「新條、ちょっといい?」  
「ん? どした?」  
昼休み、アイリスの手作り弁当を食べ終え、弁当箱を洗っている僕に、同僚が話しかけてきた。  
「いや、実はさ……突然だけど、今週の結婚式で、ちょっと困ったことがあってさ」  
「困ったこと? みなみちゃんが、『やっぱり結婚するの止める』とか言ってんの?」  
僕は弁当箱を洗い続けながら、顔をあげて茶々を入れる。  
「ち、違うよ……実は、神父さんから電話が来て、当日に神父さんの傍らに立つはずのシスターが、  
急病で入院しちゃったらしいんだよ。なにぶん、小さな教会だから、シスターが一人しかいなくて、  
別の教会に問い合わせても、都合が空いている人が、誰もいなかったらしいんだ」  
僕の茶々入れに、肩をすくめながら答える同僚。  
まあ、それはそうだ。僕自身、本気でそう思っているはずがない。  
「ふうん、そりゃ大変だな。で?」  
「それでさ……アイリスさんに、シスターの代わりになってくれないかな? というお願いが……」  
「ああ? アイリスがシスター?」  
だが、続く同僚の言葉に、僕は水を切ろうと洗い終えた、弁当箱を振りかざした姿勢のまま、固まった。  
……ううむ、シスター姿のアイリス……。見てみたい、かも。いやいや、問題はそこでなくて。  
仮にも悪魔のはずのアイリスが、シスターの格好ってのは、どうなんだろ?  
 
「うん、その話を聞いたとき、アイリスさんの顔が、真っ先に思い浮かんじゃって」  
「……って、他にアテはないのかよ?」  
そんな僕の心を読んでいるはずもなく、同僚は言葉を続ける。  
我に返った僕は、とりあえず同僚に質問した。  
「友達に頼むって手もあるんだろうけど、その友達ってのが、ほとんど式に出席しちゃってるんだよ。  
それにどういうわけか、アイリスさんって僕の頭の中では、聖職者のイメージが強かったりするし」  
「何じゃそりゃ。というか、アイリスも出席しているだろ」  
質問の答えに対し、思わず口を突いて出てしまう。……アイリスが聖職者、ねえ。  
………それどころか、実際は悪魔なんだけど。  
「た、確かにそれは、そうなんだけどさ……な、なあ頼むよ。何か、別の形で礼はするからさ」  
「う~ん。そりゃあ、アイリスに聞いてみなきゃ分からないよ。返事は明日でもいい?」  
「あ、ああ! いい返事を期待しているよ」  
拝み込んでくる同僚に対し、そう答えた。結局、僕がどうこうよりも、アイリス次第だからねえ。  
同僚は、僕の肩をぽんぽんと叩きながら、戻っていった。  
 
 
「ふう……。結婚、か………」  
弁当箱をナプキンに包みながら、思わず漏れる独り言。  
あの時、僕はアイリスに『結婚して欲しい』と言ったけれど……。  
「あん? お前も結婚すんの?」  
「……出来れば…いいんだけどね……」  
僕の独り言を耳にしたのか、隣の自販機でタバコを買っている、さっきとは別の同僚が声を掛けてきた。  
ため息とともに、遠い目で答える僕。  
……そもそも、アイリスは僕が召喚した悪魔なのだから、戸籍なんて持っているわけがない。  
だから、結婚なんてしたくても、出来るはずがなかったのだった。  
「おいおい、何だか随分、意味深な言葉だな。早くも倦怠期かあ? 夜の生活は大丈夫か?」  
僕のため息に、どういう勘違いをしたのか、ニヤニヤと笑みを浮かべる同僚  
「夜の生活? 毎日続いてるよ」  
「はあ? 毎日!? ……よく体力が持つもんだ」  
吐き捨てるように、返事をしてから気づいた。……別に、それを言うことも無かったじゃないか。  
同僚は、口をぽかんと開け、大げさに肩をすくめる。  
「ああ、まあ――」  
――半分は、お前のせいだけどな。と、続く言葉を、咽喉元で辛うじて止めた。  
「しかしよ、数はともかくとして、あまりに同じコトの繰り返しで、心の中では愛想を尽かしてるのかもな。  
たまには、違った刺激を味わったりしたほうが、いいかもしんないぜ?」  
「あ、あのね……」  
別に倦怠期とか、愛想を尽かされたとか、そういう問題じゃないんだけど……。  
と、答えようとしたが、脳裏に別の考えが浮かび上がる。  
 
……確かにアイリスとは、ほぼ毎晩のように、夜のお勤めを果たしてはいる。  
そして、『あの事件』で契約が切れて以来、時々は僕に身を任せることが、あることはあるけれど、  
まだまだ『僕がアイリスに抱かれている』パターンが、非常に多かったりする。  
これはやはり、『僕主導のエッチでは満足できない』という、アイリスの意思表示ではなかろうか?  
 
「お~い、どうした? 別の世界にイッてしまったかあ?」  
不意に声がして、はっと我に返る。目の前には、僕に向かって両手を振る、同僚の姿があった。  
「ええ? あ、ああ…な、なんでもない……というか、違った刺激ってなんだよ?  
まさか、佳乃さんと幸乃ちゃんを置いといて、未だに風俗とかに通ってるの?」  
「んなわけねーだろ。……違った刺激ってのはな……例えば、後ろの穴で相手したりとかだな……」  
僕の質問に即答する同僚。というか、それって意外だな。しょっちゅう、そういうトコに通っていたのに。  
まあ、結婚したんだから、普通は落ち着くものか。………って、ちょっと待てよ?  
「……う、後ろって……お、お尻の、穴?」  
「ああ」  
けろりとした顔で頷く同僚。……そ、それって……普通にスルことなの?  
 
……い、いやでも、よく考えたらアイリスは、尻尾で僕を貫くことがあるし、でもそれって、  
僕に女性の部分がついてないからで、それに貫くのはモノではなくて、  
それよりは細い尻尾だから、あの刺激にも耐えられるわけだし、  
でも僕自身、背徳的な快感を味わっているのは、事実なわけで……って、何を考えてるんだ、僕は?  
 
「し、シタことあるの? よ、佳乃さんと?」  
「ああ。佳乃って、少し前までコレだったろ? それでも、最初の頃は前でヤッてたんだけど、  
そのうちに、佳乃がお腹の幸乃を気づかいだしてな。じゃあ後ろでしようか、ってことになって」  
混乱を振り払うように、頭をブンブン振りながら、同僚に質問をしてみた。  
自分のお腹のあたりを手でさすりながら、同僚は説明をする。  
 
……というか、妊娠している相手とエッチするってのは、どうなんだよ? 頭痛くなってきた。  
どうやら、お尻でエッチするってのは、こういう変わった性癖を持ったヤツがスルことで、  
普通の人は考えないみたいだな。ちょっと安心したかも。いやでも、じゃあアイリスは………?  
 
「……ううん。マ、マジかよ。でも、前と後ろでそんなに違うのかな?」  
混乱が、新たな混乱を呼びながら、思わず訳の分からない質問をしてしまう僕。……聞いてどうする。  
「結構、な。やっぱり、機能の違いのせいか、前と違って締め付けが全然違う。  
でも、慣れれば病みつきになるかもしれないぜ。特にお前の場合は、のめり込む性質だからな」  
「そ、それって、佳乃さんはどうだったの、かな?」  
「ん。最初の頃は、さすがに抵抗があったみたいだし、かなり痛がっていたけど、すぐに慣れさせたよ。  
おかげで、今では幸乃が産まれたってのに、前よりも後ろをねだる方が、多いくらいだぜ?  
で、それを顔を真っ赤にさせた、佳乃の口から言わせるのがまた……けけけ」  
夜の出来事を思い出したのか、不気味な笑い声をあげる同僚。  
……佳乃さん、何を間違えて、こんなのを結婚相手に選んじゃったんだろうか?  
 
 
「ただいま~。………あれ?」  
仕事を終えて自宅に帰ると、いつものようにアイリスが、玄関まで出迎え……には、来なかった。  
「あ、お帰りなさ~い」  
料理で、手が離せないのかな? などと思いながら部屋に入ると、床に座り込んだアイリスが、  
こちらを振り向きながら、手と尻尾を振って出迎えてくれた。  
………? 別に、料理で手が離せないわけでもないようだ。  
いつもなら、玄関まで駆け寄ってくるはずなのに、今日はどうしたんだろう?  
「た、ただいまアイリス。……ねえ、アイリス……」  
「?? なあに? 御主人サマ?」  
どことなく違和感を覚えながらも、僕はアイリスに声を掛けた。  
アイリスは怪訝そうな顔で、僕をじっと見返してくる。……うう、ちょっと言いづらい、かも。  
「いや、今週末って、片山の結婚式だろ?」  
「うん、どしたの? まさか相手の人が、『やっぱり結婚するの止める』とか言ってるの?」  
「……いや、そうじゃなくてさ、アイリスにシスターの役をやってくれないか、って頼まれたんだよ」  
僕の問いかけに、アイリスはコクリと頷きながら答える。  
昼間、僕が同じようなことを、同僚に言ったのを思い出し、苦笑いしながら言葉を続けた。  
「は? 私に?」  
「まあ、進行に関しては、神父さんがするんだろうから、シスターは傍らで立ってるだけで、  
いいと思うんだけど……あ、無理なら無理でいいよ、別に引き受けたわけじゃな……」  
きょとんとした顔で、自分の顔を指差すアイリスに、僕は答えかけ  
 
「へ~、面白そうじゃない。いいよ、引き受けるよ」  
「ホ、ホントにいいの?」  
たが、あっさりと返事をするアイリス。あまりにあっさりとしている為、思わず聞き返してしまう。  
……宗教とか、関係ないのかしら。  
「もっちろん、御主人サマのお友達、でしょ?」  
「あ、ありがと、アイリス……ん…んんっ……」  
けろりとした顔で答えるアイリスに、礼を言うが、突然アイリスは僕に抱きつき、くちびるを奪ってきた。  
「………ご、ごめんね、アイリス……」  
「そんな、ゴメンだなんて、私がやってみたいだけ、なんだってばっ」  
くちびるを離して、思わず漏れるひとこと。アイリスは、首にしがみついたまま、にこやかに微笑む。  
「いや………そこじゃなくて、『結婚しよう』なんて言っておいて、何ひとつしてあげなくて……」  
「何言ってるのさ、ちゃんとこれ、買ってくれたじゃないの」  
歯切れ悪く答える僕に、アイリスは小首を傾げながら左手をかざす。  
そこには、僕が贈った指輪が光っていた。だが、しかし……。  
「ん……そ、その……戸籍とかがあるわけじゃないから、法律的に夫婦ってわけじゃないし、  
式を挙げてもいないわけだし、さ……」  
それに、ずっと一緒に暮らしていたのだから、プロポーズする前と後で、状況は変わっていなかったのだ。  
……まあ、強いて今までと違うことを挙げれば、浮気したらアイリスに怒られる、ってことだろうけど。  
身も心もアイリスに溺れている今は、浮気をしようという気にもならなかった。…と、のろけてみる。  
 
「そんなこと、気にしていたの? 大丈夫だよ、私は御主人サマと、一緒に暮らしていられるのが、  
何よりも嬉しいし、幸せなんだから。無理に法律がどうのって、従う理由は無いんだし。それに……」  
「そ、それに……?」  
僕の言葉に、アイリスは小首を傾げながら答える。……それに、何があるのだろう?  
「それに……毎晩こうして、お勤めを果たしてくれるんだもの…………んっ……」  
「………ちょ、ちょっとアイリス、まだこんなカッコで……く、あ、ああっ……」  
にっこりと微笑みを浮かべたアイリスは、僕の股間をズボンの上から優しく撫で上げてきたかと思うと、  
残った右手で、僕のYシャツのボタンを外しながら、そっとくちづけをしてきた。  
「……っ。こんなカッコ、がどうしたのかな? 小さい御主人サマは、もう準備万端みたい、だよ?」  
「ア、アイリス……う、ううっ……」  
ベルトとチャックを外し、トランクスの上からモノをさすりながら、アイリスは嬉しそうに微笑む。  
アイリスの言葉どおり、僕のモノは既に完全に膨れ上がっていた。  
「んふ……ん…んっ……んんっ…………ホント、御主人サマのって、立派だね」  
「うあ……アイリス…………」  
ゆっくりと、ズボンとトランクスを脱がしたアイリスは、おもむろに僕のモノを咥え込み、  
何回か顔を上下に動かしたかと思うと、ぱっと口を離して僕を見つめながら、モノをしごきあげる。  
僕はただひたすらに、アイリスがもたらす刺激に身を委ねていた。  
……ああ、本当に…最高………。  
 
「うん? ア、アイリス……?」  
不意にモノから及ぼさせる刺激が中断され、思わず声を漏らす。  
顔をあげると、嬉しそうに舌なめずりをしたアイリスが、立ち膝の姿勢でこちらを見つめている。  
「ん・ふ・ふ。ご・しゅ・じ・ん・サ・マ♪」  
「あ……あ、アイリス………」  
僕がお預けを食らった犬のように、だらしなく口を開けていると、アイリスは妖しい笑みを浮かべたまま、  
焦らすようにゆっくりと、スカートをめくりあげた。その下はすでに何も着けていない。  
そんなアイリスの妖しい姿を目にして、まるで本当に犬になったかのように、舌を出して息を荒くさせる。  
……ああ…も、もう、我慢できない……。  
「んふふっ………御主人サマ……いくよ?」  
立ち膝で、僕の下腹部へとにじり寄りながら、とろんとした目でささやいてきた。  
アイリスの下腹部がモノと擦れ合い、微妙な刺激を生み出す。  
「…あ、ああっ……う……うん…うああっ!」  
その刺激に耐え切れず、返事とともに思わず吐息が漏れ出してしまう。  
と、僕の返事を待つか待たないかのうちに、アイリスは腰を落としていた。  
同時に、全身を駆け巡るような快感とともに、悲鳴がこぼれる。  
「んっ……あっ…イイ…イイよ……ご、御主人サマ……」  
「ああ、アイリス………アイリス……」  
アイリスは、腰を上下に動かしながら嬌声をあげだす。  
僕もまた、アイリスの胸に手を伸ばしながら、モノから伝わる快感に打ち震えていた。  
「あはあんっ! 御主人サマ…御主人サマあっ………はあっ、ああっ…イイ…イイ……」  
「うああっ……アイリス…僕も…僕も、イイ。……イイよ……」  
服の上からでも分かる、その豊かな胸を揉み続けていると、  
アイリスは、僕の手を優しく握り締めながら、腰の動きを激しくしはじめる。  
僕はと言えば、意識が飛びそうな快感に、舌をもつれさせながらも、歓喜の声を漏らし続けていた。  
 
「んふふっ……あはあっ…騎乗位って好っきい……ね、御主人サマ……気持ちイイ……?」  
「あ、ああ…アイリス……す、すごい、すごい気持ちイイよ……」  
アイリスが、まるでキスをするくらいに顔を近づけながら、僕に問いかけてくる。  
僕はただ、虚ろな声で反射的に返事をするしかなかった。  
「そう……実はね、御主人サマが帰ってくる時間を見計らって、さっきまで一人でシテいたんだ……」  
「え、ええ? な、なんで? ……あうっ………」  
と、アイリスが僕をしっかりと抱きしめながら、耳元でささやく。  
その言葉に、わずかだけ理性が戻ってきた僕は、反射的に返事をしていた。  
「……だって、あ、あんっ……す、少しでも早く……ん、んんっ……。  
ご、御主人サマと、い、一緒にイキたかったんだもん……あ、ああっ」  
照れ隠しなのか、僕の耳たぶに舌を這わせながら、喘ぎ声交じりに、ぽそぽそとつぶやくアイリス。  
もちろん、その状態でもアイリスの腰の動きは止まることが無く、快感が次々とあふれ出している。  
「アイリス……むぐ…っ、むふっ……ん…んんふっ……」  
「ご、御主人サマ……あ、あんっ、あっ、あっ、ああっ、あああんっ!」  
僕もまた、アイリスをしっかりと抱きしめながら、半ば無意識のうちに、アイリスの耳に歯を立てていた。  
歯を立てた途端、僕の耳から口を離し、堰を切ったように大声で喘ぎ続けるアイリス。  
「うっ……くうっ…ア、アイリス……ぼ、僕もう…」  
同時に、モノの締めつけが力を増し、さらなる快感がこみあげてきた。  
「ああっ! ああんっ! 御主人サマ? イッちゃう? イッちゃうの? わ、私も、私も、あ、ああんっ、  
御主人サマ! 御主人サマあっ! あ、ああっ!!」  
僕の悲鳴のような、喘ぎ声を耳にしたアイリスは、甲高い声で叫びながら、腰の動きを早める。  
も、もう……げ、限界だよ!  
「ああっ、アイリスっ! イク! イッちゃうっ!」  
「はあっ! あっ! ああああっ!!」  
やがて、ひと際大きな叫び声とともに、僕たちは揃って絶頂に達していた――  
 
 
「はあ…はあ……はあ…ご、御主人サマ………」  
「……あ、ああ…アイリス……」  
「御主人サマ……大好き……んっ……んんっ……」  
絶頂に達し、ぐったりとしている僕に身体を預けながら、アイリスが甘えた声をあげる。  
そんなアイリスの仕草が、たまらなくいとおしくて、そっと頭を撫で上げた。  
アイリスは、満足そうに笑みを浮かべ、僕にくちびるを重ねてくる。  
「………っ。ね、ねえアイリス……」  
「なあに? 御主人サマ?」  
くちびるを離した僕は、昼間の同僚との会話を思い出し、思い切ってアイリスに話しかけてみた。  
無邪気な眼差しで、僕をじっと見つめるアイリス。  
……正直言って、こんなときにそんな目をされると、少し言いづらいんですが。  
「あ、あのさ…い、嫌だったら、嫌でいいんだけど……その、えっと……」  
「? どうしたの?」  
しどろもどろになっている僕を見て、さすがに怪訝そうな顔をするアイリス。  
ええい! 一度言い出したんだ! ここで取り消してどうする!  
「そのお……ア、アイリスの……後ろで、スルってのは………ダメかな?」  
「………え?」  
僕の言葉を耳にして、しばしの沈黙があったかと思うと、目を真ん丸に見開いてポツリとひとこと。  
う……や、やっぱり変なコト、言い出しちゃったかな……?  
 
「い、いや、その、さっき会社で同僚と、そんな馬鹿な話をしてたから、つい何となく、  
気持ち……イイのかなって、ちらりと思ったのを口走っただけだから、あの、その、えっと……」  
「いいよ」  
「………え?」  
必死に誤魔化すようにまくし立てる僕を見て、アイリスがぽつりとひとこと。  
「だって…御主人サマが、シテみたいんでしょ?」  
「アイリス……ほ、本当にいいの?」  
小首を傾げながら、アイリスが言葉を続ける。僕は思わず、アイリスに問い返してしまった。  
「そこで私に、何度も同じことを言わせようとするかな? んふふっ、イヤらしい御主人サマ」  
「あ、いや、その……」  
くちびるを尖らせながら、僕の胸の頂をつんつんと突っつくアイリス。  
その言葉に、顔がかあっと熱くなっているのを感じる。  
「でも……」  
「で、でも!?」  
「……やさしく、してね…あ、ああんっ………」  
アイリスの言葉と視線に、胸を射抜かれたような、ズキンとした衝撃を覚える。  
その衝撃がたまらなくなった僕は、そっとアイリスを抱きしめながら、くちびるを奪っていた――  
 
「い……いく、よ?」  
「は…はい……」  
僕は、四つんばいになったアイリスのすぼまりに、モノをあてがいながら、声を掛けた。  
アイリスは、顔だけをこちらに向けながら、両手で自らの真っ白いお尻を押し広げ、コクリと頷く。  
その声と姿に誘われるかのように、僕はアイリスのすぼまりに、モノを潜り込ませた。  
「……あ、あんっ」  
「う……くっ………」  
モノの先端が潜り込んだだけで、アイリスは上半身を震わせて、軽く悲鳴をあげる。  
僕もまた、モノの先端に、締め上げるような刺激を覚え、思わず声が漏れ出す。  
この刺激を、モノ全体で味わおうと、さらに腰をアイリスへ押しつけ………。  
「……っ、ん……っ………」  
「あ……だ、大丈夫?」  
くぐもった悲鳴を耳にして、思わず腰の動きが止まり、ふたたびアイリスに声を掛ける。  
その目には、ひと筋の涙が光っていた。  
「ん……うん…私は、平気、だよ………」  
「ほ、本当に大丈夫、なの? アイリス……」  
もう一度、同じ質問をしてみる。アイリスの返事が、あまりにも苦しそうな声だったからだ。  
「………す、少し、だけ、い、痛い、です……で、でも平気……だって、私………」  
「私? アイリスが、どうしたの?」  
「……だって、私がいつも、御主人サマに、していることだか……ら…………ご、御主人サマ?」  
「そ、そんなことで………」  
アイリスの言葉に、僕はモノを引き抜こうとした。途端に、驚きの声をあげるアイリス。  
 
「あ…ま、待って……」  
「………?」  
だがアイリスは、手をうしろに回して、僕の腰を押さえつけてきた。  
アイリスの意外な行動に、僕は声を出すのも忘れ、アイリスをじっと見つめるしかなかった。  
「そ…そうじゃなくて、その……ご、御主人サマ、お、お尻に私が入っているとき、  
すっごい、いい顔してるから、わ、私もそういう顔、御主人サマに、見せれるかな、と思って、その……」  
「………ア、アイリス………」  
アイリスに、後ろを貫かれているときに、あられもなく喘ぎ声を漏らしている、  
自分の姿を思い出し、顔どころか、全身がかあっと熱くなるのを感じる。  
「だから、えっと………御主人サマが、あんなに気持ちよさそうに、するのなら、  
私も、同じように気持ちよくなりたいなって………。ご、御主人サマは気持ちイイ? 私のお尻……」  
「えっと……何だか、キュッって締めつけてきて……その…気持ち…イイかも……」  
しどろもどろな声で、問いかけてくるアイリスに、僕は感じたままの返事をした。  
 
確かに、いつも繋がっている場所と違って、柔らかく包み込んでくれるような、安心感は無かった。  
だが、感じる熱さと、モノへの締めつけの具合は、こちらのほうが遥かに強かった。  
……こ、これって…本当に、癖になっちゃうかも……。  
『慣れれば病みつきになるかもしれないぜ。特にお前の場合は、のめり込む性質だからな』  
不意に頭の中に、昼間の同僚の言葉が蘇る。……そ、そうかもしれない……。  
 
「そう……じゃあ、お願い……。もっと、もっと奥まで…入ってきて……御主人サマ………」  
「う、うん……く…っ………」  
僕の答えに満足そうに頷いたアイリスは、優しく微笑む。  
まるで、その笑みに憑かれたように、僕は腰の動きを再開させた。  
 
「あ、あ……っ……あっ………」  
「……ア、アイリス………もう、もう根元まで、入っちゃったよ………」  
「う、うん………御主人サマの…熱い………」  
やがて、僕のモノが根元まで、アイリスの中に潜り込んだ。  
アイリスは、幾筋の涙をこぼしながらも、嬉しそうに微笑みを返す。  
「う、動かす、よ?」  
「はい……。ん…っ……んんっ………」  
「……く…ア、アイリス………」  
アイリスの返事とともに、腰をゆっくりと動かし始める。  
同時に、モノから全身にかけて、痺れるような快感が突き抜け、思わず悲鳴が漏れ出す。  
「ああっ!? ……あっ! ああっ! ああんっ!!」  
さらに僕は、アイリスの割れ目の中に、右手の指を潜り込ませてみる。  
途端に、アイリスの口から、嬌声が響き渡ったかと思うと、モノへの締めつけが増した。  
「……う、うあっ!? ア、アイリス……き、気持ち、イイ?」  
「う…うん、ご、御主人サマ、すごく…すごく、気持ちイイよ……あっ、ああっ、あっ、ああっ!」  
アイリスの返事に気をよくした僕は、指の動きを激しくさせてみると、  
ぐちゃぐちゃと淫猥な音を立てながら、割れ目からアイリス自身の蜜と、  
先ほど僕が、アイリスの中へ放ったばかりの精が混じった、白濁した液体がどろりとあふれ出し、  
床へ向かって、一本の白い線となって、したたり落ち始めた。  
 
「ああ……アイリス…ぼ、僕も…僕も気持ちイイ……気持ちイイよ………」  
指でアイリスの中をかき回すたびに、モノへの締めつけが、強くなったり弱くなったりを繰り返す。  
僕はいつしか、アイリスの身体を気づかうことも忘れ、さらなる快感を貪らんがために、  
むしろ、いつもよりも激しいくらいに、腰を動かし始めていた。  
「あっ! あはあっ! あっ! ご、御主人サマ! 御主人サマっ!」  
「……アイリス……かわいい…かわいいよ、アイリス………」  
腰をよじらせながら、涙を流すアイリスの耳元で、そうささやきながら、頬にそっとくちづけをする。  
「御主人サマ……御主人サマあ……うああっ!?」  
涙声で、こちらを振り返るアイリスだが、僕が尻尾を掴みあげた途端、ビクンと全身を仰け反らせた。  
「アイリス……尻尾、感じてる?」  
「う、うん! すっごい、すごい気持ちイイ! 気持ちイイのっ!!」  
僕の質問に、ガクガクと首を上下に動かしながら、アイリスは叫ぶような返事をする。  
「そう……じゃあ、こうすると、どう?」  
「! ああっ! か…あ……ああっ!」  
言いながら、僕はおもむろにアイリスの尻尾を、割れ目の中へと潜り込ませた。  
その途端、アイリスは目をカッと見開き、口を金魚のようにパクパクさせる。  
一方の僕はといえば、皮一枚を隔ててうごめく尻尾の感触と、すぼまりからの締めつけが、  
モノに一斉に伝わってきて、今まで味わったことが無い快感が、押し寄せてきた。  
「ご…御主人サマ! も、私…私、イッちゃうっ! 私イッちゃううっ!!」  
「ああっ……アイリス…ぼ、僕も……僕も、イッちゃう……」  
「キテ! 御主人サマ! わ、私と一緒に、キテえっ! あっ! ああっ! ああーーーーっ!!」  
アイリスの叫び声とともに、僕はアイリスの後ろの穴の中へと、精を放っていた――  
 
 
「ねえ、アイリス……」  
「なあに? 御主人サマ……」  
一回目が終わったときと同じように、僕に身体を預けているアイリスに、声を掛けた。  
顔をあげ、僕をじっと見つめながら、返事をするアイリス。……ああ、本当にかわいい……。  
「あのさ……アイリスも、お尻は初めて、だったのかな?」  
「…………うふふっ。御主人サマが、同じコトをしたのと同じ回数、だよ?」  
僕の質問に、アイリスは曖昧な笑みを浮かべながら、曖昧に答えた。  
アイリスの返事が、照れだと感じた僕は、素直に、アイリスも初めてだったんだと納得した。  
「そ、そうか……。ぼ、僕が、アイリスの初めてを、奪っちゃっ………ん…っ……」  
感激にも似たような、不思議な感覚を覚えながら、つぶやく僕のくちびるを、アイリスがふさいだ。  
多分、これも照れ隠しなんだろう。そう思った僕は、アイリスをしっかりと抱きしめ返した。  
 
「ねえ……御主人サマ………」  
「なに? アイリス」  
長いくちづけが終わり、今度はアイリスが、僕に語りかけてきた。  
「その……後ろと前と、どっちが気持ちよかったかな………?」  
「え? そ、それは………その、どっちも気持ちよかったよ、アイリス………」  
アイリスの質問に、僕はどぎまぎしながら答えた。……本当に、どっちも気持ちよかったし。  
「そうっか………。じゃあ、夜のお勤めは、今日から1日2回、だねっ♪」  
「えっ? ちょ、ア、アイリス……ん…んんっ………」  
と、アイリスはぱっと笑みを浮かべながら、Vサインを僕に見せる。……というか、”今日から”って何?  
口ごもる僕を見て、アイリスはふたたび僕のくちびるを奪ってきた。  
まるで、反論は許さない、という意思を込めているかのように。  
「……っ。ね、御主人サマ。……今日はお風呂にする? お夕食にする? それとも…ワ・タ・シ?」  
「え? あ……お、お風呂、で……」  
くちびるを離したアイリスは、にっこりと微笑みながら、僕が帰宅したときと同じ言葉を口にした。  
蛇に睨まれた蛙のように、かすれた声で答えながら僕は思った。  
――ああ、あの同僚の言葉に従うと、こんな目に遭っちゃうのね……と。  
 
 
「ふう……やっぱり、覚えていなかった、か」  
風呂から先に上がったアイリスは、夕食の支度をしながら、寂しそうに独り言を漏らす。  
実は、後ろの穴に突き立てられたのは、これが初めてではなかった。  
かつて御主人サマが、カゼを引いてしまい、『カゼ薬』と称して、ある『薬』を飲ませた結果、  
人が変わったように、荒々しく自分を抱いてきた。そのとき御主人サマに、後ろの処女を奪われたのだ。  
しかし、御主人サマはそのことを、まったく覚えてはいない。  
だから、後ろで交わった回数を聞かれたとき、曖昧に答えたのだ。嘘ではない、のだから。  
「でも………うふふっ。あのときと、同じ抱き方をするんだから、ね」  
尻尾を機嫌よさそうに、ピコピコとうごかしながら、アイリスの独り言は続く。  
そう、あのときもまた、自らは後ろを貫きながら、尻尾を割れ目に潜り込ませていたのだ。  
「進歩が無い御主人サマ……。でも、そんな御主人サマが――」  
 
ガチャ  
 
「ん? 僕がどうしたって?」  
「……え? い、いや何でもないよ。さ、夕食出来たから、座って座って」  
続きの言葉を言おうとした途端、風呂からあがった御主人サマが、部屋に戻ってきた。  
アイリスは、満面の笑みを浮かべながら、料理を盛りつけた皿を、食卓に運んだ――  
 
 

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