【幼婚】― 朝(2) ―  
 
ちょっと遅めの朝食を取った二人。  
『ねぇ、りょーいちさん、その・・・本当に、行くの?』  
昨日の会話の真偽が気になる。  
「あぁ、行くよ。」  
何を当たり前のことを、と言わんばかりの応えが返ってくる。  
その声は、すこし怒気を含んだようにも聴こえた。  
「由香。先に言っておくことがある。」  
『は、はいっ!』  
「今日、今からする事に、耐えられないと想ったら・・・すぐ言いなさい。そこで止める。」  
『え?な、何をするの?』  
「・・・・・・・・エッチなことだ。」  
『・・・うん、いいよ。エッチなこと、いっぱいして?』  
どうやらよく分かってないようだ。  
そう感じた亮一は、分かりやすく、直接的に表現する。  
 
「今から役場へ行く間、お前にずーっとエッチなことをし続ける。」  
『え?え?お、お外でエッチなことするの!?』  
今までずっと、エッチなことは家の中だけだった。  
踏み出したとしてもベランダがせいぜいだ。  
一緒に買い物へ行ったりする時など、外では以前通りの普通の親子だった。  
亮一も、外では『お父さん』と呼ぶことを許していた。  
それが、なんで今日は急に?  
当惑した由香は思わず拒絶の声を上げそうになっていた。  
「嫌なら、行かない。」  
『あっ!ち、ちがうのっ!そ、その、あの、・・・・ちょっと驚いただけっ!!』  
「・・・・続けるぞ?」  
『うん・・・。』  
 
亮一も、自分の緊張を紛らわせるように大きく深呼吸した後、話を続けた。  
「今から、由香の服の下に、色々とエッチなものを着ける。」  
『う、うん。』  
「リモコンで動くオモチャとかもだ。」  
『・・・うん・・・。』  
「その状態で役場へ行く。結婚の手続きをする。」  
『うん・・・。』  
「その間、俺は由香に色々とエッチなことをする。」  
『エッチなこと・・・・・・うん・・・。』  
「もちろん回りには他の人たちもいる。だから由香は、ガマンしなければならない。」  
『う、うん、ガマンする・・・』  
由香の体が、寒気を訴えるかのようにブルブルと震える。  
『ね。ねぇ、もし・・・もしも、あたしが変なことしてるって、バレたら、どうなるの?』  
「その時は・・・」  
今度は亮一の背筋を悪寒が走る。  
 
「どうもこうもない。警察を呼ばれて、俺は逮捕されて、それで終わりだ。」  
一瞬の間の後、由香は驚愕の声をあげる。  
『え?えー?なんでー?なんでそうなるのー??』  
「当然だ。小さな女の子に、山ほどエッチなことをして、外を連れまわすんだぞ?」  
『あたし、イヤじゃないよ?りょーいちさんのすることなら、なんでもスキだよ?』  
亮一はクスッとひと笑いする。  
「由香、世間は、そうは見てくれないよ。だから・・・自信が無いなら、やめた方がいい。」  
そう、やめた方がいい。やめると言ってくれ。なにも無理する必要無いじゃないか。  
自分の半身が、そんな風に願う。  
だが。  
『・・・・ガ、ガマンするっ!ぜったい、ぜったいガマンするっ!だから・・・』  
だから、結婚したい、と。  
じっと見つめ合う二人。  
しばしの沈黙。  
そして。  
 
「・・・・・わかった。それじゃ、用意するぞ・・・」  
『う、うん・・・』  
 
そう言って亮一は、自分の部屋から『道具』を取りに行く。  
 
・・・  
 
  由香・・・俺はまだ悩んでいる。このままお前と一緒に居ていいのかと。  
  俺は、お前が恥ずかしがる度に、もっと辱めたい、もっと苛めたいと想ってしまう・・・。  
  このままいけば俺はお前に、取り返しのつかない辱めをかけてしまうかもしれない。  
  ならば、せめて今ならば・・・、今世間にバレるなら・・・お前はまだやり直せる。  
  新しい親に、今度こそ親愛をもって育ててもらうんだ。  
  これ以上大きくなってからじゃ、もう取り返しはつかないから。  
  俺も、塀の中からは会いには行けない。だから・・・諦められるだろう・・・  
 
  ・・・それでも、もしお前が、今日の辱めに耐えられるなら・・・俺は・・・  
  俺は、一生、お前と共に生きる。  
  なにがあっても、これからは、ずっと。  
  ・・・勝手な男だと罵ってくれ。  
  今日だけは、今日だけは、鬼になろう・・・  
 
 
・・・。  
 
 
亮一は部屋に戻ってくるなり命令した。  
 
「裸になれ。」  
『は、はいっ!』  
 
由香はすぐにパジャマを脱ぎ始める。  
『えっ・・・と・・・、ぜ、ぜんぶ?』  
下着姿になったところで尋ねてくるが、亮一は何も答えない。  
答えない、という答え。  
『ぬ、ぬぎます・・・』  
矢のような視線を感じながら、由香は身を守る全ての布を取り払った。  
「よし、じゃぁ今日の下着だ。」  
そう言いながら亮一が取り出したのは麻縄だった。  
 
生まれたままの姿になった由香を目の前に立たせる。  
両手は頭の後ろ。  
足は肩幅。  
由香曰くの『せくしー』なポーズ。  
それを強制されて激しく恥らう。  
ほんのりと赤味がさしたロリータボディに、明らかに場違いな荒縄が巻きつけられる。  
小さな胸がくびりだされる時には僅かだが吐息が漏れた。  
縄はそのまま股下へと潜り込まされる。  
『えっ!?』  
由香もそれには驚いた。  
今まで縄を使うとしても、胸を絞る以外には四肢の拘束くらいにしか使われなかった。  
股下へ通されては性交できなくなるゆえ、今まで亮一がしてこなかっただけのこと。  
屋外調教となればむしろここへ縄を通した方が都合が良いのである。  
そんなこととは知らない由香を半ば置き去りにするかのように、亮一は鮮やかに縛り上げる。  
 
「少し歩いてみろ。」  
そう言われて由香はそっと一歩を踏み出してみる。  
『ひうぅ!?』  
だがすぐにギブアップしてしまう。  
柔肌に直接食い込む荒縄は、調教を通り越して拷問に値する責めだった。  
縄を緩めようと身を捩っても、締め付けは逆に強まるばかりだった。  
『や、やん!やん!いたいっ!む、むりー!うごけないよぉ!!』  
涙目になりながら、後ろにいる主に助けを求める。  
「おやおや、仕方ないな。」  
流石に亮一も媚肉への直接の縄責めはあっさりと取り下げた。  
「いいだろう、パンツ一枚だけ穿いていいぞ。」  
そう言いながら一端縄を解く。  
『あ・・・ありがとー・・・』  
由香は心底ほっとした様子で息を整える。  
 
だが亮一は、慈悲と引き換えに別の責めを突きつける。  
「そのかわり・・・これを着けるぞ。」  
そう言って由香の目の前に、手のひらに余るくらいの大きさの箱を持ってくる。  
初めから使うつもりで用意したのだろう。  
箱には『クリクリバキューマー』と書いてある。  
下劣な玩具にお似合いの、低俗な商品名。  
「な・・・、なに・・・これ・・・」  
由香は怯えた風に尋ねた。  
亮一は箱から中身を出す。  
スポイトのようなものの先に吸盤が付いた形。  
透明な吸盤の中には、カプセルに包まれたモーターが透けて見える。  
モーターからはケーブルが延び、プラスチック製の細長い箱に繋がっていた。  
 
女の子の恥丘に吸い付き、脆弱な肉芽を絞り上げ、刷毛付きの振動体で嬲りあげる。  
淫具の働きを一言で説明すればそうなる。  
そんなものを着けて人前を連れまわすというのだ。  
もちろんローターはリモコン操作可能なもの。  
恥辱のステージで悶え狂わされるのは、他ならぬ自分。  
半狂乱になった由香が思わず主を『古い呼び名』で呼んでしまったのも無理はなかった。  
 
『やだっ!やだっ!やだやだよー!お父さんおねがい許してー!』  
 
――お父さん――  
ここ暫く、家では使われていなかった呼び名。  
その言葉を、由香が咄嗟に口にしたことに、亮一は苦い思いで一杯になった。  
(・・・やはり、こんなことはするべきじゃ・・・ないのか?)  
混濁。迷走。  
(・・・今なら、まだ・・・引き返せるのか?・・・引き返すべきなのか?)  
錯乱。動転。  
今にも倒れそうな主の様子から、由香も自分の失敗に気付いて訂正する。  
『あっ!ちがうー!ちがうのー!りょーいちさんー!りょーいちさぁーん!』  
過ちを取り返すかのように、新しい呼び名を連呼する。  
そして。  
『おねがいー!おねがいー!捨てないでー!見捨てないでぇー!!』  
(はっ!?)  
――見捨てないで――  
そう、その一言が全て。  
亮一にとって由香が全てであるように、由香にとっても亮一は全てだった。  
ターニングポイントなど、もうとっくに通過してしまっているのだ。  
 
(臆病なのは・・・俺の方なのかもな。)  
 
意識を取り戻した亮一は自嘲する。  
「あぁ、大丈夫、大丈夫だ。それより・・・いいんだな?」  
 
――コクン。  
 
大きく、少女は頷いた。  
 
純白のパンティに包まれたロリータの秘部を、二本の荒縄が縦に裁つ。  
縄を左右に広げると、その間に柔らかい恥丘が盛り上がる。  
指で突っつくと、ぷにぷにとした心地よい弾力が返って来る。  
『やーん』  
身を捩ると縄の締め付けが厳しくなるため、少女の抵抗は言葉のみとなっていた。  
 
亮一は吸盤付きのクリローターを手に取ると、そのままパンティの中へ滑り込ませる。  
『あ、あんっ』  
柔らかい手ごたえと、少女のあえぎ声とを参考に、『丁度いい位置』を探る。  
それは少女にとっては『最悪の位置』。  
『うぅ・・・』  
ここ、という場所を探り当てて、グイッと押し付ける。  
吸盤の中の空気が抜けて、由香のツルツルの恥丘へとフィットする。  
『あぁん・・・』  
さらに吸盤から生えるスポイトを押しつぶす。  
そしてゆっくりとその手を離す。  
――ムクムクムクッ!  
『あっ!?ひゃん!!』  
幼い淫核へのスポイト責め。  
日ごろから散々弄られ続けてきた由香の淫核は、ちょっとした刺激で鞘から顔を出してしまう。  
透明なスポイトの中を満たそうとするかの如く、幼い蕾は強制的に勃起させられた。  
『はうっ、はうっ、はうっ・・・』  
亮一の手がパンティから離れても、由香は中腰のままピクピクと震えていた。  
縄の間がポッコリと盛り上がる様は、まるで興奮した男児のようでもあった。  
 
「試しにスイッチ入れてみるか?」  
 
そう尋ねる亮一の言葉に、由香は目を瞑って頷いた。  
「・・・いくぞ。」  
亮一はポケットの中で指を動かす。  
途端。  
『んぐぅーーーーーーーーっ!?』  
口ではなく喉から漏れるような悲鳴。  
由香はお腹をおさえて膝をついてしまう。  
無理も無い。脆弱な乙女の蕾をブラシ付きのローターで擦り上げられているのだ。  
自分では取り出すことも止めることも許されない、絶望的な陵辱。  
それでも亮一はスイッチを切らない。  
「・・・」  
『んぎぅ!・・・・んぅ・・・・・んっ!・・・・・・・・っ!、・・・・・・・っ!』  
由香は漏れ出そうになる言葉を飲み込み、必死で立ち上がる。  
股間を押さえてしまいそうになる両手は後ろへ回して、互いの手で強く掴む。  
引けそうになる腰を必死に正して直立する。  
俯きそうになる顔を持ち上げて、亮一の顔を直視する。  
『・・・・・・・っ!・・・・・・・・っ!・・・っ!・・・・・・・っ!』  
時折ピクンと震える以外は、ちょっと風邪気味か?と思える程度の女の子。  
凄惨な責めに必死に耐えるその姿は、感動すら覚えさせられる。  
 
亮一はスイッチのオンオフを繰り返す。  
その都度、由香の身体はどうしても大きくビクンッ!と震えてしまう。  
『ご、ごめんなさいっ!』  
その都度、由香は恥ずかしそうに謝罪する。  
「かまわんよ。恥ずかしい思いをするのは、由香自身なんだから。」  
『あう・・・は、はい・・・』  
それでも身体は喜んでしまう。  
既に秘泉から溢れ出てきた愛液は、パンティの船底部分をべっちょりと湿らせていた。  
「おいおい、今からこんなに濡らしていてどうするんだ?」  
『あ・・・あ・・・ご、ごめんらさい・・・』  
「スケベ。」  
『あふぅ!いやーん!そんな言い方しちゃイヤーッ!』  
だが、助平呼ばわりされた途端に、クロッチを押しのけるようにH汁が溢れた。  
『きゃっ!?』  
内腿を伝う粘液の感触に、由香自身が驚く。  
『あ、う、うそー!?もう、もうこんなに・・・いやーん!』  
由香は恥ずかしさの余り、顔を両手で隠してしまう。  
 
「仕方ないな。ほら、これを穿けば垂らさずに済むぞ。」  
そう言いながら亮一が取り出したのは、飴色のパンツ。  
由香は恐る恐る手る。  
『え・・・?・・・あ、これ、ゴム?』  
その感触から、ゴム製のパンツであることを理解する。  
「これならスケベな由香でもエッチなお汁を垂らさないで済むだろう?」  
『やーん・・・』  
「いらなければ、返してもらうぞ?」  
『や、やん!穿く!穿くよぉー!』  
取り返されそうになって慌てて脚に通す。  
腰まで引き上げて手を離すと、パチンという音とともに少女の下腹部にフィットした。  
『ひぅっ!』  
同時に、恥丘を盛り上げていたクリローターをもしっかり押さえつける形になる。  
『あーん・・・あーん・・・いやーん!』  
困惑する由香だが、もじもじと脚を擦るしかない。  
彼女の恥部は、ローター、白パンティ、荒縄、それに飴ゴムパンツによって完全に囚われた。  
ヘタに弄ろうとしても逆に刺激となってしまいそうだ。  
由香は両手の持って行き場を失って当惑する。  
 
そんな由香に、亮一はさらに一つ責め具を追加する。  
「ディルドーを忘れていたよ。」  
亮一が取り出したのは、棒状で半透明の物体。  
男性器を模した淫具。  
肌色であったならそのまま脈打つのではないかと思えるほど、リアルな造詣。  
少女の性知識でも、その用途は一つしか連想されなかった。  
『そ、それも入れるの!?』  
「あぁ。足、少し開け。」  
そう言われても由香はすぐには反応できなかった。  
それを咎めるかのように、亮一はクリローターのスイッチを一瞬だけ入れる。  
『ひゃうっ!!んぐ・・・っ、・・・は、はいぃ・・・』  
少女は慌てて足幅を広げる。  
「よーし、いい子だ。」  
足の間に座り、少女の股間を覗き上げる。  
ゴムパンティと縄を横に避けて押さえる。  
ディルドーの先端でパンティを横によけながら恥裂にゆっくり押し込む。  
――ジュプジュプジュプププ・・・  
『はぁっ!はぁぁっ!はぁーーーっ!!』  
侵入者と入れ替わるかのように、秘泉から大量のH汁が溢れてくる。  
由香の下腹部がビクンビクンと痙攣し、軽いアクメを迎える。  
 
「由香。このディルドーはあまり強く締め付けない方がいいぞ。」  
『えっ?』  
謎の忠告。  
亮一は一度ディルドーを肉壷から抜き出す。  
――ジュボボッ!  
『ひうっ!!』  
また軽いアクメ。  
目を閉じて必死に耐えようとする由香に、亮一はディルドーを突きつけて説明する。  
「ほら、中に白い液体が入っているだろう?」  
由香はそっと薄目を開ける。  
確かにディルドーの中心部に白濁した液体が溜まっている。  
「ディルドーを強く締め付けると、コレが由香のアソコの中に発射されちゃうよ。」  
ディルドーの中には先端へ向けてチューブのような道ができているらしい。  
亮一がディルドーを掴んでみせると、謎の液体はその道を通って先端へ移動する。  
そのまま握り続けていたら溢れるだろう、というところで亮一は手を離す。  
 
「さぁ、もう一度入れてあげるね。」  
『えっ!?ね、ねぇ、今の何?その中に入ってるの、何?』  
不安だけを煽られた形になった由香。  
だが亮一は微笑むだけで何も答えない。  
そうこうしているうちにディルドーは再度由香の恥裂に収められてしまう。  
亮一は丁寧にパンティを戻し、抜けないようにしっかりと荒縄を宛がう。  
さらにその上にゴムパンティを戻すことで、はみ出していた下端も押し込まれてしまう。  
『ひぅっ!』  
「それからこれもプレゼント。」  
いつの間にか背後へ回った亮一は、由香の首に赤いベルトを巻きつける。  
『え?っあ!』  
否、それは首輪だった。  
「婚約指輪だと無くしちゃうかもしれないからね。婚約"首輪"にしてあげるよ。」  
首の下あたりにはリングが着けられており、そこからはネームタグがぶら下っていた。  
 
―― Ryoichi  
 
タグにはそう、飼い主の名前が刻まれていた。  
由香は不思議な気分でそのタグを撫でていた。  
まるで心身共に亮一のモノになったかのような充福感だった。  
 
「さぁ、最後にこれを羽織って完成だよ。」  
渡された春秋用のコートを纏って、由香のお出かけの準備は整った。  
 
ドアを開けて外へ出る。  
コートの下には、眩暈がするほどの恥ずかしい格好をさせられて。  
『あぁ・・・りょーいちさん・・・りょーいちさん・・・』  
怯える少女の眼差しに、男は黙ってスイッチを動かすだけだった。  
『っ!・・・・っ!・・・・・・・・・・・・・・っ!・・・・・・・っっ!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!』  
出掛けに亮一から『外は暑いだろうから』と飲まされた紅茶がお腹に重く響いていた。  
ペットボトル入りの1.5リットル全てを飲み干すことを暗に強制された。  
おそらく、外で、人前で、不本意な排尿を強いられるのだろう。  
 
・・・。  
 
道中、人影はあまりなかった。  
時々すれ違う人はいるものの、由香は必死に劣情を抑えて、平静を保つことに成功した。  
だが通行人から離れると、荒々しく息を切らせて立ち止まってしまう。  
クネクネと身体を捩り、モジモジと脚を交差させ、上目遣いで亮一に訴える。  
 
――オネガイ、イカセテクダサイ!  
 
言葉無くとも、少女が訴えんとすることは手に取るように分かっていた。  
にもかかわらず、亮一はずっと『おあずけ』にしていた。  
スイッチを巧みに操作し、少女を臨界点の一歩手前で弄んでいた。  
 
『あぁ・・・おねがい・・・おねがいします・・・イカせて・・・イカせてくらさい・・・』  
いつしか少女は、声に出して訴えていた。  
「あぁ、イカせてあげるよ。」  
男の答えは、存外に優しいものだった。  
しかし、それは続く言葉によって瓦解させられる。  
「あそこの中で、思いっきりイカせてあげるよ。」  
そう言って指した先には、古ぼけた町役場の舎屋が見えていた。  
男に引きずられるように足を進めているうちに、いつの間にか到着していたようだ。  
『あ・・・あ・・・で、でも、人が・・・人が・・・』  
町役場の駐車場には、もう既に何台かの車が止まっている。  
それに比例した人数が、建物の中に居るということ。  
少女の足が完全に止まってしまう。  
 
そのまま暫く。  
 
そんな少女の様子に、男は声をかける。  
「無理なら・・・」  
『!』  
その一言だけで、少女は我に帰る。  
男の手をギュッと握り、己の意思を無言で伝える。  
そして、自らの意思で、役場の自動ドアの前へ立つ。  
 
 
ドアが、静かに開く。  
 
 
中にいた大人たちの視線が、一斉に自分の方を向いた――ような気がした。  
 
 
また足が止まる。おもわず顔が下を向く。  
そんな少女の肩に、今度は男が手を伸べる。  
大きくて、力強くて、暖かい手。  
この人がいればあとは何も――そう思える夫の手に、由香は顔を上げる。  
 
 
「さぁ、行こうか、由香。」  
 
「は、はい、りょーいちさん・・・」  
 
 
少女はゆっくりと足を踏み出した。  
 
 

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