○月○日。  
その日の授業は一般公開のミサでありました。  
全校生徒と一般の熱心な教徒の方が集い教会の大聖堂にて、神父様のお話を聞き讃美歌を歌うのです。  
もちろん、あのバイブを埋め込まれたまま一晩を過ごした大聖堂で……。  
 
その日の私の中には、鮮やかなピンク色をしたローターが2つ。前と後ろに入っておりました。  
バイブ程の強く直接的な刺激はないとはいえ、その淡く緩い感覚に、体は甘やかな熱を帯びていきます。  
ご主人様は私に、これを2つ共入れたままでそのミサに出るよう促されました。  
ご主人様のおられる部屋から教会まで。歩いて向かうその足取りに併せて、ローターがまた違った刺激を与えます。  
2つのローターはじくじくと緩く、まるで私の中を蝕んでいくかのように蠢いて、  
その動きに私の理性がゆっくりと徐々に削られて行くのを感じるのでございました。  
「…………ふぅー」  
人のいない渡り廊下。されど誰にも悟られないよう、小さく長く息を吐き出しました。  
だだ静かに……。誰にも聞こえないように、本当に小さく。  
「すみません、シスター」  
突然の事。後ろから誰かに話しかけられ、漏らした吐息を聞かれたのではないかと心臓が跳ね上がりました。  
 
一気に体が熱くなり、みるみるうちに頬が赤く染まっていくのを感じます。  
噴き出した汗が私の肌をじっとりと湿らせるのです。  
「あの、教会はどちらでしょうか?」  
どうやら初参加の一般の方のようでした。いかにも人の良さそうな好々爺でございます。  
「一般の方ですね?私も今、向かう所ですので、一緒に参りましょう」  
私の言葉に彼は、それは有り難いですと礼を述べ、横について歩き出したのでございました。  
「今日は暑いですねぇ。シスターもほら、お顔が真っ赤になって」  
「そ、そうですねぇ……、本当に」  
無論のこと、顔が赤いのは気温のせいなどではありません。  
この好々爺には想像もつかないでしょう。  
私の頬の赤い理由が、体の奥に埋め込まれている玩具のせいだなんて。  
見知らぬ男性が横を歩いているというのに、そのような卑猥な事をしているだなんて。  
ましてや、聖職者たる私が……。  
そんな事を考えていると、体の芯がずくずくと疼きます。  
淫靡な熱が体を駆けずり回り、背筋を伝う冷や汗すらぞくぞくと私の体を快楽に導く媚薬のように感じられました。  
「そこの渡り廊下を渡ると直ぐです。受付でプリントをお渡し、しますね……」  
 
気付かれないようにもう一度。細く長い息を吐き、彼に告げました。  
「親切にどうもありがとう」  
にっこりと笑み、お礼を告げる為に合わせられた目。見咎められ、カァと火照る体を止めることができません。  
優しそうな目元の好々爺。わざわざ学校のミサに来られるくらいですから、  
おそらくは熱心な信者の方なのでしょう。  
そのような方の前で、私は何て事を……。  
「どうぞ。――お客様にプリントをお渡しして下さいな」  
教会の扉を開け、受付の生徒に話しかけました。  
生徒は素直に私に従い、彼にプリントを渡してくれます。  
「ああ、ありがとう。――シスターもどうもありがとう」  
好々爺は丁寧に頭を下げ、しっかりと目を合わせてお礼を言って下さいます。  
何て紳士的な方なのでしょうか。  
(……あぁ、駄目だわ……)  
しかし見つめられると、私のしていることがバレてしまいそうで……。  
私は直ぐに目を逸らしてしまいました。  
 
受付にいる学生は私の受け持つクラスの子でありました。  
受付の係りは当番制で、今回は私のクラスが担当だったのです。  
私は好々爺を席に案内した後、受付の学生の横に立ちました。  
 
いつぞやの、――あの初めてバイブを入れたままHRに出た日に、私を心配して声を掛けてくれた少女です。  
「シスター、お風邪は良くなりました?今日も少しお声が掠れているようですけれど……」  
「心配ありがとう。大丈夫よ」  
彼女はとても心根の優しい子でございます。私の身を案じてくれるどころか、こんなに心配してくれるなんて。  
そんな彼女の気持ちを裏切るような事を私は……。  
(……ああ、中が。――中が熱い……)  
彼女の掛けてくれる優しい言葉など、耳に入ってきませんでした。  
だって2つのローターは休む事なくやんわりと、ですが的確に私の中を攻め立てておりましたもの。  
「こんにちは。……プリントをどうぞ」  
何食わぬ顔でお客様の相手をしながら、体の中にきゅっと力をこめました。  
ローターの振動は緩くなる感覚はありますが、  
狭まった内壁により逆にローターの存在感を感じる気がいたします。  
「こんにちは、シスター」  
加えて、生徒や学校の外からいらっしゃるお客様の視線が気になって仕方がありません。  
「こんにちは。プリントをどうぞ」  
顔では笑顔を作り、お客様にプリントを手渡しておりましたが、  
体はそれどころではございませんでした。  
 
汗ばんだ肌。背筋を汗の滴が珠となり滑り下りるのを感じ、  
その刺激がぞくぞくとまた、私の理性を少しずつ削り取っていきます。  
ぎゅっと内股に力を込めて堪えはしますが、熱く荒くなっていく息を抑える事はできません。  
隣に立つ生徒やお客様に感づかれないよう、何度も細く深い息を吐き出し、何食わぬ顔を作るのでした。  
膣内に熱く痒みに似た疼きをもたらす快感と、直腸の中を蠢いては刺激する感覚。  
せめぎ合い、壁越しにぶつかっては擦れあう2つの玩具の刺激は、  
甘い痺れとめまいに似た熱を、私の中に生むのでございます。  
(……駄目、見ないで)  
ローターの刺激に加えて、入り口を通る生徒達の無垢で澄んだ瞳や、お客様方の真面目で堅実そうな眼差し。  
射ぬかれて私は、いてもたってもいられません。  
目が合うと、まるで私のしていることを感づかれているような錯覚すら覚えます。  
『ずいぶんと淫乱なんですね』  
『シスターである人がそんな事をするなんて』  
『信じられない』  
今ここでそのように罵倒された方が、幾分が心が楽になる。そのような気もいたしました。  
(……駄目、駄目!)  
ローターの刺激は緩まる事がありません。  
 
むしろ締め付ける私の力によってぴったりと内襞に寄り添い、直に刺激を与えてくるのでございました。  
バイブのように鋭く激しい刺激ではありません。  
それなのに私は、じわじわと確実に高ぶりゆく体を抑える事などできませんでした。  
「シスター?やっぱり、お風邪、よくなってないんじゃないですか?そんなに震えて……」  
私を心配し、顔を覗き込んでくる少女の視線が痛く突き刺さります。  
「大丈夫よ。大丈夫だから……」  
こんなに心配してくれているのに、私はまとわりついてくるこの快楽から逃れる事ができません。  
(あぁあ、……駄目なのに)  
体の芯に灯った小さな炎はどこまでも熱く、灼熱の渦となり私の意識を飲み込んでいくのでございました。  
「こんにちは、シスター。今日は暑いねぇ」  
「シスター、今日はどんなお話なのかしら」  
「おや?顔が赤いねぇ。今日は暑いから」  
馴染みのお客様も気軽に声をかけて下さいます。  
「そう、ですねぇ、……ッ」  
何てことでしょう。必死に堪えていた声が、危うく漏れてしまうところでした。  
(……あぁ、駄目よ。駄目っ)  
スカートを握り締めて何とか堪えようとするものの、快楽に震える体は止めることができません。  
 
もういっそのこと、いつものような太いバイブやアナルパールを中に入れ、  
達してしまいたい衝動すら感じていました。  
 
「そろそろ時間ですね。ドア閉めときますね」  
受付の女生徒はさらりと仕事をこなしてくれます。ありがたいことです。  
受付は教会の入り口のドアと大聖堂の入り口のドア、2つのドアに挟まれたスペースにありました。  
「……ッ、どう、して……?」  
受付が終われば大聖堂の中に入って速やかに一番後ろの席につかなければなりません。  
しかし女生徒は教会の入り口のドアのみならず、大聖堂側の入り口のドアまで閉めてしまいました。  
受付の机の置いてある密室に、女生徒と2人っきり。  
私は耐え抜く事に疲れてしまって、何かを考える余裕がございませんでした。  
「ねぇ、シスター」  
ドアを閉め振り向いた女生徒の声は、それは優しいもので、にっこりと笑う笑顔は淑女そのもの。  
まるで聖母マリアのように慈悲深くたおやかでありました。  
「先日、私、妙なものを拝見しましたの。深夜の教会で校長先生とシスター、あなたが……」  
しかしその蕾のように美しく可愛らしい唇から出た言葉は、私の背筋をびしりと凍り付かせます。  
(……な、なんて事!!)  
 
あの痴態を見られていたなんて。それも生徒に。  
(どうしよう、どうしよう、どうしよう……)  
焦る私の心と裏腹に、えもいわれぬ快感が体をゾクゾクと駆け上がっていきます。  
「本当はお風邪なんて召されていないのでしょう?」  
「…………ぁ、」  
私とご主人様の秘密の関係がバレてしまいました。  
その事実に私はどうすることも出来ず、ただ立ち尽くすことしか出来ませんでした。  
私を見て美しく笑う少女の視線に淫らな悦びを感じながら、  
彼女の天使のような笑顔が悪魔のそれのようにも見えたのでした。  
 
 
 
「そんなに怯えなくても大丈夫ですわ、シスター」  
いかにも真面目そうで貞淑そうな少女の、その形の良い唇から零れる澄んだ声とは裏腹に、  
囁かれる言葉は修道女を奈落の底に突き落とすようなものだった。  
「私ずっと、シスターの事、お慕い申しあげておりましたの。だから黙ってて差し上げますわ。その代わり、ね?」  
私の言うこともきいてくださる?と笑顔で告げる少女。まだ年端もゆかぬ面差しには、  
どことなく女の魔性めいたものが漂っている。  
修道女は、駄目だと警告する己の意識と反して、  
高ぶり快感を貪る体と、虐げられる期待に膨らむ胸を抑えられずにいた。  
 
ローターをくわえこんだ修道女の秘所は、2カ所ともきゅんきゅんと細かく収縮を繰り返し、  
悦びに涎を垂らしていた。  
大聖堂では讃美歌が響わたっている。ミサが始まったのだ。  
「私達も、そろそろまいりましょう」  
差し伸べられた手を掴み、大聖堂の扉を開け中に入ると、  
壇上から初老の男がほくそ笑んでいるのが見えた。  
(これから私、どうなってしまうの……)  
襲い来る快楽にふらつく脚を進める修道女は気づかなかった。手を引く少女と、壇上の男が目配せをして笑うのを。  
これから先、この2人によって促される淫靡な快楽から逃れる事などできないのだ。  
「……んぅ、……あぁッ」  
讃美歌の調べに隠れて、ローターの刺激に堪え、静かに吐息をもらす修道女。  
彼女にはこの先、堕ちてゆくより他、道はない。  
 
 
終わり。 

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