藤堂は一瞬の余裕も与えないように、そして絶頂の開放感も与えないように、なおも
巧みに執拗に執拗に怜をいたぶる。怜の顔がこれ以上ないほど赤らんで、苦痛すれすれの
快楽のために弱々しく歪む様を、じっくりと堪能する。
(そろそろ潮時ね)
怜が背を持ち上げて反らしたり、全身を使って悶え続ける様子を見て、これ以上の責めは
ただ怜を刺激に慣れさせるだけだと判断した藤堂は次のフェイズに移ることにした。
藤堂が足の動きを急にぴたっと止めた。一秒、二秒、三秒。
怜は体のそれまで持ち上げていた部分を全部ぐたっと倒し、脱力して荒い息をつく。
その目は汗の伝う頬の上で潤み、力なく藤堂を睨んでいる。
「そんなに気持ち良かった?」
まだ怜の股間に足を置いたまま小さく笑って藤堂が言う。
「気持ち悪くて仕方なかったわよ」
怜が目を反らしながら即答するが、息が詰まっているのは隠すことができない。
「あら、そう?」
藤堂がにこりと微笑むと、怜の体がぴくっと震えた。眉間に皺を寄せ、目を細める。
また藤堂の足が強く押し付けられ、震えはじめたのだ。
「ほら、気持ちよさそうな顔」
藤堂がからかうように言うと、
「どこがよ。全然よ」
と怜が、両手首を顔の横で縛られたまま、天井を睨んで言う。
すると藤堂はさらに足に力を込めた。「中」よりも少し強いくらいの、今までで最大の力だった。
するとたちまち怜の中で、この短い休憩のためいったんは薄れていったあの快感の波が
再びせり上げてきて、彼女を体の内側から支配しはじめるのだった。
「これでも?」
それを知った上で藤堂が微笑みながら聞く。
「こんなので何も感じるわけがないでしょ」
しかし、そう答える怜の表情はすでに、こみ上げる快楽に必死に耐えていることが誰の目にも明らかな、
艶めかしいものに変わっていた。
「なら、これなら?」
そう言って藤堂はさらに激しく足を震わせた。今まで以上の力が籠もっているというのに、振動も
また、さらに繊細で小刻みなものになった。柔らかい足裏は服の上からぴったりと秘部にフィットして、
その振動を余さず伝える。市販のバイブレータを凌駕する精密な動きだった。
怜はすぐに返事をすることができなかった。藤堂が足を大きく動かした瞬間、今までで最大の快感に
襲われて、歯を食いしばってそれに耐えるしかできなかった。もちろんそれも藤堂の計算通りだ。
藤堂は注意深く正確に、怜が全力を尽くせば何とかぎりぎり耐えられる程度の刺激を送っていた。
数秒の沈黙の後、怜は何かを振り払うかのように首を一度大きく振って、
「利かないわよ」
と小さく叫ぶように答えた。
その瞬間、藤堂が短く笑って、
「嘘つき」
と言い、持ち上げられた怜の両足首をぐっと掴んで、さらに強く怜に自分の足を押し付けた。
怜が鋭い吐息を漏らしびくっと体を跳ねさせる。その勢いで服が持ち上がり、ずりあがって、
わずかに臍がのぞいた。押さえがたい快感が今にも彼女を飲み込もうとしていた。
「もう我慢できないわね。どうする?」
目をぎゅうっと閉じ、最後の力をふりしぼって一秒でも絶頂を先に延ばそうとする怜に藤堂が
笑いかけるが、怜には返事をすることができない。彼女の腹部の剥き出しになったところが小刻みに
上下に震えていた。
「嘘つきにはお仕置きをしてあげないとね。どんどん強くしていくわよ」
そう言って藤堂が、足を依然激しく動かしたまま足指を動かして怜の陰核を刺激する。
さらに一層強くなった快感に、ついに怜は耐えきれなくなり、体をがくがくと震わせて、初めての
オルガスムに達してしまった。顔は泣きそうに歪みながら、同時に明らかな恍惚の表情を浮かべていた。
が、藤堂は一瞬も動きを休めることなく、今までと同じく激しい振動を与え続ける。長い間我慢
した後の絶頂感はただでさえ強烈で、それだけで腰が砕けるような強烈な快感だというのに、
それに加えてさらに秘部を刺激され、恐ろしいほどの快楽の渦が怜を巻き込みはじめた。
「ほら、気持ち良い」藤堂が首を傾げて怜の顔を見ながら言う。「これからもっと気持ち良く
なるよ」言って足の振動をまた一段と激しくした。怜の足が、ぴったり閉じ合わされようとする動き
をロープに妨げられ、内股になってぴくぴくと筋肉を痙攣させ、ロープにその震えを伝わら
せている。喘ぎを漏らしながら、肘を立てて頭を抱えるような姿勢で身動きせずじっと耐
える怜を藤堂は淡々と責め続けた。
「大丈夫? 感じてますって認めたら少しは優しくしてあげても良いけど?」藤堂が聞く。
「さっきから陳腐な台詞ばかり、うるさいわよ」怜が答える。
藤堂はそれを聞くと足の親指と人差し指を使って怜の陰核を挟むように揉み込んだ。怜が
たまらず喘ぎ声を漏らすと、畳みかけるように
「あなたのお声のほうがうるさいんじゃない?」
とくすくす笑いながら言った。怜は何も言い返せず、これ以上は決して声を漏らすまいと歯を
食いしばるが、藤堂はそれを見越してさらに指を巧みに動かし、絶対に耐えられないような
刺激を加えた。怜は我慢しようと全力を尽くすがあまりの快感にどうしても声を抑えることが
できず、悔しさのあまり涙目になりながら、一層張り詰めた、淫靡な声をあげてしまう。
「ねえ、その声、ほんとに我慢できないの? そんなに気持ち良い?」
藤堂が意地悪く聞きながら怜を彼女が一番苦手とするやり方で責める。口をぴったり
閉じて声を出すまいとしているにも関わらず怜の肺と喉は勝手に痙攣して「ん、んぅ」と
はっきりした喘ぎ声を作り出す。
「ねえ、平本さん。私あなたが必死に耐えてる姿は結構好きよ」
怜の秘所で足を縦横に動かしながら藤堂が言った。
「私もあなたがこんな幼稚な事で私より優位に立ったつもりになって、一人で悦に入ってる
姿は嫌いじゃないわね」
怜が荒い息の下で、暴れ出しそうな体を抑えながら言い返すと、藤堂はぐりぐりと乱暴に
怜を踏みにじった。怜は両手をぐっと握ってそれに耐え、面白がっている表情を無理矢理
作って藤堂に笑いかけた。
「あなたがあと一回イっちゃったら、もっと素敵なことをしてあげるから。もし嫌だったら
一生懸命イかないように我慢しなさいね」
そう言って怜の両足首を掴んだまま、容赦ない刺激を与え続けた。
実のところ怜はさっきからの藤堂の攻撃に、もういつ達してもおかしくないほどに追い詰め
られていた。
「我慢もなにも、アクビを我慢するのが大変で仕方ないわよ」
と口では言うものの、自分の足の間で大きく震え続ける怜の足から送られてくる刺激は
耐えようとして耐えられるような生半可なものではなかった。
「そう。これでも同じ事が言えるかしら?」
藤堂が言って、足をさらに激しく動かした。市販のバイブレータの「強」に値する、しかも
それよりさらに人に快楽を与えることに特化した、神業のような動きだった。
たちまち、快感が怜のなかで猛烈に暴れ狂う。
「え? 何か変わった?」
と声を出すのも怜には精一杯だった。意志のありったけを振り絞り、深呼吸をして何とか
藤堂の攻撃を耐え抜こうとする。
「そう。そういう風に我慢してくれるのが良いのよ」
そう言って藤堂がなおも足の動きを激しくした。柔らかい足の裏が振動しながら上下左右に
怜の秘部をにじり、足の指がくいくいと動いて特に弱い場所を狙い撃ちにする。
怜はまた背を反らして必死にそれを耐えようとした。だが藤堂は怜が一番我慢できないやり方
ばかり的確に選んで強すぎる性感を送ってくる。
(「もっと素敵なこと」って何をするつもりよ……)何かはわからないがろくなことではないに
決まっていた。これ以上の屈辱を与えられるわけにはいかない。それを抜きにしても、あれほど
口で余裕を見せておきながら、こんな早くに屈服してしまうなど、できるわけがない。何として
でも耐え抜くしかなかった。
「おしゃべりする余裕もなくなってきたようね……」
藤堂が言う。図星だったが、耐えるのに必死で怜は何も答えられない。
「ほら」
藤堂が足の動かし方を変える度にイきそうになる。
「どう?」
「くぅ……」
怜が顔を仰け反らせながら藤堂を睨む。藤堂は余裕一杯で笑みを浮かべている。
「しょせんあなたは私に一生勝てないのよ」
「んぅっ」
怜は言いたい放題言われながらも、体を震わせて耐えるしかない。
「もっと強くするわよ」
「うぅ……!」
怜が首をぶんぶんと振る。本当に限界が迫っていた。
「ほら、我慢、我慢。頑張って」
「や……や!」
怜の全身ががくがくと痙攣しはじめた。
「あらら、もう駄目かな?」
「ぁう!」
怜は一声大きな叫びをあげると、とうとう藤堂の攻撃に屈し、激しく達してしまった。
藤堂は足の動きを止め、怜が熱い息を吐きながら胸を激しく上下させるのを眺め
下ろすと、楽しそうに笑って右の拳と左の手のひらを音を立てて打ち合わせた。
「さて、我慢のできない平本怜ちゃんのために、楽しいお仕置きタイムのはじまりだ」
「タイム。縛り方を変えるわ」
藤堂が言うと浅井がストップウォッチを止めた。5分に一度までならタイムは認められている。
それから藤堂はきょろきょろとあたりを見渡すと、部屋の端から高さ二十センチほどの小さな
台を持ってきて一本のポールの前に置いた。それから鋏を手に取り、怜に近付いて彼女の
足のロープを切り始める。両足を自由にすると、続いて手。
それが終わると藤堂は左肩と右腕を掴んで怜を抱き起こし、
「あそこに座って」
と先程の台をさして囁く。
怜は大人しくそれに従い、台にゆっくりと腰を下ろして言う。
「で、何をしようっていうの?」
「もう想像がついてるんじゃない?」
藤堂は言って、新しいロープを持って怜の後ろ側に回り込む。
「手を後ろに回して」
怜はしぶしぶと言われた通りにしながら
「私がいつまでも言いなりになってるなんて、勘違いしないことね……後で見てなさい」
と言う。
「その台詞、今まで何回聞いたかしらね」
藤堂は言いながらポールの後ろで怜の両手首を縛る。怜は背筋を伸ばした姿勢を強要
されることになった。
「次はお足」
藤堂が怜の横に回り、左足をとらえて広げさせ、足首にロープを巻いて怜の斜め前にある
ポールへ結びつけた。それからもう一本ロープを出して、今度は膝に巻いて、怜の体の
真横にあるポールの高いところに結びつけた。これで内股になることすらできなくなる。
「随分念入りなことね。あなたが本当は私を怖がってるって事がよくわかるわ」
「怖がってるのはあなたでしょうに……可哀相なくらい震えてるわよ」
笑いながら、藤堂が右足も同様にする。怜は今まで以上に不自由に身動きを制限され、
殆ど首や指しか動かすことができなくなってしまった。
「さてと」
藤堂が両手のひらをぴったりと床につけて、怜の正面で身を乗り出し、はっきり目を
見つめながら言う。
「もしかしたら今度のはちょっとだけ痛いかも知れないけど……それを補って余りある
快楽を味わわせてあげるから、怖がらないでね。安心なさい」
そして藤堂の右手が怜の左胸に向かって伸ばされる。
「っ」
乳首を服の上から無遠慮に摘まれ、怜が身をかがめようとするが柱の後ろに
回された手のためにほんのわずかしか体を前に倒すことができない。身を守る
手段が何もなく、指の攻撃をただ受け忍ばされる。
(ふうん、ここもなかなか感じるようね)
藤堂が怜の表情の変化を見守りながらさらに左手も伸ばし、無抵抗の両胸を同時に弄る。
怜は逃げようとしてもピクピクと胴体を震わせることしかできず、藤堂の一方的なペースで
刺激を受け続けてしまう。せめて声を我慢するしかできる抵抗はなかった。
「それではお待ちかね……」
藤堂が言って右手の人差し指を立て、怜の左胸からゆっくりと体を下のほうへなぞり下ろし
はじめた。
怜が身を硬くする。
藤堂は、左手では乳首を弄り込みながら右手の指を下げてゆき、服の裾のところまで
達するとその内側に手を滑り込ませ、今度は下から上へ、素肌を直接くすぐるように
なぞり始めた。怜は緊張したままじっとそれを意識させられている。
藤堂の右手が胸に到達し、ブラジャーの上からかりっと乳首を引っ掻くと怜がぴくっと反応する。
そして怜の表情から彼女がはっきり感じていることを確認すると、藤堂は満足して
指をスカートの縁のところまでなぞり下ろした。ウエストがゴムで止まるタイプのスカート
だった。藤堂がその内側に指を潜り込ませると、怜がびくりと震えた。
藤堂の右手指はスカートの内側のスパッツにも侵入を始め、彼女の秘所に着々と
近付いていった。怜は膝と足首のロープのせいで、足を大きく開いたまま全く無防備に
それを待ち受けるしかなく、手でかばうことも許されない。