少年に手を引かれ、美香はとうとう彼の部屋の前まで来てしまった。  
ドアを開けた彼に促されて中に入ると、そこは意外なほど片付き、清潔感溢れている。  
「ジュースでも持ってくるから、その辺座ってて」  
そう言って部屋を出た少年に従い、テーブルの脇にぺたんと足を折って座ると、これから起こるであとうことを想像して身体が上気した。  
(あたし…これから、しちゃうんだ…)  
雑誌の特集で読んだり、経験の早い友人から話を聞いたりしたことはある。けれど実際にそれがどんなものなのか、彼女は知らなかった。  
氷を浮かべたオレンジジュースを二つ手にして戻ってきた少年が、彼女と向かい合わせの位置に座りこみ、ジュースを手渡す。  
緊張でのどが渇いていたのだろう。差し出されたグラスを手にし、すぐストローを銜える。  
細長い管を唇に挟んで、ちゅるるっと半透明の液体を吸い上げ、口内に流れ込むそれをこくこくとのどを上下させて飲み下していく。  
少年は、勢いよくジュースを飲む美香の姿を満足そうに見つめていた。  
実は先ほど、彼女のほうにだけ利尿薬を入れておいたのだ。即効性の薬だから、すぐにでも効いてくる。  
「おいしい?」  
「うん」  
普通に受け答えしていた彼女の身体がぴくっと揺れた。正座していた脚に力が入り、きゅっと閉じる。  
(何で今頃…)  
 
太股をもじもじとすり寄せ、徐々に高まる排尿欲に耐える。  
「どうしたの? あ、足楽にしていいよ」  
そんなことを言われても、足を開く衝撃だけで漏れてしまいそうなのだ。  
仕方なく正座のままでいると、少年の両手が強引に膝を掴み、左右に大きく割り広げてきた。  
「あっ…やだよっ、恥ずかしい…」  
90度に広げられたそこの奥が、既にじっとりと湿っている。  
(十分効いてるみたいだな)  
見えない指で下着越しにさわさわとそこを撫でてやると、肩が震え、じんわりと染みが広がるのがわかった。  
そのまま指の動きを続けると、その部分が意思を持つ生物のようにひくついた。  
下着に染み出してしまったのに気付いた彼女は両脚を閉じようとしたが、膝が押さえつけられたままの状態ではどうにもならない。  
「はんっ…」  
(あ、もう…出ちゃう…)  
「あの…おトイレ、貸してくれる」  
「いいよ」  
予想に反しあっさりと承諾した彼に少し驚きつつ、美香は示された扉のほうに向かって立ち上がった。  
歩こうとした彼女に合わせ、彼は膣の中に指を入れ液体を掻き出すよう動かす。  
「ひぃっ!…出ちゃ…ぁあっ」  
かりかりと爪を立てて愛撫する度に、歩くのをやめて立ちどまってしまう。  
「どうしたの。早く行けば?」  
 
「だって…」  
眉間にしわを寄せ、唇をかみながら尿意を我慢する姿にそそられる。  
しつこく何度も引っかき続けると、立っていられなくなった彼女が床に崩れ落ちた。  
もう歩くのは無理だと悟ったのか、そのまま赤ん坊のように四つんばいになる。  
そうして脚をすりながら進んでいくことで全身を震わせながらも、確実に少しずつ前に進む。  
「ひ…はぅっ!」  
それでも、くちゅくちゅと乱暴に中を掻き回されると、その場から動けなくってしまうから、数メートルの距離が何十倍にも感じられた。  
ようやく扉の前までたどり着き、ほっと安心した顔でノブに手を掛ける。  
しかしその瞬間、下腹部を透明な両手が思い切り強くへこませた。  
外側から膀胱を圧迫される突然の刺激には、抗う暇すら存在しない。  
(あっ…!)  
しゃぁつ…と、薄黄色の液体がスカートから床へと流れ落ちる。  
四つんばいのまま呆然とする美香の横へ颯爽と歩くと、彼は出来る限り冷たい口調で言った。  
「何やってるの? 人のうちで」  
その怒気を含んだ声に、少女の身が竦む。  
「ご…ごめんなさ…」  
「早く片付けてよ。ったく、汚いな」  
恐る恐る口にした彼女の謝罪の言葉も気にせず、少年はイライラと言い放つ。  
それが演技なのだなんて思いもしない彼女は、必死で尋ねた。  
「あたし…どうすれば…」  
 
「片付けろって言ってるだろ? 頭悪いなぁ。とにかくそこ拭いてよ」  
急いで辺りを見回し、拭くものを探すがどこにも見当たらない。  
雑巾かなにかの置き場所を訊こうと話しかけると、彼は加虐的な表情で言った。  
「自分の服でも使えば?」  
「っ…はい」  
そろそろと上着を脱ぐ。その様子を脇でじっと見つめている少年の視線が痛い。  
上半身をブラジャー一枚にして、再び床に屈みこむと、びちゃびちゃとフローリングの上に流れる液体を、折りたたんだ服を使って吸い取っていく。  
何度も手を往復させて拭き取るうちに、こぼれているほとんどが吸収できた。  
大体終わったのを見て、少年が声をかける。  
「それくらいでいいよ」  
びくびくとしながらも、その言葉を聞いて立ち上がる彼女に今度は穏やかに話す。  
「ごめんね、無理やりこんな事させて」  
「そんな…あたしが、我慢、できなかったから…」  
半泣きになってしゃくりあげながらそう言う彼女に、優しく微笑む。  
「気にしてないよ。仕方ないことだもの」  
(こんな最低のあたしに…なんて心が広いんだろう…)  
この瞬間、彼女の主観において彼は、自分を脅した悪魔から、許しを与えた天使へと変化していた。  
そして彼女は、彼に全てを捧げたいと本心から深く思った。  
もちろん、その全てが悪魔の計算だなどとは知る由もなく。(終)  
 

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