「くふ…ん……んんっ……ふん…ん…んふっ……」  
目の前の女性――アイリスが僕に体を絡ませ、喘ぎ声を出しながら舌を潜り込ませてくる。  
僕はその攻めに抗う気力を失い、ただひたすらに蹂躙されていた。  
「御主人……さまあんっ……」  
「あう…うっ……アイ…リ…スぅ……」  
くちびるを離したかと思うと、甘えた声をあげながらモノを太ももで挟み込み、ゆっくりと腰を動かしだす。  
下腹部から伝わる刺激に、思わず喘ぎ声が漏れ出してしまう。…お願い……早くイカせて……。  
 
――ひと月ほど前、ある出来事があって、それ以来アイリスを毎日抱いている。  
いや、抱いている、という表現には語弊があるかもしれない。  
こんな風に攻められるのは僕のほう、なのだから。正確には抱かれている、だろう――  
 
「御主人サマん♪ まだ挿れてないのに、小さい御主人サマがピクピク震えてるよ♪  
どうしたのかなあ?」  
「…ぐ……それは…その…」  
僕が全身を震わせながら、そんなことを考えていると、アイリスが体をもたれかかせ、耳元でささやいてきた。  
その舌先で、僕の耳たぶをペロペロと舐めまわしながら。  
……ああ…気持ち…イイ……。…でも……何て…何て答えればいいの……?  
「ひゃうっ!」  
「それとも……こっちじゃないと、満足できないのかなあ? ねえ、前と後ろとどっちがいい?  
私はどっちでも………ああっ、そうか。両方がいいんだったっけか? まったく、イヤらしい御主人サマ♪」  
答えに迷う僕のすぼまりを突然襲う刺激。そう、アイリスが尻尾でつんつん突っついてきたからだ。  
さらに両手で僕の両頬を押さえ、じっと見つめかけながら語りかけてくる。  
心底嬉しそうな、お気に入りの玩具――ある意味その通りだが――を見つけた笑顔を見せて。  
 
「ア…アイリ、ス……」  
「ん〜? なあに? 私はここにいるよ? …それより……どちらがいいの?  
もしかして………私と一緒に寝るの、もうイヤになっちゃったあ?」  
思わず漏れるつぶやきに、アイリスが反応する。多少拗ねたような、寂しそうな儚げな表情で。  
「そ…そんなこと……ない、よ…あ…ああ……あっ!」  
「んふふっ、うっれしいっ♪ さっすが御主人サマ。……それではご褒美は、この私で〜す!」  
あまりに儚げな表情にドキリとした僕がそう答えると、アイリスは表情をころりと変え、  
輝くような笑みを見せ、心底嬉しそうな声で体を起こして、僕に馬乗りになった。  
同時に、モノとすぼまりから伝わる刺激に耐えられず、悲鳴がこぼれる。  
「んん…あは……んっ…。気持ちイイ……気持ちイイよ…御主人サマ………」  
「くう…はっ……アイリス…アイ…リス……」  
アイリスは僕の手を取り、自らの胸を揉ませながら体を上下に揺さぶりだした。  
さらに、尻尾もすぼまりに潜り込もうと、激しくうごめき始める。  
僕は、両手と下半身から伝わる刺激に溺れながら、ただひたすらに彼女の名前を呼び続けていた。  
 
「くふう……んふう…気持ちイイ……イイよ…、あん……御主人サマ…御主人サマ………んんっ」  
うつろな表情のアイリスが、再び僕にもたれかかせ、くちびるを重ねてくる。  
僕は侵入してくる舌を絡めとり、下腹部をビクンビクンと動かし始め、  
さらに、アイリスを抱きしめながら、ゆっくりと体の上下を入れ替えた。  
「ん…んんんっ………ぷはあっ……。……御主人サマ…激しく……キテ………」  
しばらく絡み合ったまま、くちづけを交わしていたが、不意にアイリスがくちびるを離しぽつりとつぶやく。  
その声が、まるで何かの呪文だったかのように、僕はゆっくりと上半身を起こして、腰の動きを早めだした。  
「あ…はあ……イ…イイッ……イイようっ…」  
「くうっ…アイリス……ぼ…僕も…最高だ……よ…っ!」  
途端にアイリスは、あられもない声をあげながら悶え始める。  
その一方で僕のほうも、彼女の尻尾がすぼまりから一気に腸内に潜り込んできた感覚を覚え、  
その刺激に耐えられずに、思わず声があふれ出していた。  
 
「御主人サマ! 胸…胸……胸にも…胸にも御主人サマ、ちょうだあいっ!」  
とろんとした目つきで、自らの胸を揉みしだきながら、懇願してくるアイリス。  
僕は夢中で、彼女の手をどかして、その豊かな胸にむしゃぶりついた。  
ぷるぷると音がしそうなほど弾力のある、柔らかい胸。ああ…何だか凄く…安心できる……。  
「ああんっ! イイ! イイよ! イイようっ! おっぱい…おっぱい気持ちイイようっ!!」  
柔らかい胸の中で、唯一ピンと固く張り詰めている場所を見つけ、そこに舌を這わせる。  
途端にアイリスは、僕の頭を両手で抱え込みながら嬌声をあげだした。  
思い切って、僕は舌を這わせていた胸の頂を、軽く咥えながら吸ってみた。  
「あは! あんっ!! 御主人サマ! イイ! イイ!! はああっ!!」  
アイリスの叫び声とともに、すぼまりの奥からも、何ともいえない快感がこみあげてきた。  
腸内に潜り込んだ、彼女の尻尾が激しく暴れ始めているのだ。  
気持ち悪いとか、嫌悪感とかは特に抱かなかった。  
むしろ直接的な快感と、背徳的だという心理的な快感のほうが大きい。  
そんな中でも、腰の動きは衰えなかった。それどころか、少しずつ激しくなっていたのかもしれない。  
「……御主人サマ! 凄いよ…凄い気持ちイイよ…!! あはっ! はあっ! あんっ! ああっ!」  
僕の腰の動きとともに、アイリスの嬌声が響き渡る。  
すでに、僕の体は全身が性感帯となり、アイリスの嬌声さえも快感となって脳に押し寄せていた。  
……くふう………もう…もうイッちゃうかも………。  
「イッちゃう? イッちゃうの? イイよ! キテ! 私の中でキテえっ!!」  
声に出すことはできなかったが、思いは伝わったのかもしれない。  
アイリスは大声で叫び続ける。  
あたかもその声が合図だったかのように、僕のモノはビクンと震え、彼女の中に熱いものを放出していた。  
 
「熱い…熱いよ……御主人サマの熱いのが…私の中に…ああ…イイ……イイ…!」  
アイリスの言葉とともに、尻尾の動きが激しさを増してくる。  
おかげで、果ててしまっても腰の動きは止まらない。止めようがなかった。  
半ば無意識的に、アイリスに腰を打ちつけ続けている。……これって操られてる…のかな?  
「はふ…はふう……イイ…よう………」  
一瞬浮かんだ冷静な感情も、アイリスの絶え絶えな悶え声を耳にしたとき、どこかへと消え去る。  
「御主人サマ……私の…私の中で…小さい御主人サマが、また大きくなってきた…よ………」  
「ああ…。…アイリス……気持ちイイ…気持ちイイよ……」  
既に一度果てたにも関わらず、モノは再びアイリスの中で膨らみを取り戻している。  
あからさまに指摘され、かあっと顔が熱くなるが、口からは違う言葉が漏れ出た。  
もう……もうこれ以上…何も考えられない…ずっと……ずっとこうして……!  
そこで意識は途切れていた――  
 
「んふう…御主人サマ……今日は…激しかったよ…」  
目が覚めると、腕枕のアイリスが優しく微笑んでいた。…あれ? 僕って…途中で……?  
「んん〜? 忘れちゃったのかなあ? あんなに激しく私を攻めてきたのに〜」  
僕の乳首をちょんちょんと突つきながらつぶやくアイリス。  
ちょっと拗ねたような表情で、くちびるを尖らせているのが、また可愛い。  
「いや…覚えて……いる、よ」  
「ホントに〜?」  
思わずアイリスの頭を、くしゃくしゃと撫でまわしながら答える。  
それを受けて、アイリスはじとりとした、疑問の目で僕をじっと見つめる。……う…参ったね、こりゃ。  
「…………すみません、最初だけでした。あとは覚えてません」  
「そっか、素直でよろしい。……ん…ふっ……」  
素直に白状する僕を見て、満足そうに頷きながらくちびるを重ねてくる。  
ああ…ホント……幸せ…。最近、身も心もアイリスに溺れてる自分を感じる。  
いや、それ自体はもっと前から、だ。最近は、それを嬉しがっている自分を感じていた――のだった。  
 
 
夜のお勤めをどうにか無事果たし、テレビを点ける。  
どうやら深夜ニュースのようで、画面ではクリスマスの話題で盛り上がっている。  
「クリスマス……かあ」  
アイリスが首を捻りながらテレビ画面を見つめ、ポツリとつぶやいた。  
そうか……やっぱり悪魔だから、聖なる儀式であるクリスマスは嫌なのかな……。  
「あ…き、気に障るよね。今、チャンネル変えるから……え?」  
チャンネルを変えるため、リモコンに手を伸ばそうとしたが、アイリスがそれを押し止める。  
疑問に思った僕は、アイリスの顔をまじまじと見つめていた。  
「ん? 何かおかしいかい? 私がクリスマスの話題に興味を示して?」  
「い、いや……そうじゃなくて…さ……」  
そんな僕の顔を見上げ、アイリスが優しく微笑みながら語りかけてくる。  
僕は、何だかバツが悪くなり、何と言っていいか分からずにしどろもどろになっていた。  
「ふふっ。気にすることはないさ。ちゃんと顔に書いてあるよ。ま、無理もない、ね。  
私だって初めてなのさ。こういう穏やかな気持ちで、クリスマスを迎えられるなんて、さ」  
指先で、つつっと僕の胸元を撫で回しながら、アイリスはゆっくりと語りだした。  
 
「この国ではさ、確かに国民のほとんどが、クリスマスの行事に参加する。  
でもな、それから一週間も経たないうちに、これまた一斉に別の神の行事に参加しだす。  
こんな国は、私たちにもとっても過ごしやすいのさ」  
「あ…」  
アイリスの言葉に、思わず反応してしまう。そうか、日本では信教の自由が約束されてるものね。  
「磔になった罪人を崇めるのもいれば、長い間同じ場所に生えているだけの老木を崇めるのもいる。  
この前テレビでやっていたけれど、鸚鵡を崇めているのもいるみたいだな。  
でも、どんな神を信じていても、誰が咎めるわけでもない。本当過ごしやすい国だよ、ここは」  
テレビで鸚鵡……って、それは少し違うと思うんだけれど、さ。  
「ある一人の人間がある一人の神を崇めていれば、  
その人間にとって、自分が信じる以外の神は悪魔でしかないものなのさ。  
愚かなものだけれどな。所詮、絶対な存在なんて、存在などしていないのにな」  
「あ、あれっ? そうしたらさ、アイリスもどこかでは女神サマとして、扱われてる、ってことなの?」  
僕はアイリスの言葉に割って入った。何故だか知らないけれど、そんな疑問がわいてきて。  
「………かもな。ま、もっともそんな風に呼ばれたことなど、一度も無かったけれど、な」  
「そうなんだ……。じゃあ、悪魔なんて呼ばないほうが、いいのかな?」  
力なく笑うアイリスの顔を見て、僕は思わずつぶやいた。  
……自分で召喚しておいて何だけど、何だか気の毒になってきたよ……。  
「なあに、気にするなよ。私たちは契約で結ばれているんだ。  
だ・か・ら。御主人サマが、私をどう呼んでも問題なんてない、よ………ん…んんっ…」  
アイリスは僕のつぶやきに答えながら、優しくくちびるを重ねてきた。  
ゆっくりとアイリスの背中に手を回し、抱きしめる。……温かくて、柔らかい……。  
 
「ねえ……もうひとつだけ、教えてほしいんだけど」  
「いったい何かな? 何でも聞いて……でも、私が分かることだけ、ね」  
僕の言葉に、アイリスは微笑みを浮かべながら優しく答えてきた。  
うう……凄く…可愛い……。  
「今、契約で結ばれているから、って言ったよね?  
もし、その契約が無かったとしたら、やっぱりこんな関係にはならなかった、んだよね」  
……な、何を言ってるんだ僕は? 突然こんなこと言い出すなんて……?  
 
「うーん。難しい問題だね」  
アイリスは一瞬目を大きく見開いて、しばらく考え事をしていたかと思うと、ポツリとつぶやいた。  
「そうか…そりゃあそうだよね。無理に聞いてゴメンね」  
「あ、い、いや、そうじゃないんだよ」  
僕のつぶやきに、アイリスは慌てたような仕草で、手を振ってきた。  
「言い方が悪かったよ。難しい、ってのはね。  
契約している間の意識が残るのかどうか、が分からないってことなのさ」  
「え……?」  
「もしかしたら、契約が解除された途端に怒り狂って、御主人サマを殺してしまうかもしれない。  
それとも、契約している間の出来事をすべて忘れて、別の契約相手と過ごすかもしれない。  
……また今と同じように過ごせるのかも、しれない。それは…その時でないと分からないから…」  
そうだったのか……。僕は、何と言っていいのか分からず、じっとアイリスを見つめ続けていた。  
「それで……お願いがあるの。契約を解除なんて、絶対にしないでね」  
「……え? どう…いうこと?」  
「今言ったとおりだよ。契約を解除したら、どうなるかなんて分からない。  
それこそ、今は契約に縛られての、偽りの気持ちかもしれない、本心は分からない。  
けれど、今の心を、御主人サマを大事に思っている私を、……御主人サマを忘れたくないから……」  
寂しげにつぶやくアイリスを見て、胸にじわっとしてきたものを感じてきた僕は、  
返事の代わりにぎゅっと彼女を抱きしめながら、熱いくちづけを交わしていた――  
 
 
「は〜い、当店ではクリスマスキャンペーンをやってますデスね〜!」  
クリスマスイブの日、会社帰りに街をブラついていると、サンタ姿の金髪美女がティッシュを配っている。  
「彼女にプレゼントする絶好の機会デスね。どうお兄サン? 今日までだから、安くしとくアルヨ?」  
僕と目が合った彼女は、ニコニコ微笑みながら、語りかけてきた。  
………いったい、どこの国の人間だ、この娘は。  
でも、ま。せっかくだから、アイリスのために何か買っていこうかな?  
契約に縛られてるとはいえ、毎日家事をしてくれているんだし、  
クリスマスそのものを嫌がってはなさそうだし、何より……あんなこと、言われちゃ…ねえ。  
「そうだね、何か買ってくよ」  
「わっかりましたデスね〜! 店長〜! お客様一名ごあんな〜い! デスね!」  
僕がそう答えると、彼女は顔をほころばせ、腕を取りながら店内に向かって叫ぶ。  
………店を間違えてしまったような気がするのは何故でしょうか?  
 
「ただいま〜」  
「あ! お、お帰り! は、早かったな! 今夕食の支度するから、ちょっと待ってて!」  
僕が帰ってくると、凄い慌てた様子で立ち上がり、台所に向かうアイリス。  
早いも何も、いつもと同じ時間なのに、何を慌てているんだか……?  
「ん〜、だったらいいよ。今日はクリスマスイブだから、ケーキとフライドチキン買ってきたんだ。  
たまには家事をサボったって、バチは当たらないでしょ?」  
「バ…バチも何も……いいのかい? サボっちゃったりして?」  
手にぶらさげていたケーキとフライドチキンをかざすと、アイリスは一瞬安心したような顔を見せるが、  
すぐにバツの悪そうな顔で見つめ返してきた。……何だか、凄く可愛いんだけど。  
 
ぐう〜っ  
 
突然、部屋に響く音。途端にアイリスの顔が真っ赤に染まり、尻尾が垂れ下がる。  
フライドチキンの香りに耐えられなかったのか、彼女のお腹が鳴り響いたのだ。  
「いいよいいよ。とりあえず、紅茶だけ煎れてもらえるかな?」  
「あ、ああ! わかったよ!」  
とりあえず、今の音は聞かなかったことにして、アイリスに頼み込んだ。  
すると、アイリスは顔をぱっと輝かせながら気分よく返事をして、ヤカンでお湯を沸かし始める。  
尻尾は……あ、機嫌よく揺れてる。よかったよかった。それにしても…尻尾で機嫌って、まるで犬みたい。  
 
「あち…あちあち……。…たまに…はふ…食べると…はふ…おいしいな、これ……」  
アイリスは満面の笑みを浮かべながら、フライドチキンを頬張っている。うん、買ってきてよかった。  
「だよね。まだまだあるから、たくさん食べるといいよ」  
「う、うん…はふ…はふ……」  
僕の言葉に軽く答え、一心不乱になりながらフライドチキンを食べ続ける。  
果たして、鳥肉が好物だったのか? はたまた余程お腹が空いていた、のかな……?  
 
「さて……と。じゃ、これで乾杯といきましょうか」  
「あ…私が開けるよ」  
フライドチキンを食べ終え――よく見たら、綺麗に骨まで食べてるし――シャンパンを開けようとする。  
それを見たアイリスが、慌てて手を伸ばそうとするが、それを制して栓に手を掛ける。  
「大丈夫大丈夫。それより……辺りに気をつけてね」  
 
ポンッ ピシッ  
 
「あ、あら?」  
思わず間抜けな声をあげてしまう。それも無理は無い。  
何せ開封と同時に飛び出した栓を、アイリスが尻尾で受け止めたから、だ。  
「ご…ごめん……飛んできたから、つい受け止めちゃったけど……まずかった、かな?」  
「いや…まずいことはないんだけど……よく受け止められたな、と思って」  
僕が呆然とした表情をしていたせいだろう、アイリスがすまなそうな顔で語りかけてくる。  
もちろん、そんなことで怒るはずがない。僕は素直に思ったことを話した。  
「そっか……よかった。じゃ、グラス持って。注いであげるから」  
「え? あ、そ、そう? わ、悪いね。どうもありがと」  
僕の答えに、顔色をぱっと明るくさせたアイリスは、上機嫌で僕からボトルを取り上げ、  
グラスを持つように促してきた。何故だかしどろもどろになって、僕はグラスを持ち上げた。  
 
「じゃ、かんぱ〜い!」  
「かんぱ〜い!」  
カチンとグラスを鳴り合わさせながら、乾杯をする。  
ふう……去年は一人寂しく、残業の中で迎えたクリスマスだったけど…今年は幸せだなあ……。  
「?? どうした〜? 何を遠い目をしてる〜?」  
「ん? い、いや何でもないよ。それよりさ、今日はどんどん飲もうよ」  
しばらく自分の世界に入っていたようで、怪訝そうな顔でアイリスが僕を見つめている。  
慌てて僕は、話を逸らすようにボトルをアイリスに向けた。  
「ふふっ。私を酔わせてどうこうしようとでも言うのか? まあいいぞ。たまには乗ってみるとするかな?」  
挑発するような口調で、アイリスはこちらにグラスを向けた。その表情は妖しく微笑んでいる。  
そんな彼女の表情に、まるで心臓を鷲掴みにされたような感覚を覚え、僕は震える手でシャンパンを注いだ。  
 
「でっさあ、いろんな生徒がいておっもしろいよお。お嬢さん育ちが多いのかどうか知らないけど、  
恵ちゃんは玉子ひとつ割ることも出来なかったし、アヤメちゃんは米といでったら、洗剤持ち出すし……」  
「ふうん、そうなんだ。でも、結構楽しそうだね」  
アイリスは上機嫌で、料理教室の話を続ける。すでにボトルは2本空いていた。  
「そうねえ。元々お料理は大好きだし、教えるのも嫌いではないし……」  
僕の相槌に、アイリスは気を悪くする風でもなく、ひたすら話し続ける。と、少し目がとろんとしてきた、かな?  
「んふふ〜。何だか私をじっと見ているぞ〜。酔ったかどうか、確認してるのか〜?」  
「え!? い、いや、そうじゃなくって、さ」  
不意にアイリスが話を中断し、悪戯っ娘の目で僕を見つめながらつぶやく。  
何だか、心の中を見透かされたようで、必死に誤魔化そうと身をよじらせ……ポケットの中身を思い出した。  
「あ、あのさ、アイリス。……これ、クリスマスプレゼント」  
「ん? なんだこりゃ? …………わあっ」  
ポケットから包みを取り出し、アイリスに手渡す。  
アイリスは、怪訝そうな顔をしていたが、中身を確認して嬉しそうな声をあげた。  
帰り際、例の怪しい金髪美女の店で買ってきたネックレスだった。  
 
「すっごい……こんなの欲しかったんだ……。でも…いいのかい? 高かったんだろ?」  
「いいよ、そんなこと気にしないで。いつも家で炊事洗濯してくれてるんだもの。そのお礼だよ」  
満面の笑みの中、少し心配そうな目で僕を見つめながらアイリスが言う。  
……確かに、財布の中身が一気に寂しくはなったけど、  
今のアイリスの笑顔が見られたのならば、決して高いとは思えなかった。  
「……ありがとう…大事にするよ……。それでさ、早速だから着けてもらっていい?」  
「えっと…うん、いいよ」  
ウィンクしながら礼の言葉を述べ、僕にネックレスを差し出すアイリス。  
僕は、ゆっくりとアイリスの首に手を回し、ネックレスをかけようとする。……あ、いい香り……。  
「ん? んんっ?」  
そう思う間もなく、アイリスは僕を抱きしめながらくちびるを奪い、押し倒してきた。  
勢いに勝てず、思わず倒れこんでしまう。  
「御主人サマ…大好き…大好きだよ……私…私……き、きゃっ!?」  
くちびるを離したかと思うと、アイリスはぽつりとつぶやいた。  
その表情に何かが弾けた僕は、気がつくと体の上下を入れ替えていた。  
 
「は…あ、ああんっ」  
パンストに両手を掛け、下着ごとゆっくりと膝まで下ろし、下腹部に指を這わせる。  
その途端、アイリスは全身をピクンと震わせながら、甘い声で悶えだす。  
僕は手つきももどかしく、下半身を露わにさせる。すでにモノは完全に戦闘状態に入っていた。  
……ちょっと暴発して汁が漏れているのですが。  
「御主人サマ……早く…早くキテえっ……!」  
四つんばいになったアイリスの割れ目に、モノの先端をあてがう。  
それだけで、アイリスは我慢できないようで、腰を震わせながらこちらを涙目で振り返る。  
一方、僕はそんなアイリスの目に操られるかのように、腰を一気に奥へと突き立てる。  
「はあんっ! イイ! イイのうっ!」  
すでに濡れそぼっていたアイリスの割れ目は、難なくモノを飲み込んでいた。  
アイリスの口から喘ぎ声が漏れだす。  
「もっと…もっと激しく……私を…私をメチャクチャにしてえっ!」  
そんなアイリスの声に反応した僕は、腰の前後に突き動かす。  
「くう…イイよ…アイリス……アイリスぅ……」  
僕が腰を動かすたびに、割れ目の中でモノを包み込む無数のヒダが、  
まるで別の意思を持った生き物のように、モノを撫であげ続ける。  
何ともいえない快感に打ち震えながら、思わず彼女の名を呼ぶ。  
「御主人サマ……イイ…イイよ……もっと…もっと激しくキテえっ!」  
モノから伝わる快感で、意識が飛びそうになるたびに、アイリスの嬌声が脳に響く。  
その声に刺激されるように、腰の動きを激しくさせ、さらにモノからの快感が大きくなる。  
ひたすらに、それを繰り返していた。まるで、何かの連鎖反応のように。  
「あ…はあんっ! おっぱい! おっぱいイイ! 御主人サマ! 御主人サマあっ!!」  
前にもたれかかった弾みで、アイリスの豊かな胸に手が伸びる。ああ、服の上からでも柔らかい……。  
するとアイリスは、よがりながら叫び声をあげだす。その声が聞きたくて、僕はひたすらに胸を揉み続けた。  
 
「御主人サマ! イイよ! 気持ちイイようっ! 御主人サマあんっ!!」  
まるで獣のように、悶え続けるアイリス。僕はひたすらに両手と腰を動かし続ける。  
と、視界の端に動くもの? そちらに目を向けてみると、アイリスの尻尾が所在なげにふらついていた。  
――そうか……いつもはこれが、僕のお尻に突き刺さるんだっけか――  
そう思うと顔がかあっと熱くなったが、それを誤魔化すかのように、何の気なしに尻尾を掴みあげた。  
「あふんっ! ああ! ご、御主人サマ! それ! それダメっ!」  
同時に、アイリスから今まで聞いたことがないような、切羽詰まった悶え声が聞こえてくる。  
快感に溺れながらも、少しだけ悪戯心が芽生えた僕は、軽く尻尾をしごいてみせた。  
「あ、ああんっ! そ、ダ…ダメっ! く、狂っちゃう! 狂っちゃううっ!」  
全身をガクガク震わせながら、アイリスが叫び声をあげだす。  
同時に、モノの締めつけも増し、新たな快感が押し寄せてくる。  
「ね、ねえ…狂っちゃうってさあ、どうなるの? 気持ちがイイってことなの?」  
「………………!」  
あまりのアイリスの変わり方に、思わず耳元で問い掛けてみる。  
首だけをガクンガクンと上下に動かし、肯定の意を見せたことに安心した僕は、  
思い切って尻尾を口の中に含んでみた。  
 
「あ、はあうっ! ご、御主人サマああっ!!」  
絨毯に爪を立てながら、叫び声をあげるアイリス。……男のモノをしゃぶるって、こんな感じなのかな?  
一瞬、そんな冷静な感情が浮かび上がるが、そんなことで快感を誤魔化すことが出来るはずもなく、  
ただひたすらに、尻尾をしゃぶりあげながら、腰をアイリスに打ちつけ続けていた。  
部屋の中では、パンパンという音と、ぐちゅっくちゅっという湿った音とが響き渡っていた。  
………くう…もう…もたない…かも…。結局、先にイッちゃうのかあ……。  
「御主人サマ! イッちゃう! イッちゃう! 私イッちゃううっ!!」  
アイリスが、絶頂に達する寸前の声をあげる。もしかしたら、今回は…アイリスが先にイク……かも?  
そう思ったのも束の間、アイリスの割れ目がモノをキュキュッと締め付けたかと思うと、  
全身を、痺れるような快感が襲いかかり、モノはアイリスの中に精を放出していた。  
「あはあんっ。ご、御主人サマ! 大好き! 大好きぃ!!」  
僕が果てたのを見計らったかのように、アイリスは叫び声をあげながら、絶頂に達していた。  
………やっぱり、やっぱり今日も先にイッちゃった……。  
 
「ところで、さ」  
「ん? なあに?」  
一戦交えたのち、シャワーを浴びてからリビングでくつろぎながらアイリスに問い掛けた。  
……実は風呂場でも、もう一戦ありました。結果は…押して知るべし、と言いますか……。  
アイリスは、うっとりとした目で僕を見つめ返している。う…何だかちょっと聞きづらい…かも。  
「ええっと……。さっき帰ってきた時さ、大慌てで何か隠していたよね? あれ、何だったの?」  
「うぐ……。アレは…その……ちょっと…えー」  
僕の質問に、アイリスは途端に歯切れが悪くなる。……やっぱり、聞いちゃいけなかったのかな?  
「んー。………しゃあない。コレ貰ったし、白状するよ」  
やおらアイリスは立ち上がり、部屋の奥へと向かったかと思うとすぐに戻ってきた。  
後ろ手に何かを隠したまま。  
「その……えっと…これ…私から、クリスマスプレゼント、な。全然、未完成だけど、さ」  
こちらに持ってきても、しばらく躊躇していたが、意を決したように僕に向かって”それ”を差し出す。  
”それ”は右の袖が無い毛糸のセーターだった。  
「あ…あれからさ、思ってたんだ。いつも料理は作っていたけれど、それって食べてしまえばそれっきり、  
私がもし、御主人サマの前からいなくなった時、御主人サマから私の記憶が無くなっちゃったら、私がいた、  
って証拠が…どこにも無くなっちゃうから、だから…その……形で残る物を…残しておこうと思って……」  
両手の人差し指の先っぽをくっつけ合いながら、アイリスはしどろもどろに説明してきた。  
いっぽう、尻尾のほうは所在無げにフラフラしている。……でも、それにしても……あれから…って…。  
そうか、だから食事の支度も何もしていなかったのか。……それってすっごい可愛いかも……。  
 
「め、迷惑だったかなあ? だ、だったらいいよ、別にほどいて毛糸にしてしまえば……きゃっ?」  
答えに悩んで沈黙していると、アイリスがセーターに向かって手を伸ばそうとしてきた。  
その手を僕は掴みあげ、ゆっくりと彼女を抱き寄せた。動揺したのか、アイリスの悲鳴が聞こえる。  
「どうも…どうもありがとう……アイリス…。大事にするよ…どうもありがとう…」  
「御主人サマ……こんな…こんな中途半端なものでいいの?」  
抱きしめながら耳元でささやくと、アイリスはぼそぼそと自信なさげに、僕の耳元でささやいた。  
「中途半端なんて、とんでもない。このセーター、アイリスの心がこもっているもの。  
それだけで、僕にとっては十分だよ。女神サマ」  
「? め、女神サマ!? わ、私が!?」  
僕の言葉に、アイリスは今までに無いくらい激しい動揺を見せ、僕の顔を見据えて問い直してきた。  
「そうさ。この前自分で言っていたじゃない。神と悪魔の違いなんて、それを崇めるかどうかだけだ、って。  
だったら、僕はアイリス、キミを崇めるよ。そうしたら、アイリスは僕にとって女神サマ、ってことでしょ?」  
「え…あの……その…何て…答えれば……いいんだよ……私…私……」  
たちまち顔を真っ赤にさせながら、途切れ途切れにつぶやくアイリス。その目には…涙?  
思わず僕は、指でそっと彼女の涙をすくってあげた。  
 
「あ、あれ? 変だな? 何で? 何で目からこんなのが流れるんだろ? ははっ、変な…のっ!?」  
自分でも無意識だったのか、驚いたような表情を見せ、両手で眼の周りをゴシゴシ擦りだした。  
そんな仕草が可愛くて、僕はアイリスを抱きしめながらくちびるを奪った。  
一瞬、アイリスは目をまん丸にして固まっていたが、おずおずと僕の背中に手を回してきた。  
「ん…んっ。アイリス……僕だけの女神サマ…大好きだよ……ずっと、ずっとそばにいてね…」  
「御主人サマ…私…私こそ……よろしくお願いしますね………あ。でも…さ」  
くちびるを離してひとこと、ポツリとつぶやく。  
アイリスは顔を真っ赤に染めながら答えてきたが、最後に意味ありげに笑みを浮かべた。  
「え? な、何?」  
その笑みに、背筋が凍るものを感じたが、どうしても気になった僕は思わず問い返していた。  
「女神サマでも何でも、私の夜の相手をしてくれるのは、変えたりしないでね、御主人サマ♪」  
「あう…く……うっ…。わ…分かり……ました…女神サマ…」  
僕の顔を見据え、悪戯っ娘の笑みを崩さず語りかけるアイリスを見て、  
幾分後悔の念を覚えながら、心に誓った。…次こそは、アイリスより長持ちしてみせよう、と……。  
「くふふっ。大好きですよ、御主人サマ♪」  
あ。でも…やっぱりどっちでもいい、かな? こんな可愛い女神サマがそばにいてくれる、なら。  
 
僕だけの女神サマ おしまい  

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