「あ、御主人サマ、お帰りなさい!」  
「ん、ただい……んっ…ん……」  
会社から帰ると、例によってアイリスが満面の笑みを浮かべ、  
駆け寄ってきたかと思うと、僕の首にしがみつき、優しくくちびるを重ねてくる。  
僕もまた、手にしていた鞄を床に落としながらも、アイリスを優しく抱きしめ返した。  
「……んっ。ね、御主人サマ、今日はお風呂にする? お夕食にする? それとも…ワ・タ・シ?」  
「え……あ、ご、ご飯にしようか……な?」  
くちびるを離した途端、アイリスはいきなり、とんでもないことを口走る。  
思わず吹き出しそうになりながらも、僕はどうにか答えた。  
………ど、どこでそんな言葉、覚えたというんだ、いったい。  
「そ〜お。今日はね、お魚が安かったから、フライにしたよ♪」  
床に落ちていた僕の鞄を手に取り、スキップしながら部屋へと戻るアイリス。  
あ〜あ。尻尾がピコピコ揺れてるし、余程機嫌がいいみたい。  
「どしたの、そんなところで固まっちゃって? 何かあった?」  
「い、いや何でもない…何でもないよ……」  
アイリスはぱっと振り返り、呆気に取られる僕を、怪訝そうな顔でじっとこちらを見つめる。  
僕は首を振りながら、苦笑いを浮かべ、アイリスのあとを追っかけた。  
 
「ん。いつ何を食べても、アイリスの料理は美味しいね」  
「ふふっ、ありがと。……ところでさ、最近帰りが遅いけれど……明日は、早く帰ってこれる?」  
魚のフライを頬張りながら、感想をポツリと漏らす。アイリスは嬉しそうに微笑みながら、  
そう答えたかと思うと、期待に満ちた目で僕に話しかけてきた。何だよ、突然。  
「うーんどうだろ? 仕事次第だけど………ね」  
「そっか……出来るだけ、早く帰ってきてね」  
頭の中で、仕事のスケジュールを思い出し、曖昧に答える。するとアイリスは、  
寂しそうに眉をひそめ、声のトーンを落としてしまった。うう……ちょっと気まずい雰囲気……。  
 
「ふう……アイリス…怒らせちゃったかな……明日…早く帰れるかなあ……」  
風呂場で頭を洗いながら、思わず独り言をつぶやく。  
そういえば……いつも文句ひとつ言わずに、僕の帰りを待っていてくれたんだもの、ね。  
たまには、言うことのひとつくらい、聞いてあげないと、バチが当たっちゃうよねえ。  
スケジュール、見直してみるかな……などと考えていると、背後の扉がカラカラ開く音が聞こえ……、  
「さって御主人サマ、背中流しに来たよ〜」  
「へ? ア、アイリス!?」  
例によって、アイリスの明るい声が聞こえる。……この声は……いつもどおりだ。機嫌、直ったの?  
「毎日のことなのに、なあに今さら照れてるの? さ、体をラクにしてっ」  
ふわわ……。背中越しに伝わる、柔らかい胸の感触があああ……。  
 
「あらら? ラクにしてって言ったのに、こんなに硬くなっちゃって、どうしちゃったのかなあ?」  
「はあう……ア…アイリスう………」  
反射的に膨らんでしまった、僕のモノを目ざとく見つけ、優しく握り締めてきた。  
あ……そんなに擦られると………。  
「ふふっ……どんどん大きくなっていくよ? ……あれあれ? ピクピク震えてきた?  
ね、どうしちゃったのかな、御主人サマ? 私に教えて欲しいなあ?」  
耳を軽く噛みながら、アイリスはゆっくりとささやいた。……あう…も…ダメかも……。  
「ちょ……ア……アイリス……」  
「ええっ? 何? 聞こえないよお?」  
モノをしごくピッチをあげながら、アイリスは再び僕にささやきかけてきた。もうダメだってっ!  
「ふああっ! アイリスっ!」  
僕はたちまち、腰を仰け反らせながら、モノから大量の精を噴き出させていた。  
 
「小さい御主人サマ、相変わらず元気だね。……うふふっ」  
「ア……アイリスが上手すぎるから、だよ……」  
湯船に一緒に浸かりながら、アイリスが嬉しそうに微笑んだ。反射的に、感想が口をついて出てくる。  
「まあっ……うっれしい。……でも御主人サマ、自分がエッチなの棚に上げて、そんなこと言うかなあ?」  
「うああっ……ア…アイリス………」  
再び背後から抱きつき、さらに僕のすぼまりへと、尻尾を潜り込ませるアイリス。  
痺れるような快感とともに、声が漏れだす。……何だかすっかり、調教されているみたい……。  
 
「ほうら。こんな簡単に、はしたない声あげちゃって。……まったく、イヤらしい御主人サマ♪」  
「そんな……そんなこと言ったって……」  
「え? じゃ、今すぐ止めろって言うの? それはそれで構わないけれど〜?」  
思わず顔がかあっと熱くなり、反論しようとした途端、アイリスはぱっと体を引き、尻尾も引き抜いた。  
「ああうっ! ……や…止めないで……つ…続けて……」  
「んん〜? よく聞こえなかったな〜? 御主人サマ、今何て言ったのかなあ?」  
「つ……続けて、続けてください……お、お願いします……」  
欲望には勝てず、僕はアイリスに懇願した。が、アイリスは容赦なく、再び聞き返してくる。  
僕のすぼまりのあたりを、尻尾でちょんちょんとつつき回しながら。  
その微妙な刺激に抗えず、僕は体を震わせながら、途切れ途切れな声で、どうにか答えていた。  
「あらら。じゃ、質問に答えてね……私と御主人サマ、どっちがイヤらしいのかなあ?」  
「ああっ! ぼ……僕がイヤらしいです! 僕のほうがイヤらしいですっ!」  
それでもアイリスは、尻尾を僕のすぼまりと、袋の間を行ったりきたりさせながら、質問してきた。  
僕は涙を流しながら、そう叫んでいた。  
「ね? 私が言ったとおりでしょ? ホント、イヤらしい御主人サマっ♪」  
「はああっ! あっ! ああっ!!」  
アイリスは、僕の答えにやっと満足したように、うんうんと頷きながら、尻尾をすぼまりに潜り込ませ、  
右手でモノを激しくしごきだし、左手で袋をくにゅくにゅと優しく揉みあげる。  
焦らされたことで、感度が異常に高まっていた僕は、アイリスが何回かモノをしごきあげただけで、  
あっさりと今日2回目の精を、湯船の中に噴き出していた。ああ……気持ちイイけど、体力が……。  
 
「さ、御主人サマ。……スッキリしたところで、夕食にしようか?」  
フラフラする体をどうにか支えながら、風呂から上がろうとする僕に、アイリスがひとこと。  
………………え?  
「どうしたの? 今日はスーパーで特売していた、お魚のフライだよ」  
僕がぽかんと口を開けているのを見て、アイリスが小首を傾げながらつぶやく。  
い……いや、風呂入る前に食べたじゃない。  
「もう、御主人サマ? お魚キライなの? 好き嫌いしてたら、健康に良くないよ?」  
眉をしかめながら、まるで母親が子どもを諭すように、優しく僕の鼻を突っついてくる。  
そ、そうじゃなくて……ほ、本当に覚えてないの?  
「御主人サマ、今日は本当におかしいよ? ………うん、熱は無いみたいだけど……大丈夫?」  
「えっと……そ、そうじゃなくて。………夕食は、風呂に入る前に食べたじゃない?」  
心配そうな顔で、おでこを軽くコツンとぶつけてくる。そんなアイリスに、僕は思い切って話しかけた。  
「…………………え?」  
「…え? って……本当に、覚えてないの?」  
今度は、アイリスがぽかんと口を開け、立ちすくむ。……ど、どういうこと?  
「え…あ………ああ……あ……」  
「アイリス!」  
アイリスは天を仰ぎ、震える声でつぶやきだした。僕はアイリスの肩をしっかりと抱きしめ、叫んでいた。  
 
「そ……それが、その………。正直に言うと、これが初めてじゃないんだ」  
「え?」  
しばらくの間、アイリスはうなだれたまま、口をもごもごさせていたが、やがてゆっくりと顔をあげ、  
僕の目をじっと見つめながら言った。予想だにしない言葉を耳にして、思わず聞き返してしまう。  
「………今みたいに、ちょっと前のことを忘れてしまったりとか、  
気がつくと、全然覚えの無い場所にいたりとか……」  
「そ、それって、いったいいつからなの!?」  
「……性格には分からないけれど、自分ではっきりおかしいな、と思い始めたのは、  
今から大体、ひと月くらい前から………」  
ひと月前から………。でも、何かきっかけとか、あったっけ……?  
 
「……御主人サマ………私……怖い……」  
「………え?」  
そんなことを考えていると、アイリスは体を震わせながら、ぽつりとつぶやいた。  
「このまま…このまま、どんどん色々なことを忘れちゃって、そのうち御主人サマのことまで、  
忘れてしまうんじゃないかって………不安なの………」  
「アイリス………」  
弱々しく首を振りながら、アイリスは言葉を続ける。僕はしっかりとアイリスを抱きしめた。  
「私……私、御主人サマと離れたく、ないよ……」  
「ああ。僕もだよ、アイリス……」  
僕の背中に手を回し、声を震わせながらつぶやくアイリス。そのまま僕の胸に顔をうずめ、  
クスンクスンと鼻を鳴らしだす。思わず、アイリスを抱きしめる腕に、力がこもった。  
 
「……ねえ、御主人サマ?」  
「何?」  
どれだけそうしていたか、アイリスはぱっと顔をあげ、僕をじっと見つめながら、話しかけてきた。  
アイリスの綺麗な顔は、涙でくしゃくしゃになってしまっている。だが、その美しさは衰えるどころか、  
むしろ僕が今まで見たことがないくらいの、妖しい美しさを際立たせていた。  
こんな時にも関わらず、僕はアイリスの美貌に心を奪われ、そんな自分を心の中でなじっていた。  
…………アイリスはこんなに悩んでいるのに、何でこんなことを思いつくんだ? 僕は。  
「………明日は…明日は、早く帰ってきてくれる?」  
「……あ、ああ分かった。明日は何があっても、早く帰ってくるよ」  
さっき、『夕食を食べている時に』聞いてきたことを、アイリスはもう一度尋ねてきた。  
……多分、夕食の記憶が無いのだから、質問したこと自体も、忘れているんだろうけれど。  
そう思った僕は、さっきとは違う返事をした。……少しでも、少しでもそばにいたい。そう思って。  
仕事に関しては……まあ、なんとかなるだろ。  
「ありがとう、御主人サマ………ん…んっ……」  
僕の返事を聞いて、アイリスは眩しいくらいの微笑みを浮かべ、そっとくちびるを重ねてきた――  
 
 
「あ、アイリスさん?」  
バイトの帰り道、目の前をフラフラ歩く女性を見て、思わず声を掛ける。  
そこには時々通っている、料理教室の先生である、アイリスさんがいた。  
料理教室に通っていると言っても、まともに料理を覚えようと言う気は、半分以上無い。  
じゃあ何故、わざわざ通っているのかと言うと、アイリスさんに会うのが目的だったから、だ。  
……実際美人だし、体型的にも申し分ないし。彼氏持ちってのが少し悔しいところだが、  
まあそれはそれ。かえってそのほうが、楽しめることもあるし。  
 
「…………?」  
アイリスさんは、怪訝そうな顔で振り向いた。……ああ、こんな顔もイイなあ……。  
「あ…オ、オレっす。アイリスさんの料理教室に通っている、橘ですよ」  
「…………あ、ああ……?」  
「ど、どうしたんですか? どこか、具合でも悪いのですか?」  
オレの言葉を聞いていたのかいないのか、虚ろに返事をするアイリスさん。  
心配になってきたオレは、思わずアイリスさんのおでこに手を当ててみた。  
………ううん…熱は特に、無いようだけど……。  
「………ん………少し………」  
「そ、それはマズイです。オレの家、近くですので、少し休んでいってはどうですか?」  
「…………そう、させて、もらおう…か……」  
軽く首を振りながら答えるアイリスさんの肩を抱き、オレはアイリスさんを誘った。  
……下心がまったくなかった、とは言えない。むしろチャンス到来とも言える。  
そんなオレの下心を知ってか知らずか、アイリスさんはオレにもたれ掛かりながら、軽く頷いた。  
ちょっと罪悪感が出てきたが、具合が悪そうにしているのは確かなので、  
オレはアイリスさんを支えながら、家へと急いだ――  
 
「あ、どうぞ。……ちょっと、散らかってますけれど………」  
「………………」  
「ア、アイリスさん!?」  
玄関のカギを開け、アイリスさんを部屋に案内する。  
……こんな形とはいえ、アイリスさんを部屋に招待するなんて……  
もう少し、部屋の掃除をしておくべきだった……。  
などとオレの考えを意に介するわけでもなく、アイリスさんは部屋に入るや否や、  
ベッドに上半身を預けるように倒れ込み、そのままぐったりとしてしまった。  
オレは大慌てで台所へ向かい、コップに水を汲んで戻ってきた。  
コップを手渡そうと、アイリスさんに手を伸ばした途端――  
「さ、とりあえず、お水です………わ…ちょ…ちょっと!? …ん……んふ…ん…っ……」  
アイリスさんは、突然オレを押し倒し、そのままくちびるを奪ってきた。  
心のどこかで期待していた展開とはいえ、不意を突かれたオレは、動揺を隠せなかった。  
「ん…っ……んんっ…っ……」  
オレをしっかりと抱きしめ、口中へ舌を潜り込ませてくるアイリスさん。  
女性経験はそれなりにあるオレだったが、アイリスさんの積極性に、成すがままになっていた。  
……ちくしょう。こんなんだったら、もっと早く声を掛けておくべきだった。  
「ふあ……あっ……」  
くちびるをそっと離し、アイリスさんはオレをじっと見つめる。  
……虚ろだから、オレを見てたのかどうか、はっきりしなかったけれど、  
それでもオレは、アイリスさんの視線に射すくめられたかのように、声ひとつ出せなかった。  
「あっ……ア…アイリスさん……う…ううっ……」  
ゆっくりとアイリスさんは、オレのシャツをはだけさせ、露わになった胸にそっとくちづけしてきた。  
くすぐったいような心地よさに、思わずあえぎ声が漏れだす。……ああ…すげえ気持ちいい……。  
「はあ……ア、アイリスさん………は…ああっ……」  
オレがうっとりとした表情を浮かべている間に、アイリスさんはオレのズボンに手を掛けた。  
反射的に、アイリスさんの手を掴もうとするが、上目遣いに見つめられた途端、手が止まってしまう。  
「……っ……ア…アイリスさん…っ……」  
オレの手が止まったのを確認したアイリスさんは、ひと息にズボンとトランクスをずりさげた。  
すると、すでに完全に勃ちあがっていた、オレのブツが姿を現わす。  
 
「………ん…っ……んんっ……」  
「くああっ…あっ……」  
右手で、オレのブツを優しく撫で上げながら、くちづけする場所を、胸からヘソへと少しずつ降ろしていく。  
オレはあまりの心地よさに、ただひたすらあえぎ声を漏らし、快感に打ち震え続けていた。  
「んふ……んっ……」  
「うああっ!? ア…アイリスさん!?」  
ヘソからくちびるを離したかと思うと、アイリスさんはおもむろに、オレのブツを優しく咥えだした。  
手で撫でられていたときよりも、遥かに強い刺激がオレを襲い、思わず叫び声をあげてしまう。  
そんなオレを、上目遣いにじっと見つめながら、アイリスさんは優しくオレのブツを、しゃぶり続けていた。  
 
「は……ああ…イッちゃう……イッちゃうっ……」  
下半身からこみあげる快感を覚え、腰を震わせながら、思わず吐息が漏れ出す。  
すでに何も考えることが出来なかった。……もう…もう…イキたい……イカせて……。  
まさか……まさか、ここまで上手かったなんて……。  
「ん…んんっ……ん…んんっ……」  
「ア、アイリスさん! アイリスさんっ!!」  
オレのつぶやきを聞いた途端、アイリスさんはモノに絡ませる舌の動きを活発化させ、  
顔を上下に激しく揺さぶる。その直後、オレのブツはアイリスさんの口中で爆ぜていた。  
「あ……あ…アイリスさん……」  
「ぐ…ん……っ…んぐっ……」  
オレがあっさり果ててしまったにも関わらず、アイリスさんはブツから口を離そうとせず、  
頭を上下に動かし続ける。オレは全身を痙攣させながら、襲い来る刺激に必死に堪えていた。  
 
「んふ……んっ……」  
「うく……あ…っ!」  
しばらくして、ようやくアイリスさんがブツから口を離した。  
と、思う間もなくアイリスさんは、そのままオレの上に馬乗りになった。  
下半身から再び沸き起こる刺激に、オレはなすすべも無くあえぎ続けるしか無かった――  
 
「ああ……ア…アイリスさん………」  
ベッドの上で、男が横になりながら、女に声を掛ける。  
アイリスと呼ばれた女は、ゆっくりと振り返り、妖しく微笑む。  
その微笑みは、どこか感情のこもっていない、冷たいものだったが、  
男にはその笑みがまるで、女神の祝福の笑みに見えていた。  
「………フェン、……リル。もう、いいわよ」  
アイリスは両手を高く掲げ、ゆっくりとつぶやいた。  
するとどこから部屋に入ったのか、新たに女が二人現れていた。  
「うわ…ちょ、ちょっと!?」  
女たちは、ベッドで横になっている男へと音も無く近寄る。  
「んぐ…っ……んん…っ……」  
戸惑う男に構うことなく、片方の髪の長い女は、そっと男にくちびるを重ねた。  
もう片方の髪の短い女は、男のモノをゆっくりと咥えこみ、袋を優しく撫で回す。  
突然の二人の女の愛撫に、男は興奮して息を荒くさせていた。  
よく見ると、女の頭から犬らしき大きな耳が生え、まん丸のお尻からはふさふさの尻尾が生えている。  
だが、男はそんなことも気にせず、女たちがもたらす刺激に、ただ体を任せていた。  
 
ブチッ!  
 
突然、そんな激しい音がしたかと思うと、男がピクピク痙攣し始めた。  
髪の長い女が、男の咽喉笛を切り裂き、髪の短い女は男の腹を食い破ったのだ。  
男は必死に悲鳴をあげようとしたが、咽喉が裂かれているため、ヒューヒューとした音しか出なかった。  
助けをもとめようと、手を伸ばそうとしても、女たちに圧し掛かられているため、それもままならない。  
女たちは、食い破って開けた男の腹の穴に、指を潜り込ませ力を込める。  
メキメキという音を立てて、穴が少しずつ広がっていく。血しぶきが噴水のように飛び散り頬を濡らすが、  
女たちは気にするどころか、美味しそうにお互いの頬に舌を絡め、ペロペロと舐めあっていた。  
その間にも、女たちの手の動きは止まらず、男の腹をえぐり続ける。  
やがて男の腹から、細長い白い紐のようなモノがずるりとはみ出した。  
途端に二人は目の色を変え、白い紐を奪い合いながら口に含む。  
心底美味そうな表情を浮かべ、クチャクチャと音を立てながら、咀嚼し始める。  
「まあ、二人とも。ちゃんと残さず、食べなきゃダメよ?」  
そんな二人を見つめながら、アイリスは優しく言った。  
まるで、親が子どもに向かって『好き嫌いしちゃダメですよ?』というような、自然な口調で。  
返事も無くただひたすら、男をむさぼり続ける二人に背を向け、窓から空を見上げるアイリス。  
 
 
「さて……お遊びは、これまでね………」  
空には、血の色のような満月が浮かびあがっていた。その満月をじっと見つめ、  
小指の腹でくちびるを撫でながら、アイリスは妖しい笑みを浮かべていた――  
 

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