藤堂が左手で額を押さえながらゆっくり起き上がる。それを見た黒沢がポットの麦茶を  
紙コップに注いで差し出した。「大丈夫?」かすかに頬を赤らめて訊ねた。  
「大丈夫よ」藤堂は自分の錯乱を思い出すと、あえてきっぱりと言った。  
冷静に、いつも通りに振る舞おうと意識していたのだ。  
「ただの貧血、私にはよくある事なのよ」そう言って乱暴に紙コップを奪う。  
それから、「どれくらい寝てたの?」と聞いた。  
「3分くらいだよ」黒沢が答える。  
「そう」  
部屋に沈黙が降りた。  
その沈黙は、誰より藤堂にとって気まずいものだった。だから彼女は自分から、  
「なら、さっさと次の組み合わせを決めましょう」と言った。  
 
藤堂が汗で濡れた衣服を着替えに部屋を出ている間に、浅井があみだくじを作る。  
帰ってきた藤堂を含めたメンバー五人がそれぞれ自分の名を用紙に書き込むと、彼女は  
幾重にも折り曲げられた紙の反対側の端を開いた。そこには白星と黒星のマークが  
一つずつ描かれている。  
白い星を辿った先にある名前が、その回の攻め手である。  
今回、それは池田であった。  
「え、あ、あたし?」  
池田が顔を赤くした。一瞬だけ嬉しそうな、次には不安そうな顔になる。  
誰が相手だろうと考え始めた。  
まさか怜が相手だったりしたら……  
嬉しすぎてそんな事は想像すらできない。  
それとも、あのミステリアスな浅井ちゃんだろうか?  
もしかして真面目な黒沢ちゃんかもしれない。  
それも嬉しい。  
でも、残り一人だけは困る……  
そう思ったとき、浅井がその名を告げた。  
「黒星は藤堂さん」  
 
藤堂はそれを聞いても表情を変えはしなかった。冷静な風を保ち続けた。  
どちらかと言うと表情を変えたのは池田のほうだ。  
「むりぃ!」という顔をした。  
「こわい……」と全身が語っていた。  
続いて浅井が賽を二度振る。  
出た目は、3、続いてもう一度3。  
つまり、ルールによれば池田は藤堂に「電気あんま」「縛り」「くすぐり」を六分間行える。  
それが決まると藤堂は「判ったわ……」と言って、ルール通りに、受け手として部屋の  
中央へ移動した。池田がその後を追う。  
「いつでもいいわよ」  
両手を後ろにつき、足を投げ出して池田に言う。  
その顔からは彼女が何を考えているか計り知れない。  
「う、うん……」  
池田は藤堂の前にかがみこんだものの、そこでまごついてしまった。  
あの藤堂の両足を抱え込んで、股間に足を突っ込むなんて、怖すぎる……  
特に今の藤堂さんはいつも以上に落ち着き払ってて、不気味だし。  
どうしよう。  
そう思っていると、浅井が助け船を出してくれた。  
「縛らなくていいの?」  
「え?」  
そうだった!  
2以上の目が出たら、攻めの時間を計り始める前に相手を縛り付けていいルール。  
あの藤堂でも、縛り付けられていれば、さすがに怖くない。  
池田は藤堂のどこを縛ったらいいか考えるのだった。  
もし私が攻めてる最中、つい耐えきれなくなった藤堂が私の足を押さえつけたとしたら?  
慌てて謝りながら攻めを中断する自分の姿が目に見えるようだった。  
それは……そんな攻め手は、だめでしょう、と思った。  
だから、  
「あの……手を縛っていい?」  
そう訊くと、藤堂は「……いいわよ。どうやって縛りたいの?」と言った。  
縛る、という言葉が出てから、藤堂は心なし落ち着きをなくしているように見えた。  
 
「あ、あれに」  
池田が藤堂のちょうど両脇に立っている高いポールを指さす。  
それは藤堂が財力にあかせてこの秘密の部屋に備え付けた拘束用の柱であった。  
ポールには一定の間隔で大きい穴が開いていて、そこにロープを通すことができるのだ。  
「……判ったわ……」藤堂が右腕を差し出す。  
池田はその手をそっと取って、手首が怜に縛られた痕で真っ赤になっているのを見ると  
保護のためにタオルをあて、その上からロープを巻き付ける。  
そして腕が肩の高さで真横に真っ直ぐ伸ばした状態から少しも動かせなくなるよう、  
ロープをぴんと張ってポールへ結びつけた。  
左腕も同様にする。  
これで藤堂はかかしのように腕を広げたまま、動けない。  
作業を終えて、その状態を改めて見ると、池田は自分でも理由の解らない胸の高鳴りを感じるのだった。  
藤堂は池田から目を逸らしている。その顔は、よく見るとほんのわずかに紅潮しているように思えた。  
「……これでいい?」藤堂がたずねる。  
(いいかな?)  
池田は考えてみた。  
藤堂の両足を自分で抱えるのは、怖すぎた。  
「あ……足も……縛っていい?」  
池田が聞いた。藤堂が投げ出した足の、すぐ横にも同じ柱が立っている。  
彼女はそこに、藤堂の両足首をも繋ぐつもりだった。  
藤堂はそれを聞いて、黙って足を差し出す。  
池田は藤堂の股を大きく広げさせ、両脚を、再び少しも動かせないよう両サイドの柱に結びつけた。  
それが終わった時藤堂は、両手両足を浮かせ、体の弱点という弱点を晒したまま、  
全く身動きもとれない恥辱的な姿となり果てていた。  
池田はサディストではないし、藤堂を必要以上に苦しめる気も全くない。  
その逆に、穏便に、出来るだけ恨みを買わないよう大人しくやるつもりであった。  
にも関わらず縛り方だけ見れば怜より遙かにえげつない事をしてしまっているのが皮肉だ。  
池田はそれから、予想してなかったほど無防備な姿勢を取らされて体を強張らせている藤堂へ、  
じりじりとにじりよって、彼女の体の前で膝立ちになった。  
そして両手を藤堂の体へ、両脇から鷲掴みにしようとでもしているかのように近づけ、  
また、しばらく逡巡してから、「はじめていい?」と聞いた。  
それが藤堂の緊張を果てしなく高める結果になっている事には無自覚に。  
 
「どうぞ……」  
藤堂は極力何でもない口調で言おうと努力したが、部屋の隅から二人を面白そうに  
眺めている怜はその声の強ばりを見逃さなかった。  
池田は藤堂の承諾を聞き届けると、両の人差し指を、おそるおそる、藤堂の開け広げられた  
腋の下へと近づけていった。藤堂が、来たる刺激に備えて、縛られた両腕を強張らせる。  
その強張った脇の下に、じわじわ、じわじわと指が迫ってくる。  
探るように、かすかに指先を動かしながら。  
指がTシャツの生地にまで届いた。その下の皮膚まではほんの数ミリ。  
衣擦れが藤堂の神経にかすかな刺激を加える。  
そして、ついに池田の指先が藤堂の皮膚に届いた。  
藤堂は、腕を震えさせないようにするためだけに全精神力を傾注しなくてはならなかった。  
腋の下の皮膚を指がさわりさわりと、軽く、確かめるようになぞり始める。  
くすぐったい。  
先程の怜の過酷な責めのせいか、体がいつもより敏感になっている。  
藤堂が目立った反応を示さないのが判ると、池田は安心して人差し指に続き中指や  
親指をその体に這わしだした。  
叫んで飛び退きたくなるような刺激だった。  
池田を挟むようにして大きく広げられた藤堂の太腿が、かすかに強ばりはじめた。  
池田は五本の指を、試すようにそうっと、肌の上に滑らせ、藤堂に、ぞわぞわする  
我慢できないような感触を与えてゆく。全部の指が藤堂に、じっと完璧に我慢し続けるには  
あまりに過酷すぎるくすぐったさを送ってくる。  
藤堂の目の下がわずかに紅潮し始めた。  
彼女が外に見せた変化はそのくらいのものだった。  
だから彼女への攻めは、自然、段々とつらさを増してくる。  
遠慮をなくした池田の指が、少しずつ少しずつ強く当てられるようになってくる。  
 
息を殺して、決して体に力を入れないよう、平然としていなくては。  
そう決意する藤堂をあくまでも屈服させようとするかのように、指は藤堂の繊細な神経を  
刺激するのだった。決して乱暴にではなく、からかうように、あざ笑うように。  
もう我慢できないでしょ? 笑っちゃいなよ、楽になるよ、そう呼びかけているかのような刺激である。  
目に力を込め、じっと耐え続けていると、池田の柔らかい指先が藤堂の一番の弱点に  
一瞬、触れた。あやうく激しく反応してしまいそうになる。叫びそうにさえなった。  
だが、何とか、ほんのわずか腕を震えさせただけで我慢できた。気づかれなかったはずだ。  
一瞬、それと判らないほど、わずかに腕を震えさせただけで済んだ。  
だが、長くその場所を触れられ続けたら、どうなるか判らない。  
(お願いだからそこだけはもう触らないでよ……)心の中で思った。  
だが、池田の薬指が、再び、前よりも強く、そこに触れた。  
意志で我慢できる範囲を超えた、脊髄に直接食い込むようなくすぐったさだ。  
ぴくりと、また腕をかすかに震わせてしまった。  
(こ、これ以上はもう来ないで……)  
そう思う間もなく、立て続けに池田の薬指がそこを走る。  
どうやら池田はしばらくの間この位置に手を固定することに決めたようだった。  
(ちょ、ちょっと……)  
だが、まだ耐えられる。くすぐってくる指は薬指。軽く、一瞬、そこをかすめるだけだ。  
一度指が当たるたび、思わず背を仰け反らせ暴れ出しそうになってしまう体を懸命に押さえ込む。  
二度、三度。繰り返し、何度も、しつこく池田の薬指が、藤堂の体の側面で一番弱い場所を  
通る。思わず大口を開けて笑い出したくなるくすぐったさだ。体は完全に封じられていて、  
身をほんの少し動かしてそこを薬指から逃がしてやることもできない。がら開きの弱点が、  
どうする事もできず、執拗に刺激され続けるのだった。  
 
「んぅ」  
突然、池田の人差し指がまさにその場所を捉えた。反射的に小さく声を漏らしてしまう。  
聞こえただろうか?  
聞こえていた。池田はその声を聞いて、(この辺は少しはは効くのかな)と思った。これまで  
藤堂があまりに反応を返さなかったので、彼女は拍子抜けしていたのである。だから池田は  
しばらくそこをピンポイントでくすぐってみることにした。  
人の両脚の間で膝立ちになって、相手の普段隠された場所をくすぐるという行為は、人を  
おかしな気分にさせるものである。池田もいつの間にか、先程の怖さを忘れ始めていた。もっと  
激しく刺激してやりたい本能的な欲求が徐々に思考を奪ってゆく。  
池田は人差し指一本だけで露骨にその場所を狙い、指先をくりくりと揺らしながら押し込み、  
くいくいとなぞる。彼女はそこが藤堂の弱点であることに確信を持っていた。  
藤堂は思わず腕を引っ込めようとしてしまう自分を止めることができなかった。彼女の腕の  
先でロープがぎいぎいと軋みをあげる。目の前に立つ池田はその場所をしつこくいじくってくる。  
両手それぞれ三本の指が急にそこをつまんだ。  
「っ」  
藤堂の全身がびくんと揺れるが池田は構わない。まだ大して効いてはいないのだろうと思っていた。  
つまんだままふにふにと揉み込む。  
「ふくぅ、ふふっ」  
藤堂がはじめてはっきりした笑い声を立てた。池田の指先は意を得たりとそこを狙い撃ちに  
攻めはじめるのだった。  
 
今まで池田が藤堂の眼中に入った事はなかった。  
彼女は突き崩してやるに足る気概を持つ者にしか興味を引かれないのだ。  
池田のようなヘタレは問題にもしていなかった。  
その池田の指先が今、彼女を崖っぷちまで追い詰めている。  
怜にやられた時よりなお悪い、最悪の屈辱である。  
これだけは絶対に耐えなければならなかった。  
だがくすぐったすぎる。  
くすぐったすぎ、くすぐったすぎ、くすぐったすぎた。池田の指が意地悪さを増してゆく。  
一瞬指が強く食い込むのを、何とか耐えきったと思うと、その瞬間にはもう次の指が食い込んでいる。  
最も苦しい刺激が休みなく無防備な場所に与えられ続ける。  
池田の指が、つん、と強くそこをつついた。  
「くふぅ!」  
藤堂がついに大きく反応を見せた。両腕で引っ張ったロープがびいんと振動する。  
この頃には、性的な事をこよなく好む池田の性格が遺憾なく発揮されはじめていた。  
池田は怜を尊敬していた。  
何でもできてかっこいい、私が馬鹿な事をしたときはいつも助けてくれる、凄い平本怜さん。  
しかし藤堂は、その怜をもあらゆる点で凌駕しており、いつも怜をおもしろ半分に虐めていた。  
そんな彼女に、池田は恐怖に近い気持ちを抱いていた。だがその裏には憧れもまたあった。  
その藤堂を自分が思うままに責められたら……  
ぞくぞくするような気持ちが心に湧いてくる。  
池田は藤堂の最も敏感な場所を、立て続けに何度も強くつついた。  
 
「っ、……、っ!」  
その度に藤堂は確かな反応を返してくれる。いける。  
池田は爪を立てて三本の指でそこをコリコリと掻き混ぜはじめた。  
藤堂が一番されたくない事であった。  
「くぅぅ、ぅぅっ、ふ!」  
どんなに押さえようとしても声が漏れてしまう。  
それでも容赦なく指はそこを刺激し続ける。決して休む間を与えない。  
我慢の限界が近づいていた。  
「ん……!……!……っっ!」  
指が蠢き続ける。時々その弱点以外の場所をコリコリ責めたりしながらも、  
最後にはその場所に戻ってきた。今では指はこれっぽっちの配慮も見せずそこに食い込みだすのだった。  
池田の眼前と両脇で藤堂の全身がはっきりと跳ね回っていた。  
(なかなかさっきみたいにならないな……)  
そう思いながら池田は腋の下を少し下ったその柔らかい場所を揉み込む。  
「ん……うぅぅっ……」  
藤堂の声は綺麗で、悩ましく、どこか人の嗜虐性を煽るところがある。  
脇腹や腰骨を池田の手がランダムに突き、揉み、引っ掻きはじめた。  
「く、くぅぅぅ」  
(池田なんかに……)  
そう思ってももう声を抑えることはできない。  
 
痺れを切らした池田が藤堂の両脇を手のひら全体でぐわしとつかみ、ごりごりと揉み始めた。  
親指をぐりぐりと押しつけてくる。  
今の藤堂のような敏感な体を持ってこれに耐えられる人間など存在するはずはないだろう。  
「ぐ、くぅぅぅぅ……!」  
藤堂は全身の力を込めて、なんとか初めだけはそれに耐えた。  
だが池田は、もう少しで落ちる、とすでに看破している。  
さらに指でぐにぐにと藤堂を揉み込む。  
「うぅぅううんっ!」藤堂が口と眉根をきつく結んでのけぞる。  
慈悲深い人間ならこれ以上は決して続けられないだろう。  
(も、もう……もう……!)  
そして池田はが他の指では相変わらず藤堂を揉み込みながら、人差し指だけを曲げて藤堂の  
弱点をがりりと引っ掻いた。とどめをさすように。  
「く、くぅ……くぅぅあはっはっはっはっはっ!……ひっ……ひあっはくくく、くうぅぅ!」  
体が自然に激しくもがき、声からは笑い声が勝手に飛び出す。止めることができない。  
一瞬でも指が止まってくれれば理性で何とか押さえ込むこともできたかもしれない。  
だが、池田はそれどころか、藤堂が笑い声を立てた途端指をさらに強めるのだった。  
「ひんっ……く、ぐぅぅ、ぐ、くくく! くくく……くぅあ、は、あははは、は……あはははは!」  
口を閉じていることが出来ない。体が自分の意志を無視して暴れ出す。せめて両手で口を塞ぎたかった。  
 
池田はもう藤堂をとことん責めるつもりでいた。怜と自分、二人がかりで藤堂をやっつけるのだ。  
「ぐ、ぐぅぅ……ぐぅ、く、くふう!!」  
池田は自分の指であられもなく悶える事しか出来ない藤堂を見ながら考えた。  
どうしたらもっと屈辱を与えることができるだろう?  
池田は左手を自分の左側に移した。  
そこにあるのは藤堂のぴんと突っ張った太腿である。  
そこをさっと一撫でに、膝のすぐ上から内股までなで上げた。  
藤堂の体がびくんと大きく跳ねた。効いてる。  
池田は右手でも太腿をくすぐる事にした。  
両手の五本の指で藤堂の内股をかりかりと引っ掻き、こりこりと爪で揉み込む。  
「ぐぁうっ!……ふ、ふんっ……ふぁぅ!」  
ふつう決して人には触らせることのない場所を責められて藤堂の頬が羞恥に染まる。  
池田の指が執拗にそのきわどい場所を刺激した。藤堂の両脚が何とかそこを閉じようと  
もがくが、ロープをぴん、ぴん、と突っ張らせ、震えさせるだけで、1センチたりと動かせない。  
そんなもがき続ける藤堂の太腿を池田は残酷にくすぐり続ける。  
藤堂の体が何とか気を散らそうと、意志とは関係なく首をぶるぶる振った。髪が振り乱れる。  
相手が藤堂でなければ彼女はこれほどの責めはしなかったろう。  
学校での藤堂の無敵ぶりのために、池田には、彼女はいくら責めても責めたりないような  
気がするのだった。中途半端な攻撃は手負いの獣を放つようなもの。  
徹底的に最後までやらなくてはならないのだ。  
 
池田は左手では変わらず太腿をコチョコチョと刺激しながら、右手を再び先程の弱点に伸ばした。  
藤堂は顔をのけぞらせて天井を睨んでいたのでそれは不意打ちになった。  
ずっと太腿だけに神経を集中させていた所に、晴天の霹靂のような責め。  
「はぁうあう?!」  
がくんと全身でのけぞった。それを好機と池田はさらに強く弱点をいたぶる。もう情けをかける気は  
ゼロだった。藤堂を相手に、手加減など出来るわけがない。全力でやらなければこっちがやられるのだ。  
全精神力を上げて、藤堂を絶対的に追い詰めるくすぐり刑を執行した。  
「う……! う! う! う! う! うぅぅ……うく、かはう!」  
藤堂は最早目に涙を浮かべている。  
もう少し。もう少し追い詰めれば彼女はさっきのように身も瀬もなく狂いもがくに違いないのだ。  
そのためにはどうしたらいいだろう?  
池田は左手では爪を立てて太腿を一直線になぞり上げ、なぞり下ろしながら、右手を藤堂の  
Tシャツの中に突っ込んだ。そして弱点を、直接くすぐる。藤堂の素肌を池田の指がなぞり回す。  
「んんうぅぅぅぅ……! ぐ、くぅ……!!」藤堂が全身で縮こまろうとするがロープはそれを許さない。  
四本のロープはどれも限界までぴんと張り、藤堂の震えがそのまま伝わって震えるのだった。  
藤堂の、丸出しの、剥き出しの、一番の弱みが意地悪く責められる。  
やめてくれるよう、懇願したかった。  
だが池田相手にそんな事は、死んでもできない。耐え続けるしかない。  
第一、頼んだところで聞いてくれないに違いないのだ。  
「ぐうぅ……かははははっ……くぅぅあはっはっはっは、き、きあっは、んんんっははははははははは!」  
体が酸素を求め、自動的に大口を開けて笑い出す。手も足もでない。何をすることもできない。  
ただ弱点を池田に晒し、彼女の好きなようにくすぐらせ、抵抗もできず悶えるばかり。  
「がっ、きっ……んくう!!んくうううううううああっひいいあ!!あぁぁぁぁぁぁぁぁ!」  
(やった!)と池田は思った。  
もう少し、もう少しで、くすぐりで完全に屈服させられる。藤堂は許しを乞うだろう。  
そうしたらどうする?  
もうやめてあげる?  
とんでもない。  
電気あんまでとどめをささなくちゃ。  
 

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