少女は訊ねた。  
「ある決められた日付において、通常の二倍近くの費用をかけ、通常の二倍以上の  
混雑を受忍し、且つ通常と差ほど変わらない集団的余暇活動に勤しむことに関して、  
理性こそがヒト的知性と信仰するミノリさんの意見をお聞かせ下さい」  
 
 触手は答えた。  
“恒常的な刺激には鈍化しやすく、新たなパターンに対しては鋭敏に反応する脳の神経学的な  
特徴から鑑みるに、常態化した活動に加えられる時点並びに状況の特異性は、ヒトの情動への  
影響力をより高めると考えられる。よって、クリパが他の一般的な余暇活動に比べ、費用対効果  
の面で劣っていると直ちに断じる事は出来ない ”  
 
「…………」  
“…………”  
「……ねえ、もしかして、クリパってアレ? 新種の有機化合物か何かかな?」  
“『フって』きたのは君の方だろう。無論、私に異存は無いし、また今回は特に君を馬鹿にする  
意図もない。変な深読みは止めて、素直に級友との親交を深めたまえよ”  
 
 そんなわけで、野々宮恭子は十二月二十四日午後四時現在、クラスメイトと駅前の  
カラオケBOXにて、女子高生らしくマイクの取り合いなどしたりしていた。  
 
 *  
 
 無論、恭子が友達とささやかなクリスマス会を催すのに、ミノリの許可が必要だったわけでは  
ない。発端は昨日、彼女が友人への贈り物を物色中に、ふと漏らした一言だった。  
「そういや、あの仔達にも何かあげなきゃだよねぇ……。あ、ねえねえミノリ、触手もサンタとか  
信じたりするかなっ。 ノーナとかさ、わりとコロっと騙されそうな感じしない?」  
 
 そんな宿主に対して、彼女の子宮を間借りしている人造知性体の大脳機能は、特大の溜息  
を送って寄越した。結果、すっかり臍を曲げてしまった恭子が、今朝の出発に至るまで  
ぐちぐちとミノリに嫌味を言っていたというわけである。  
 実のところ、その嘆息は七割の呆れと二割の感謝、そして一割の後ろめたさが混じり合う  
複雑なものだったりしたのだが。彼女が感じとったのは、幸いなことに皮肉の部分だけだった。  
 
 そんなこんなで、若干滑り出しの悪い二十四日を迎えた恭子だったが、パーティも終わる頃  
にはすっかりご機嫌になっていた。何と言っても、高校二年のクリスマスである。浮かれた町の  
雰囲気に思いっきりあてられて、気の合う友人たちと大騒ぎするイブの日が、楽しくないはずが  
無い。  
 一時は、胎のミノリのことすら忘れていた。  
 忘れていたというか、彼と思考を共有しているという事実、それを全く意識せずに、友人たちと  
はしゃいでいた。  
 
 だから、何気なく振られた二次会のお誘いに、彼女は思わず反応してしまったのだ。  
「さーて、これからもう数時間。一人になりたくない哀れな諸君は次行くよ〜」  
「ほい来た! 今日はどこまでもついてくよっ!」  
 そう、ノリノリで答えられた友人は、一瞬キョトンとしてから、七割の呆れと二割の怒り、  
そして一割の憐みを持って恭子に言った。  
「……いや、ちょっと、恭ちゃん。あんたは向こう側の人間でしょうが」  
 
 恭子たちが、お開きを四時なんて早い時間に設定したのには理由がある。表向きは、地方の  
女子高だけあって色々と頭の固い親御さんたちとの、無駄な衝突を避けること。だが、本当の  
ところは、彼氏持ちとそうでないものが混じり合っている彼女のグループに、あらぬ波風が立つ  
のを回避するのが主眼だった。  
 
 翻って、恭子は"公式"には、未だ独り身である事になっている。だが、今年の春ごろから  
顕著になってきた付き合いの悪さ等々から、それを疑わない者はいなかった。そして恭子自身、  
やむを得ず──本当にやむを得ず──その疑念を逆手に取って利用したこともある。  
 
「え? あ゛っ……」  
「あ゛、じゃないよ、あ゛ じゃ。全くもうこの子ときたら……」  
 それから、BOXの時間制限ギリギリまで、野々宮恭子は今どきの十七歳的なクリスマスイブ  
の身の処し方について、グループ全員から延々と講義を受けることになった。  
 
“あうぅ……。ミノリ先生、助けてくれよぅ”  
“触手に女子高生の心理戦など期待してくれるな”  
 しかし、ここで皮肉や嫌味の応酬に発展することなく、お節介な説教大会に落ち着く辺りが、  
野々宮恭子の人徳である。  
 そう、ミノリは思ったが、勿論口にすることはしなかった。  
 
 *  
 
 それから、およそ一時間後。  
 もうかなり暗くなってきた山の中を、恭子はえっちらおっちら息を上げつつ登っていた。冬は  
下草が枯れている分、今までよりは若干歩きやすくなっているものの、険しい道のりには  
違いない。時間も遅いし、普段なら絶対に触手の方を迎えに呼んでいる所なのだが、今日に  
限ってそうもいかない事情がある。  
 『飛び入りで行け。もしかしたら浮気現場を押さえられるかも』という友人からのアドバイス  
(因みに、これは独り身の子からの有り難い助言だ)が理由では無い。だが、それでふと、  
恭子は昨日の事を思い出したのだ。  
 
「せっかくなので、サンタ作戦を決行します」  
“第一に、彼らに気付かれず巣穴に入ることが不可能だ。加えて、そもそもこの儀式の概念を  
理解させることは、たとえ私が『体』たちと"直結"状態にあったとしても難しいと思う”  
「ふっふっふ。今のわたしは、そんなミノリのお小言に邪魔だてされるような心理状態じゃない  
のよ」  
 そう言って、やや引き攣った笑みを浮かべる彼女の右手には、先ほどスーパーで買い求めた  
グラム78円の鶏肉(生)がある。因みに左手には、結局使わなかったパーティー用のガラクタ  
を押し込めた紙袋。説教の最後に、装備品と称して押し付けられたものだ。  
 それを渡す際、「このサンタ服、女用だから」と意味ありげに笑った彼氏持ちの友達の顔が、  
なんというかトラウマだ。  
 
 いいよもう。そこまで言うなら、望みどおりの方法で使ってやろうじゃない。  
 そう心内で言って、自分で自分に振りきれた振りをして、恭子は一心不乱に山道を登った。  
 
 
 だが、そんな野々宮サンタの来訪は、結局巣穴の五十メートル以上手前で触手に気付か  
れてしまった。週中だし、自分が直接来ること自体滅多にないし。そう高を括っていた恭子は、  
闇の中から音も無く現れたオクトルの懐に、あっさりと抱えあげられた。  
 
「わたたっ。うわ、もうバレたの?」  
“むしろどうしてバレないと思えるのか、そこの思考手順を私は知りたい”  
 そのまま、最後の坂道を触手に抱かれて駆け上がった恭子は、他の三体も、同様に  
巣の外に出て待っていてくれたことを知った。普段と異なる来訪手順だったから、皆  
心配になって出てきたのだろう。  
 だが、そんな彼らも、彼女の様子から要するに気まぐれで遊びに来たのだということを  
悟ると、娘の身体へ嬉しげに触手を絡めてきた。  
 
 恭子はそこで、ふと友人の助言を思い出す。この仔達に、浮気云々というのは全く意味  
のないお話ではある。けれどそれはそれとして、こうしていつ来ても歓待してくれる相手と  
言うのは、やっぱり貴重なものなんじゃないだろうか。  
 
 そんな事を考えている内に、触手に巣穴へ運び込まれそうになって、恭子は慌てて制止  
した。オクトルの触手をすり抜け、飛びついてくるノーナにうっちゃりをかまして、彼らの方を  
先に巣穴へと追い立てる。  
「ほらほらいいから、あんたたちは中で待ってなさい」  
 そう言って、説明も無しに恭子は触手たちの体を押し込んだ。無論、何倍もの体重差が  
ある訳だから、そんな事で彼らをどうにかできるわけもない。だが、彼女の突飛な行為にも  
いい加減慣れている触手たちは、空気を読んで大人しく従った。  
 
 再び地上で一人になった恭子は、ふう、と一つ溜息をつくと、コートのボタンに手を掛けた。  
今日はクリスマスだけあって、さしもの恭子もそれなりに気合いの入った服装をしている。  
これを汚されたり破かれたりした日には、涙目どころでは済まされない。  
 真冬の寒風吹きすさぶ中、ひぃひぃ言いつつ下着姿まで服を脱ぐと、恭子は急いでパーティ  
衣装のサンタ服を着こんだ。無論、防寒用では無いので普通に寒いが、素っ裸でいるよりは  
幾分マシだ。着て来た服を急いで畳み、袋詰めしてもろもろの準備を整えると、彼女は鶏肉  
の入ったレジ袋を担いで、勢いよく触手の巣穴へ飛び込んだ。  
 
「メリー、クリスまぁっうっひゃぁ!」  
 しかし、煙突よろしく巣穴の竪穴から落下した彼女を受け止めたのは、暖炉の灰ではなく  
待ち焦がれた四体の触手たちだった。彼らは、恭子がわざわざ露出の多い薄手の衣服に  
着替えてきたことを知ると、その裏を読んで早速肉手を這わせ始める。  
 安物のサンタ衣装は、フリーサイズのせいか小柄な恭子には随分と大きい。おまけに  
下はスカート仕様なので、彼らの触手は安々と娘の肌へ潜り込んで行く。  
 
「ちょといきなり、ゃ…あ、デッカまで! だーもう、最近のクリスマスは触手までこうなん!?」  
“いや、明らかにその格好で入った君が悪い”  
「神聖なサンタクロース衣装なのに!」  
“そのミニ仕様のサンタ服のどこにクリスチャンの精神があるというんだ ”  
「はん……へ、あれ? ミノリ、なんか怒ってる?」  
“別になにも? 私など気にせず折角の二次会を楽しんでくれ ”  
 
 そう言って、胎の中に棲む触手達の元『頭』は、いつもの通り大人しくなった。次いで  
彼らの体内会話を見越したように、触手たちの動きが本格化する。  
 ここにきて、恭子もとりあえずサンタごっこは諦めた。どうせプレゼントといったって、さっき  
かった安物のパック入り鶏肉なのだから、そんなものより身体が先だといわれても、文句が  
言えないような気がしなくも無い。  
「はあ……ぅっ…ま、いいか。とりあえず、寒いからあったかくして」  
 そう言って、恭子は全身の力を抜くと、身体を触手に完全に預けた。  
 
 まず、彼らはたくみに互いの位置を入れ替えて、彼女の体を触手ですっぽり包める中心に  
置いた。 それから、上半身をしっかり固定し、スカートも捲り上げて下半身が露出した形で  
宙釣りにする。圧力配分が絶妙なので、この体勢でも痛くは無い。だが、何となく心細い格好  
だなあと恭子が思っていると、腰から下が急に温かい筒に包まれた。  
 
「ひゃんっ…て、あ、デッカ?」  
 筒の正体は、巨大なデッカの口だった。総重量が四百キロ近い彼の頬袋は、百五十センチ  
程度の娘の身体などひと飲みに出来る大きさがある。デッカはそこへ彼女の下半身を銜える  
ようにし、ギュッと口を窄めたのだ。  
 人肌より少し熱い肉袋が、陰圧に従いギュッと娘の肌に押し付けられる。加えて、口内に  
生える幾重にも分岐した舌が、恭子の冷え切ったつま先や膝小僧に絡み付いた。  
 エステなんてシャレたものに、未だ恭子は手を出したことが無いが、あそこで全身蒸しタオル  
とかやるとこんな感じなのかなあ。いや、絶対違うだろうなあ。なんて事を考えていると、今度は  
上半身にも動きがあった。  
 
 体重を支える役目を終えた他の三体は、触手をより感覚に優れる柔らかいものに変えて、  
彼女の身体を弄り始めた。ブカブカの上着をたくし上げて、露わになった臍から上を、温かい  
触手でくるみ込む。顔の前にはオクトルの頭部が下りてきて、娘の唇を舌でツンツンと突いて  
から、その口内へと侵入した。ノーナは彼女の背中に陣取ると、普段と違う彼女の髪型を  
ひどく熱心にぐちゃぐちゃにしている。ただの遊びか、或いはいつも通りで無いのが気に入ら  
ないのだろう。  
 
 母親が急に髪型を変えると、途端に泣きだしちゃう赤ちゃんの話とかあったっけ。なんて  
物思いを恭子がしていると、今度は胸に強めの刺激がやってきた。  
 言わずもがなトリデスである。ただ、今回はいつもより神経質というか、若干焦っている  
ような動きであった。痛みを伴うような吸い方は絶対にしないのがトリデスなのに、どうしたの  
かと思っていると、答えは勝手に胎の中からやってくる。  
 
“母乳の出る様子が無いせいだろう。何分、今日は急な話だったからな、乳汁の分泌準備を  
終えるには、もう数十分かかる ”  
「あ、ほっか。んくく、おくほる、ひょっとどいて」 そうして恭子は口の触手を外すと、「ごめん、  
トリデス。おっぱい出るにはもうちょっとかかりそう」  
 そう言って、乳首に吸いつく彼の口管をさすってやった。すると、トリデスはしぶしぶといった  
感じで口管を下がらせ、代わりに乳房の間へ生殖肢を挟みこむ。  
 
 胸で疑似的な性交が始まったのと同じころ、デッカの舌が段々と上にあがってきた。それらは  
潤沢な唾液の滑りを利用して、容易く太股の間忍び入る。そして内腿の付け根や、外襞の周り、  
或いは実の少し上など、わざと少し外したところを舐め上げては、ピクリピクリと反応する足指の  
動きを楽しんでいる。  
 
 遊ばれているのに気付いた恭子が、ちょっと恨みがましく脚を閉じた。するとそのタイミングを  
待っていたかのように、デッカが舌先を中へ差しこんでくる。  
「ひゃっ…んんぅ。もう」  
 思わず漏れた嬌声を誤魔化そうと、少女は少し非難めいた声を出した。だが、肝心の秘部に  
味覚を差しれているデッカには、内側の滑りが最早唾液だけに依るものでないと分かっている。  
 
 新たにもう一本加えて、二本の舌を複雑にくねらせ、触手は内側のほぐれ具合を確認した。  
それから、最後に娘の中を、少し名残惜しげに啜った後、デッカは下準備よしと女体を外へ  
吐き出した。  
 
 濡れた身体が冷たい外気にさらされて、少女は思わず身を竦める。その瞬間、待ち構えていた  
ノーナの生殖肢が、早速彼女の中へ飛び込んできた。  
「やっ……きゃんっ」  
 力んだ体奥に鋭く楔を打ち込まれて、恭子は小さく悲鳴を上げる。しかしノーナはお構いなしに、  
触手を突端まで沈めた後、ゆったりとした抽送を開始した。  
「ふぁっ……んんっ…あっ……はん」  
 だが、今回は彼が特別無茶をしたわけでは無かった。ゆっくり温めながらの愛撫を受けた  
少女の身体は、彼女自身が思っている以上に、受け入れる準備が出来ていたのだ。  
   
「何で…っんん……こんな、はやっ……むぐぅ?」  
 自身の身体に、彼女が疑問の声を上げかけた時。デッカの生殖肢がペットリと唇に押し付け  
られた。折角下ごしらえした彼女の胎をノーナに横取りされたので、口の方へと来たのだろう。  
しかしすると、オクトルの奴はどこ行ったかな。そう恭子が不思議に思った時、後ろの穴にも  
生殖肢がぬっと押しつけられた。  
 
 そこで、恭子は思わず身を固くする。お尻の方も、最近は何度か流される形で試してはいた。  
けれど、彼女はこれがどうにも苦手なのだ。気持ちよくないとか、ちょっと痛いとか、そういう  
問題以前に、どうしても違和感が勝ってしまう。衛生面とかその他云々は、ミノリの魔術で  
何とでもなるのだが。  
 
 しかしなあと、彼女は今や申し訳程度に引っ掻かている赤いスカートを見やって思う。  
 何と言うか、今日の自分は曲がりなりにもサンタの紛い物である。プレゼントはわたし、  
というノリであることは事実だし、それに普段は謙虚なオクトルがこう来たってことは、わりと  
本気でやってみたいって事なんだろうし、うーむむ、と葛藤することややしばし。思い切りが  
身上の彼女は、結局、まあいいかと断を下した。  
 
 目の前のデッカの生殖肢を銜え、腰に込めていた力を意識して抜く。それだけで、察しのいい  
オクトルは恭子の許諾を理解した。  
「はむ……んく、れる…んん゛ぅっ!」  
 強烈な異物感が、お腹を襲う。オクトルの挿入は不慣れな彼女を気遣ったものであった  
けれど、それでも恭子はデッカの触手を噛まない様にするので精一杯だった。  
 ノーナの生殖肢で腹側から膨らんでいる腸壁を、オクトルのものがゴリゴリと押し退ける。  
その擬音が、実際に背骨を通じて響いてくるような気さえした。  
 
「んがっ……くうっ、れる、あむ、ちゅぶぶ」  
 大変なことになっている下から少しでも意識を逸らそうと、恭子は必死になって口の中の  
触手に集中した。わざと苦しい喉奥ギリギリまで銜え込み、唇を閉じて強く吸う。陰圧で  
窄まった頬肉を幹の部分に押し付け、舌は敏感な鈴口を弄った。先ほど、デッカが彼女に  
施した愛撫と同じ事を、その生殖肢にお返しする。  
 
 恭子が何とか大丈夫そうだと見てとると、オクトルはさらに生殖肢を奥へ進めた。触手の  
構造上、後ろの場合は際限なく入る事が可能なわけで、それを考えると恭子は少し怖く  
なる。だが、他ならぬオクトルがそんな無茶をする筈も無く、前より少しだけ深く入った辺り  
で、彼は挿入を中止した。それから、薄皮一枚隔てた隣で抽送を続けるノーナの生殖肢に  
調子を合わせ、ゆっくりと全体を波打たせる。  
 
「んぶぶっ……あぐぅ……あむ…んぶ」  
 僅か四十キロ強の娘の中へ向けて、総計一トン弱もある触手達が本格的に吐精の営みを  
開始した。四本の生殖肢は胸、口、胎、尻と全て少女の肌の中に収まり、さらにその全身は  
一部の隙も無く周囲の触手で包まれている。  
 中心に抱かれた娘の自由は指一本に至るまで触手のものだ。その隙間から僅かに漏れ来る  
喘ぎ声すら、触手に阻まれくぐもっている。  
 
 この段階まで来て、恭子が彼らを止められるかは疑問だった。「待て」と「やめて」の静止の  
合図は、口が塞がっていて言うどころでは無い。腕力で抜け出すのは論外であるし、  
身振りで拒絶を示そうとしても、快感に跳ねているのと彼らには区別できないかもしれない。  
 
 実際、口から漏れ来る嬌声の中には、時折苦しそうなものが混じることもある。それが  
少女に交わりを厭わせるようになるほどでは無いにせよ、人のものと比べれば、触手との  
行為に負担が大きいのは明らかだ。それでも、その点につき野々宮恭子が不平を述べた  
事は一度もない。  
 
 その理由を、人間の男との経験が無いから、と茶化す事は簡単だ。しかし、事実は違う  
ことを、胎の中のミノリは知っていた。  
 これが、『贈り物』であるからだ。自ら労して相手に奉じ、彼の幸福を我が身のものとして  
喜ぶから、彼女は自分の少々の苦痛など厭わないのだ。  
 それ自体、大変素晴らしいことだ。自分の『体』たる触手たちが、人類とそんな関係を築けた  
事が、全くの奇跡だとミノリは思う。にもかかわらず、この関係に最近心的ストレスを感じるのは  
何故なのか。  
 
 『頭』たる自分は、それでは不満だとでもいうのだろうか。彼女との交わりを、もっと対等な  
ものにしたいとでもいうのだろうか。  
 言い換えれば、もっと人らしいものに? 莫迦々々しい。  
 
「んあ……ひゃぐっ…んご……あぐっ」  
 十分な刺激を受けて、デッカの生殖肢が口腔での抽送を開始した。その際、誤って噛んでも  
いいように、細く強靭な触手を二本、猿ぐつわに噛ませてくれる。正直、もう自分から気を使う  
余裕が無いので、彼女としてもこちらの方が楽だ。そうして大きくひらかれた娘の口を、巨大な  
生殖肢は好き放題に蹂躙する。  
 
 ついで、ノーナも細い触手を秘部の周りに集結させる。そして、わざと手を出していなかった  
敏感な実へ、今日初めての愛撫を施した。  
「んぐっっ! ひゃぶううっ……!」  
 完全に気を抜いていた局部への攻撃に、恭子の全身が大きく引き攣る。それを胎の中で  
しっかり感じとったノーナは、終わりへ向けて生殖肢の動きを加速させた。  
 
「んぶっ…・・はんっ…ふあっあ…ゃ…あぶっ!」  
 性感への直接的な刺激が始まったことで、激しい挿入を受けつつも、恭子の身体は  
しっかりと高みへ昇っていく。ここまでくれば激しくしても大丈夫と分かり、オクトルの方も  
淡い蠕動を止めてはっきりとした出し入れに切り替えた。薄い腸壁と膣壁を隔てて、二本の  
生殖肢が文字通りお腹の中をかき回す。  
 
 それまで粛々と恭子の胸を弄んでいたトリデスも、ここにきて動きを変化させてきた。口管で  
乳房を咥え直すと、その内側の舌で敏感な豆をくるくると舐め回す。周りの触手は膨らみの  
肉をしっかりと寄せ上げて谷間を作り、その肉壁に粘液をすりこんで生殖肢の抽送を手助け  
する。  
 
「はう゛ぅっ!……はんっ…あむ…じゅぶぶ」  
 口の中の味が少し変わってきた思う頃、恭子の思考にもお馴染みの霞が掛かってきた。  
四体を全く同時に相手にするのは早々無いので、ちょっと自信のなかった彼女だったが、  
これならどうやら自分も一緒に達してあげられそうである。  
 彼らが自分をいかせることが、達成感からやっているのか、或いはお節介な気遣いから  
なのかは、正直恭子にも分かりかねるところだった。だが、それとは別に、お互いの心理の  
深い所で、折角なら一緒に気持ちよくなりたいという共通の思いがある事を、彼女は  
身を持って知っていた。  
 それで、恭子が応えてあげたいと思うには十分だった。  
 
「んぶっ……やあぁ……あがぐぅ!……んっく」  
 腹の触手に合わせて、デッカの生殖肢が加速する。喉を突く頻度も多くなり、呼吸を合わせる  
のが難しくなってきた。それでも、ほとんど無意識のうちに、恭子の舌は先端の傘を捕えようと  
蠢いている。  
 ノーナの生殖肢は、ほとんど叩き付けるような動きになった。膣口では激しく水音を立てて  
蜜が漏れだし、周りの触手がそれを掬っては性感の実へ擦りつけている。オクトルはもう少し  
穏やかなものの、その勢いは完全に射精を目指したものだ。臍から下の筋肉は、内側で暴れる  
触手に負けて、完全に恭子のコントロールから離れる。  
 
 それでも、全身を覆う触手の責めに反射だけで応え、少女の身体は最後まで異形の性器を  
扱き上げた。  
「やぁっ…!……い゛っ…ぁっ……・んあぁあっ──!」  
 全身がビクンと痙攣し、激しかった呼吸がほんの一時、停止する。その瞬間、きゅうきゅうと  
強く収縮する二つの肉筒の中で、ノーナとオクトルの生殖肢が全く同時に傘を開いた。  
 身体の内側に、大量の熱が注ぎ込まれていく感じ。ミノリはすぐに、膣や腸の内部に感覚  
器官はほとんど無いなんて言い出すけれど、そんな理屈など関係無しに、彼らの吐精は  
強烈だった。快感とか、違和感とか、そんなものを通り越したところにある一体感。  
 
 体を切り離した彼には、きっとこれが分からない。だから、ミノリはときどき、臆病になる。  
 
 思考力ゼロのはずの頭の中を、全く出し抜けに、そんな考えが掠めたとき。一拍遅れて  
デッカの生殖肢も傘を開き、一瞬で口から溢れそうになる触手の精を、恭子は慌てて  
飲み下し始めた。  
 
 *  
 
 その後。即ち、最後に残ったトリデスが、胸から顔へ盛大に白濁を噴き上げて、デッカの  
ものを一生懸命零さず飲んだ恭子の努力を台無しにし、結果サンタからサタンに変貌した  
彼女に延々といびられつつ一人で後始末を完了させたおおよそ三十分の後。  
 
 バリバリになりつつも、かろうじて赤い部分を残しているサンタ服を、恭子は意固地になって  
着直した。そして一つ咳払いすると、件のレジ袋を担いで言う。  
「はーい、それじゃ諸君。プレゼントですよー」  
 
 それから、彼女はパック入りの生鶏肉一つずつ取り出して、中身をそれぞれの口へ持って  
いった。全員に行きわたるまで「待て」の命令で銜えたままにさせておき、「メリークリスマス!」  
の合図で「よし」を出す。  
 
“何と言うか、『いただきます』の躾をしている具合だな ”  
「いーのよ、わたしだって分かってるわよ、みんながわけ分かってないことくらい。でも、  
最初はこんなんでもいいの」  
 そう言って、まだ少し痺れの残る腰をうーんと延ばしながら、彼女は鶏肉を頬張る四体の  
触手を愉快気に眺めた。  
 
「今ね、ふと思い返して、今朝のミノリは中々いいことを言ったと思った」  
“私は考えて物を言う性質なので、もう少し日頃から思い返してくれると有り難い ”  
「茶化すんじゃないの」 恭子は笑った。「ほら、いっつも一緒にいる友達同士でも、ちゃんと  
集まってイベントをこなすには意味があるよって言ったじゃん」  
“例によって大分曲解してくれているようだが、先に結論を聞こう。つまり? ”  
 
 すると、彼女は片手でオクトルを呼び寄せ、触手の束を探りながら言葉を繋ぐ。  
「そういうのって大事だなって。別に、クリパでプレゼント交換しなかったら、友達じゃなくなる  
ってわけじゃないよ? でもやっぱりさ、大枚叩いて人混みに酔ってでも、定期的に顔突き  
合わせて馬鹿やらないと、わたしは友達として物足りない。  
 まあ、あんまり品のいい心の持ち方とは言えないけどさ。でも、『遠く離れて顔も見えず声も  
聞こえず、されどアイツは無二の親友』なんて相手、わたしはまだ作れた自信が無いよ」  
 
 そこで言葉を一旦切って、恭子はオクトルの連結肢を取り出した。  
「この仔達も一緒。まあ、お互いの関係上、それをえっちでやりゃにゃあならんといのが、何とも  
アレな話だけどさ……。でも、そうやってお互いに相手の為に馬鹿やること自体、わたしは  
全然嫌いじゃない。と言うわけで」  
 とりあえず、今すぐ"直結"をお願いと言って、彼女は自分から連結肢を膣に差しこんだ。  
 
 相変わらず、要領を得ない説明と要求だが、慣れっこになっているミノリとオクトルは大人しく  
彼女に従った。オクトルの触手の助けを借りて、連結肢の非常に細い先端部分を子宮口に  
挿入する。すると、内側で待ち構えているミノリの脳のレセプターが、連結肢の軸に走る  
神経と繋がって、オクトルは元々の役割、即ちミノリの『体』としての振る舞いを始める。  
 
「えと、もうミノリ?」  
“そうだ ”  
 ぽんぽんとオクトルの頭部を叩く恭子の手を、ミノリはそう返事して触手で絡め取る。その  
愛嬌の欠片も無い仕草に、ああやっぱりミノリだ、と頷くと、彼女はレジ袋から最後の一  
パックを取り出した。  
 
「メリークリスマス。はいミノリ」  
“どういう意味だ? 先程食べたんだが ”  
「食べたのはあんたじゃなくてオクトルでしょ。ミノリとはまだクリスマスやって無い」  
 当たり前のように言って、恭子は鶏肉を触手の口に押し込んだ。「来年は、`お`互`い`に、  
もうちょっとマシなもん用意しよーねーっ」などとおどけながら。  
 
 それにミノリが言葉を返せたのは、優に十秒は経ってからだった。  
 最初に思いついた事は、「オクトルという『体』と自分はそもそも自意識が未分離で、別個に  
扱うのは不適当」などというどうしようもない言い訳。しかも、それはもう事実では無い。『体』に  
過ぎなかったオクトルの自我は、今は完全に自律しており、こうして『頭』と"直結"している  
状態にあっても、その支配は完全では無い。万が一、ここでミノリが恭子へ加害的な行動を  
示せば、オクトルは自分の意思で容赦なく連結肢を切るだろう。  
 
 そして何より、ここで自分が言うべきなのはこんな貧相な戯言ではない。そう分かってはいた  
ものの、有機人工知性が十秒もかけて漸く捻り出せたのは、いつも通りの皮肉だった。  
 
“値札のついた贈答品は、サンタでなくても避けるべきだろうな。例え高いものであっても ”  
「ぐぬぬ、ミノリはわたしの懐事情知ってるでしょうに。よし、出血大サービスで十六茶も  
つけよう。ほれ、飲み残し」  
“残念だが、触手の味蕾をはと麦を含む飲料に浸すのは勘弁して頂きたい。私でも表現に  
苦労する味になる ”  
「普段わたしが触手に飲まされてるものも、中々表現に苦労する味なんだけど……。  
まあいいわ。なんたって、今日のわたしはサンタだし? でも他になんか食べられそうなもの  
あったかなぁ……」  
“……昨日から一つ疑問なんだが、君の定義によるとプレゼントとは須らく食物なのか? ”  
   
 そんな事を言っているうちに、ミノリの『体』の触手群は、独りでに恭子の体を包んでいった。  
それがミノリの無意識なのか、或いはオクトルの意思によるものなのかは、  
 実際のところ、彼ら本人にも解らない。  
 
 だが、もちろん野々宮恭子はそんな事に頓着しない。力を抜いて身を任せ、彼女は久しぶりの  
ミノリの腕の中で、彼との馬鹿話を堪能する。  
 
「およよ、どしたのトリデス……て、あ、おっぱいだ。忘れてた。ミノリ、これで手を打とう」  
“私は彼のように特別乳房や母乳に執着がある訳では無いんだが ”  
「知ってるよ、ミノリがキスフェチな事ぐらい。オクトルがそうだもんね」  
“…………”  
「よしじゃあ、超出血大サービス、おっぱいを口移しで飲ませてあげよう。これなら完璧?」  
“触手の身でこのような言動は酷く馬鹿げていると自覚しているが、一言言わせて欲しい。  
君は私の性癖を誤解している。確かに『体』として持つ本能的嗜好が私とオクトルで同一  
な事は認めるが、それは多分に理性の影響を受けうる…… ”  
「二言以上言った。全く、素直じゃない上に小憎たらしいんだから。触手のツンデレなんて  
あり得ないよ」  
“ああ全く。そんな『体』たち垂涎の品は、素直に彼らに与えればよかろう ”  
 
 そうして、触手は訊ねた。  
“大体折角巣穴に来ているというのに、今日に限ってどうして憎たらしい私などに構うんだ? ”  
 
 少女は答えた。  
「莫迦ねえミノリ、クリスマスでしょ。贈り物の日で、博愛の精神だよ」  
 
 
 
 

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