13 辿りつくところ  
 
静まり返った部屋に、二人の息遣いだけが響く。  
幾度目かの長い口づけの後に、雪子がはぁ、と息をついた。  
無我夢中できつく抱き合い、唇を重ねて、気づけばいつの間にか  
抱きかかえられるようにして、リビングのソファに座らされていた。  
以前と全く変わらない殺風景な部屋に、ようやく戻ってこれたのだ、と思うと、  
懐かしくて嬉しくてたまらなかった。  
「………何だ?」  
雪子が微笑むのを見て、中嶋が聞く。  
「嬉しいです…ずっと、課長のおうちに帰ってきたかったから」  
「…そうか。……………ところで、呼び方のことなんだが」  
改まった面持ちでそう言われ、雪子は面食らった。  
「呼び方、ですか」  
「役職名で呼ぶのは、もう止めて欲しい」  
「え?………だって、課長」  
「それを止めろと言っている」  
「ええええ?だ、だってずっとそう呼んできましたし、今更変えられないですよっ」  
「これから一生、俺のことを役職で呼ぶつもりか?………………何をにやけてるんだ」  
「ご、ごめんなさい………だって課長の口から、これから一生…なんて言葉がっっ」  
嬉しさと恥ずかしさのあまり、雪子は手足をばたばたと動かして身もだえする。  
「自分で言ったことだろう。何をじたばたしてるんだ。それより呼び方の話だ」  
確かに「自分よりも先に死なないで」などと言ったのは事実なのだが、  
改めて鉄仮面の口から言われるとどうにも照れてしまい、挙動不審になる雪子であった  
 
「………何て呼べばいいんですか?」  
「好きにすればいい」  
「えっと、じゃあ………中嶋さん?」  
「近い将来自分も同じ苗字になると忘れてないか?  
……………だから暴れるなと言っているだろう」  
「だ、だってっ!だってっ!同じ苗字って!!」  
「別姓のほうがいいのか?」  
「そういうことじゃありませんっっ!!!」  
「とにかく苗字は駄目だ」  
「………はい………じゃあ、えっと………………」  
「何だ?もしかして俺の下の名前を知らなかったか」  
「いや知ってます!知らないわけないじゃないですかっっ!  
貴巳さん!たかみさん………………です………」  
そう言って、雪子の頬は急激に真っ赤に染まった。  
「さん、は別にいらない。あと敬語も二人の時はやめなさい」  
「そんな、いきなり色々言われてもできませんっ!!それに、さん付けしたほうが、  
違和感ないし………」  
先程まで課長、と呼んでいた人物を、いきなり名前で呼び捨てにするのは抵抗がある。  
というより、畏れ多くてとても呼び捨てになんてできない雰囲気なのだ。  
「まぁ、好きにしなさい」  
「………た、貴巳さんっ、は、どうするんですかっっ」  
「何がだ」  
ものすごく緊張しながら、初めて名前を呼んだのに、貴巳の反応はそっけない。  
「呼び名です。私だって………橘じゃなくなるんですよ?」  
「…そうだな。どう呼ばれたいんだ?」  
「何でもいいんですか?例えばマイハニーとか」  
「断る」  
「じゃあ聞かないで下さい…」  
「雪子」  
「………え?………………は、はいっ」  
初めて下の名前を呼ばれ、雪子の心拍数が跳ね上がる。  
先程から、自分は赤面してばかりだ。  
「後悔しないか」  
「………え?」  
一瞬、何を聞かれたのかわからなかった。  
が、真っ直ぐに雪子を捕らえる貴巳の視線が、雄弁に物語る。  
結婚のこと。そして、これから始まるであろう、二人の儀式のこと。  
雪子はそっと小さく息を吐き、貴巳の目を真っ直ぐに見つめて答えた。  
「………後悔なんてしません。ずっと、貴巳さんのそばにいさせて下さい」  
 
答える代わりに貴巳は、雪子のやわらかな桜色の唇に口づける。  
もう幾度目かわからないほどの激しいキス。  
その貴巳の唇が、首筋をなぞるように胸元まで降りてきたので、  
雪子は慌てた。  
「ちょ、ちょっと待って下さいっ」  
「敬語はやめろと言っただろう」  
「ま…待って!」  
「断る」  
「ええええ!!!だ、だって私、汗かいてますしっっ」  
「構わない」  
「私が構うんです!!それにここ明るくて嫌ですっ」  
「注文が多いな」  
「………最低限のことだと思いますけど」  
いじけたような雪子の言葉に、貴巳は口元を僅かに緩ませた。  
「仕方ない。初心者に免じて、妥協することにしよう。行こう」  
 
シャワーを浴び、貴巳のパジャマを借りた雪子は、  
貴巳の寝室に初めて足を踏み入れ、興味深く室内を見回していた。  
リビングと同様に殺風景で、セミダブルのベッド以外には大きな書棚が一つあるだけだ。  
中にぎっしりと詰まっている、何やら難しげな本のタイトルを追っていると、  
後からシャワーを浴びた貴巳が、室内に入ってくる気配がした。  
(………うわぁっ、いよいよだ………どうしようどうしようどうしよう)  
 
緊張のあまり振り向くこともできない雪子の身体を、  
貴巳は背後から抱きすくめた。  
濡れたままの長い髪が頬をくすぐる。パジャマの薄い布地ごしからも、  
雪子の肌の熱と、肩が微かに震えているのが伝わってくる。  
「………初めてなのか」  
聞くと、途端に雪子の顔が耳までさぁっと赤くなり、こくり、と頷いた。  
予想はしていたが、貴巳は改めて、自分が雪子の初めての男となる幸運に感謝した。  
性急にことを進めるつもりは毛頭なかったが、  
貴巳自身、処女との行為は初めてである。慎重すぎるほどに進めなければいけない。  
雪子に、初めての記憶が痛みだけとなることはどうしても避けたい。  
 
 
ゆっくりと、雪子の身体をベッドに倒し、上に覆いかぶさった。  
潤んだ瞳が、不安そうに自分を見上げている。  
安心させるようにやわらかく口づけて、徐々に深く、咥内の隅々を貪ってゆく。  
同時に、パジャマの上からゆっくりと、身体全体を撫でさするように愛撫すると、  
雪子の吐息がだんだんと熱く、細かくなっていく。  
頃合いを見計らって、そっとパジャマのボタンを外しはじめると、  
雪子がはっと息をつめ、身体を強張らせるのを感じた。  
「………そんなに力を入れなくてもいいぞ」  
「だ、だって………っ、恥ずかしいです!あんまり、見ないでくださいっ」  
「無理を言うな」  
徐々にあらわになる雪子の胸元は、絹のようになめらかで白い。  
「や………は、ずか、し、い………」  
白い乳房が、常夜灯の僅かな灯りの下に晒され、  
貴巳は感嘆の溜息をついた。  
それほど大きくはないが、形のいい丸みが、息をつくたびに微かに揺れる。  
頂点はあくまでひかえめに、唇と同じ、淡い桜色をしている。  
そっと両手で揉みしだくと、雪子の悲鳴のような声が漏れた。  
「ひゃ、や、やぁっ」  
こんなに触り心地がいいものがこの世にあったのか、と思うほどの柔らかさである。  
握れば指が埋まっていくような錯覚さえ覚える。  
そっと頂点を口に含み、舌先でくすぐるようにすると、  
雪子の背筋がびくんと痙攣した。  
「や、やだっ………だめ、だめですっ」  
「どうしてだ?」  
「な、なんかっ………くすぐったい………」  
「我慢しなさい。そのうち良くなる」  
「そんなぁ………………あああっ?」  
乳首を指先でつまみ、こりこりと擦りあわせる。  
合間に口づけをし、首筋を舌先で舐め上げると、雪子の反応が明らかに今までと違う、  
艶を帯びたものになってゆくのがわかった。  
「やぁっ………あ………っっっ!!!」  
漏れそうになる嬌声を、必死でこらえようと唇を噛む雪子の表情が、余りにも可愛い。  
が、そのままでは唇を噛み切ってしまいそうだ。  
引き結ばれた雪子の唇に指を差込むと、瑞々しい舌が指先をくすぐる。  
その柔らかな濡れた感触で、思わず理性を失いそうになるのを貴巳は辛うじて耐えた。  
「我慢しないでいい」  
「や………だって…なんか、変な声でちゃうんですもん………」  
「それが自然だ」  
そう断言されても、雪子は涙目で首を振っていたが、  
貴巳の舌と指で、執拗に乳首を責められ続けるうち、徐々に甘い声をあげはじめた。  
 
「あ、あっあっ………あうんっ………はぁぁっっ!」  
いい加減、雪子の表情が快感で蕩け始めているのを確認し、  
貴巳はいよいよ雪子のパジャマと下着に手をかけた。  
下手にじらしても恥ずかしがるだけだろうと、不意をついて一気に下までずり下ろす。  
「きゃ、やぁぁっっっ!!貴巳さんっやだっっ」  
慌てて秘所を隠そうとする雪子の手を難なくのけて、貴巳は余りにも無垢な雪子の  
そこに見蕩れた。  
腰から尻に続く、絶妙な曲線。まだ少女の未熟さを残しつつも、  
柔らかな丸みは、大人の女の色香を漂わせはじめてもいる。  
雪子は必死で膝を擦りあわせ、容赦ない目線からその部分を隠そうとしているが、  
貴巳はいとも簡単にその膝を割り、最後に隠された部分までをあらわにした。  
雪子のその部分は、貴巳が今までに見たどんな女性の秘所よりも清楚で、  
そして美しいものだった。  
薄い陰毛が、僅かに前の部分のみを覆い、割れ目の周りはほぼ無毛で、  
秘所はスリットのようにぴったりと閉じ、わずかに桃色の粘膜が覗いている。  
そっとそこを二本の指で押し開くと、透明な露がじわりと滲みでてきた。  
「やだやだやだああっっっ!恥ずかしい!恥ずかしいよぉぉ」  
じたばたと暴れる雪子の身体を押さえ、割れ目にそっと指を這わせながら聞く。  
「………自分でしたことはあるのか?」  
「じ、自分で………?」  
「ここを、自分で弄るときはどうしている?」  
「や、そんなの………してない…」  
雪子はこれ以上は無理というほどに赤面し、ぶんぶんと頭を振った。  
「本当にか?指くらい入れたことがあるだろう」  
くちゅくちゅと音を立てながら指を前後させると、雪子の全身がびくんと震える。  
「な、ないですっ!なんか、こ、怖くて…」  
つまり、雪子の秘所は、生まれてから今まで、全く何も受け入れたことのない、  
完全に無垢の状態だということだ。  
眩暈がするほどの興奮を感じ、貴巳はまじまじとそこに見入った。  
閉じられた花弁が、時折ひくりと震え、蜜を滲ませる。  
そのスリットの上部の突起も、まだ包皮に包まれたままだ。  
そっと指で皮をむくと、それだけで雪子は激しく反応した。  
粘膜と同じ桃色をしたそこは、あくまでも清楚に、しかし時折淫らに蠢き、  
貴巳を誘っている。  
ゆっくりと指の腹で擦るように刺激すると、雪子が泣き声をあげた。  
「やぁあああああ!!やっ!な、なにっ…これ、なに??」  
暫く、指先で円を描くように刺激を続けると、白い腰がびくびくと跳ねだした。  
突起は紅く充血し、激しく自己主張をはじめている。  
「ひゃ、や、ああああ!!なに、これっ………こわい、たかみさんっ、怖いよぉぉ」  
「心配いらない。我慢しなくていいぞ」  
「やっぁぁぁんっっ!!どうなっちゃうの?どうなっちゃうのぉぉっ?  
貴巳さん!!たかみさんっっ!たかみさんっっ!!」  
未だ知らぬ高みに押し上げられる恐怖と、初めての絶頂の予感に、  
雪子はただ必死に貴巳の背にしがみつき、その名を呼んだ。  
頼るべきものはそれだけだというように。  
そして、貴巳が一層強く突起を押しつぶした刹那。  
「ああ!!!!ひゃ、やぁぁうっっっっあーーーー!!!」  
膣口がびくんびくんと痙攣し、雪子の全身を電流が走る。  
生まれて初めて味わう女の悦びに、雪子は自分の声が聞こえないほどに  
高く、高く昇りつめた。  
 
 
荒い息がおさまるまでの間、雪子は一言も喋ることができないほどに脱力していた。  
が、貴巳は、そこで終わりにするつもりは毛頭ない。  
雪子が少し落ち着いたのを見計らって、  
まだ何も受け入れたことのない秘裂に、そっと指を押し込む。  
「や、やぁっ………ゆび………うそぉっ、入っちゃうのぉっ………?!」  
はじめて異物を受け入れる感触に、雪子が眉根を寄せる。  
無垢の恥部は、指一本でさえなかなか入らないほどに狭い。  
ぎちぎちと締め付けられる中指を半分ほど挿れたところで、泣き声が聞こえた。  
「だめ………だめですっ………きついよぅ………」  
「少し力を抜きなさい」  
「む、無理ぃっ………ひゃ、あああんっ?!」  
指を挿入されたまま、いきなり貴巳が秘所に顔を近づけた。  
と思ったら、何か暖かくてぬめるものが、先程絶頂を迎えたばかりの  
クリトリスを蹂躙する。それが貴巳の舌だと気づいて、雪子は狼狽した。  
「や、だめ、そんなとこっ汚いですっだめだめだめー!!!」  
貴巳は雪子の制止など気にも留めず、一層激しくそこを吸い上げ、舐めしゃぶる。  
秘所からじわり、とぬめるものが分泌され、きつく締めつけられていた指が、  
ようやく滑らかに動くようになった。  
指先で、膣壁の上部をピンポイントで刺激しながら、クリトリスをざらつく舌で  
嘗め回す。  
掻き出すような指の動きに、膣口からは白い粘液がどんどんとあふれ出してきた。  
「きゃぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!やぁだめっ!!また!またびくんってなっちゃうぅぅ」  
再び絶頂へと駆け上がろうとする雪子の様子を伺い、  
貴巳はしかし、意地悪く指と舌の動きをぴたりと止めた。  
「あ、や、だぁ………何で………?」  
雪子の膣が、物欲しげに指を更に奥へと飲み込もうと動くのを認めて、  
貴巳は巧みに、もう一本の指を滑りこませた。  
「!!!ああ!!あぅぅんっっ!はぁ………っっ!」  
一本目のときよりも内部が潤っており、また先程の動きで解きほぐされたせいもあって、  
二本目の指は比較的スムーズに内部に納まった。  
押し広げられた入り口が、真っ赤に充血し、内部の紅い肉をのぞかせてひくついている。  
ゆっくりと指を動かし始めると、雪子の、まぎれもない快感を告げる声が響いた。  
「やぁうんっ!あうんっ!!!んっああああ!!」  
柔らかくほぐされた膣壁が、貴巳の指にからみついてくる。  
「………雪子、いくときはいく、と言えよ」  
「んっ………うんっ………あああああ!!いく!いきますっ!やだぁぁいくのぉっ!!」  
雪子の瞼の裏に火花が散り、二度目の絶頂へと押し上げられる。  
指二本をくわえ込んだ秘所は、いやらしく蠢いて愛液を噴出した。  
 
 
日ごろ清楚な雪子からは想像もつかない痴態を目の当たりにし、  
貴巳も既に、我慢の限界を迎えていた。  
頬をそっと叩いて、どこか違う世界をさ迷っている雪子の意識を呼び戻す。  
「雪子…そろそろいいか?」  
肩で息をついている雪子は、貴巳の言葉の意味を理解して、ほんの僅か躊躇し、  
………そして微かに、しかしはっきりと頷いた。  
潤んだ目が、僅かな灯りを反射して光っている。  
今自分は、この世で一番純粋で綺麗なものを、自分だけのものにしようとしている。  
そんな思いが脳裏をよぎる。  
貴巳は用意しておいたゴムを素早く装着すると、昂ぶった自身を、  
雪子の濡れそぼる秘所に押し当てた。  
 
「………………………っっっっ!!!」  
「………痛いか?」  
指より随分太いものを入れるには、さすがに雪子のそこは狭すぎた。  
ゴムが滑りを悪くしているせいもあってか、なかなか入り口に入っていかない。  
ぎちぎちと押し広げられた雪子の秘所は、今にも裂けてしまいそうだ。  
「………だ、いじょう、ぶ………ですっ」  
雪子は必死に痛みに耐えている様子で、けなげに首を振るのだが、  
何度試みても、どうしても挿入することができない。  
「………やはり、いきなりというのは無理だな。すまなかった」  
「………え?いやですっ……わたし、大丈夫ですから!!」  
「いや、これ以上無理はさせたくないんだ」  
真摯な表情でそう言われ、雪子の表情が曇る。  
と、貴巳の未だそそり立つものに被せられたコンドームに、雪子がおずおずと  
手を伸ばしてきた。  
「………何だ?」  
「あのっ………これが、引っかかってるような気がして………  
取ったら、うまくいくんじゃないかなって…」  
「………雪子、自分が何を言ってるかわかってるか」  
真っ赤になって照れながらそう言う雪子を、貴巳は真剣な表情で問い詰めた。  
「………………本気です」  
「しかし」  
「だって………私、貴巳さんのお嫁さんになるんですよね?  
だったら……いいんです。わたし、もう全部、貴巳さんのものだから…」  
 
あどけない唇から零れる言葉に、貴巳の鉄壁の理性は、脆くも崩れ去ったのだった。  
 
 
ゆっくりと、生身の先端が雪子の中に飲み込まれてゆく。  
「…………………ふうっ…っっ!!」  
雪子が苦しそうな息をつく。  
限界まで拡げられた雪子の秘所は、敏感になっている亀頭を容赦なく締め付ける。  
衝動のままに抜き差ししたいのを堪え、貴巳は動きを止めた。  
「雪子、大丈夫か」  
苦しさに眉根を寄せた雪子は、それでも健気にうなずいた。  
「だいじょうぶ、ですっ…さっきより………痛くない、からっ………あ、あんっ」  
少しでも雪子の苦痛を和らげようと、貴巳がクリトリスを指で、  
乳首を舌で愛撫する。  
なだめるような甘い刺激に、雪子の強張っていた身体から力が抜け、  
膣奥からじわり、と潤滑液が滲み出してきた。  
「あーー!!あんっ!やぁぁっ、どうしよう………きもち、いい……  
………来てえっ………ちゃんと、奥まで…っっっっ!!!」  
少しずつ、決して無理をさせないようにじわじわと、貴巳の肉棒が  
雪子のまだ何も知らない深みへと入り込んでいく。  
そしていよいよ、根元までしっかりと貴巳のものが納められたとき、  
雪子は、まるで喉もとまでせり上がってくるような異物感に混じり、  
今まで意識したことのない場所―膣の一番奥、子宮の入り口のあたりに、  
奇妙なうずきを感じて、戸惑いの声をあげた。  
「や………なに、これぇっ…?変、へんなのぉっ…!!」  
「…どうした?」  
「な、なんかっ…奥が………おくがっ、くすぐったいのっ……あ!ひゃぅっ!」  
貴巳の先端で、うずきの源を、僅かに円を描くように刺激されると、  
全く未知の感覚がそこから生まれてくる。  
貴巳が、ゆっくりとピストンをはじめると、引き攣れるような痛みに混じり、  
甘い痺れが背筋を這い登ってきた。  
痛いのに、痛いはずなのに、気が遠くなるほどもどかしくて。  
「たかみさんっ!!!たかみ、さんっ!だいじょ、ぶ………だから、おねがいっ………」  
「………雪子」  
「うごいて、うごいてぇぇぇ!!!」  
ずぐん、と、熱くて硬いものが、最奥に叩きつけられた。  
 
「あ、きゃぁうっっ!!あああああああ!!!」  
ぐりぐりと奥を抉るように刺激したかと思うと、ゆっくりとピストンされる。  
ずるりと内壁を引きずり出されそうな感触に、雪子は悲鳴をあげた。  
「あ!!!ああああああっ!!んんぅぅんっひゃぁぁぁ!!!」  
快感の海に、意識が飲み込まれる。身体がばらばらになってしまいそうなほどの衝撃。  
自分の内部が、無意識のうちに貴巳を求め、激しく蠢いているのがはっきりとわかる。  
「………っっ!雪子………いくぞ」  
吸い付くような締め付けに、貴巳も既に我慢の限界だった。  
遠くなる意識の中で、それでも雪子は必死で貴巳にしがみつく。  
「た、かみ、さんっっっ!!!すき………すきぃぃ!!!」  
「………………………………っっっっ!!!」  
身体の中で何かが弾けたような衝撃があり、熱いものが最奥に注ぎ込まれる。  
びゅく、びゅくと数度に分けて注ぎ込まれるその圧力を感じて、  
雪子はうっとりと恍惚の表情を浮かべた。  
「………………大丈夫か?すまない、結局痛い思いをさせてしまったな」  
自分の上に覆いかぶさる貴巳に、しっかりと抱きしめられて、  
雪子はひどく安心した。  
シーツには、破瓜の証が点々と紅く残っている。  
「ううん…嬉しかったです、すごく」  
「………戻っている」  
「え?」  
「敬語だ」  
「え?ずっと敬語ですよ?」  
「いや、ついさっきまで言っていただろう。来て、とかおねがい、とか」  
ぼすっ、と貴巳の顔に枕を投げつけ、  
破瓜の痛みと、甘い痺れの余韻に浸りながら、雪子は目を閉じたのだった。  
 
 
14 はじまりのおわり  
 
どすん、とホテルのベッドに身を投げて、雪子はうんと伸びをした。  
バスルームからは、貴巳がシャワーを浴びる音が響いている。  
慌しくも楽しかった今日と、  
そして今日に至るまでの紆余曲折のことを、雪子は思い浮かべた。  
 
「………というわけで、結婚することになった」  
「えっと…家事に専念するため、結婚退職させて頂きます。  
短い間でしたが、お世話になりました」  
企画課の職員に、二人揃ってそう告げた時、雪子は、  
人はあんまり驚くと声が出ないのだ、ということを目の当たりにしたのだった。  
橋本あやだけは、したり顔で頷いていたけれど、他のメンバーは総じて、  
目が点で、絶句しつつ、頭上に?マークと!マークがそれぞれ20個ほど浮いていた。  
あやが「おら飲みにいくぞぉぉ!」と、石化した沢木を引っ張っていき、  
その後雪子はあやから散々「アフターケアが大変だったんだから」  
という愚痴をこぼされたのだが、今もってその意味はよくわからない。  
「まぁいいけどさ雪子ちゃんが幸せなら。………で、結婚式はどうするの?」  
「それが………しないつもり、だったんですけどね…」  
 
結婚を決めたものの、二人は結婚式をする気は全く無かった。  
貴巳は人前で見世物のようにされるのは真っ平だという理由から、  
そして雪子も、それほど貯金があるわけでもないし贅沢はできないという理由と、  
それに加え、父が事故を起こした相手が、まだちゃんと回復してもいないのに、  
娘である自分が祝い事など華々しくするべきではない、という思いもあった。  
かくして、二人の意見は一致し、三ヶ月後に入籍だけ済ませると決定したのだが。  
思わぬ伏兵がいたのである。  
雪子の母、美紀子の再婚相手であり、ロマンチストメタボ中年である義父、  
坂井義之氏である。  
 
「駄目だよ雪子ちゃん!!!結婚式は女の子の夢なんだから!!!  
遠慮なんてすることないから、式だけは絶対あげなきゃ駄目だよ!!  
せっかく可愛い娘ができたと思ったらお嫁にいっちゃうなんて、僕ほんとは悲しいけど、  
だからせめて花嫁姿だけは見せて欲しいんだよ。  
お母さんだって天国のお父さんだって、雪子ちゃんの花嫁姿を見たいと思ってるよ?」  
この調子で毎日毎日責め立てられ、  
挙句の果てに母までも、  
「折角なんだからやりなさいよ、結婚式。雪子がお父さんのことで遠慮することないわ。  
私と義之さんはさすがに式あげなかったけど、あんたまで倣うことないのよ」  
「いや、でも僕見たかったなぁ、美紀子さんのウエディングドレス姿」  
「じゃあ今から、写真だけでも撮る?」  
「ほんとにぃぃ!?じゃあ美紀子さんのドレスは僕に選ばせてくれる?」  
「嫌」  
「みっ美紀子さんそんな事言わないで!とにかく雪子ちゃん、  
お金のことは心配しないで、絶対式あげるんだよ?いいね?」  
 
と、この調子で結局押し切られてしまい。  
ゴンドラだのシャボン玉だの高さ15メートルのケーキだの言い出す義父を必死に抑え、  
あくまで質素に、親しい知人のみをまねいて式を挙げることに落ち着いたのだった。  
 
両家への挨拶も、無事に済んだ。  
貴巳の実家は築50年は経っているという古い日本家屋で、  
庭には見事な桜の大木が植わっていた。  
貴巳の1人きりの肉親である祖父は、貴巳そっくりの無表情・無愛想で、  
雪子は随分緊張して挙動不審になってしまい、ばつの悪い思いをしたのだが、  
後日貴巳から、雪子は祖父に随分気に入られたようだと聞き、  
複雑な思いがしたものである。  
雪子の家に貴巳が挨拶に来たときは、別の意味で大変だった。  
勝気な母と、鉄仮面の目線がかち合った途端、火花が飛んだ。  
お互いに目で威嚇しあいながら、それでも表面上はなごやかに話をしているものだから、  
雪子と義父は、ハブとマングースに囲まれた野ネズミのように、  
終始縮こまっていなければならなかった。  
帰り際に母が貴巳に話しかけた。  
「………結局、前にお会いした時におっしゃってた通りになりましたことね?」  
「………計画性を持って行動するのがモットーですから」  
「でもまさか、可愛い可愛い娘をこんなに早く、連れてっちゃう人が現れるなんてね」  
「婿には不足ですか」  
「まさか!…でも子供ができたらどっちに似るか楽しみですわ」  
「…………」  
お会いした時、というのは、酔っ払った雪子を貴巳が家まで送ってきたときのことだ。  
何を話したのか、雪子は怖くて結局聞けずじまいなのだった。  
とにかく、母と貴巳を二人にしないほうが良さそうだ、と義父と雪子は溜息をついた。  
 
そして今日。  
あまりにも短い準備期間にもかかわらず、何とか無事にこの日を迎えられたのは、  
ひとえに貴巳の仕切りの的確さと、義父の情熱のおかげである。  
お色直し、その他結婚式にありがちな演出は一切無し。  
ドレスは、母と亡き父が結婚した時のものを着ることにした。  
少し古びてはいたが、そうすることが何より父への供養になると思ったからだった。  
着付けとメイクが終わり、新郎である貴巳が部屋に入ってきた時。  
周りのスタッフが「ほら花嫁さんですよ!きれいですよね〜」とお決まりの文句で  
貴巳を促したのだが、言われた当の本人は雪子のドレス姿になぞ目もくれず、  
「読み上げる祝電を選んで欲しいそうだ」と電報の束を雪子に渡し、  
さっさと出て行ってしまった。  
目を点にするスタッフ達に、「………いいんです、慣れてますから…」と呟き、  
同情と好奇の目を浴びる羽目になったのはかなり恥ずかしかった。  
 
 
いよいよ式本番で、雪子と一緒にバージンロードを歩いたのは、  
突き出たお腹をタキシードで無理やり包んだ義父だった。  
入場の時には既に号泣していた義父は、雪子の家庭の事情を知らない人が見たら、  
どう考えても実の父(それもかなり過保護の)だと思ったであろう。  
式が終わっても目を真っ赤にしている義父を見て、母が雪子に囁いた。  
「義之さんね、うちではああだけど、仕事してる時はすごくびしっとしてるのよ」  
「えええ?想像つかない……」  
「だって、小さいなりにも建設会社の社長だもの。やる時はやるのよ、あの人は」  
「…そうなんだ。見てみたいな」  
「………私、やっぱり、モノを作ってる人が好きなのね」  
「………………そうだね」  
設計士だった亡き父は、今頃天国で、母の幸せを喜んでいるかもしれない。  
ちょっとだけ嫉妬したりしたりもしてるかな?  
大丈夫だよ、お母さん、お父さんのこともまだちゃんと好きだから。  
母へのわだかまりが、少しずつ溶けていくのを感じながら、  
雪子は空に向かって話しかけた。  
 
式は滞りなく済み、親しい人たちの祝福の声に包まれて、  
雪子はあらためて、幸せを噛み締めていた。  
特に嬉しかったのは、父の会社に勤めていた二人の社員が、近況を知らせがてらに  
お祝いに駆けつけてくれたことと、  
それからもう一つ。  
雪子は、ベッドサイドのテーブルに置いた、一通の祝電を手に取る。  
手書きの文章をそのまま印刷してあるその文字は、ひどく震えて、少し読みづらい。  
 
「橘雪子様  
ご結婚されるとのこと、風の便りに耳にしまして、大変嬉しく思います。  
あの事故以来、自分と同様にあなたも大変な思いをされてきたことと思います。  
お母様と二人、一生懸命に暮らしてこられた貴方が、ようやく掴まれた幸せを、  
心よりお祝い申し上げます。  
私事ですが、リハビリは順調に進み、後遺症も日に日に良くなっており、  
この冬には職場に復帰する予定でおります。  
雪子さんもどうか、末永くお幸せに。」  
 
今日、式が終わってから何度も何度も読み返したその電報を、  
雪子は胸にしっかりと抱いた。  
(………………………ありがとう)  
 
 
貴巳がシャワーを浴び終え、タオルで髪を拭きながら戻ってくる。  
結婚式の間でさえ徹底した無表情は、当然新婚初夜でも変わりは無い。  
隣に座った貴巳に、雪子は少しすねたような目線を送った。  
「………何だ」  
「…ドレス、見てなかったでしょ…」  
「見たぞ。見えないはずはないだろう」  
「そういうことじゃなくってですねっ!」  
「敬語」  
「どーーーでもいいじゃないですかそれはっっ!!」  
握りこぶしを固める雪子の頭を、貴巳がぽんぽんとあやすように撫でる。  
何だか妙なツボでも刺激されてるんじゃないかと思うくらいに心地よくて、  
結局いつも、こうやってほだされてしまうのだ。  
髪を撫でる貴巳の手が、いつの間にか雪子のバスローブの裾を割って、  
怪しげな動きをしているのに気づき、雪子が貴巳を睨む。  
「………何してるんですかっ」  
「…また敬語を使えないようにしてやろうかな、と」  
ぼすっ、と鉄仮面の顔に枕を投げつけ、  
『中嶋雪子』はさっさとベッドにもぐりこんだのであった。  
                               <了>  
 
 

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