翌日、不安な顔で登校した美香は、通学途中に届けられたメールにしたがって体育館倉庫へと向かった。恐る恐る重たい扉を開け、薄暗い倉庫の中に入ると、既に少年は来ていて、跳び箱の上から彼女を見て手をひらひらさせた。  
「おはよ〜。ちゃんと来たね。いい子にはプレゼント☆」  
彼の手には、細長いサインペンのような筒が二本握られていた。それがなんなのか分からない美香は、小さく首をかしげる。  
「これ…何」  
「小型のバイブレーター。リモコン操作で動くようになってる」  
それを少女の手の平に落とし、彼は言った。  
「二つともつけてね。前と後ろに一本ずつ」  
「前…後ろ?」  
その言葉が理解できない彼女に、彼は笑顔で説明した。  
「前って言うのは前の穴で、後ろはお尻の穴の事」  
青ざめる少女を見下げながら、少年はなおも続ける。  
「この場で入れて。ちゃんと見てるから」  
その命令に、彼女はひどく戸惑ったような表情を見せた。こちらから極力見えないよう後ろを向くと、彼女はスカートをはいたまま、裾から手を差し入れた。  
下着を少しずらし、そこにつぷっと筒の先端を差し込むと、細さのせいか、想像したほど異物感がなく安心する。  
しかし、もう一本は。ためらっている彼女の前で、少年は筒全体をべろんと舌で舐め回した。  
「こうすれば痛くないよ」  
「…っ」  
息を細く吐きながら、唾液でぬらぬらと輝くそれをゆっくりと後ろに挿入する。  
自分で触れた事も見たこともないそこに何かが入っていく感覚は、気持ち悪いだけでなく恐ろしかった。  
「ちゃんとつけたね。じゃあこのまま授業、行こうか」  
 
少年に連れられ、彼女は体育館を後にした。足を動かすたびに筒が擦れ、股間にぞわぞわとした奇妙な感覚が押し寄せる。内側から圧迫されるその初めての感覚は、ひどく不快だった。  
鐘の音に慌てて中に入ると、担当の教師はもう教壇に立って授業を始めるところだった。  
「二人して遅刻か? まったく何やってたんだか…俺も混ぜてほしいねぇ」  
いつもの下ネタを含んだ冗談に、生徒達が一斉に笑った。しかし美香だけは、皆が自分のことを知っているのではないかと不安になって、鼓動が早まる。  
「じゃあ、罰として吉村、83ページから読んで」  
「は、はい」  
あたふたと教科書を開き、指定された箇所を読み出すと、脚の間にわずかな痺れを感じる。  
はっとして後ろを見ると、少年がポケットに手を入れて、何かしているのが分かった。  
前の筒を軽く上下に動かして、弱い振動を与える。それだけで体の力が抜け、そこはじんわりと熱を帯びた。  
「『よろしい』とせんせ…ぃが言っ、た。『は…なしましょう。私の過去をのこ…らずぅあ、なたに』…は、ぁんっ」  
思わず漏れた嬌声に、美香は顔を伏せ、周囲を見渡した。しかし教師は気付かないのか、続きを読むよう促す。  
「『…に話して上げま…しょぅっ。その代わ、り、いや…それは…んっぁあ、か、まわない』」  
筒をぐるぐると回される。中を激しくこすられ、今までにない快感が彼女を襲った。男性精器そっくりの形状に太くとがっている筒の先端は、ずんずんと少女の膣壁を突き上げていく。  
少年は前の筒をぐいっと斜めに傾け、そのままずぶずぶとそれを抜き差しながら、後ろにも  
軽い動きを与えた。  
「し…かし、ひぁあんっつ」  
その今までにない感触に、少女は戸惑いを隠せない。先ほどよりも大きな声が静かな教室に響き渡った。  
…あっ、お、お尻の中がかき回されて…。気持ち悪いはずなのに…ぐちゃぐちゃして、熱いっ!  
さらに前後二本が同時に円運動を始めると、こらえきれずに呼吸が荒くなっていく。二本はそれぞれ勝手な方向にぐりぐりと動き回り、くちゅくちゅといやらしい音を立てながら中をかき混ぜる。  
 
「『私の…か、こはぁっあなたに、とって…ふぁっ…それほどゆ、えきでない…あぁ、かもし、れませんよ…はっぁあ…いやぁっつん』」  
喘ぐ声はさらに大きく激しくなる。その姿に、さすがにほとんどの者が彼女の異変に気付きだした。  
「なぁ、あれ…」「身体震えてるぜ」「顔も真っ赤だ」「それにさっきの声って…」  
特に普段から美香のことを気にかけてきた男達は、彼女の様子をじっと凝視している。中には携帯を片手に写真や動画を取っているものすらいるようだった。その熱い視線を感じ、少女は余計恥ずかしくなった。  
「おい、熱でもあるのか」  
「そう…みたいです。せん…せぇ、保健室に行っても…はふっ、ぃ…ですか?」  
教師の返答も聞かずに教室を出た彼女は、目の前に少年が居るのを見て驚いた。出てくるタイミングを見計らって先に退室していたのだ。  
「ダメでしょ。勝手に出ちゃ」  
「そ、そんな。だってあんなの使っ…」  
「何言ってるの?」  
そう冷たく答えた彼は、彼女に中のものを取り出すよう言った。だがここは廊下だ。いつ誰がくるか分からない。  
「早くして」  
その命令に、慌ててそれを引き抜く。下着の奥に手を入れると、そこはもうぐっちょりと湿っていた。今はもう動いていなかったが、ずっぽり沈み込んだそれは、引き抜く刺激だけでも彼女を打ち震えさせた。  
「ひ、ひゃんっ」  
その二本の筒を彼女の手から奪い取り、目の前にかざす。ねっちゃりと粘液がまとわりついたそれが明るい光の元にさらされた様は、あまりにも卑猥だった。  
「ほら、見てみなよ。これのどこがバイブなの? 機械の部品なんてどこにもないでしょ」  
確かによく見れば、それはただのサインペンだった。彼女は驚き、次第に顔を赤くした。  
「バイブって言葉だけで感じちゃった? 勝手に想像して気持ちよくなっちゃったんだね」  
「ち、違…、確かに動いて…」  
「自分で動いたんでしょ。股間がくがくさせて、サインペンあそこに擦り付けて。気持ちよかったなら素直に言えばいいのに」  
 
もちろん実際には彼が能力で動かしていた。だが立場が上の人間から強く攻めるような口調で詰問され、美加には何が正しいのか分からなくなっていた。  
しかも快感に襲われながらの頭では、難しい事など考えられない。少年の一見正しく思える論理は、彼女を迷わせるには十分だった。顔を俯かせながら、ひどく小さな声で呟く。  
「…、きもち、よ…かった」  
「ふうん。きもちいいこと、好きなんだ。それならこれから、もっといいことしてあげようか」  
本来なら、彼女はここでやめておくべきだったのだろう。けれど、絶頂に達する間際でやめられ、火のついたまま放置された身体は既に理性では止める事が出来なくなっていた。  
ほんの少し前まで自分の手で慰めた経験すらなく、全く快感を知らなかったそこは、たった2日で驚くほど様変わりしてしまったのだった。自分でも気付かないうちに、まず身体が、そして今は心までも少年の虜になった彼女は、彼の問いにすがるように答えた。  
「し、して…」  
「じゃあ、このままサボって僕のうち来る?」  
「…うん」  
その怯えとともにかすかな期待をを含んだ顔を見ながら、少年は相手が堕ちたのに気付いた。  
普段真面目で性に無知であろうとする女性ほど、一度己が快感に弱く淫乱だと認めさせれば、その後は楽なものなのだ。元々持っていた興味も手伝い、開き直って自分から行為を求めてくるようになる。  
その罠に見事に嵌ってしまった彼女に対し、内心ほくそえみつつ彼は言った。  
「じゃ、ついてきて」(終)  
 
 
 

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