトルが気付いていないとも思えないのだが。  
 ふと、もしかして彼の方がまだなのだろうか、と恭子は思いついた。秘部に触れた感覚からは、もう十分な  
硬さになっている気がしていたが、もしそういうことなら、口で手伝おうかな。  
そう考えて頭を上げかけた時、恭子は自分の体がグっと沈み込むのを感じた。  
 
 あ、と気がついたときはもう遅い。  
足、腰、腹、腕を固定していた触手が、一度に引き寄せられたかと思うと、そのまま恭子の身体は、  
オクトルの腹に──つまり触手の根元の方に──しっかりと押し付けられた。  
背中からお尻にかけて大量の肉塊が蠢く感触。そして、オクトルの最も細い部類に入る触手達が、少女の  
身体を射程に捉える。恭子は来るべき猛烈な刺激に耐えるべく、全身をギュッと強張らせた。  
 「んあっっ…!はぁ!、ひゃっ!、ふぐぅぅぅーー!!」  
予想を上回る強烈な快感。少女の咄嗟の気構えも空しく、唇と触手の合間から、悲鳴に近い喘ぎが  
漏れた。脂肪質の触手が慌ててその隙間を埋め、甲高い嬌声を、くぐもったものへと変える。  
 秘部には、恭子の肌が見えないほどの密度で、触手達が集中していた。親指大のものからトコロテン程度の  
のものまで、その太さは様々だ。それらが、水揚げされたウナギのように、恭子の下腹部でのたうち回る。  
 しかも、それらはウナギのようにただ無目的にうねっているわけではない。触手は襞の皺一つ一つをなぞり上げ、  
また数本が固まりとなって尿道を突く。細いものが列を成して、膣前庭をモップ掛けする。  
また幾つかは、膣口に浅く入り込み、身じろぎするようにうねって蜜を纏うと、真っ直ぐ陰核へと向かって、  
そのぬめりを敏感な豆に塗り込めた。  
 加えて、背中では、押し付けられた触手達の根元が蠢いていた。時折、密着したオクトルの腹と恭子の  
背の隙間をこじ開けるように、手首ほどの太さの触手が乱暴に這い回る。その刺激に、敏感になった彼女の  
背筋がブルっと震えると、今度は別の触手が足の方へ伸びていき、快感に震える尻のたぶを引き絞る。  
 
 「はっ…!はふゅ!…ひょ、ひょっとまっれ……ひゃんっ!」  
ちょっと待って、と静止の言葉をかけようにも、しっかり銜え込んだ触手の猿轡が、それを許さない。  
もっとも、例え口が自由でもまともな言葉が発声できたかは疑問だが。  
 「んっ、くん、ふぅううんっっ……!」  
細い触手群はいまや、胸の方にまで上がってきて、彼女のくぼんだ乳首を吸い出せないかと盛んに  
吸い付いている。  
 
 行為時に、オクトルが恭子の意思に反して動くことは、まず滅多に無い。お臍への悪戯のようなものは  
ともかく、はっきりと首を振って示した意思表示に逆らうということはちょっと考えにくかった。きっと別な  
意図に勘違いしたんだ、と霞がかかってきた頭で恭子は思う。たぶん、ショーツを濡らしたくないとか、  
そういう風にとって考えたに違いない。  
 しかし、原因がわかっても今となって後の祭り。とにかく、今はオクトルにイってもらう事を考えよう。  
 自分の意思と関係なく、ビクビクと震える体をなんとかねじ伏せて、恭子が頭をグイともたげた。すると、  
オクトルもそれに気付いて、いっとき触手の攻めを緩める。舌で一旦、邪魔な外殻を口外へ押しやると、  
彼女は息を整えつつ、なんとか小声で言った。  
「も、もう十分…ぅん…だから、入れて?」  
 
 今度はオクトルも誤解しなかった。再び恭子に触手を銜えさせると、下半身を拘束していた触手が、両脚を  
大きく開かせた。誰に見られているわけでもない(オクトルは別として)し、今さらではあるのだが、その屈辱的  
ともいえる格好は、少なからず17歳の少女の羞恥心を刺激する。  
 一瞬、全ての触手の動きが停止する。挿入する時の、オクトル特有の癖だった。恭子はギュっと目を瞑って、  
無駄とは思いつつも、声を抑える固い触手をさらに深く銜え込んだ。そして、  
 「はうっ…ぐっ!……ふうぅぅんーっ!」  
 まず、生殖肢の半分ほど──といっても触手なので、正確には勃起している部分の半分──が、一息に  
突き入れられた。からだの準備は万端すぎる程できていたが、それでも強烈な衝撃と圧迫感に、恭子は  
大きく呻きを上げる。  
 「んぐぅ……!はう!ふうぅん……はんっ!」  
 触手はそのまま、半分程の深さを保って往復する。今しがた自分がこじ開けた部分を押し広げるように、  
じっくりとその身を進め、恭子の胎の、襞の感覚を味わい始める。  
 「んっ…くぅん…ふっ…はっ…はうっ…」  
 動きを止めていた外の触手達も、彼女への攻めを再開した。クリトリスには相変わらず多くの触手が  
喰らいつき、時折膣口からあふれ出る愛液を掬うっては、ローション代わりにしてヌメヌメとうねる。  
胸の方は、今はやや大きめの触手が巻きついて、若々しい弾力を楽しむかのように揉みあげている。  
 
 四度、五度、やや浅い動きを繰りかした後、生殖肢がより深く掘りこむような動きに変わった。  
「ふぅ…ん…くっ……!ふぁぅ…」  
 一突き毎に、少しずつ挿入を深めていく。徐々に押し開かれていく感覚に、恭子はふっ、ふっと息を合わせて  
耐える。強烈な圧迫感ではあるが、それまでの直接的な性感を伴うような攻めではないので、我慢するのは  
若干楽だ。意識して足の力を抜き、身体をオクトルの動きに合わせる。  
 しばしして、グイっとやや強めの突きがくる。生殖肢の先端が、ようやく子宮口にたどり着き、そこで一旦、  
オクトルの触手全体が弛緩する。全て押し込んで、ようやく一息、といったところか。  
そんな反応に、彼女はふふっと笑みを零す。  
 頑張りすぎだよ、もう。  
そんな風に声をかけようと思った恭子だったが、生憎と口がふさがっていたので、代わりに両手を絡め取っている  
触手を優しくなでるにことした。  
 
 ややあって、生殖肢が抽送を再開した。ギリギリまで引き抜いて、一気に突き入れる動き。どちらかといえば、  
恭子を感じさせるよりも、自分が快感を得るための動きだ。しかしオクトルがようやく本気で自分求め始めた  
ことに、恭子は別の意味で心地よい気持ちになる。  
 「はんっ…はあんっ…ふぁっ…くぅん…」  
オクトルの抽送のペースが上がり、それにあわせて恭子の息も上がっていく。生殖肢が胎奥を突くたびに、  
少女の肺から空気が押し出されるのだ。銜え込んだ触手には口から溢れた涎が流れ、それが月の光に  
キラキラと反射した。  
 足首を押さえつける触手の締め付けがキリキリと強まる。皮膚を傷つける程ではないが、その痛みから  
恭子は相手がだいぶ夢中になってきたことを知る。  
 
 このまま最後までいくのかな、と思っていると、突然、身体が宙に吊り上げられた。何事か、思うまもなく、  
オクトルはそのまま器用に空中で恭子の身体を返し、うつ伏せにする。180度回る視界と、挿れたままの  
生殖肢が中でグリンと回る刺激に、彼女が訳もわからず目を回していると、オクトルはそのままストンと  
自分の腹に娘を下ろした。  
 その結果、背中の何倍も敏感な身体の前面が、触手の海に浸かる。  
 「ひゃううっ?…はんっ、ふがっ、ほぶっ…!んんんーっ!」  
大小無数の触手が、顔、胸、腹に面で押し付けられ、這い回る。膝小僧を舐め、乳房を押しつぶし、鎖骨を  
くすぐって首に絡む。あまりの刺激に思わず吐き出した殻付き触手を、オクトルが慌てて口に突っ込んだ。  
 先程までの余裕は一瞬で吹っ飛び、恭子はどこか恐怖すら覚えて、目の前の巨体に必死にしがみつく。  
だがそれは、彼女を蠢く触手とますます密着させることになった。  
 
 その反応に満足して、オクトルが突き上げを強くする。  
「はぐぅっ…!ふぁうっ・・・!んぐぅ…!」  
もう完全に射精を目指した、激しい動き。子宮口を叩き付ける様なその抽送は、痛みすら伴ったが、  
それでも今の彼女の身体は、絶頂へと上っていくことを止められない。  
 オクトルの体に抱きつけたことも大きかった。仰向けでされていた時は、純粋な性感こそ大きかったが、  
やはりただ拘束されて攻められるのというは、どこか不安で心のブレーキになってしまう。それが今や、  
存分に抱き締められるオクトルの熱い体が目の前にあって、完全に取り払われたのだ。  
 そこにいるのは、文字通り、身の心も牡を受け入れる構えの少女。  
 
 「ひゃぐっ…んごっ…んぶっ…んんんーー!!」  
オクトルがラストスパートをかける。もう、声を抑えることは完全に出来なくなった。外殻と脂肪質の触手が  
口腔を完全に密閉し、それでも漏れ出る嬌声を防ごうと、触手の群れが恭子の頭を丸ごと覆いこむ。  
鼻だけでは十分な呼吸が出来ないのか、目からは大粒の涙がポロポロと落ちた。  
 膣壁が不規則な収縮を始め、襞はオクトルの触手に負けず劣らず蠢いて、生殖肢に究極の快感を  
送り始めた。恭子の絶頂の始まりを感じて、オクトルはその腰をやや持ち上げると、自らも終わりに  
導くべく、怒涛の勢いで、射精前の膨らんだ性器を突きこんだ。  
 
 「ひぐぅ…!ふうっ…ふっ!……ふわっ………はぐぅうう゛ぅーーっ!!」  
   
 最後にズンッっと胎奥を突き、脈打つ生殖肢が抽送を終える。ビクッビクッひきつけを起こす奥に、暖かい  
モノが打ちつけられる感触。そこは感覚が鈍いので、精液の流れまでは感じられなかったが、それでも腹を  
埋める太い脈動と、徐々に広がる熱の感覚が、荒い息の少女にもしっかりと、触手の射精を伝えていた。  
 
 
3.  
 恭子は肉体的にも精神的にも、しばらく動けそうになかったが、オクトルとミノリには、ある意味これからが  
本番である。"直結"による恭子への肉体的負担を出来るだけ抑えるには、激しい交わりの余韻で、彼女の  
身体が開いているうちに行うのが、一番なのだ。  
 名残惜しげにピクッピクッと締め付ける膣から生殖肢を抜き去る。栓を失って、大量の精液を溢れさせる  
そこに、細いが強靭な触手を三本選んで、差し入る。それらはすぐに、胎奥でひくつく子宮口を探りあてた。  
絶頂後の敏感な秘部を弄られて、恭子がか細い悲鳴を上げるが、今それに構っている暇は無い。  
 
 続けて、別の細い触手が、オクトルの"連結肢"をつまみ上げた。"連結肢"は『体』の中枢神経  
に繋がる、軟骨組織やコラーゲン繊維で複雑に被膜された神経である。ある程度の長さまでは、  
太い脊索に支持されているが、先端数十センチの部分は、太さ5ミリ足らずの紐状だ。 それ自身には  
筋肉組織は無いので、そのまま触手に導かれる形で膣内に運ばれる。  
 最後にオクトルの触手が、彼女の体をしっかりと拘束し直した。  
 
 "直結"の準備が整い、ミノリがいくぞ、と宿主に警告する。まだ頭の霞が取れずに、ぼうっとしていた  
恭子は、慌てて外れていた触手の猿轡を噛み直す。  
 そして、先の三本の触手が、恭子の子宮口をこじ開けた。  
「んぐっ………かはっ!…はぁ、はぁ、」  
 一瞬、生理痛のオバケのような痛みが、強い異物感と共に下腹を襲った。1cm強ほど開口させると、素早く  
連結肢を挿入する。子宮内で待ち構えていたミノリの受容部にまで差し込むと、他の触手は速やかに  
身を引いて、恭子を中を解放した。  
 "連結した。これから神経を接続する。有難う。"  
 一番緊張する過程を終えて、どこかほっとしたミノリの声が、頭に響く。オクトルの触手群から力が  
抜けていき、恭子はそのまま『体』に身を預けながら、ん、と了解の返事をした。  
 
 ミノリの意識が『体』を完全に掌握するまでの10分程度かかるので、その間に恭子は身支度を整える。  
まず例のナップザックを手繰り寄せると、ボトル入りの水を取り出してゴクゴクと飲んだ。一息つくと、腹や胸に  
巻きついたままの触手を外して、捲くれあがったTシャツをひき下ろす。足に絡んだ触手も、連結肢を  
引っ掛けないよう注意しながら、一本ずつほどいていった。  
 全身の拘束が解けると、恭子は寝返りを打って楽な姿勢をとった。胎奥の痛みはもう殆ど引いている。  
目で外側をざっと確認した限りでは、出血も特にない。一旦入れてしまえば、挿入部の"連結肢"は細く、  
また外圧に従い若干変形するので、下手に動かさないかぎり痛むことはない。  
 
 しかし本来なら数時間かけて行う子宮口の拡張処置を、ほんの一瞬で終えて平気でいられるのは、  
ひとえにミノリの子宮頸部への細工のおかげだ。その人造生命体は、外子宮口が一定以上の刺激を  
受けると、自然に口を開きやすくなるよう、宿主の組織を改変していた。  
 
 ティッシュを取り出し、簡単に外を拭う。中のものは連結肢との摩擦を抑える役割があるので、完全には  
拭き取らない。ショーツはどこにいったかな、と首を巡らすと、少し離れた触手の先に引っかかっていた。  
取りに行こうにも、完全に腰砕けの状態でどうしたもんかと思っていると、やおら触手達が動き出し、恭子の  
足を取ってさっとショーツを履かせた。続いて連結肢の脊索部分を触手で内太股に縛りつけ、余って弛んだ  
紐状の部分はショーツの中にしまい込む。その動きには無駄がなく、またオクトルらしい妙な可愛げや  
愛嬌も消えていた。  
 彼女は触手に尋ねた。「えと、もう"ミノリ"なの?」  
 ”ああ、完全に掌握した。”  
 ミノリはそう答えると、触手を一本、恭子の眼前でひらひらと振った。オクトルはいまや完全に『頭』の  
支配下にあり、ミノリは久しぶりの体を動かす感覚を味わっていた。  
 恭子は時計を確認する。ちょうど一時半になるところだった。  
 
 出発の時だ。  
 
 水をナップザックへ戻す。中身を確かめて袋の口を閉め、恭子はそれをミノリに預けた。彼は肩紐を第7肢に  
に絡め、それを器用に背負う。それから、再び恭子の体の拘束が始まる。  
 
 しかし、今度は今までのような色のある動きではない。八本の大肢の次に太い触手が、彼女の脇、股、腰を  
正確に固定していく。パラシュートのハーネスの要領だ。やがて少女は巨大な触手の腹に抱え上げられ、  
自らもそれにしっかりと抱きついた。出発準備よし。  
 ミノリはベランダからそっと顔(?)を出すと、素早く辺りの様子を窺った。恭子も耳をすませる。  
 誰もいない。  
 次の瞬間、オクトルの登りを上回る俊敏さで、ミノリはベランダを飛び出した。三階分の高さを降りるのに  
5秒とかからない。音もなく地表に達すると、触手はそのままの勢いで街灯の影まで移動した。  
   
 相変わらず、夜の町は静まり返っている。ミノリはマンションの敷地を出ると、暗い県道を横切って素早く  
向かいの木立の中へと飛び込んだ。  
一瞬、木々のざわめきが辺りに広がるが、それに気を止めた人間は、やはりいない。  
 葉擦れの音が収まった時、彼らはとっくに闇の奥へと消えていた。  
 
 樹冠から漏れ来る月の光を頼りに、巨大な触手が森を奔る。  
 その先では、オクトルの同胞たちが、今宵の二人の到着を待っていた。  
 

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