「攻めは、藤堂さん」  
アミダクジを辿り終えて浅井が告げると、その場の全員に戦慄が走った。攻めが藤堂となると、  
もし受けに選ばれたならとてつもない目に遭わされるのは確実だ。全員が緊張して、浅井の  
次の言葉を待つ。  
「受けは……平本さん」  
怜は頭を殴られたようなショックを感じ、ほとんど死にたくなった。対照的に藤堂は顔を  
歓喜に輝かす。  
(なんで……何で藤堂よ……)  
絶望的な気分の怜をよそに、浅井がサイコロを振る。出た目は、4、6、3。  
時間は17分、行われる責めは、「電気あんま」「縛り」「くすぐり」「指責め」の四種類に決定。  
(ゆ……指……十七分……)  
十七分にわたって自分に加えられるだろう屈辱を想像すると、怜は気の遠くなる思いがするのだった。  
藤堂は浅井の言葉を聞くと、軽やかにふわっと立ち上がって、部屋のポールに囲まれた中央地帯  
まで歩いてゆく。「さあ、始めましょうか、怜……あれ、どうしたの? 怖い?」彼女は自分の後を  
重い足取りでとぼとぼと追う怜を振り返って言う。  
「気が重いのは当たり前でしょう」怜が言い、多少、足を早める。  
「舞台」に辿り着くと、彼女は藤堂の前に、なるべく毅然とした態度を保とうと努めながら立った。  
「……で、どうする気?」  
そう言って藤堂の、自分よりだいぶ高くにある目を睨んで訊ねる。  
「そうね……あなたは、きっと大暴れしちゃうだろうから、まずは縛っちゃおうかな」  
 
藤堂はそう言って、床のロープを拾い、相変わらずにっこりと笑いながら、びいんと両手の間で弾ませる。  
藤堂に、何をされても抵抗できないよう縛られるというのは、悪夢としてもひどすぎるなと怜は思った。  
「そこに座ってくれる?」  
怜は藤堂の指さしたあたりに、彼女を睨み据えたままでゆっくりと座り込む。  
「もっとこっち……もう少し右」藤堂は彼女にさらに細かい注文をつけ、「いいわよ。そこで寝そべって」と命じ、  
怜は言われた通りの位置に寝そべる。一番嫌いな相手に、「腹を見せて横たわる」という動物共通の降伏の  
姿勢を取らされる悔しさに彼女は唇を噛んでそっぽを向き、藤堂はそれを楽しそうに眺めた。彼女に  
とって自分に噛みついてくる人間が敗北に顔を歪めるのを見るより楽しい事などないのである。  
藤堂が怜の右足を掴むと、ぴくっとその足が大きく跳ねた。  
「怯えすぎよ」藤堂が面白そうに良い、怜は顔を赤らめる。  
そして藤堂は、掴んだ足を高く、地面と60度程度の角度を成すように持ち上げて、大きく広げさせ  
横のポールに縛り付けた。怜は自分が想像以上にひどい姿勢を取らされようとしているのを悟り、  
動揺する。藤堂は彼女の左足も取って、同じように持ち上げ反対側のポールに縛り付ける。  
それで怜の両足は高々とV字型に持ち上げられたまま動かせなくなった。  
「さて……次は手ね」  
藤堂は薄く笑って怜を見下ろしながら彼女の頭のほうへ移動し、そっぽを向く彼女の投げ出された  
左手を取って頭の横まで持ち上げさせ、彼女の斜め上のポールに結びつけた。続いて藤堂が  
反対側に回り込むと、怜はさっと、そのまた反対に顔を向け直す。藤堂はそんな様子を見ると  
ますます嗜虐心が掻きたてられる。藤堂は彼女の右手も取ると、ことさらにゆっくりと、楽しむように  
ロープを一巻き一巻き絡めていった。彼女にとっては縛るのも重要な前戯である。責めはもう  
始まっている。  
 
池田は藤堂のロープに少しずつ少しずつ絡め取られてゆく怜の、悔しさに歪んだ顔を見て胸が  
高鳴るのを感じる。  
そして拘束が完成する。両手を乳児のように上げて、両足を高く持ち上げたままぱっくり開いた  
彼女を、藤堂はくすくす笑いながら観賞し、視線で怜を辱め、それから、怜の足の間に立つ。  
「さあ……覚悟はいいかしら?」  
バレエのように右足をつま先を下に向けて持ち上げて怜の股間の上で揺らしながら藤堂が言う。  
一番いじめてあげたい相手をこれから自分のものにできる高揚感に、頬はピンクに染まっている。  
「か、勝手にしなさいよ……」怜が消え入りそうな声で呟いた。  
「じゃあ、始めよっか……」そう言いながら張り詰める怜の両足の間で足をゆっくりと下ろしてゆく。  
怜が両手をぐっと握り、来る刺激に備えた。  
すると、「あ、ごめん……ちょっと待って?」藤堂が何かを思い出したというように言った。  
(何よ)そう思い、怜が一瞬気を緩め、握りしめた手を開いた瞬間、藤堂のつま先がスパッツの  
上から怜の秘部を不意打ちに一撫でした。びくっと震えて手を握り直す怜を見て藤堂は、なんて  
素直な子なんだろうとほくそ笑み、身を固める怜に二度目三度目の刺激を加える。  
大嫌いな敵である藤堂に恥部を足で弄ばれるという非常事態に、怜は過剰に反応して彼女を  
喜ばさないよう耐え忍び続ける以外の選択を持たない。  
藤堂が足の裏全体を怜の広げられた股間に、触れるか触れないかの軽さでそっと置いて、  
柔らかく振動させ始めた。怜は藤堂から与えられるむずがゆい感覚を息を殺して無視しようとした。  
藤堂は繊細で優しい振動で、ゆっくり怜をほぐしてゆく予定だった。自分に敵意を抱いている人間を  
責める時の鉄則、「最初は絶対に乱暴にしない」敵意を掻きたててしまったら全てが台無しだ。  
 
一生懸命悦ばせてあげようとご奉仕するくらいで丁度いい。いつくしむようにそっと愛撫してあげよう。  
アメ・アメ・アメ・アメ・アメ・アメ・アメ、最初は一途にほのかな快感を差し出し続ける。ムチはそれから  
でいいのだ。飴のような優しい快感にすっかり蕩けて抵抗力を失った身体に思い切り振り下ろしてやる  
ムチが、最大の効果を発揮する。  
藤堂は足の位置を少しずつずらしたり、時々さすさすと秘部全体を撫でたり、刺激に変化を込めて、  
怜を陥落させる快楽の罠を慎重に張り巡らす。  
怜は床に横たわりながら冷静になろうと悪戦苦闘する。  
(しゃんとしなきゃ……)  
怜の頭は混乱している。どんなひどい攻めを受けるのかと警戒し、敵に向かって緊張し続けの身体は、  
どんな些細な刺激にも必要以上の過敏さで反応してしまう。  
手足を拘束されたまま、撫でるようなソフトな刺激を秘部に加えられ続ければ、相手がどれほど嫌い  
な人間だろうと、性感を感じずにいられるわけはない。ところが怜にとっては、藤堂の攻めに快感を  
覚えてしまうことは、心の敗北そのものだった。  
快感を否定しようとする彼女の敏感なところで、生き物のように蠢き続ける藤堂の足。  
怜は戸惑う。ただ気持ち悪い屈辱なだけのはずの藤堂の攻めが、気を抜くとすぐ気持ちよくなりそうで。  
(やめてよ、これ……)じれったくなる中途半端な刺激で、つい体をもそもそ動かしたくなる気持ちを  
怜は押し殺す。そうしていると藤堂が足指で下から強く怜の陰核をさすりあげた。一瞬だけ。  
透視能力でもあるかのような的確なヒット。  
「……!」  
怜の息が詰まる。  
 
「あ……ごめん」  
また土踏まずで優しい振動を怜に送る。  
(何で謝るのよ……!)  
パンツが湿り気を帯びてくる。それがわかる。刺激は段々とはっきりした快感に変わってくる。  
休みなく加えられる微弱で優しい振動は、それを快感に感じてしまえば残酷な焦らし責めに早変わり。  
藤堂は怜の表情を観察して、どんなちょっとの変化も見逃さない。藤堂は彼女が気持ちいい  
やり方を次々と暴く。純粋なソフトな快感を連続して与えることで物足りない気持ちを起こさせる。  
(これ…やばい……)  
藤堂は彼女一流の技巧で、押さえがたい快感を彼女に加え続ける。怜が「こうされたら一番我慢  
できない」と思うポイントをそのつど的確に突く。怜は、秘部を襲い続ける甘美な刺激に  
心がとろけそうだ。藤堂の攻めはあくまでも柔らかい。  
藤堂のつまさきがくりくりとほじくるように動く。怜は痺れるような快楽に両手をぎゅっと握りしめる。  
そのつま先が、緊張する怜の足の間で少しずつ上に近付いてきて、親指の先がクリトリスに触れた。  
「っ」  
足の先が、クリトリスに軽く触れたまま細かく震え続ける。  
(相当、気持ち良いでしょうね……)藤堂は切なげに眉尻を下げる怜の顔を見て思った。  
(もうちょっと気持ち良くしてあげましょう)  
振動を続けたまま親指の先をくいくいと動かして陰核を何度も軽くさする。  
「ふっ」  
怜は小さな顔を横向けて、肩に顎をつけるようにしながら、絶え間なく送り込まれる快感を必死に耐える。  
 
細い首の上には、乱れた髪の間から真っ赤になった形のいい耳がのぞいていた。  
怜の焦燥感は刻一刻と強くなってきていた。  
藤堂の指によって上下左右にこすり回され続ける陰核から、強制的に流し込まれる  
強すぎる快感。こんな刺激を、私は身動き一つできないまま、ただじっと耐え続けなければ  
ならないのか、そう考え、自分の無力を意識するほど、快感が抗いがたいものになってくる  
気がした。私はいつまで、脚を大きく広げたまま、藤堂の器用で意地悪すぎる足から  
こんな刺激を受け続けなくてはいけないんだろう。  
(こんなの、耐えれるわけない……)  
さっきから、一番敏感なとこばかりを、しつっこく延々弄ばれて、逃げられない。  
心拍数が部活の時みたいに上がって、呼吸も抑えていられなくなってきた。  
(そろそろ気持ちよくて仕方ないって感じね……このまましばらく可愛がってあげましょうか)  
藤堂は、怜が一番表情に余裕をなくす位置と動きで足を固定し、彼女の全身を徐々に  
快楽の糸でぐるぐる巻きにしていく。  
藤堂がわざと指を一瞬、ほんの少し強く体に食い込ませるたび、ただそれだけで全身の筋肉が  
びくっと波立つのを、怜は止められない。藤堂がただほんのちょっと足を動かすだけで、こんな  
どうしようもないゾクゾクが私に与えられるなんて、理不尽すぎる、と彼女は思った。  
彼女はかすかにだが、はっきりと身悶え始めていた。執拗に下半身からせり上がってきて胸を満たす  
切ないような快感を少しでも逃がそうと、身をもぞもぞよじる。しかし藤堂の足はそれにはお構いなしに  
淡々と、抗えない優しい快感を強制してきて、心を刻一刻と支配してくる。  
 
(くぅ……き、気持ちい……いや、こんなの全然気持ちよくない……気持ちよくない……)  
手足を拘束されたままではそう心の中で唱えるしか怜には抵抗の方法はなかったが、否定  
すればするほど、脚の間でモゾモゾ動く藤堂の足は快感をますます明白な事実として突きつけてくる。  
(気持ち良くない、気持ち良くない、気持ち良くない、気持ち良くない……お、お願い……)  
心の中でいくらそう唱えても快感は強まる一方で、喘ぎ、のたうち回りたくなってくる。  
藤堂が(そろそろいいかしら?)と、足指に今までで最大の力を込めると、初めて怜がはっきりした  
呻きと吐息を漏らした。  
(うん。できあがったみたいね)  
藤堂はわくわくしながら、怜の股間で足を押しつける力を増し、振動を徐々に激しいものにしだした。  
怜にとっては、今まででも十分耐え難い刺激だったのがいよいよ追い詰められた形になる。  
藤堂は親指の先でクリトリスを、右から左からコリコリと擦り始める。藤堂が親指を持ち上げて  
それまでと逆側に移すたび、怜は背筋を走り抜ける快感にのけぞる。荒くなった息を抑えることが  
できず、目は潤み、体から汗が噴き出している。今までに味わったことがないような不思議な  
高揚が胸から溢れて止まらない。  
 
(さて、と)  
藤堂がいよいよ本気になって動き始めた。足を小刻みに繊細に、しかも強く激しく震わせる。  
ちょうど市販のバイブレーターの「中」程度の、もはや手加減や焦らしの域を超えた威力である。  
(やばい……これは無理……絶対無理)  
怜が腕を引っ込めて体をかばおうと反射的に力を込める度、白い手首にロープが食い込む。  
藤堂に踏まれているあたりの体がどんどん熱くなって脳を溶かしはじめる。  
(やだ、やだ……やだ)  
意識が押し流されはじめていた。知識としてだけ知っていた「イク」という状態が自分に近付いてきている  
らしいことが陶然とした心の中で分かった。  
藤堂は、それまでもぞもぞとわずかな身動きを続けていた怜が急に体を緊張させた状態で  
身動きしなくなったのを見て唇の端をつり上げた。この状態をキープしてあげるのが楽しいのよね。  
そう思って振動を、機械でいう「弱」程度に抑えた。  
頭の芯が爆発しそうに熱くなっていた怜は、快感が波のように退いていったのに一瞬安堵した。  
吹き飛びかけていた意識が帰ってくる。それでも、いまやしとどに濡れた怜の足の間では、  
いまだ湿り気は増し続けている。  
藤堂は怜が唇をきゅっと引き締め、かすかに顎を上下する様子をしばらく眺め、多少熱が  
冷めたなと見ると、再び足に「中」の力を込めた。  
(また……!)  
 
たちまち、さっき退いていった波がもう一度、前よりも強い勢いで、押し寄せてくる。  
(や……こ、今度こそ駄目だ……)  
怜が両手を握りしめ、ロープで繋がれたポールを引っ張ろうとするように腕に力を込める。  
と、藤堂がまた力を弱めた。  
(あ、遊んでる!?)  
これで怜にも藤堂がわざとそうしていることがわかった。  
それが分かったからといってどうすることもできず、ただ遊ばれ続けるしかないのだが。  
藤堂がまた振動を「中」に上げる。  
(こいつ……!)  
藤堂が、傍目には何が違うのかよほど注意しないと判らないくらい微妙に足の  
力加減を変えるだけで、自分の心が良いように左右されてしまうという事実が怜の  
心を締め付ける。  
怜が歯を食いしばって、胸のなかにこみ上げてくる何かを押さえようとする。  
そしてとうとう押さえきれなくなるかと思った途端、藤堂がさっと力を抜く。  
そしてそれまで詰めていた息をそっと吐きだしかけると、また振動が強まって、怜に最大の  
緊張を維持し続けることを強いる。  
怜は顔や首筋に大きな汗の滴をいくつも浮かべて眉を顰めながら藤堂の足と戦い続ける。  
だが、足を武器に攻めてくる藤堂を、性器で迎え撃つというのはいかにも分が悪い勝負だった。  
好きなようにどこまでも弄ばれる以外、選べる道があるはずもない。  
 
怜が小さくうめき声を上げ、指をぴくっと震えさせると、また藤堂が責めを弱める。そしてしばらく  
微弱な刺激を加えると、次には今までの振動メインの動きから一転して、ぐりぐりと踏みにじる  
ように足を押し付ける。怜はそれに耐えきれず頭を仰け反らし、藤堂は追い打ちをかけるように、  
力を入れて足を押し付けたまま指先をもぞもぞとランダムに動かして、陰核周辺を意地悪く刺激する。  
怜はその動きで再び絶頂寸前まで追い込まれ、縛られた足の先を痙攣させる。  
だが今度は今までと違って、もう怜が我慢の限界まで来ているにも関わらず、責めは弱まりはしなかった。  
いや、今までほどには弱まらなかったというべきだろうか。  
怜が、脳天を突き上げ続ける快楽に人形のような顔をくしゃくしゃにして全身に力を込め、  
後頭部を床に押し付けるようにして顎を引いたまま仰け反る。  
(やっと掴めてきた……)  
藤堂は「弱」と「中」の中間よりちょっと上、程度の刺激をキープし続ける。いままで藤堂が怜を  
絶頂寸前まで追い込んでは休憩させるのを繰り返していたのは、怜がどの程度までの刺激なら  
耐えられるかを慎重にチェックするために他ならなかった。  
焦らし責めの極意は、達しそうで達さない限界状態をいつまでキープできるかにこそある。  
それを計ることこそが藤堂の最大の特技だった。  
「―――ぅっ――」  
藤堂が足先を巧みに操って怜をさすり上げると、怜がガクッと右肘を持ち上げ、首を左に振る。。  
その様子を見て藤堂はわずかに足の動きをトーンダウンさせる。すると責め自体は軽くなって  
いるにも関わらず怜の暴れる動きはますます激しくなり、両肘を左右に大きく振り始める。  
藤堂がまた微妙に動きを早めると、怜は両足を引っ込めようと膝をガクガクと動かして  
ロープを何度も強く引っ張り、それを見て藤堂はしばらく足を動かすのをやめる。  
そして二秒ほどの空白を置いて、また先程と同じ程度に強い振動。  
これらのすべての動きを通して、怜は絶頂ギリギリのところで維持され続ける。  
「っう!」  
(こんなの聞いてないわよ……!)  
内心で叫びながら、想像したことすらない快楽の延々たる持続に怜がのたうつ。  
 

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