「ん。6度2分……平熱ですね。それじゃ、安静にしててくださいね〜」  
体温計を確認し、にっこりと微笑みながら、看護婦さんが部屋から出て行く。  
ああ……白衣の天使って綺麗だなあ…。  
「こ〜ら。何ぼけらっとしてるんだ? まったく……」  
「い、いや、別に!?」  
と、窓側から咎めるような声がして、動揺した僕はどもりながら反射的に振り返った。  
「あんな娘が好みだったのか? それとも、あの服装がよかったのか?  
何なら、同じ格好してきてやってもいいけど?」  
「ちょ…そ、そうじゃないよ。そんな言い方しなくても………」  
腕組みしているアイリスが、扉を見つめながら投げやりな口調で吐き捨てた。  
僕は慌ててアイリスの言葉を否定したが……看護婦姿のアイリスは……正直、見てみたいかも。  
「それにしてもなあ……まったく……何を考えてるんだ、いいトシして」  
「ううう………だって……」  
呆れ顔で、部屋の中を歩き回っていたかと思うと、  
ベッドの脇の椅子に座りこみ、たしなめるようにつぶやくアイリス。  
………そうさ。僕だって情けないさ。スノボで大転倒して、足の骨を折ってしまうなんて。  
「私は恥ずかしいよ、恵ちゃんたちにも迷惑かけちゃったんだから」  
ピンッと僕の鼻の頭を叩きながら、アイリスの愚痴は続く。  
そりゃあさ、確かに多少無理して滑ってたのは僕だけど……無理するような原因を作ったのは、  
前の夜に足腰立てなくなるくらいまで、エッチさせたアイリスじゃあないか……。  
 
うぐ……し、しまった………そんなこと考えてると、おしっこしたくなってきた……。  
「んん〜? 震えてるなあ? もしかして、トイレ行きたくなってきたかあ?」  
「う………うん…」  
アイリスが、そんな僕の挙動を見逃すはずもなく、嬉しそうな声で問い掛けてくる。  
その目に悪戯っ娘の光を感じたとき、嫌な予感がしたが、逃げようも無いので僕は素直に頷いた。  
「そっか。ま、出るものは仕方ないやな。さて、トイレ行くのも大変だろ。……しょっと」  
言うや否や、アイリスの姿が僕の視界から消える。  
再び姿を現すアイリスの手には……ガラスの器。……いわゆる尿瓶、だ。  
「い!? い、いいよ。トイレくらい、一人でちゃんと行けるって!」  
「無理するなって。私だって一応、御主人サマを気遣ってるんだからさ」  
……言葉だけ聞けば嬉しいけれど、そのニコニコ微笑んでいる顔を見たら、何故か素直に喜べないよ。  
 
「ほらほら、暴れると他の患者さんに迷惑だぞ♪ おとなしくしなさいな」  
ぱっと僕の上に飛び乗りながら、アイリスは嬉しそうに言った。ぐ……膀胱を圧迫しないでほしい………。  
それに、そもそも病室の患者は僕ひとりしかいないし……。  
「ん〜、青い顔をしてるぞ〜? 早く出したほうがよくないか〜?」  
「わ、分かった! 分かったから降りて!」  
アイリスは、下腹部を手でぐいぐいと押しつけながら微笑んでくる。もう! もう本当にまずいって!!  
「そっか、分かった分かった。さあってと……じゃ、脱がすぞ〜」  
僕の逼迫した叫び声を聞いて、にっこり微笑んだアイリスは、ずるずるとそのまま後退していった。  
と、僕のパジャマのズボンに手を掛け、こっちを見つめる。  
「う、うん。は、早く、早くして」  
身体がブルブル震えているのは、我慢が限界に近いからだけ、なのだろうか?  
 
「よいしょっと……。よし、いつでもいいぞ」  
「あ、ああ……」  
アイリスは、膝近くまで僕のズボンとパンツを下ろし、モノを優しく摘み上げ、尿瓶の入り口へ誘導した。  
僕はアイリスが言い終わるのが待ちきれずに、用を足していた。  
ふう…横になったまま用を足すのって、意外と気持ちいいんだな……って、まずい。癖になっちゃうかも。  
 
「……っと…。これで終わり、かな?」  
「あう…う、うん……どうもありが…と!?」  
おしっこの勢いが弱くなってきた僕のモノを、軽く振りながらアイリスが話しかけてきた。  
ひと息ついたおかげで安心感が生まれた僕は、アイリスに礼を言おうとして、声を裏返させてしまう。  
何故なら、アイリスがモノを摘んでいる親指と人差し指を、モノに沿って素早く動かし始めたから、だ。  
「ちょ、ちょっと、アイリス!?」  
「んん? やっぱり若いなあ。すぐに大きくなってくるし、さすがは御主人サマ♪」  
悲痛な叫びとは裏腹に、少しずつ大きくなるモノを見て、アイリスが嬉しそうに微笑む。  
……やっぱ…こうなるのね……。って言うか、看護婦さんとかが来たらどうするんだよ!?  
「うわっ。何だか……今までよりも立派に、しかもビクビク脈打ってるよ、御主人サマ」  
頭は冷静になってはいるが、下半身はかえって興奮してきてるらしい。……我ながら情けない。  
「く……っ………う……」  
だが……滅多に無いシチュエーションだってことが、興奮を呼び覚ましたようで、  
早くも限界が近づいてきた。も…もう、イッちゃ………。  
 
「……っと」  
イキそうになって腰を浮かした瞬間、アイリスはぱっと手を離してゆっくりとベッドから降りる。  
何? 何があったの!? 僕は情けない顔でアイリスをじっと見つめていた。  
「ん? 何だか物足りないって顔してるなあ。ま、たまには我慢しなさいな。  
退院したら、目一杯相手してあげるからさっ」  
尿瓶をベッドの下に戻し、優しく微笑みながら僕のズボンを元に戻すアイリス。  
……………。何だか…あの笑みが悪魔の微笑みに見えてきた。  
……あ。でも僕が女神サマと言っているだけで、本来は悪魔だったんだっけか。  
まあ仕方ない。アイリスが帰ったら、久々に一人寂しくオナニーでも……。  
「た・だ・し」  
「え? な、何!?」  
僕がそんなことを考えていると、アイリスは指をピシリと突き立ててきた。  
反射的に、思わず身構えてしまう。……毎度思うけど、これじゃ、どっちが御主人なんだか……。  
「分かってると思うけど、退院までオナニーしたり、看護婦さんに抜かれたりしたら、あとが怖いからねっ♪」  
にっこりと微笑みながら、小首を傾げてアイリスが宣言する。  
………やっぱり女神サマの名前、返上してもらったほうがいい、かなあ?  
 
 
――夜。思い切り僕は目が覚めていた。……アイリスのおかげで普段から、夜更かししてるからねえ……。  
そういえば、この病院でも特有の怪談ってあるのかな? 看護婦さんには聞きそびれちゃったし。  
 
ヒタ………ヒタ………  
 
……などと思っていると、廊下を何者かが歩いている音がする。ううむ、何てタイミングのいい。  
一瞬、看護婦さんの巡回かなと思ったが、こんな時間にそれは無い、と思う。  
 
ヒタ……ヒタ……  
 
何だか……足音の感覚が短くなっている……ということは、こちらに向かっているというわけで。  
 
ヒタ…ヒタ… カチャ  
 
「あ、か、看護婦さん?」  
扉が開き、誰かが部屋に入ってくる。その姿を確認して、僕は思わず間抜けな声をあげていた。  
何故かというと、そこには昼間、検温に訪れた看護婦さんが立っていたのだから。  
その姿を見て、ホンモノが来たかと内心、ドキドキしていた胸をそっと撫で下ろした。  
「まあ、まだ起きてらっしゃったのですか。こんな時間だっていうのに」  
看護婦さんは軽く眉を顰めながら、こちらへと向かってくる。  
「か、看護婦さんこそ、何があったんですか? もう真夜中ですよっ!?」  
「ええ、まあ。少し気になることがありまして……ん…っ……」  
上半身を起こしながら、僕は看護婦さんに話しかけた。  
いっぽうの看護婦さんは眉を顰めたまま、僕のベッドに腰掛け……いきなりくちびるを奪ってきた。  
 
「な? なな!?」  
さらに、彼女が舌を潜り込まそうとしていることに気がつき、反射的に両肩を掴んで無理矢理引き剥がした。  
驚きのあまりに、声じゃない声が口から漏れだす。何が…どうなってるんだ!?  
「どうしましたか? ……大丈夫ですよ。今夜のことは、誰にも言いません。  
あとは、秀人さんが誰にも言わなければ、今夜の出来事は無かったことに、なるのですよ?  
それとも……彼女のことが、気になっているのですか? ………………」  
小首を傾げながら、彼女は僕を諭すように語り掛けたかと思うと、  
聞き取れないくらい小さな声で、何事かつぶやいている。  
………何だか…彼女の目を見つめていると、凄く安心出来るような気がしてくる。  
それどころか今はただ、目の前の彼女とずっとそばにいたいとさえ、思いはじめていた。  
「大丈夫…ですよ……」  
彼女の言葉を再び耳にした途端、僕はその声が何かの合図だったかのように、  
フラフラと手を伸ばし、しっかりと彼女を抱きしめて――冷たい!?   
――そう、彼女の身体は、何故か氷のように冷え切っていたのだ。  
まるで寒い日に、外から帰ってきたばかりの身体のように。  
だが、それなら僕が温めてあげればいい――そう思って、彼女を力強く抱きしめた。  
 
「んふ…ん……んんんっ……」  
「……ん……ん…っ……」  
くちびるを奪い、舌を潜り込ませようとする。おかげで、自然と鼻息が荒くなり、腕の力が緩む。  
彼女は僕の後ろ頭に手を回しながら、舌を伸ばして僕の口内に潜り込もうとしてくる。  
今度は、さして違和感も持たず、彼女の舌を無条件で受け入れていた。  
「ん…ん……んんっ……んっ……」  
彼女の舌がどんどん伸び、僕の咽喉まで届きかけている。  
本来なら呼吸を妨げられて、咳き込んでいてもおかしくは無いのだが、  
不思議なことに、息苦しさなどはまったく感じられなかった。  
むしろ、口中が彼女で満たされることで、至福の喜びを感じるようにまでなっていた。  
 
「ん……ん…んん……っ……」  
長い舌を僕の口内からゆっくりと抜き出し、僕に妖しく呼び掛けてくる。  
ふと気がつくと、僕は上半身に何も身につけていなかった。いったい、いつの間に……?  
「さ……どうぞ、こちらへ……」  
声に誘われ、彼女のほうを見ると、やはり上半身には何も身につけておらず、  
張りのある、形のいい胸が、その存在を主張するように、ぷるぷる揺れている。  
両手を開いて語りかける彼女の姿は、まるで何かの神話に出てくるような、  
慈愛に満ちた聖女を連想させ、僕は何かに魅き寄せられるように、そっと彼女を抱きしめた。  
 
「ん……ちゅっ…ん…んっ……あったかいです……秀人さんの身体……。ん……ちゅっ…ちゅ…っ…」  
「…ああっ! …あ…ああ……気持ちいい…気持ちいいよ………」  
チュッチュッと、小鳥が餌をついばむような、軽い口づけをしながら彼女はつぶやき続ける。  
と、彼女がゆっくりと僕の手をほどいたかと思うと、そのまま僕の胸に吸いついてきた。  
氷を押し当てられたような感覚に、思わず悲鳴がこぼれる。  
だが次の瞬間には、ただの氷とは違った柔らかい感触が胸の頂をうごめき、  
その刺激がたまらなくて、僕は吐息とともに愉悦の声を漏らしていた。  
 
「あ! ううっ……」  
舌を這わせたまま、彼女はゆっくりと僕の下腹部を目指す。  
依然として氷のように冷たいが、そんなことも気にならないくらい、彼女の舌は魅力的だった。  
「ん…ふふっ……お元気ですね…もう、こんなにしちゃって……」  
「あああっ…」  
彼女は僕のへその辺りを舐めながら、目だけをこちらに向け、優しく微笑みかけてきた。  
その手はしっかりと、僕の下腹部の膨らみを撫で回している。うう……もう、何も考えられない………。  
「……しょ……っ…と………ま…何て立派なんでしょう……」  
軽く身体を起こした彼女は、僕のパジャマのズボンに手を掛け、ゆっくりと引き下ろす。  
下着に押さえつけられていたモノが、その縛めを逃れ、ピンと天井を向いたのを見て、  
彼女が感嘆の声を漏らすが、その声もまるで、どこか遠くで聞こえているようにしか感じられなかった。  
……もっと、もっとモノに刺激が欲しい。今はそれしか考えられなかった。  
 
「さて…と……ん…んふ……っ……」  
「く…うっ…はあ…っ……あっ…」  
彼女はゆっくりと身体を起こし、悠然とした表情で僕を見下ろしている。  
さらに、僕が吐息を漏らしながら、ぷるぷると歓喜に震える姿を見て、  
満足げな笑みを浮かべたかと思うと、おもむろに僕のモノを口に含ませた。  
襲い来る刺激に、たちまち腰がガクガク震えだす。  
「んぐ……ぐ…っ……っ……」  
「あ…あ……ああ……」  
根元までモノを咥えこんだかと思うと、ゆっくりと顔を前後に動かし始めた。  
その舌は左右に小刻みに震え、モノにピタピタとぶつかっている。  
思わず彼女の頭を両手で抱えながら、今までとは一味違う、新たな快感に身を震わせていた。  
 
「……っ……。凄い立派………さ…今度は…私にも……」  
モノから口を離した彼女は、ゆっくりと体を起こし、足を自らM字に開いて手招きしてくる。  
おかげで、スカートの中身が丸見えだ。彼女の下着が目に飛び込んでくる。  
――制服とほぼ同色の、薄いピンク色のショーツ――気がつくと、僕は彼女の股間の前に跪いていた。  
「…思い切って……破いちゃっても…いい、ですよ…」  
「え? あ…ええ?」  
自ら大事な場所を、異性に曝け出している興奮なのか、ほんのり頬を上気させながら彼女は言う。  
言葉の意味を一瞬分かりかね、僕は思わず問い返していた。  
「だ…だから、その……こ…こうして……」  
ビリッ  
僕の質問に、彼女は顔を真っ赤にさせながら、自分のパンストの一部をそっと引き裂いた。  
乾いた音が鳴り響く。と、同時に僕の中でも何かが”切れた”気がする。  
 
ビリビリビリッ  
 
「きゃっ! あ、ああっ!!」  
両手でパンストを引っ掴み、思い切り左右に引っ張った。  
小気味よい音が室内に響くと同時に、彼女が軽い悲鳴をあげる。  
どうやら勢い余った指の先端が、彼女のショーツに覆われている割れ目を、軽くなぞっていたようだ。  
今までとは違った彼女の声に興奮した僕は、ショーツを掴んで思い切り上に引っ張った。  
「あ! ああんっ!!」  
ショーツが割れ目に食い込み、上半身を仰け反らせながら悶える彼女。  
調子に乗ってきた僕は、そのままショーツを左右に揺さぶってみた。  
「…は! はあ……んっ……! ……!」  
彼女の目からは、涙がぽろぽろとこぼれおち、その手は漏れ出す声を抑えようと、  
必死に口元を押さえている。そんな意地らしい姿に、もっと意地悪をしてみたくなってきた僕は、  
思い切って、ショーツの上から人差し指を割れ目に潜り込ませてみた。  
もちろん、ショーツを揺さぶっている左手はそのままで。  
「…! ………ーっ!!」  
途端に天を仰いで、必死に悲鳴を飲み込む彼女。割れ目の中は、すでに熱い液体で満たされていて、  
僕の指は彼女のショーツごと、難なく飲み込まれてしまった。  
さらに中指も彼女の中に潜り込ませ、そのまま不規則にうごめかせてみる。  
「……っ! ………っ…!」  
彼女が腰をよじらせ、僕の手を掴んで首を軽く振っているが、片手は口元を押さえているうえに、  
力がほとんど篭っていない。それをいいことに、僕は彼女の割れ目を夢中になって攻め立てていた。  
 
「あ…あ…あ……ああ…あっ……」  
彼女が腰をガクガク震わせながら、断続的なあえぎ声を漏らし始めた。  
声の質が変わってきたと思った僕は、一気に指を彼女の割れ目から引き抜いた。  
「あ! はあんっ!」  
割れ目から指を引き抜くと同時に、そのまま彼女のショーツを掴みあげ、両手で引っ張ってみる。  
すでに、彼女の大事な場所を隠すという、肝心な役を果たしていないそれは、  
彼女自身からあふれる蜜を吸って、強度が増していた。  
だが僕は、委細かまわず両手に力を思い切り篭めてみる。  
 
ビ………リッ  
 
先ほどのパンストと違い、湿った音を立てながら、ショーツがようやく破けた。  
僕は再び、彼女の割れ目に指を――今度は3本一気に――潜り込ませる。  
「ああっ!! は……っ……あ、ああーーっ!!」  
指を根元まで潜り込ませた途端、彼女は手で口を覆うのも忘れ、  
あられもない声を響かせたかと思うと、そのままゆっくりとベッドに倒れこんでしまった。  
 
「はあ…はあ…はあ……。凄かったです……秀人さん……。……こんなの…こんなの、初めて………」  
肩で大きく息をしながら、彼女は恍惚とした表情でつぶやく。  
いっぽうの僕はと言えば、彼女の痴態を目の当たりにして、声も出せずに固まっていた。  
「まだ……イッて…なかったですよね……ん…ぐっ……んんっ……」  
「うっ…あ、ああ……イイ…気持ちイイよ……」  
ゆっくりと体を起こした彼女は、僕をそっと仰向けに寝かせ、モノを優しくしごきながら舌を這わせる。  
さっきの愛撫で、すでに敏感になっていたモノは、  
下半身の感覚が無くなるほどの快感を、僕の脳に送り込んでくる。  
「あ…ああっ……も、もう……っ……」  
「んふ……逃げないで…くださいね……ん…っ……んっ……」  
「くっ…ううっ……あっ……あっ……」  
あまりの心地よさに身をよじらせる僕の下半身を、がっしりと押さえながら妖しく微笑む彼女。  
さらに顔を横に向け、舌を伸ばしてモノに絡ませてきた。もちろん、モノをしごく手は止めずに。  
僕は立て続けに襲い掛かる快感に、ただ身を任せるしかなかった。  
「くふ…ん……んっ…んんっ……」  
「あ…あ…あ…ああっ……」  
今度は正面からモノを咥えたまま、片方の手で袋を撫で回す。  
しかもただ撫で回すだけでなく、時々袋の中の玉をくにゅくにゅと軽く握り締めてきたり、  
お手玉みたいに下からピタピタ突き上げたりしてくる。  
モノから伝わる刺激と相まって、気絶してしまいそうな快感が僕の脳に送られてくる。  
「も、もうダメ! イッちゃう! イッちゃうよっ!!」  
「ん〜……ん! んん! ん! んんっ!」  
両手を頭の上に回し、枕を思い切り握り締めながら叫び声をあげた途端、  
スパートとばかりに彼女の、モノをしごくスピードが増した。  
「う…ううっ!!」  
「! ん! んん…ん……んっ…んっ……ごく…ん…ごく……」  
その直後、僕は絶頂に達するとともに、モノから大量の精を吹き出させていた。  
彼女は僕の絶頂を口中で受け止め、ゴクンゴクンと咽喉を鳴らしながら、精を飲み干していた。  
 
「いっぱい…いっぱい出しましたね……。うふっ…美味し……」  
「え…あ……その…飲んじゃって…大丈夫だった……?」  
口の端から溢れる、ひとすじの白い液体を舌で舐めとりながら、微笑む彼女。  
その目には、じわりと涙が浮かんでいる。思わず僕は彼女に問いかけていた。  
「え? あ…これですか? あまりにたくさんだったから、むせちゃっただけですよ。  
それにしても……こんなの初めてです………秀人さん……」  
目をゴシゴシ擦りながら、ペロリと舌を出しながら微笑む彼女。  
と、そのままゆっくりと、僕にもたれかかってきた彼女を、僕はそっと抱きしめた。  
まだ彼女の身体は冷たいが、さっきよりも温かくなってきた、気がする。  
このまま、ずっとこうしていたい……そう思いながら、僕は彼女に口づけをしていた。  
 
 
「秀人さん……その…よろしい……ですか?」  
「……………………」  
しばらくの間、添い寝していた彼女は、おもむろに起き上がったかと思うと、僕に語りかけてくる。  
その言葉が何を意味するのか、理解するのにしばらく時間が掛かったが、  
気がついた僕は、何も言わずに顔を縦に動かしていた。  
 
「ん…んんんっ……」  
彼女は、再び勃ちあがったモノを、優しく握り締めながら僕の上にそっと跨った。  
腰をおろした彼女の中へ、モノが潜り込もうとした瞬間、  
それまで雲に覆われていた月が姿を見せ、窓から月の明かりが差し込んできた。  
月の明かりに照らされる、彼女の姿は幻想的で、まさに女神様を連想させ………女神…様?  
何故かそのフレーズが頭に浮かんだ途端、頭の中の霧が晴れていくような気がする。  
この、違和感は何なのだろう……? もう一度、違和感を起こしたきっかけの単語を思い出す。  
………女神……様? 女神サマ…?  
頭の中で、その単語が反響している。…女神サマ……いったい…誰のこと……?  
今度は色々な顔が、頭の中で映像として、浮かんでは消える。  
どの顔も、女神サマとは言えない。そう、今目の前で繋がろうとしている女性でさえも……。  
だが、あるひとつの顔が浮かび上がったとき、一気に夢から現実に引き戻された感覚を覚えた――  
 
「アイリス!!」  
 
手を伸ばして声を限りに叫ぶ。だが目の前に、そのアイリスの姿は無い。  
代わりに目に映ったのは、驚愕の顔を浮かべている彼女の姿だった。  
「どう…したのですか? 突然、叫び声なんてあげたりして…?」  
「え……あ…………」  
ゆっくりと僕にしなだれかかり、右手を僕の頬に添えながら、寂しげにつぶやく。  
その姿に、一瞬心が揺れ動いた。が、しかし。  
………そう……彼女は…女神サマじゃ…ない…。僕にとっての女神サマは……  
 
気まぐれで、人をからかうのが、大好きだけれども……。  
夜ごと僕を手玉に取るのが、心底嬉しそうだけれども……。  
どんなことがあっても、毎日僕が帰宅すると、必ず優しい笑顔で迎えてくれて……。  
何かあれば、すぐに飛んできてくれて、ずっとそばにいてくれて、  
心から僕が安心することができる女性……アイリスしか、僕の女神サマじゃないんだ……。  
アイリスじゃなきゃ、ダメなんだ……。  
 
「アイリスじゃなきゃ、ダメなんだ………」  
「そ…んな……まさか……」  
僕のつぶやきに、彼女は信じられないという顔で答える。  
確かに…確かにここまでシて、今更とも思う…思うけれど、やっぱり、やっぱりアイリスじゃないと……。  
 
「ゴ、ゴメン。でも…僕にはやっぱりこれ以上は……?」  
「何で…どうして……嘘…人間が…自力で………」  
下を向き、押し黙る彼女に詫びの言葉を述べようとして……途中で止まってしまう。  
何だか……様子がおかしい、ぞ? 僕は彼女の顔を覗き込もうとして……  
「許さないわよ」  
「ぐ、ぐえっ!?」  
彼女の口調が急変し、いきなり僕の首を絞めてきたのだ。  
不意を付かれた僕は、転がりながら懸命にふりほどこうとするが、  
見かけとは裏腹に彼女の力はとても強く、ビクともしない。  
 
ガンッ  
 
足をばたつかせた途端、彼女からギプス目掛けて膝蹴りを食らう。  
痛さのあまり涙があふれるが、逆に痛すぎて悲鳴はおろか、うめき声すら出すことが出来なかった。  
「ふう……たかだか人間風情がまさか、ね。そう、私がただ失敗しただけ、よ。  
………βηβαξζφχωθζφχησ、ξαζφχαζφχησασ」  
僕を見下ろす彼女は、ブツブツ文句を言ったかと思うと、何事かつぶやきだした。  
その言葉は、さっき上手く聞き取れなかった言葉に似ている、気がする。  
などと思う間もなく、彼女が僕に微笑みかけてきた。そう、とても安心できる、あの微笑みで……。  
…何で、何であんなふうに抵抗しちゃったんだろう? こんなに安心できる女性なのに……。  
「うふふ……。そう…恐れることなんて、何もないのよ……」  
「……う…うん……」  
耳元で、僕を安心させようと、そっとささやく彼女。  
そう、まるで怯える子どもを優しく諭す、母親みたいに……。  
 
 
「な、だ、誰?」  
彼女の瞳が突然、昼間の猫のように細くなる。と、同時に何やら慌てふためいた様子で振り返った。  
そこには、いつからいたのかもう一人、看護婦が立っている。顔は……暗くてよく見えない。  
「そ…そんな……ここに、入ってこれるなんて……? ………まあいいわ、誰であっても。  
これからがいいところなんだから、もう誰にも邪魔はさせない。邪魔は出来ない。  
そこでじっとしていなさい……………………ψχηηβζφχησχαξζφξχ……」  
一瞬、戸惑いを見せる彼女だったが、すぐに冷静に戻り、  
鼻で笑ったかと思うと、もう一人の看護婦に向かって、何か話しかけた。  
言葉の意味は………まったくわからない。まあ、わかる必要も無いけれど。  
「ふふっ……そう、いい子ね……。…………さあ、続きを楽しみましょう?  
&βηβαχ&βρβηησ、ρσ&βθυβωξαξχρσασ……。  
ここまで来て、はいさようなら………なんて野暮なことは、言わないでしょ?」  
微動だにしない看護婦を見て、嘲笑の笑みを浮かべたかと思うと、僕に向き直って艶然と微笑む彼女。  
……ゆっくりと開いたその口に、およそ人間のものとは思えない、異様に長い犬歯、というか牙が見える。  
え、ええっ!? まさか…まさか、彼女って……!?  
「大丈夫……痛いのは最初に少しだけだし、命まで奪ったりなんてしないから。  
ただ……ちょっと私の言うことを、何でも聴いてくれるようになるだけ……」  
僕を見つめ、舌なめずりをする彼女。……こ、これってやっぱり?  
そう思った僕は、どうにか逃げ出そうとするが、指一本動かすことが出来ない。  
「無駄よ…おとなしくしなさい。……………」  
艶然とした中に、嘲りが混じった笑みを浮かべながら、彼女は大きく口を開く。  
そしてそのまま僕の咽喉元に………。  
 
「はい、そこまで」  
「な、何!?」  
突然、聞き覚えのある声がしたかと思ったら、彼女が驚きの声をあげる。  
恐る恐る目を開けてみると………  
「ア、アイリス!!」  
そう、そこには僕の女神サマ、アイリスが――何故か看護婦姿で――  
まるで猫にそうするように、彼女の首根っこを掴みあげていたんだ。  
「な……何で…何で私の術が……!? な!? う、動かな!? あ、あなた、私に何をしたの!?」  
「ん〜そうねえ。あなた、人間じゃない気配出しまくりだったから、  
念のため、この部屋に結界張らせてもらってたの。どうやら、大当たりだったみたいね」  
首を巡らせ、どうにか声を絞り出す彼女。驚きのあまり、その顔を引きつらせて。  
対照的に、アイリスはけろりとした顔で、『雨降りそうだから傘用意した』くらいの感覚で答えた。  
た、助かった……。そう思うと安心感が湧き出し、安堵のため息が漏れる。  
……それにしても、いつの間にそんな結界なんて張ってたんだろう……?  
 
「でも、まさか御主人サマに夜這いを掛けてくるなんて、ねえ……どうしてくれようかしら……」  
「ひ……ひいっ…」  
アイリスが、彼女を見下ろしながらつぶやく。  
一応、笑顔ではあるのだが、その目はまったく笑っていやしない。  
それどころか、あからさまに怒りの気配が感じ取れる。  
……アイリスも、こんな顔することあるんだ……初めて見た。  
アイリスが目の前にいることで、精神的に落ち着いてきた僕は、そんな場違いな感想を心に抱く。  
いっぽう、僕とは対照的に動揺しきっている彼女は、  
その低い声を耳にしたとき、思わず吐き出そうとした息を飲み込んでいた。  
……確かに、面と向かって言われると、ちょっと怖い……かも。  
目をすうっと針のように細くしているアイリスの顔を見て、僕は思った。  
 
「さて……いつまで御主人サマに、抱きついているのかな? そろそろ離れてもらいましょうか」  
「……………」  
アイリスのつぶやきに、首根っこを掴まれたままの彼女は両手をあげ、  
無言で何度も大きく頷きながら、ゆっくりと僕から離れる。  
その姿はまるで、ライオンかトラを目の前にして震える小鹿のようだった。ちょっと可愛そう…かも。  
「そう……いいコね…」  
「あ…あ……ああ…ゆ……ゆる…」  
アイリスは、床をじっと見つめ、ブルブル震えている彼女の顎を、  
親指と人差し指で軽くつまみあげながら、無理やり目を合わさせた。  
彼女は歯をカタカタと打ち鳴らし、途切れ途切れに哀願の言葉を口にする。  
こうなってしまうと、逆に目を逸らすのが恐ろしいのだろう。  
涙をポロポロこぼしながらも、その目はアイリスをじっと見つめていた。  
だが、それにしても……別に、取って食べるわけじゃないだろうに、怯えすぎでないかな?  
などと思っていた僕は次の瞬間、思い切り息を呑んだ。アイリスがいきなり、彼女のくちびるを奪ったからだ。  
突然の出来事に、彼女の震えが止まった。その目はこれ以上ないくらい、大きく見開いている。  
 
「………行きなさい」  
「…………え!?」  
くちびるを離し、アイリスが顎をしゃくらせて扉を示す。  
彼女は心底驚いた顔で、アイリスを見つめ返し、聞き返していた。確かに、意外な展開だ。  
「聞こえなかったのかな? 今すぐ消えなさい、と言っているんだけど?  
それとも……お仕置きされたいのかな? それならそれで、構わないけれど…ね」  
「……………」  
彼女の問いかけに、声の抑揚なしに答えるアイリス。……そのほうがかえって恐ろしい。  
恐ろしかったのは彼女も同じだったようで、無言で首を横にブルンブルンと振りつつ、  
ベッドに脱ぎ散らかしていた衣服を腕に抱きかかえ、生まれたままの姿で部屋から駆け出していった。  
余程慌てていたのだろう、ふとベッドの上を見ると、ナースキャップと僕が破り捨てた下着が残っている。  
 
「さて、と……御主人サマ…」  
僕のほうをじっと見つめ、ゆっくりと近づいてくるアイリス。その目は……怒っていない、かな?  
「…あ、ありがとう、アイリス……。助かったよ……」  
僕がアイリスに向かって右手を伸ばし、礼の言葉を口にすると、  
アイリスはにっこり微笑みながら、無言で僕の手を握り返してくる。  
が、いきなり僕の上に馬乗りになったかと思うと、  
両手を僕の頬に優しく添えながら、何も言わずにくちびるを重ねてきた。  
ああ……やっぱり、やっぱり僕の女神サマだ………。  
アイリスの温もりを感じた僕は、それを全身で確かめようと、思い切りアイリスを抱きしめていた――  
 
「ん……っ………大丈夫だった? 御主人サマ?」  
「え? ああ、うん」  
くちびるを離し、アイリスが僕に問い掛けてきた。  
「そう……よかった……」  
「………でも…えっと…その………………ところでどうしたの? その格好?」  
心底安心そうな顔をするアイリスに、、色々な疑問が頭の中を駆け巡っていたが、  
一番疑問に思っていることが、自然と口をついて出た。  
 
「ん? 何だか御主人サマ、この格好を見てみたそうだったからな。………似合わない?」  
「い、いや、そんなことないよ、よく……似合ってる、よ」  
少し照れくさそうに顔を逸らして答えながら、  
それでも目だけは、僕の顔色を伺うようにこちらに向けて、アイリスは問いかけてくる。  
僕はアイリスの、滅多に見せない仕草に、ドキッとしながらもどうにか答えた。  
……でも、この答えって、褒めてるの…かな?  
「あはっ、うっれしいっ。さすが御主人サマ……ありがとう………ん…っ……」  
僕の答えに、アイリスは満面の笑みを浮かべて再び、くちびるを重ねてきた。  
………ま、喜んでいるのだからいい、か。  
 
「さあってと。……それじゃ御主人サマ、検温の時間ですよ〜♪」  
くちびるを離したアイリスは、ゆっくりと上半身を起こしながら、楽しそうに微笑む。  
まったく……何も看護婦になりきらなくても……あ〜あ、尻尾がパタパタ揺れてるし……え? 検温?  
尻尾と検温? も、もしかして………。  
「ん…っ………は、あああっ……」  
「あっ! あ…ああ……」  
予感は的中したようで、アイリスは例によって、自らの尻尾を僕のすぼまりに突き入れた。  
僕は突然の刺激に声が出せず、金魚みたいに口をパクパクさせながら、あえぐことしか出来なかった。  
 
「ね…御主人サマ……私の胸…揉みたい……?」  
「…あ……う…ん……」  
アイリスが腸内に尻尾を潜り込ませながら、話し掛けてきた。  
尻尾の先端が腸内の襞をめくれ返すたびに、何ともいえない刺激がこみあげ、  
無意識のうちに下半身がビクビクと痙攣し、脳には快感として伝わってくる。  
そんな快感に溺れながらも、僕はアイリスの問いかけにどうにか頷いた。  
「そ……。それじゃあさ、御主人サマ……脱がして………」  
「うん……しょっ……と……」  
軽く頷いたアイリスは、顔をほんのり赤く染めあげながら、耳元でささやく。  
僕はその声に操られているかのように、ゆっくりとアイリスの服のボタンに手を伸ばし、  
もどかしい手つきで、ひとつひとつ外し始めた。  
「きゃっ」  
何個目かのボタンを外した途端、アイリスの形のいい胸が、服を押しのけて姿を現した。  
アイリスは軽く悲鳴をあげて、照れくさそうに二の腕で胸を隠そうとする。  
………下着、付けてなかったんだ………。もしかして、下も…かな?  
そんな何気ない仕草を見て、よからぬ想像を膨らませるとともに、興奮の度合いが増してきた僕は、  
アイリスの腕をそっと押しのけて、目の前でゆらゆら揺れている、胸の頂に吸いついた。  
「あ! ああんっ! ご、御主人サマんっ! 胸、胸、揉むって! あ、ああっ!!」  
たちまち甲高い声をあげるアイリス。さらに手をパタパタ動かそうとするが、  
僕がそれぞれの手首を、しっかりと握り締めているため、それもままならないようだ。  
 
「ああっ! ああん! はああっ!!」  
軽く頂に歯を立ててみると、うっすらと涙を浮かべながら、上半身を左右に激しく揺り動かし始める。  
もちろん、それくらいで僕が口を離すはずがなく、しっかりと吸いついていた。  
…………というか、これって何だかアイリスが、自ら喜んでやってるみたい。  
恍惚とした表情を浮かべ、口をパクパクさせるアイリスの顔を見て、僕はそう思い始めていた。  
「! くっ! アイリス! アイリスッ!!」  
と、突然すぼまりの奥から、今までとは比較にならないほどの、強烈な刺激が襲い掛かり、  
全身をガクガク震わせながら、思わず叫び声をあげてしまう。  
弾みで胸から口を離してしまったが、そんなことを気にしている余裕なんて、とても無かった。  
「んん〜? あ…ああ……んっ……。そういえば…お熱を…測って……たんだっけ…あんっ……。  
……どうやら…平熱……かな? よく…分からない……な……。  
こっちで……調べて…みよう……かな? あ、んっ……」  
「く…あ……ううっ…ア…アイリスゥ………」  
アイリスは僕の叫び声を聞いていたのかいないのか、艶っぽい声をあげたかと思うと、  
尻尾の動きをピタリと止め、少し困ったような顔を見せたかと思うと、モノを後ろ手に軽く握り締める。  
……よく分からないのだったら、検温する意味がないじゃないの……。  
などと冷静に答えられるわけもなく、僕はひたすら上半身をビクつかせて喘いでいた。  
「うふふっ………さっすが御主人サマ。準備は万全、みたいだねっ……」  
ベッドの上に立て膝をつき、モノにまたがろうとしているアイリス。……あれ?   
「んん〜? どうしたのかな〜御主人サマ? 何だか不思議そうな顔しているよ〜」  
「え…あの……アイリスの下…そのままで大丈夫かな、と思って………」  
僕の表情の変化を読み取ったアイリスは、再び両手で僕の両頬を挟む込ませながら、問いかけてきた。  
素直に僕は、思ったことを口にした。まさか……本当に、上下とも下着つけてなかったの?  
いや、それ以前に、ストッキング穿いたままじゃないの。  
 
「ああ……そんなの……大丈夫だよ。……ほら」  
「あ…」  
言いながら、アイリスは立て膝のままで、こちらに擦り寄ってきたかと思うと、  
ゆっくりとスカートを捲り上げた。思わず間抜けな声を漏らす僕。  
アイリスは、今日は珍しくパンストではなく、ガーターベルトを付けていたのだ。  
そして、下着は……何も付けていないようで、ヘアと割れ目が見える。  
久しぶりに見るアイリスの割れ目は、すでに蜜がつつっと太ももまで垂れ、ピクピクと震えていた。  
……なるほど。これなら、このままでも大丈夫か。……って、そこでなくて!  
「あのう……いつから、下着付けてなかったの?」  
「んふっ。そんなこと聞いて、いったいどうするつもりなのかな?  
……大丈夫、この病院に来てから、だよ。……結構、お尻触ってくる人がいたから、ドキドキしてたけど」  
僕の問いにアイリスは微笑みながら答え、最後に頬を赤く染めながらポツリとひとこと。  
確かに、そんなこと聞いてどうするつもりだったのだろう。僕も何故か顔が熱くなってきた。  
「あ、分かった。せっかくいつもと違う格好してるから、  
いっそ、ストッキング破りたいとか思ったんでしょ? 残念でした♪」  
黙り込む僕を見て、口元を手で押さえながら、コロコロと笑うアイリス。……何というか。  
「いや、もうさっき破いてたし」  
「え?」  
僕のひとことに、アイリスが笑いをピタリと止め、  
さっき彼女に見せたのと、同じ表情でじっと僕を見下ろし始めた。……し、しまったあ!!  
 
 
沈黙が場を支配している。その間、僕はアイリスの目をじっと見つめていた。  
いや、性格には目を逸らすことが出来なかったのだ。……さっきの彼女の気持ち、よく分かる気がする。  
「さて……どういうことか、ゆ〜っくり説明してもらいましょうか。ね、御主人サマ?」  
アイリスが沈黙を破り、抑揚の無い声で喋りだした。………凄く怖いです、はい。  
見つめあっていた時間は、恐らく1分も無かっただろう。だがその1分が、僕には何時間にも感じられた。  
「あ…いや……その…えっと…あう……」  
「どうしたの? まさかとは思うけど、私には話したくないと言うの?」  
しどろもどろの僕を見て、アイリスがくちびるを歪めながらポツリとひとこと。  
僕は必死に首を横に振って、話したくないわけではないことを、必死にアピールした。  
 
そう、話したくないわけではなく、話せなかった、のだ。  
あの時、彼女に対して、何をしたのかは覚えていても、  
何故そういう行為に及んでしまったのかが、どうしても思い出せなかった。  
無理やりに表現してしまえば、意識のある夢遊病、とでも言えばいいのか。  
 
「ふうん、そう……大変だったね………」  
「ア、アイリス………」  
僕の説明を黙って聞いていたアイリスは、聞き終えると両手で僕の頬を抱え、  
そっと額に口づけしながら、つぶやいた。ああ、よかった。信じてくれた………と思ったが、  
「…って、そんな見え透いた嘘、信じるハズないでしょ。本当のことを白状なさいな」  
「あうっ!! そ……んな! …あっ! ほ…ほんと…くううっ!!」  
不意にアイリスは、僕に潜り込ませていた尻尾の動きを再開させ、  
さらには後ろ手に握り締めたモノを、ゆっくりとしごき始めてきたのだ。  
下腹部から伝わる刺激に、僕は思わず上半身をビクつかせ、あえぎながらも答えた。  
「ほらほら。早く言わないと、もっと酷い目に遭っちゃうぞ〜♪」  
「あく! ぐ! ああっ!!」  
目をぎゅっと瞑り、歯を食いしばって必死に刺激にこらえようとする僕を見て、  
アイリスは心底嬉しそうな声をあげて、尻尾と手を動かし始める。  
しかもいつものことながら、実に絶妙な力加減だ。強すぎず弱すぎず……。  
…………でも…でも、本当のコトを言っているのに、どうしたら信じてくれるんだよ……。  
 
あれからしばらくの間、僕はアイリスに弄ばされ続けていた。  
が、そのアイリスの愛撫が、彼女の悲鳴とともにピタリと止む。  
訝しんだ僕が、そっと目を開けてみると、目の前には完全に濡れそぼった、  
アイリスの割れ目が、ぱっくりと口を開いてピクピク震えている。  
「…ああんっ! 御主人サマ! 御主人サマあんっ!!」  
まるで、何かに吸い寄せられるかのように、僕はアイリスの股間に顔を埋め、舌を伸ばす。  
僕の舌が、アイリスの割れ目の中の、ピンク色の襞に触れたとき、アイリスはこらえきれなかったのか、  
手の動きがピタリと止まり尻尾もすぼまりから離れ、ただ叫び声をあげていた。  
そんなアイリスの姿を見て興奮してきた僕は、ゆっくりと上半身を起こしてアイリスを逆さに転がした。  
「んっ…ん……んんんっ……」  
「あああっ! 御主人サマ! ああんっ!!」  
アイリスを、いわゆるまんぐり返しの状態にした僕は、夢中になって、  
割れ目の中へと舌を潜り込ませ、湧き出る蜜を咽喉を鳴らして飲みくだす。  
僕を弄るのも忘れ、アイリスはベッドのシーツをぎゅっと握り締めながら、あえぎ続けていた。  
「……ん?」  
「あ! イ、イヤ! 見ないで! 見ないでえっ!!」  
ふと下を見ると、アイリスの肩甲骨あたりが、ピクピクと震えている。  
かと思ったら一部がポコッと盛り上がり、皮が破れて黒い小さな爪みたいなものが生えてきた。  
不思議に思った僕は、爪を指で軽く突ついた。その途端、アイリスは目を見開いて叫び声をあげる。  
見る見るうちに、黒い爪はどんどん伸び続け、最後には腕くらいの長さまで達した。  
 
バサッ  
 
そんな音がしたかと思うと、爪が3本くらいに分かれた。その間には薄い膜が張ってある。  
……へえ………長いこと一緒にいるけれど、アイリスが翼を広げる瞬間って、初めて見た………。  
「う……うう…う……ううう………。あ…あっ! ああっ! あああっ!!」  
何故かアイリスは、真っ赤に染めあげた顔を両手で押さえ、すすり泣いている。  
一瞬不思議に思い、手を止めようかとも思ったが、割れ目からあふれんばかりに蜜が溢れるのを見て、  
僕の理性は吹き飛び、気がつくと再びアイリスの割れ目に舌を這わせていた。  
 
「あは! ああっ! あ…ア…アア……ア……………はあんっ!!」  
アイリスが、舌をだらりと伸ばして、断続的なあえぎ声を出し続ける。  
これは……もしかすると、初めて僕より先にイッちゃってくれるのかも………。  
などと思いながら、悠然とアイリスの豊かな胸を揉み始めた。  
その刺激に耐えられなかったのか、アイリスは上半身を震わせて叫んでいる。  
よし……もう一息だ………。などと興奮しきった頭のどこかで、妙に冷静に考えていると――  
「はあうっ!」  
予期せぬ刺激に、間の抜けた声を漏らす。ふと見ると、アイリスが手を伸ばして僕のモノをしごいている。  
すでにアイリスの痴態を見て、視覚的に興奮しきっていた僕は、絶頂寸前だった。  
「ああっ! ア…アイリスゥッ!!」  
思わず、アイリスから逃れようと腰を引こうとするが、いつの間にかアイリスの翼が僕の腰に回っていて、  
がっしりと抱きしめるような姿勢になっていた。あ……もう、ダメ…だ………。  
「く…うううっ!!」  
ゾクゾクするような刺激が背筋を伝わり、全身がビクビク震えたと思うと、  
僕はうめくような声を発し、アイリスの背中に向かって精を放出していた。  
「あ! ああっ! イッちゃうっ! イッちゃううっ!!」  
絶頂に達したはずみで、アイリスの中に潜り込んでいた指を、  
思わず中の襞に引っ掛けた瞬間、アイリスはあられもない声とともに絶頂に達していた。  
その瞬間、僕を捕縛していた翼と、僕の腕に絡んでいた尻尾の両方に力が篭り、  
まるで全身が絞られているような錯覚を覚えた僕は意識を失い、  
そのままアイリスの股間に顔を埋めていた――  
 
 
「…サマ………んサマ……御主人サマ…」  
「ん? あ…アイリス? ん? な、何これっ! ちょ、は、はずしてよっ!!」  
どこか遠くから、アイリスが僕を呼ぶ声が聞こえたような気がして、目が覚めた。  
目の前には、アイリスの微笑む顔がある……って、何で逆さなの?  
などと思っていたが、今の体勢に気づいて、思わず叫び声をあげてしまう。  
 
僕が気を失っている間に、アイリスは先程されたお返しとばかりに、僕をまんぐり返しの姿勢にしていた。  
ここまでは一応一緒、なのだが、一緒で無い点がいくつかある。  
まず、僕が背中側からアイリスを攻めていたのに対して、アイリスはお腹側に回りこんでいる。  
骨折した足は、一応吊るしてくれているから痛くは無いんだけど、それって気づかってくれている、  
というよりも、逃げられないように固定された、と表現したほうが正しいのかもしれない。  
それより何より、最大の相違点は――後ろ手に縛り上げられていること――だった。  
 
「だあめ♪ だって御主人サマってば、私の質問に答えるどころか、エッチで誤魔化そうとしたんだもの」  
「そ、そんな……あうっ……」  
アイリスは舌をペロリと出して、例の悪戯っ娘の顔で僕の懇願を断った。  
僕は絶望の声を漏らすが、いきなりモノを咥えこまれた刺激に悶え声になってしまう。  
……っていうか、人の話を信じないでエッチに走ったのは、いったい誰なんだよ。  
悶えながら、心の中でそうつぶやいたが、さすがにお返しが怖くて、口にすることは出来なかった。  
「んふ……ん…っ……んんっ……。さっすが御主人サマ、もうこんなになっちゃったよ♪」  
「あ……ああっ…」  
モノから口を離し、舌を伸ばして尿道口を舐めすさりながら、僕に笑いかけるアイリス。  
あまりの気持ちよさと、艶然としたアイリスの表情に、心臓が痛いくらいに脈を打っている。  
「んん〜? 御主人サマ、こういうの好きみたいだねっ♪  
ほらほら見て。小さい御主人サマが、ピクピクしているよ♪」  
「く…あ………いや……」  
嬉しそうな声で、モノをちょんちょんと突つきながら、アイリスは僕の顔をじっと見つめる。  
羞恥のあまり、反射的に目を瞑ってしまうが、一瞬だけ視界に飛び込んできた僕のモノは、  
アイリスの言葉どおり、ビクンビクンと脈を打っていた。  
 
「うふふっ。お目々瞑っちゃって、ホントかっわいい♪ こっちのほうも、ヒクヒク震えてるよ……んっ」  
「はあうっ!?」  
腰が痺れるような、突き抜けるような快感が全身を襲い、思わず声が漏れる。  
そう、アイリスは僕のすぼまりに舌を潜り込ませようとしていたのだ。  
「き……汚いよ…ア、アイリス……あうっ……」  
「んん? 御主人サマに汚い所なんて、あるはずないでしょ……ん…んっ……」  
普段から尻尾で貫かれているとはいえ、さすがに、口ですぼまりを弄られるのには抵抗があった。  
だがアイリスは、世の男たちが聞いたら泣いて喜びそうな台詞を、平然とつぶやく。  
 
よく小説や漫画などで、そういう表現を目にすることはあったが、  
正直『そんなのあるわけないだろ』と思っていた。  
でもアイリスは事も無げにそう答えた。いや、答えてくれた。  
やっぱり…やっぱり、僕の女神サマだ………。  
 
「あれ? 御主人サマ、泣いているけれど、そんなにイヤだったあ?」  
「う、ううん……アイリス……あ………」  
心配そうなアイリスの声。目を開けると、そこには不安げに僕を見下ろすアイリスの顔があった。  
僕はアイリスに、『愛してる』と言おうとしたが、今置かれている状況を思い出して、言葉を飲み込んだ。  
さすがにこんな状況で、そんなこと言おうものなら、次は何をされるか分かったものじゃない。  
「どうしたの? もしかして漏らしたくなった、とかじゃないよね?」  
「ち、違うよ……」  
言葉を詰まらせる僕を見下ろしながら、アイリスは問いかけてくる。  
ぶっきらぼうな口調ではあるが、僕を心配してるときはいつもそうだ。……多分。  
「そっか。泣くほどよかったんだ……うっれしいっ。……ん…んんんっ……」  
「あ、ああっ!!」  
アイリスの問いかけに、軽く首を振って答えるが、その途端にすぼまりからの刺激が再び襲い掛かり、  
僕はあられもない声を出して、必死に身をよじらせて思った。……前言撤回。やっぱり悪魔、だ。  
 
「んふ…んっ……ん…んんんっ……」  
「あ…あ…ああ……あ…」  
両手で僕のお尻を左右に押し広げ、舌をすぼまりの奥まで潜り込ませようとするアイリス。  
僕は、何とも言えない刺激に全身を震わせ、歓喜の声を漏らし続けていた。  
「ん………しょっと」  
「は? ああ?」  
すぼまりからの刺激が突然中断され、思わず声が漏れ出してしまう。  
ふと顔を上げると、心底嬉しそうなアイリスの顔が見える。  
「ふふっ。御主人サマ、すっかりお尻が気に入ったみたいだねっ。ホントいやらしいっ」  
「あう……ア…アイリスう………」  
お尻の周りをチロチロと舐めあげながら、アイリスは言った。  
微妙な心地よさに、思わず涙がこぼれてしまう。  
「うふふふっ。かっわいい……じゃあ…これはどうかな? ん…ん……んふっ…」  
「はああっ!! アイリスゥ!!」  
僕の涙を目にしてにこりと微笑んだアイリスは、  
おもむろに袋を口の中に含ませたかと思うと、顔を左右に振り始めた。  
勢いで、袋がアイリスの歯に当たるたび、電流でも流し込まれたかのような刺激が僕を襲う。  
次々と襲いかかる刺激に、僕はなす術も無く翻弄され、歓喜の声を漏らしていた。  
 
「ん〜〜〜ん。ん〜んっ……んっ…」  
「あ…あ…ああ……あ…」  
口の中でコロコロと、僕の袋と袋の中の玉を弄ぶアイリス。……飴玉じゃ、無いんだけど。  
もちろんそれだけではなく、モノを右手でしごきあげるのも忘れてはいない。  
さらに左手の指は、菊の門渡りやすぼまりの辺りを、さわさわと撫で回している。  
既に僕の思考回路は完全にマヒしていて、呆けたように吐息を漏らし続けるしかなかった。  
も…ダメ……イッちゃう…イッちゃ………  
「…っと」  
「あ? ああ?」  
絶頂に達する寸前に、アイリスがぱっと僕から離れる。  
思わず僕は目をカッと見開き、アイリスをじっと見つめていた。  
「ふふっ。どうしたの、そんな顔しちゃって? そんなにイキたいの?」  
「……う、うん……」  
アイリスの問いかけに、力なく答えた。でも、まだ頭がもやもやしている。  
「そっかあ……どうしよっかなあ?」  
「そ、そんな………お願い…イカせて………」  
大げさに顔を傾げながら、アイリスは考え込んでいる。  
――いや、多分フリなのだろうが、それを指摘する余裕はとてもじゃないが無かった。  
僕は下半身をブルブル震わせて、必死にアイリスに頼み込んだ。  
「………でも、ダ〜メ。これはあくまで、御主人サマへのお仕置きなんだから。  
簡単にイッちゃったら、お仕置きにならないでしょ?」  
「え? そ…そ、それって………ああうっ!」  
にっこりと微笑みながら、アイリスはそら恐ろしいことを僕に向かって語りかける。  
反射的に質問しようとした僕だが、モノを指でピンと弾かれ、思わず悲鳴をあげてしまった。  
 
「あふう…あふう……」  
……あれからアイリスは、寸止め生殺しを少なくとも10回は繰り返していた。  
正確な数は……もう、数えている余裕など無かった。  
涙があふれ、だらしなく開いた口からはよだれが垂れていたが、気にしちゃいられない。  
いつの間にか、窮屈な姿勢から開放されていたが、それも気にならない。  
僕はただひたすら、アイリスがもたらす刺激に反射的に、あえぎ声をあげ続けていた。  
「ん〜、御主人サマ〜、反省してますか〜?」  
「……う…うん…」  
アイリスが手でモノをしごき、胸の頂に舌を這わせながら、僕に語りかけてくる。  
多分今なら、アイリスのどんな言葉にも、首を縦に振ってしまうことだろう。  
何に反省しているのか、自分でも分からないまま、アイリスの言葉に素直に頷いていた。  
「ふふっ…そう……。…ん……ん…んん…んっ……ん…」  
「は! ああっ! あ! あああっ!!」  
僕の言葉を受けて、アイリスは満足そうに笑みを浮かべたかと思うと、  
モノを根元まで一気に咥えこみ、激しく顔を上下に揺さぶり始めた。  
今までの、付かず離れずのような微妙な刺激とは全然違った強烈な刺激に、  
目の前が真っ暗になり、チカチカと火花が飛び散る錯覚を覚える。  
「も、もうダメ! イッちゃう! イッちゃううっ!!」  
「ん……ん…ん……んっ…んっ…………」  
僕はまるで、子どものように泣き叫びながら、アイリスの口中に精を放っていた。  
アイリスはモノの先端部分を、チロチロと舌で舐めまわしながら、  
まるで僕から精を搾りつくそうとしているかのように、優しくモノをしごき続けていた。  
 
「ん…っ……たくさん…出た………ね…。んふふっ……」  
モノからの勢いが収まったころ、アイリスはようやくモノから離れ、こちらを向いてきた。  
「御主人サマ……ん……んんっ…」  
「ん…? ぐ? んんっ!?」  
ゆっくりと僕の上に馬乗りになり、両手で僕の頭を抱えながら、くちびるを重ねてくるアイリス。  
どろりとした物が、アイリスの柔らかい舌とともに潜り込んできて……何? この味?  
苦いような、しょっぱいような……こ、これってもしかして………僕の…アレ?  
「ん……ん…んっ……」  
「ふん……ん…んっ……」  
アイリスはぱっちりと目を開き、僕の目をじっと見つめている。  
その間にも、アイリスの口から苦しょっぱい液体が、どんどん流し込まれてくる。  
苦しさにむせ返るが、口を塞がれているため、吐き戻すことも出来ない。  
思い切って、僕は咽喉を鳴らしながら飲み下した。  
咽喉を通るときに、生臭さがツンと鼻まで届き、思わず涙がこぼれる。  
そんな僕を、アイリスは恍惚とした表情でじっと見つめていた――  
 
「ん…っ。御主人サマ……怒ってる………?」  
僕が口の中に満ちていた精をどうにか飲み下した頃、ようやくアイリスはくちびるを離した。  
上目遣いにこちらを見つめるその目は、悪戯をし過ぎて親に侘びを請うている子どものそれだ。  
何だか…アイリスがそんな目をするのって……初めて見た気がする。  
そう思った僕は、返事の代わりにアイリスをぎゅっと抱きしめ、再びくちびるを重ねていた。  
 
「ねえ……アイリス?」  
「なあに? 御主人サマ」  
アイリスのさらさらした髪をそっと撫でながら、僕は話しかけた。  
僕の胸に顔を埋めていたアイリスは、ぱっと顔をあげて僕に微笑みかけてくる。  
 
あれからアイリスは、僕の姿勢を直してくれたかと思うと、  
顔を真っ赤にさせながら、「私にも……シテください」と頼み込んできた。  
儚げな表情を見せる、女神サマの頼みを断れるはずもなく、僕はアイリスを抱いた。  
………いや、足が足だからアイリスが上になっていたんだけど。  
ついでに言ってしまえば、やっぱり長持ちしたのはアイリスだったりするし。トホホ……。  
 
「どうしたの? 御主人サマ?」  
「あ、ああそうだ。あのさ……アイリスは、彼女が人間じゃない、って分かってたんだよね?  
彼女って、いったい何者だったの? やっぱり吸血鬼、だったのかな?」  
しばし違う世界に行ってた僕を引き戻す、アイリスの声。  
我に返った僕は、さっき疑問に思っていたことをアイリスに問いかけた。  
まあ彼女の場合は、どう考えても吸血鬼としか言いようが無かったけれども。  
「ん……さっき言った『人間じゃない気配を出している』ってのは、正確な表現じゃなかったな。  
彼女の場合、生気がまるで感じられなかったんだよ。普通の生き物なら普通に感じる気を、ね。  
それで少なくとも人間じゃない、とは思ってたんだけど、詳しいことは私にも分からないよ。  
ただ、念のためキスしてみたら、今まで感じたことがないイヤな気分になっちゃったし、  
催眠術みたいに御主人サマを魅了させたりしてたし、牙は生やしていたし……  
吸血鬼なんて見たこと無いけれど、多分御主人サマの推測で正解だと思う。私もそう思ったし」  
やっぱりそう…なのか。って、アレ?  
「あっ…キスしたのって、そのためだったんだ」  
「おいおい、何のためだと思ってたんだ? 私は少なくとも、そっちの趣味はないぞ」  
口をついて出た言葉に、アイリスがジト目でこちらを睨む。あ、あははは。  
 
「で、でもさ…彼女、放っておいていいのかな?」  
「いいよ別に。御主人サマさえ襲わなければ、彼女が誰を襲おうが、私の知ったことじゃないもの」  
何とか話を誤魔化そうと、別の話題を振ってみる。するとアイリスは、投げやりな口調で答えた。  
……よかった、どうにかはぐらかすことができた。  
それにしても、かなりクールな反応……って、ぼ、僕は一応守ってくれるんだ。  
………って、よく考えたら今回も、僕のことを守ってくれてたんだよね。やっぱり僕の女神サマ、だよ。  
などと、ちょっと胸にジーンときてしまったりして。ただ、ひとつだけ、ねえ……。  
「正直言って、もう少し早く来て欲しかったけど、いつからこの部屋にいたの?」  
まあ、ボディーガードじゃないんだから、来てくれただけでも嬉しいことは嬉しいんだけれど。  
「ん〜。彼女が御主人サマの服を脱がしているあたり、かな?  
魅了されてたせいか御主人サマ、結構間抜けな顔してたから、見ていて面白かったよ」  
な、何だよ。じゃあ、じっと見ていたのかい。まったく、性質の悪い女神サマ、だ。  
「でもさ……御主人サマ、あのとき『私じゃなきゃ、ダメなんだ』って言ってくれたよね。  
すっごい、嬉しかったよ。御主人サマ………大好き………」  
そう口走ったかと思うと、アイリスは僕にしがみつき、口づけをしてきた。  
僕もアイリスをしっかりと抱きしめ返した。……ああ、女神サマがそばにいてくれると、やっぱり安心だ……。  
今夜の出来事が、まるで走馬灯のように思い出される……あれ? ちょっと待てよ?  
 
「あ、あのさ。アイリスは確か、『僕が彼女に着替えさせられてる』ときから、ここにいたんだよね?  
じゃあ、僕が彼女のパンストを破いてたのも、見ていたんじゃないの?」  
「……………………………………………あ」  
僕の言葉に、アイリスはしばし沈黙していたかと思うと、ペロリと舌を出して悪戯っ娘の笑みを浮かべる。  
じゃ、じゃあやっぱり、知ってたんじゃないか!  
「ア、アイリス〜」  
「あはは、ま、何だかんだと楽しめたから、よかったじゃない。  
そ、そろそろ夜が明けちゃうから、一旦帰るわ。それじゃ、またねっ」  
僕が身体を起こそうとするや否や、アイリスはぱっと身を翻した。  
そのまま看護婦の制服を羽織って、部屋をあとにしようとする。やっぱり前言撤回、悪魔決定。  
「あ…御主人サマ……」  
「何!」  
アイリスが、扉から顔だけを出して、こちらを見ながら僕を呼ぶ。思わず声が荒くなってしまう。  
「あのさ……今夜もまた…この格好で来たほうが……いい?」  
軽くうつむきながら、アイリスがぽそぽそとつぶやいた。その顔は、真っ赤に染まっている。  
………う…やっぱり……女神サマ……かな?  
「え!? あ…う、うん……待ってるよ…女神サマ……」  
「うふふっ、それじゃあねっ」  
どもりながら答える僕を見たアイリスは、とびきりの笑顔を浮かべ、手を振りながら部屋を後にした。  
アイリスが去った扉を、じっと見つめながら僕は思った。彼女の魅了が効かなかったのって、  
すでにアイリスが、魅了の魔法を僕に掛けているからじゃないのかな? と。  
 
おしまい。  
 

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