家に戻ってから、アイリスはずっと泣きじゃくっていた。どうにかなだめて、シャワーを浴びさせたが、
それでも、アイリスの泣きべそは止まなかった。そう、ベッドの上でも………。
「御主人サマ……ごめんなさい……ごめんなさい………」
「……アイリス…もういいんだよ、アイリス……ん…っ……」
未だに泣きじゃくってるアイリスを、そっと抱きしめながら、僕はくちびるを重ねる。
アイリスは抵抗を見せる様子も無く、僕の舌を難なく受け入れてきた。
いつまでも、泣き止まないのなら、実力行使しかあるまい。……って、本当か?
「んっ……ん…御主人サマ………あ……あんっ……」
「アイリス……愛してる……愛してるよ………ん…んふ…んっ………」
そっとくちびるを離すと、アイリスは目をとろんとさせ、僕をじっと見つめてきた。
うん、泣き止んだ。効果はあるのか……などと考える余裕もなく、
アイリスの潤みを帯びた視線に魅かれた僕は、アイリスの耳元でうわ言のようにつぶやきながら、
再びアイリスのくちびるを奪った。今度はアイリスも、僕の舌に自らの舌を絡ませてくる。
僕は鼻息も荒く、口中に潜り込んでくるアイリスの舌を、夢中になって味わっていた。
「ご……御主人サマ………」
存分にお互いの口中を味わってから、どちらからとも言わず、そっとくちびるを離した。
二人の口の間を、唾液で出来た透明の糸が引かれた。まるで、激しい口づけの余韻を残すかのように。
「ああ…アイリス……ん…っ…んんっ……」
「……あ…あはんっ! あんっ!」
僕はアイリスの名を呼びながら、そのままその豊かな胸にむしゃぶりついた。
アイリスは、ビクンと身をよじらせながら、あえぎ声を漏らす。
すでに、ピンと勃ちあがっていた胸の頂を軽く咥え、そのままチューチュー音を立てて吸ってみる。
「あ! ああんっ! 音! 音立てちゃ! ああっ!!」
僕の頭を両手で抱え、抗議の声をあげるアイリス。だが僕は委細構わずに、そのまま歯を立ててみた。
途端にアイリスは全身を仰け反らせ、あられもない声で悶え始める。
そんな反応が何ともいとおしくて、僕はアイリスの胸に舌を這わせ続けていた。
「はあ……あ…御主人サマ………はあ! ああんっっ!!」
舌を伸ばして、胸の頂をチロチロと舐めまわしながら、ちらりとアイリスの顔を見上げてみた。
涙でベチャベチャになりながらも、真っ赤に染まったアイリスの顔は、この上なく色っぽかった。
何だかこの反応……すっごく新鮮なんですけれども。
僕は胸から舌を離し、今度はアイリスの頬を舐めまわしながら、ゆっくりと秘所に手を伸ばした。
「あ! ああ! 御主人サマ! 御主人サマあっ!!」
割れ目はすでに、熱い液体で満たされ、難なく僕の指を飲み込んでいった。
さらに、潜り込んだ指をゆっくりと出し入れさせると、くちゅくちゅという湿った音が響く。
アイリスは、その音に合わせるように、悲鳴のようなあえぎ声をあげていた。
「うあ! ああっ! ああんっ!!」
アイリスの嬌声を耳にして、段々興奮してきた僕は、指の出し入れを少しずつ速めていった。
同時にアイリスの声も、少しずつ断続的に甲高くなっていく。まるで、指の動きに合わせるかのように。
「ああっ! 御主人サマ! 御主人サマッ!」
アイリスが悶えるたびに、緑色の長い髪の毛が、まるで生き物のように艶めかしく波を打つ。
「ああんっ! ご、御主人サ!……」
突然アイリスは、あえぎ声を中断させたかと思うと、大きく痙攣して、それっきり動かなくなった。
…………これってもしかして、失神しちゃった、のかな?
今まで経験したことが無い出来事に、思わず動揺してしまう。
……そりゃそうだ。これまでアイリスには、何度も失神させられたことはあったけれど、
僕がアイリスを失神させたことなんて、一度も無かったし。……それはそれで情けないが。
えっと……でもこれから、どうしたら…いいのかな? などとあたふたしていると、
「う…うう……ん……」
「ア、アイリス! ……だ、大丈夫!?」
アイリスの目がうっすらと開いた! 僕は思わずアイリスの手を取り、叫んでいた。
「ご…御主人サマ……私…私、イッちゃったんだ………」
「え……えっと…その……」
「ごめんなさい……御主人サマ………」
きょとんとした目で、それでもすべてを理解したように、アイリスはポツリとつぶやく。
何と答えていいのか分からず、しどろもどろになってしまう僕に、アイリスはさらに言葉を続けた。
「え!? な、何が!?」
アイリスの言葉の意味が分からずに、思わず声を裏返らせてしまう。
「わ…私一人で、勝手にイッちゃって……御主人サマ、まだでしょう?」
「い、いやそんな……」
悪戯をしすぎた子どものような、申し訳無さそうな表情で、上目遣いに僕を見つめるアイリス。
ううむ……何でしょうか、このリアクションは。ここまでしとやかなアイリスって……。
「……御主人サマ……お願い…私に……私に、御主人サマ、ください………」
「う、うん……」
両手を広げ、誘うような姿勢のアイリスを目にして、僕の思考は中断させられた。
まるで、糸の切れた操り人形のように、カクンカクンと首を縦に振りながら、
そのままアイリスの上にのしかかる。ああ……柔らかくて、温かい………。
僕はアイリスをじっと抱きしめ、その温もりを全身で確かめていた。
「………ご、御主人サマ……は…早くう………」
しばらくの間、じっと二人で抱きしめあっていたが、やがて我慢できなくなってきたのか、
アイリスは僕の耳元で、じれったそうに甘えた声でささやく。整った可愛い顔は、
まるで茹でたカニのように真っ赤に染まり、下半身をせわしなく、もぞもぞとうごめかせながら。
「ア……アイリスッ!!」
「ああっ! ご、御主人サマ! 御主人サマあっ!」
その目に、じわりと浮かぶ涙を目にしたとき、僕の理性は弾け飛んでいた。
僕は、アイリスの両足をがばっと広げ、ひと息に割れ目の中へとモノを突きたてる。
たちまち、全身を痺れるような快感が襲い掛かり、こらえきれずに声を漏らしてしまう。
アイリスもまた、この刺激を待ち望んでいたように、嬌声をあげながら、自ら腰を振り乱してきた。
あまりの心地よさに、意識が半分飛んでしまいそうになるのをどうにかこらえ、
僕は腰をゆっくりと動かし始めた。――出来るだけ長い間、アイリスと交わっていたい――
意識とともに、理性がほんの少しだけ戻ってきた僕は、そんなことを考えていた。
……そうでもしないと、すぐにでもイッてしまいそうなくらい、心地よかったから。
ああ……でも本当に…気持ちイイ……。
「うあ……あっ…アイリス……アイリス………」
アイリスの中は、いつもと同じように熱くて柔らかく、僕を優しく包み込んでくれる。
その感触を、もっと激しく味わいたいと思う衝動と、もっとゆっくりと味わいたいという衝動が、
頭の中でぶつかりあう。だがその葛藤さえも、新たな快感と興奮となっていた。
「御主人サマ……御主人サマ………もっと…もっと、激しく…キテ…っ……」
「ん? ……これ……」
かすれるような声で、アイリスがつぶやく。同時に、ピタピタと僕の頬を叩く何かがあった。
手にとってみると……それは、アイリスの尻尾だった。
そういえば確か、アイリスって……そう思いながら、軽く尻尾をしごいてみた。
「んあっ!? あっ! ああっ! ああんっ!!」
僕の予想通り、アイリスは今までよりも、ひときわ甲高い声で悶え始めた。
「ああっ! そ、それ! それダメえっ! ご、御主人サマ! 御主人サマっ!」
手でしごいたまま、軽く舌を伸ばしてチロチロと舐めすさってみると、アイリスは面白いように喘ぎだす。
さらに僕は、そのままアイリスの尻尾を口の中に含ませた。
「くあ! ああっ! あ、ああ! あああっ!! ああんっ!!」
「うぐ……ア…アイリス………」
アイリスは、狂ったように叫び声をあげ、全身を震わせる。
同時にモノの締めつけも力を増し、僕もまた沸き起こる快感の前に、悲鳴のような嬌声をあげていた。
「ん…ん……んんっ…ぐっ……」
「んぶ…ん……んっ…んふ……ん…ふん…っ……」
僕は尻尾を咥えたまま、おもむろにアイリスのくちびるを奪った。
突然のことに、ビクンと体の動きが止まるアイリスだが、すぐに舌をうごめかせ始めた。
二人の舌とアイリスの尻尾が、複雑に口の中で絡まりあう。
僕はアイリスとくちづけを交わしたまま、少しずつ腰の動きを速めだした。もう……もう、限界かも……。
「うああっ! ご、ごひゅびんひゃまっ! あっ…あ、ああっ……あああんっ!!」
「……ぐう…アイリス……っ………」
だが、限界が近づいていたのは、アイリスも一緒だったようで、舌を絡めたまま嬌声を漏らし続ける。
アイリスの嬌声を耳にして、理性が完全に吹き飛んだ僕は、叩きつけるように腰を動かした。
「あっ! あう、ああ! もう…もう……! イ…イッ……!」
それからほどなくして、アイリスは全身をビクビクと仰け反らせ、絶頂に達していた。
「…ア…アイリス…アイリス…っ……あぐ! ああっ!!」
絶頂と同時に、アイリスの締めつけがさらに勢いを増す。その締めつけが最後の刺激となり、
僕は絶叫とともに、全身をブルブル震わせながら、アイリスの中に精を放出していた。
……は、初めて…初めて、アイリスより長持ちしたけど……こ、これって………。
同時に何かが、何かが変わった気がする。"何が"と言うわけではないが、大事な何かが………。
「……ご、御主人サマ………」
アイリスが僕から離れ、ゆっくりと上半身を起こしながら、寂しそうに呼びかけてきた。
僕は何も言わず、アイリスをじっと見つめ返した。
「……………契約、解除しちゃったね……」
長い長い沈黙の後、アイリスがポツリとひとこと。……そうか、さっき感じた"何か"って、これのことか。
でも…でも何で? 何があって、契約が解除されちゃったの?
「御主人サマ……。私と契約したときのこと、覚えてる?」
「う、うん……」
疑問の表情を浮かべる僕に、アイリスが諭すように優しく語り掛けてきた。
反射的に、頷く僕。そ、そう…あの時は、いきなりアイリスがあんなことを……。
「あの時は御主人サマ、私より先にイッちゃったよね? それで契約が成立したから……。
だから、解除するには、逆のことをすればいいわけで…その………」
そこまで言って、アイリスは恥ずかしそうに、視線を逸らした。
つ、つまり…アイリスが先にイッちゃったから、契約が解除されたってこと、か……。
でもそうすると…そうすると、アイリスはこれからどうなるの?
「契約が解除されたから、本来は"私"に取り込まれるべきか、元の世界に還るべきなんだろうけど……」
「そ、そんな! 還るなんて言わないで! もう、もうアイリスがいない生活なんて、考えられないよ!」
アイリスの独り言に、僕はぱっと顔をあげ、思わず叫び声をあげていた。
「でも、"私"はどこか違う世界に行っちゃったし、元の世界には還り方分からないし、
行くとこ無くなっちゃったなあ……」
「ね、ねえアイリス」
「な、何?」
だがアイリスは、僕の声に目を細くさせながら、小首を傾げて寂しそうにつぶやく。
そんなアイリスの姿を見て、安堵のため息をついた僕は、思い切って声を掛けた。
緊張のあまり、思わず声が裏返ってしまう。アイリスはそんな僕を見て、目を丸くしていた。
ああ……驚く顔も、やっぱり可愛いな……。
「アイリス……お願いがあるんだ。………僕と、結婚して欲しい」
「…………え?」
アイリスがじっと僕を見つめている中、僕は深呼吸をしてから、思い切って告白した。
丸くしていた目を、さらに大きく見開いたアイリスが、唖然とした顔で聞き返してくる。
「その……本当は、もっと早く言うべきだったんだろうし、指輪も用意してなかったけれど、えっと……」
「…………御主人サマ………」
しどろもどろに説明する僕を、アイリスが不安げな顔でじっと見つめてくる。
「だからそのー…何て言えばいいのかな? 契約とか関係無しに、アイリスがずっと僕のそばに、
いてくれたらなーって思って……い、いやもちろん、アイリスにはアイリスの考えがあるんだろうから、
僕の言うことを、無理に聞く必要があることも無いわけで……」
……やっぱり、嫌なのかな? そう思った僕は、ボリボリと頭を掻き、軽い口調でまくしたてた。
動揺している内心を、悟られないように。
「………本気で、言ってくれてるの?」
「本気……だよ。だって、女神サマと結婚出来るなんて、これ以上のしあわ……わ、わわっ!?」
「ご……御主人サマあ! 御主人サマあっ!!」
首をすくめ、上目遣いにアイリスがポツリとひとこと。間髪いれずに僕は答える。
だが、僕が答え終わる前に、アイリスが涙声で僕に抱きついてきた。これは……OK、かな?
「僕と……結婚してくれる? アイリス」
「……………」
アイリスを優しく抱きしめ、耳元でそっとつぶやく。アイリスは感極まったのか、
大粒の涙をボロボロこぼしながら、無言で首を縦に頷かせていた――何度も、何度も。
「……そう、か。私が…私が御主人サマの妻に………」
ようやく泣き止んだアイリスは、まるで祈るように両手を胸の前で合わせ、
うっとりとした顔で、天を見上げながらつぶやく。
その顔は、涙のあとでくしゃくしゃになっていたが、彼女の美しさは少しも損なわれていない。
いや、それどころか、妖しい美しさが、かえって増していたかもしれない。
「ああ、女神サマが奥さんになってくれて、凄い嬉しいよ……え? ええっ!? な、な!?」
アイリスの独り言とも、僕への語りかけとも言えるような口調に、
僕は笑みを浮かべながら答えていたが、いきなりアイリスに押し倒された。
「だったら…だったら早速、新妻の役目を果たさないと……」
「ちょ、ちょっとアイリス!?」
僕の肩に両手を乗せ、体重を掛けたまま、アイリスは独り言をつぶやく。
この豹変の仕方に、僕の頭は混乱をきたしていた。
あれ……? でも何だか、前にもこんなことがあったような気が……。
「新妻だと……旦那様が満足するまで、夜の相手をしなければならないのだろ?
早速始めないと……夜が明けてしまうから、な」
平然とした顔で、そら恐ろしいことをつぶやくアイリス。その目は…本気だ。
「ちょ、ちょっと待ってよ! いったいどこで……ん…んんっ」
そんな話、聞いたんだよ! と言おうとしたが、やはりいつかと同じように、
アイリスにくちびるを塞がれてしまい、その言葉が口から出てくることは、無かった。
「んふ……んっ…。御主人サマ………」
「な……何? アイリス……」
長い長いくちづけで、頭がぼうっとしてきた僕に、アイリスがくちびるを離してつぶやく。
「もし、浮気とかしたりしたら……許さないからね?」
「わ、わかったよ、アイリス。……んぐ……んっ……」
指をチチチッと鳴らし、ウィンクしながら悪戯っぽく微笑むアイリスを見て、僕は思った。
………これ、捕まったのは僕のほう、なんだろうなあ……と。
「うふふっ。御主人サマ、ふつつかものですが、よろしくお願いしますねっ♪」
いや、どちらでもいいか。女神サマがそばにいてくれるのは、同じことなんだから――