「そ〜れっ」  
部屋に戻り、敷いてあった布団の上にダイブしたかと思うと、ぱっと起き上がり、  
両足の裏をくっつけて、あぐらみたいな姿勢になった千奈美が口を開いた。  
「でも雪枝さん、絶対おかしいよ〜!」  
「まあまあ、千奈美ちゃん」  
雪枝さんはポットから急須にお湯を注ぎながら、千奈美を宥めようとしている。  
「だって〜。雪枝さん、聞いたことない〜? 九尾の狐の伝説〜」  
「う〜ん……確かに、聞いたことはありますけど、あくまでも伝説、ですからね」  
浴衣の袖をまくりながら口を尖らせる千奈美と、急須の蓋を閉めて軽く揺すったまま、小首を傾げる雪枝さん。  
…って、九尾の狐の伝説?  
「でも〜」  
「それに…千奈美ちゃんも見たでしょ? 久弥くんの尻尾」  
「そ、そうだけどさ〜」  
尚も何か言いたそうにする千奈美に、雪枝さんは湯飲みにお茶を注ぎながら答える。  
肯定の言葉を漏らしつつも、千奈美は不服そうに頬っぺたをぷくりと膨らませながら、右側の髪をまとめ始めた。  
 
「な、何のことなの?」  
さっきまでの二人の会話についていけなかった僕は、会話が途切れたのを見計らって、  
雪枝さんから湯飲みを受け取りながら、やっと口を挟んだ。  
「知らない――」  
僕の質問に、「のお!?」と「のですか?」と口調と語尾は違ったものの、同時に口を開く二人。  
千奈美は目をぱっちり見開き、心底驚いたような顔を見せ、雪枝さんはぽかんと口を開けている。  
「う、うん」  
……そう驚かれても、知らないものは知らないわけで、お茶を飲みながら、そう頷くしかなかった。  
 
「そっかあ……じゃあ、教えてあげる。昔聞いた話なんだけどお、九尾の狐って女の人しかいないんだよ」  
「へ? で、でも久弥くんは……」  
「だ・か・ら、わたしがさっきから、おかしいって言ってるんじゃない」  
右側の髪をまとめ終え、今度は左側の髪をまとめ始めながらの千奈美の説明に、思わず疑問が口を突いた。  
そんな僕を見て、再び口を尖らせる千奈美。  
「まあ、私もそういう話を聞いたことはあるんですが、本当かどうか、確かめた人もいないわけですし…」  
「ふうん……」  
冷静に答える雪枝さん。  
 
軽く、眠くなってきたので、湯飲みをテーブルに置いて、ごろりと横になる。  
 
「でっもさあ」  
髪をまとめ終え、いわゆるツインテールの髪型になった千奈美が不意に口を開く。  
つられて千奈美のほうを見た僕は、思わずお茶を吹き出しかけてしまった。  
あぐらを、かいたような、姿勢のため、千奈美の白い脚が、ほとんど丸見えに、なっている。  
まではいいとして、付け根にあるはずの、真っ白い布が……無かった、のだ。  
いつから、穿いてなかったんだ? もしかして、さっき風呂上がったときから、ずっとそのまま……?  
「久弥くん、あのまんま帰してよかったのお? ふあ〜あ……、お仕置きしていたのに、さあ」  
一人、混乱している…僕を他所に、……千奈美は、大きなあくびをしながら、喋り続ける。  
「まあまあ、千奈美ちゃん。そう言わなくても……あ、あれ? ち、千奈美ちゃ……」  
……雪枝さんが、千奈美を……なだめ、ようとして、いたかと、思うと、怪訝そうな、声を出し  
――僕の意識は、不意にそこで途切れていた――  
 
 
 
「………ん?」  
「あ、おはようございます、亮太さん」  
目が覚めた僕を見て、雪枝さんがにっこりと微笑みながら声をかけてきた。  
その隣には、布団の中ですうすうと寝息を立てている千奈美がいる。  
「ああ、おはよう……って、あ、あれ?」  
言いながら体を起こそうとするが、腕を動かすことが出来ずに首を傾げた。  
「……っと、えっ、ちょっと、これどういうこと!?」  
寝起きということもあり、一瞬何が起きたのか分からなかったが、  
腕を動かせない理由が、後ろ手に縛られていることに気づいた僕は、思わず叫んでいた。  
「ああ、それですか……。ちょっとお仕置きを、と思いまして」  
「え? お、お仕置きって…?」  
心当たりがまったくない僕は、雪枝さんの言葉に混乱してしまう。  
「ええ……。私たちというものがいるのに、さっき会ったばかりの旅館の女将さんと、  
簡単にいやらしい関係になってしまう、いやらしい亮太さんに、ね」  
「え? だ、だってあれは…」  
雪枝さんは笑みこそ浮かべてはいるが、目が全然笑っていない。凄く怖いです。  
……というか、葉子さんは妖力が必要だから、その源である僕の精を得るためにエッチしたって、  
さっき聞いていたよね?  
頭の中が混乱している中、後ろ手に縛られている僕は、雪枝さんによって簡単に仰向けに寝っ転がされた。  
丁度、腰の辺りで後ろ手に縛られているため、自然と腰を突き上げる体勢になってしまう。  
「さて…と」  
「あう…っ、ゆ、雪枝さ…っ」  
雪枝さんは軽く舌なめずりをしたかと思うと、その細い指で僕のモノを軽く握り締め、優しくしごき始める。  
そんな優しい刺激に耐えられるはずもなく、僕は思わず声を漏らしてしまう。  
 
「ふふっ……亮太さん、すっかり逞しくなりました、ね」  
あっさりと勃ちあがった僕のモノを見て、雪枝さんは背筋がぞっとするほど、妖しい笑みを浮かべる。  
「では、私も……」  
雪枝さんは、ゆっくりと立ち上がったかと思うと、僕を見下ろしながら自らの帯を解く。  
さらに雪枝さんは、浴衣の胸元に手を掛け、そっと浴衣をはだけさせた。  
昼間のおかげで、健康的に焼けた黒い肌と、水着に覆われていた白い肌がコントラストを描いている。  
まるで、真っ白いビキニを着ているような錯覚を覚えてしまう。  
「……ふふっ……亮太さん……」  
「あ、ゆ、雪枝さん…っ」  
まるで、何かの芸術品のような雪枝さんの美しさに見蕩れていた僕だったが、不意に喘ぎ声が漏れ出す。  
浴衣をはだけさせた姿勢のまま、雪枝さんは軽く右足を上げたかと思うと、  
爪先を僕のモノと袋の間――蟻の門渡り、だっけ?――に、擦りつけてきたのだ。  
「は、あうっ……」  
指先で門渡りとモノの付け根を撫で回しながら、親指の付け根の部分で袋を軽く揉み上げる雪枝さん。  
「あっ、ああっ……」  
つつっと指先をモノに沿って這わせ、やがて爪先がカリ首部分に当たり……ピタリと動きが止まった。  
「え…ゆ、雪枝、さん…?」  
「……どうしましたか、亮太さん?」  
刺激が中断されたことによって、自分でも意識しないうちに、怪訝そうな声が漏れてしまう。  
雪枝さんは、そんな僕を見て小首を傾げながら、静かな笑みを僕に返してくる。  
「え、あ……そ、その…」  
「何ですか、亮太さん。男なんですから、はっきりと仰ってくださいませ」  
口ごもる僕に、諭すように語り掛ける雪枝さん。その表情はあくまでも穏やかだ。  
「その……も、もっと、シテ……」  
「え? 亮太さん、何をもっとシテ欲しいんですか?」  
顔がかあっと熱くなる感覚を覚えながら、雪枝さんに懇願するが、雪枝さんは嬉しそうに聞き返してきた。  
「ち、ちんちんを…僕のちんちんを、もっと気持ちよくさせてくださいっ」  
「まあ亮太さん、こんなことをシテ欲しいなんて、何ていやらしい人なんでしょう」  
「あっ、ああっ…、あっ」  
言いながら、雪枝さんは爪先を、カリ首部分に潜り込むように擦りつけてきた。  
あまりの刺激に、思わず腰がよじらせてしまうが、雪枝さんの足は的確に僕のモノを擦り続ける。  
 
「ああっ、あ……?」  
しばしの間、雪枝さんの足先からもたらされる刺激に身を委ねていたが、不意にその刺激が途絶えた。  
雪枝さんの足が、僕のモノからぱっと離れたかと思うと、雪枝さんは僕に背を向けて、  
部屋の隅に置いてあった荷物まで、歩いていってしまったのだ。  
「え、あ…ゆ、雪枝さん……?」  
思わず腰をもぞもぞとよじらせながら、ゴソゴソ荷物を探る雪枝さんに話しかける。  
雪枝さんは、しゃがんだ姿勢のまま、ゆっくりと顔だけをこちらに向けたかと思うと、微笑みかけてきた。  
その、ぞっとするような笑みを目にして、思わず身震いしてしまう僕。  
「うふふ……。これはお仕置きなんですから、まだガマンしてくださいね……」  
と、雪枝さんは笑みを浮かべたまま、僕のほうへと戻ってきた。  
その手には、何故か雪枝さんが昼間穿いていた、黄色いビキニのボトムスがある。  
……お仕置き? 一体、何をする気……?  
「よい……しょっと」  
僕の両足を閉じ合わせ、その上にしゃがみ込む雪枝さん。  
その目の前には、痛いぐらいに膨れ上がっているモノが、ピクピク震えている。  
「あ、ああっ、ゆ、雪枝さん……」  
雪枝さんの左手が、僕のモノを軽く握り締める。ただそれだけで、僕は絶頂に達しようとしてしまう。  
そんな快感に抗えるはずもなく、思わず腰を突き上げた、次の瞬間――  
「な、ゆ、雪枝さんっ!?」  
不意に、雪枝さんは右手に持っていた、ビキニを僕のモノに括りつけてしまったのだ。  
予想だにしていなかった出来事と、モノから伝わる痛みに、思わず悲鳴をあげてしまう。  
「……言ったでしょう。これは、お仕置きです、って」  
「お、お仕置きって……」  
「そう……私たち以外の女の人とも、あっさり関係を持ってしまう、ふしだらなこの子に、ね」  
「そ、そんな……あうっ」  
僕の問いかけに、雪枝さんは軽く首を傾けながら、軽く拗ねたような表情を見せる。  
思わず抗議の声をあげようとするが、不意にモノの先端から痛みが走り、再び悲鳴が漏れ出す。  
雪枝さんが、僕のモノを軽く指で弾いてきたのだ。  
 
「口答えは、許しませんよ?」  
モノから伝わる痛みに、涙目になる僕を見下ろし、妖しい笑みを浮かべる雪枝さん。  
そんな雪枝さんに、抗う気力も無くなった僕は、無言で頷くしかなかった。  
「そう……本来の亮太さんは、素直で優しい方ですから、ね……ん、んんっ」  
「あ、ううっ……」  
言いながら、雪枝さんは自らの下腹部を僕のモノに擦りつけてきた。その口から、艶かしい声がこぼれる。  
一方の僕は、モノからもたらされる、痛みとも快感ともとれる刺激に、体を捩じらせることしか出来なかった。  
「ああっ…亮太さんの……固い…」  
「ゆ…、雪枝さん……」  
腰を上下させながら、うっとりとした声をあげる雪枝さん。  
モノの先端から漏れ出す汁と、雪枝さんの下腹部から溢れる蜜が混ざり合い、僕のモノに絡みつく。  
「あんっ…亮太さん……亮太、さん……」  
「うく…ゆ、雪枝さ、んっ……」  
雪枝さんはうわ言のように、僕の名を呼びながら腰を揺さぶり続ける。  
その目は焦点が合わず、とろんとしている。  
普段の僕なら、あっさりと絶頂に達していると思われるのだが、  
モノの根元をしっかりと縛られているため、達せそうで達せない。  
「ああんっ、あは…ああっ、ああっ、りょ、亮太さんっ……亮太さんっ…」  
「ゆ、雪枝さん…っ、雪枝さんっ!」  
やがて、雪枝さんの腰の動きが少しずつ激しさを増してきた。  
にちゃにちゃと湿ったともに、僕のモノにも快感の波が押し寄せてくる。  
「あ、ああっ! ゆっ、雪枝さんっ! 雪枝さんっっ!」  
不意に、全身を痺れるような快感が襲い掛かり、堪えきれずに声をあげてしまう。  
それとともに、僕のモノからは精がいつものように、勢いよく吹き出……ることはなく、  
じわじわと滲み出すように溢れ、モノをつたって下腹部を白く染め上げていった。  
 
「ああ…亮太さん……凄い……」  
僕のモノから精を迸らせるやいなや、雪枝さんは腰の動きを緩め、うっとりとした表情で僕を見下ろす。  
さらに、下腹部に溜まった僕の精を指で絡めとったかと思うと、そっと唇へと運んだ。  
「………っ、んふ…美味し……」  
「あの……雪枝、さん……」  
指に絡みついた僕の精を舌先で舐めとりながら、妖しく笑みを浮かべる雪枝さん。  
いつもの絶頂とは違う、じわじわ続く快感の波に震えながら、雪枝さんに声をかける。  
そろそろ、解いて――そう言おうとした次の瞬間、雪枝さんはゆっくりと腰を浮かせた。  
「さて、と……お仕置きは終わり、ですね……」  
「ゆ、雪枝さ…」  
腰を浮かせたまま、僕のモノを優しく握り締めながらつぶやく雪枝さん。  
――ああ、やっと自由の身になれる――そう思った次の瞬間。  
「あっ、ああっ!」  
再びモノに襲い掛かる刺激――そう、雪枝さんは自らの割れ目の中へと、僕のモノを潜り込ませたのだ。  
「ああっ、ゆ、雪枝さ…っ!」  
「ああんっ、りょ、亮太さんっ!」  
予想だにしなかった不意の刺激に、一瞬意識が飛びそうになってしまう。  
雪枝さんは、そんな僕に構わず、僕の上に跨ったまま、上半身ごと激しく動く。  
動いた弾みで、雪枝さんの豊かな胸がぷるんぷるんと激しく揺れる。  
「あんっ、りょ、亮太さんっ、亮太さんっ!」  
いつもなら、迷わず雪枝さんの胸へと手を伸ばすはずだが、後ろ手に縛られている状態では、  
それもままならない。せいぜい、雪枝さんの動きに合わせて、身じろぎ程度に腰を動かす程度だ。  
「りょ、亮太さん、亮太さんっ!」  
「く…っ、ゆ、雪枝…さん……」  
自らの胸を揉みしだき、上半身を仰け反らせつつ、艶かしい喘ぎ声を出し続ける雪枝さん。  
僕はと言えば、一度精を迸らせて敏感になっているモノに、更なる刺激を加えられ、ビクビク震えていた。  
 
「ああっ、は、ああっ!?」  
「ゆ、雪枝さんっ!?」  
不意に、雪枝さんがそれまでの喘ぎ声とは違った悲鳴をあげるとともに、動きがピタリと止まった。  
それと同時に、雪枝さんの中がキュッと締まり、僕のモノに痛いくらいの刺激が送られる。  
「あっ、ああ、あっ」  
雪枝さんの後ろから伸びた小さな手が、雪枝さんの胸を鷲掴みにしているのが見える。  
「雪枝さん、気持ちいいんでしょ? わたしも手伝ってあげる」  
「ああっ、ち、千奈美ちゃ…ああんっ!」  
小さな手の持ち主は――当たり前かもしれないが――横になっていたはずの千奈美だった。  
雪枝さんは、驚愕の表情で後ろを仰ぎ見るが、千奈美が嬉しそうな笑みを浮かべながら、  
その胸を揉みしだき始めると、悲鳴交じりの喘ぎ声とともに、全身をビクビクと震わせる。  
「ああ、ああんっ、ああっ! あ、あんっ!」  
「くう、ううっ、ち、千奈美…っ」  
千奈美の手の動きに合わせるかのように、雪枝さんの中に入っているモノの締め付けが変わる。  
身動きが取れない僕は、ただひたすらその刺激に翻弄され、くぐもった悲鳴をあげることしか出来なかった。  
「ん〜。こっちのほうが、気持ちいいんだっけ?」  
「ち、千奈美ちゃ、そ、そこ、そこはあっ!!」  
千奈美の片方の手が、雪枝さんの下腹部へと向かう。  
途端に、雪枝さんは甲高い悲鳴をあげながら、上半身を仰け反らせる。  
「えっと…。ここ? ここかな?」  
「ふあっ! ああっ、ああああっ!!」  
小首を傾げながら、雪枝さんの下腹部を擦っていた千奈美の指が、雪枝さんの肉芽を軽く擦った。  
「あ、ここだ。ここがいいんだよね?」  
「ち、ちな…も、もう、もう…だ、だめ、だめええっ!!」  
雪枝さんの反応を見て、千奈美は雪枝さんの肉芽を摘みあげた。  
一方の雪枝さんは、返事を返す余裕もなく、叫び声をあげたかと思うと糸の切れた操り人形のように、  
ゆっくりと千奈美のほうへと、上半身をもたれかかせていった。  
 
「え? ……あれ? 雪枝さん? ……おーい」  
もたれかかってきた雪枝さんを受け止め、千奈美が怪訝そうな声をあげる。  
どうやら、雪枝さんは完全に気を失っているようだった。  
「もう……しっかたないなあ。んっ…しょっと……」  
言いながら、千奈美は雪枝さんの脇の下に手をとおし、ゆっくりと雪枝さんを横に寝かせた。  
と同時に、雪枝さんと繋がったままの状態の僕も、横向きの姿勢になってしまう。  
「……おにいちゃん、何してるの?」  
雪枝さんが普通に息をしているのを確認した千奈美は、半ば呆れ顔で僕を見下ろす。  
千奈美の角度から見た僕は、横を向いたまま後ろ手に腰を突き出し、雪枝さんと繋がったままだった。  
おまけに、モノには雪枝さんの水着が巻きついている。  
……確かに、傍から見たらかなり間抜けな、情けない姿勢かもしれない。  
「あ。そ、その……千奈美、ほ、ほどいてくれない?」  
「いいけどさあ。女の人の水着とかに手を出す男の人って普通、変態って言うんじゃな〜い?」  
千奈美はため息とともに、モノに巻きついている水着を外し、僕の目の前でぶら下げながらつぶやく。  
「い、いや……そっちじゃなくて、こっち」  
「へ? ……おにいちゃん、もしかして本当に、変態の趣味があったの?」  
身じろぎしながら背中を示すと、ようやく千奈美は、僕が今どういう姿勢になっているのかを理解してくれた。  
と同時に眉をひそめ、水着を再び僕のモノに括りつけながら、僕に問いかける。  
「な…そ、そんなわけないだろう! っていうか、せっかく解いたのに、何でまた括りつけるのさ!?」  
「ん〜。よく見ると、結構可愛いかな、って気がしてきて」  
僕の抗議の声を軽く聞き流し、モノの先端を人差し指で突っつきながら答える千奈美。  
その目はまさに、悪戯のネタを見つけた時のそれだった。  
 
「可愛くない! というか、こっちを解いてよ!」  
「でもさ……誰に何で、縛られちゃってるの?」  
千奈美の目に嫌な予感を感じながらも、モノの先端から伝わる優しい刺激を必死に堪え、再び頼み込む。  
そんな僕を軽くあしらうかのように、千奈美は頬っぺたを軽くポリポリ引っ掻きながら、質問を投げかけてきた。  
「そ、それは雪枝さんが、僕が眠っている間に……お仕置きだ、って」  
「お仕置き? 何の?」  
今度は、ツインテールを交互に下へ引っ張り、その勢いで首を左右に動かしながら、さらに問いかけてくる。  
「ぼ、僕も訳がわからないよ。ただ、雪枝さんが言うには、葉子さんと一緒にいたからだって……」  
「あ〜そうだ〜。おにいちゃん、わたしたちがいるってのに、さっき会ったばかりの葉子さんと、  
お風呂場でエッチなことしていたんだもんね〜。ずるいなあ雪枝さん、一人でお仕置き始めちゃって〜」  
目を覚ましてから、雪枝さんに言われたことを思い出し、千奈美に答えると、  
何かに納得したように、千奈美は右手の拳で左手をポンと叩いた。  
「うっ……。で、でも、もう十分反省しているからさ、これ解いてよ」  
「えー? ……どうしよっかなあ?」  
僕が再び懇願すると、千奈美は腕組みしながら小首を傾げだした。  
…もっとも言葉とは裏腹に、その表情は心底嬉しそうに、口元には笑みまで浮かべているのだが。  
「そ、そんなこと言わないで、さ」  
「うーん……雪枝さんのお仕置きだったんでしょ? わたしが解いたら、わたしが怒られるし〜」  
僕の再度のお願いに、千奈美は腕組みしたまま反対側に首を傾げたかと思うと、  
アメリカ人のように大げさに両手を広げ、肩をすくませる。  
…確かに、雪枝さんが怒ると怖いのは、僕はついさっき、千奈美は昼間、お互い身を以って知りました。  
「それに、わたしがまだ、おにいちゃんにお仕置きしてないんだも〜ん」  
僕が千奈美の言葉に、心の中で同意していた次の瞬間、  
千奈美は片方の頬っぺたを膨らませ、人差し指をピシリと僕に突きつけながら言った。  
 
 

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