「ああっ、あん、ああっ、ご、御主人サマ、御主人サマあっ!」
「ア、アイリス、アイリスっ!」
艶かしい声を上げながら、僕にしがみつくアイリス。
僕もまた彼女に覆いかぶさった姿勢で、叩きつけるように腰を動かしながら、
アイリス――僕の大事な大事な女神サマにして、最愛の妻――の名を叫び続ける。
「ごっ、御主人サマっ、御主人サマっ! も、もう…!」
「っ……、アイリス……ぼ、僕も…っ!」
目を潤ませたアイリスの声が段々、途切れ途切れになっていく。
それと同時に、僕のすぼまりに潜り込んでいる、彼女の尻尾が僕の中で激しくうごめく。
尻尾の動きに合わせて、痺れるような快感が全身を襲う。
僕は快感の波に飲まれながらも必死に腰を動かし、喘ぎ声を漏らし続ける。
「イ、イッちゃう、御主人サマ、御主人サマ、イッちゃううーっ!」
「ああっ、アイリスっ! …くっ!」
ほどなくして僕とアイリスは、ほぼ同時に絶頂に達していた。
「はあ…はあ、はあ……ア、アイリス……」
「御主人サマ……」
絶頂に達してから、二人の動きが激しいものからゆっくりと、それでも大きな動きへと変わった。
気を失ってしまいそうな快感に震え、肩で息をさせながらも、女神サマの名を呼び続ける。
そんな僕を、アイリスは慈愛に満ちた、優しい笑顔で見つめ返してくれていた。
やがて、絶頂の余韻をいつまでも味わうかのように動き続けていた、
僕の腰とアイリスの尻尾の動きが、どちらからともなくほぼ同時に止まった。
そのまま、アイリスの横になろうとして、腰を引いたその時。
「ア、アイリス?」
アイリスが両足を絡ませ、僕の下半身を押さえ込んでしまった。
突然のことに、驚きの声をあげる僕に対し、頬をほんのり赤く染めながら、悪戯っぽく微笑むアイリス。
「っ……んっ、んふ、んんっ……」
次の瞬間、アイリスは両腕を僕の後頭部へと回したかと思うと、僕の頭を抱き寄せくちびるを重ねてきた。
さらに、くちびるの隙間から柔らかい舌が潜り込んでくる。
僕は戸惑いながらも、アイリスの柔らかい舌に自らの舌を絡ませ始めていた――
「んふ、ん、んっ、んん、んふんっ……」
「っ、ん、んっ……んっ」
しばらくの間、貪るようにお互いの舌を絡め合わせ、甘い吐息を漏らし続けていた。
「んっ……ん?」
が、突然アイリスの舌の動きがピタリと止まった。
僕は不思議に思いながらも、同じように舌の動きを止め、くちびるを重ねたままアイリスを見つめた。
アイリスもまた、僕のほうを見つめ返している。と、その時――
ゴーン……ゴーン……
どこからともなく――多分、近所の神社だと思うけど――、かすかに除夜の鐘が聞こえてきた。
その音は、じっとしていなければ聞き取れないほど、か細く、儚かった。
――もしかしてアイリスは、これを僕に聞かせたかったの?――
そう思ったが、くちびるを塞がれているままでは、声に出して問うことは出来ない。
だが、アイリスの嬉しそうな表情を目にした時、言葉を交わさなくても答えがわかった。
――勿論だよ、御主人サマ――
その目は如実に、そう答えているように感じられたのだ。
除夜の鐘が鳴り止み、どちらからと言わず、交わしていたくちびるを離した。
長い長いくちづけを表すかのように、二人の口を結ぶ細長い糸が光る。
糸が消えた途端、まるでそれを待っていたかのように、二人の口から同時に言葉がこぼれた。
「あけましておめでとう、アイリス」
「あけましておめでとうございます、御主人サマ」
あまりにタイミングが揃っていたためか、二人の間に再び沈黙が訪れた。
しばしの沈黙の後――
「……っ、ぷっ、くくくっ」
「あは、あはははっ」
堪えきれなくなった二人の口から、ほぼ同時に笑い声が溢れていた――
「ねえ、御主人サマ……」
「なんだい、アイリス?」
笑い声が止んだ頃、アイリスが無邪気な笑顔で、僕に語りかけてきた。
「やっと……年を跨いだまま、一緒になれたね」
「ああ、そうだね…」
アイリスの言葉に、僕はゆっくりと頷く。
そうだよね、去年は当直があったから、一緒に新年を迎えることが出来なかったわけだし、
その分、今年は二人でゆっくりと……。
「えっ、ア、アイリス!?」
「そういえば……一年の計は元旦にあり、って言うんだよね…」
などと思っていると、不意にアイリスが体を入れ替え、僕の上に馬乗りになった。
混乱している僕を他所に、独り言とも僕に語りかけるとも言わず、つぶやくアイリス。
「まあ、そうだけど、それとこの状況と……」
「と言うことは、今年は今日シた回数だけ、御主人サマと毎日出来るってことなんだよね
早くしないと……元旦が終わっちゃう」
どういう関係があるの、と言おうとしたが、僕の返事を聞いているのかどうか、
平然とした顔で、そら恐ろしいことをつぶやくアイリス。その目は…やばい、いつもの目だ。
「そ、それは何……ん…んんっ」
何もかもが違う、と言おうとしたが、毎度のようにアイリスにくちびるを塞がれてしまい、
その言葉が口から出てくることは、無かった――
……それにしても、毎度こうなってしまうのは何故なんだろうか……。
おしまい